高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

俺は東城先生に膝枕される

公開日時: 2021年2月6日(土) 09:16
文字数:4,386

 盃屋さんの騒動が解決し、平穏な日々を取り戻した俺は昨日と同じく昼間からごろ寝をするというダメ人間街道まっしぐらな生活を送っていた。


「暑い日は外に出ないのが一番だな」


 いい若いもんが昼間から部屋でごろ寝。見る人が見たら説教の一つでもされそうな生活なのだが、こう暑いと外に出る気なんて起きない。それはそうと昨日とは一つ違う事がある。それは────


「恭ちゃん、このままだとダメ人間になっちゃうよ?」


 東城先生に膝枕されている事だ


「そう言いながらも藍ちゃんだってバッチリ俺を膝枕してるだろ?」

「うん」


 幸せそうな笑みを浮かべ、俺の頭を撫でる東城先生。これには理由があり、俺はそれに従うしかない。理由ってのはもちろん、昨日の変質者を退治した時に俺がやった事に他ならない


「じゃあ、いいだろ?というか、膝枕が罰だなんて藍ちゃんも変わってねーか?」


 今に至る経緯を簡単に説明するとだ、今朝東城先生に起こされた俺はいきなり昨日心配を掛けた件についての罰を言い渡された。それが膝枕ってわけだ


「私は普段働いてるから恭ちゃんと接する機会がほとんどない。だからこれでいいの」


 いつもは教師として働いてる東城先生が俺と接する機会がほとんどないと言うのは半分嘘だ。彼女は俺の担任だから接する機会はある。他の生徒の手前、俺だけに付きっ切りというわけにはいかないだけで


「俺の担任のクセして何言ってるんだか……、接する機会がほとんどないんじゃなくて付きっ切りで構えないってだけだろ」

「むぅ~、私からするとほとんど接する機会がないのと同じだよ」


 必要最低限接しているのに何を言っているのやらと思ったが、余計な事を言って機嫌を損ねる必要はない。これは黙っておくか


「そうかい。んで?他の連中はどうした?買い物か?」


 起きた時にはいた零達がいつの間にかいなくなっていた。買い物は昨日のうちに済ませてあるはずだからその線はないなと思いつつ、尋ねた


「違うよ。零達は真央の付き添いで事務所に行ってる」

「盃屋さんの事務所?何か届けてもらうものでもあるのか?」

「生活に必要な物資と台本」

「ああ~、納得。だが、それだと電車乗り継いでとかだときついだろ?」


 台本を取りに行くだけなら盃屋さん一人で事足りる。仮に零達が付いて行ったとしても公共の交通機関を使えばいい。それが生活物資となると話は別だ。タンス等のデカいものは手に持って運べないから当然、運送業者を使う。


「恭二郎さんが車を出してくれるらしいからその辺りも問題ないよ」

「そうなのか?爺さんはてっきり帰ったものだとばかり思ってた」


 爺さんに関しちゃ起きた時にはいなかったから帰ったものだとばかり思っていた


「さすがに昨日あんな話を聞かされて帰るってのはないよ。恭ちゃんだってストーカーの話を聞いた次の日に帰るだなんて薄情な真似しないでしょ?」

「そらそうだ。俺はダメ人間だけど苦しんでた人を見捨てるほど薄情になった覚えはない」


 ダメ人間である事と困ってる奴を見捨てるクズ人間は別だ。俺はそこまで腐ってない


「それは私達がよく知っているよ。ところで恭ちゃん」

「何だよ?」

「前に千才が学校に来たの覚えてる?」

「ああ、怪文書の時だろ?それがどうかしたのか?」

「あの時のカードは犯人が全部買ったんだよね?」


 千才さんに資料として見せられたカードは俺が見た限りじゃ全て本物でコピーじゃなかった。ネットショッピングがある今の世の中で金に余裕がないとか、販売前のカードじゃない限りコピーを使う場面などそうはないだろう


「ああ、見せられたカードは高額じゃないからな。入手経路は分からないけど、あの程度のカードならリサイクルショップでも手に入る」


 リサイクルショップでも手に入るは入る。ただ、トレーディングカードゲームを扱っていればな。仮に扱っていたとしても縁がボロボロだったり何かを零したようなシミがあったりと状態はあまりよろしくない。それはカードショップでも同じだが、リサイクルショップに比べて幾分かはマシだ


「そっか。それ以外で簡単にカードか手に入る方法ってあるの?」

「買う以外でか?」

「うん」

「そうだな、カードを買う以外じゃプロキシが手っ取り早い」

「プロキシ?」


 そうか、学校ではエラッタについて説明はしたけど、プロキシについては説明してなかったな


「あー、一般的な意味で説明すると代理とか代用って意味なんだが、カードゲームで説明すると実物のカードを持ってなかった場合に代用品として使うカードの事だ」

「へぇ、そんなのあるんだ」

「ああ」

「どんな時にその代用品のカードを使うの?」

『それは私も興味あるわね』

『お母さんも~』


 どんな時に使うのかと聞かれると困る。人によってプロキシの使い道は違い、一概にこうだと断言できないからだ


「どんな時って言われてもなぁ……」


 俺の語彙力関係なしにプロキシの使いどころというのは説明が難しい


「もしかして難しい質問しちゃった?」

「いや、まぁ……、そうだな、俺の場合でいいなら説明出来なくもない」


 こうと断言出来ない以上、俺の場合で当てはめて説明するしかない。誤解のないように言っておくが、俺の使い方=カードゲームを趣味としている人間全ての使い方ではない。


『きょうの場合でいいよ~、お母さん達はそんなにカードゲーム詳しくないから~』

『私もそれで構わないわ』

「私も」

「それでいいなら……」


 俺は東城先生の膝の感触を堪能しながら頭の中で説明する内容をまとめる。本当にこればかりは人によって使い方が異なり、概要だけの説明なら知識さえあれば誰だって出来る。どんな時に使うのかと訊かれれば答えに困るけど


「それじゃあ俺の場合で説明するけど、俺がプロキシを使う時ってのは大体が金欠状態でほしいカードがある場合とか、興味のあるテーマデッキを組む時だな」


 高校生でカードゲームを趣味としていると金欠になるだなんて当たり前のようにある。というのもデッキというのは組むのにとても金が掛かる。一枚のカードの値段が大した事なくてもそれを複数枚となると尚更だ。


「言ってくれればカードくらい買ってあげるのに……」

『そうだよ~、言ってくれれば恭弥の脅迫くらい喜んでするのに……』


 東城先生とお袋。言ってる事は違えどカード一枚くらいならという安易な考えでいるのは間違いなさそうだ。それと、どっちも多分、俺をダメにする


「二人の言ってる事はともかくとしてだ、全てのカードが俺ら庶民が手を出せる金額と思ったら大間違い。中には一枚百万するカードだってある」


 特に世界大会優勝者しか貰えないカードがそうだ。


『そうなの?私、カードゲームのカードって安い物ばかりだと思ってたわ』

「そりゃ千才さんはあの怪文書で初めてカードゲームってものを知ったからでしょ?」


 東城先生と千才さんの場合は小学校のクラスに何人かはカードゲーム趣味の男子がいたと思う。お袋の場合はどうなんだろうなと言ったところだが


『そうね。そんなものに興味なかったから知ろうともしなかったわ』


 ですよねー……、女の人でカードゲーム趣味って大抵が兄か弟の影響、あるいはアニメの影響だったりするし


「まぁ、女性でカードゲームやってるって人の方が珍しいので仕方ないです。で、プロキシの話に戻りますけど、俺の場合は金がなかったり、興味のあるテーマデッキを組む時に使います。ここまでで何か質問は?」


 使いどころは説明したから質問があるとすれば作り方くらいだろ


「はい」

「はい、藍ちゃん」

「そのプロキシってどうやって作るの?」


 ほら出た、作り方の質問


「これも人によって様々なんだけど、手っ取り早いのはノートの切れ端にカード名とパワーを書く。んで自分の持っている適当なカードを裏返してカード名とパワーを書いた切れ端と一緒に入れるってのが早いし安い」


 この方法だと必要なのはそのカードゲームの要らないカードとノートとペンだけ。だから作り方としては一番簡単だ


「それ以外の作り方は?」

「それ以外だとネットから画像をダウンロードしてとか、凝った人だと自分でイラスト描いて作る人もいるらしい」


 俺の場合は絵心がないからノートの切れ端にちょちょいとカード名とパワーを書いて裏返したカードと一緒にスリーブに入れるって方法を採用しているけどな。プロキシ使う前に興味のあるテーマデッキがないから使う機会なんてない


「そうなんだ。ねぇ、恭ちゃん」

「何だよ?まだ質問あるか?」

「ううん。私からはないよ。千才と早織さんは?」

『お母さんもないよ~』

『私も』


 さっきの説明で全員納得してくれたようで何よりだ。質問はないって事はそれ以外で何かあるなこりゃ


「質問がないなら何だ?実際にネットから画像拾ってきてプロキシ作れとかか?」

「うん……、恭ちゃんの説明は解りやすかったんだけど、実際に作ってるところ見たいなって……ダメ?」


 涙を貯めながらダメ?って聞かれて断る男はいないだろう。特に東城先生みたいな普段はクールだけどふとした時に弱みを見せてくるような女性が目に涙を貯め、不安気に見つめてくるんだぞ?クーデレ萌えにとっちゃご褒美じゃないか。俺は違うけど


「ダメじゃないけどよ、そんな泣きそうになって頼む事でもないだろ。実際の作業なんてマジでショボいしな」


 自分でイラストを描いてってなると大変な作業になると思う。しかし、ネットから画像を拾ってくるやり方は大した作業じゃない


「そうなの?」

「ああ。って口で説明するより実演して見せた方が早いか」


 俺は起き上がり、パソコンを起動させる。それはそれとして……


「どうしたの?恭ちゃん?」


 隣を見ると俺にピッタリと張り付く東城先生。俺も健全な男子高校生なんだけど?


「何で張り付いているのかと思ってな」

「私がそうしたいから」

「さいで」


 気にしていても仕方ないので俺はこのパソコンに元々は入ってるブラウザを立ち上げる。プロキシを作るだけだからブラウザの種類はハッキリ言って何でもいい。



 ブラウザを立ち上げ、いざ検索なのだが、何にしようと迷う。モンスターファイターは確定として、問題はどんなカードにするかだ


「今回はそうだな……“守護天使ミカエル”にしとくか」


 検索エンジンに守護天使ミカエルと入れ、検索をかけ、出てきたのはトップに守護天使に関するサイト、二番目にミカエルに関するサイト、三番目に守護天使ミカエルの情報が載ったモンスターファイター大百科。出てくるサイトの順番など今はどうでもいい。俺が欲しいのは画像だからな


「恭ちゃん、守護天使ミカエルってカード欲しいの?」


 東城先生が上目遣いで訪ねてきた


「欲しくはない。ただ、このカードは大人でも買うのを躊躇うくらい高額だからちょうどいいと思って選んだだけだ」

「そう……」


 東城先生は俺が欲しいと言ったら無理をしてでも買ってくれると思う。しかし、俺は自分の趣味に掛かる金まで他人に出させるほど腐ってない。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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