高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

俺はまさかの人物と意外な再会を果たす

公開日時: 2021年2月5日(金) 23:30
更新日時: 2021年3月27日(土) 14:02
文字数:4,202

「おかしい……」


 学校から帰宅し、部屋に戻った俺は一人、神矢と話し合いを思い出していた。別に内容なんてどうでもいい。お袋を悪く言われ、神矢を睨みつけた時と神矢がお袋がいないのを非難した時に起こった揺れが何で起きたかの方が重要だ


「琴音は揺れを感じなかったって言ってたしなぁ……」


 俺と神矢は机が揺れ、窓と蛍光灯が割れたのを感じた。だが、琴音は何も感じなかったと言っていた。ここがおかしい。何で俺と神矢はハッキリ揺れを感じたのに神矢は感じなかったんだ?


「琴音が鈍いだけなのか? それとも、俺と神矢の気のせいか?」


 考えれば考えるほど分からない。二人の人間が揺れを感じたのに琴音は感じなかった。飛鳥には聞かなかったがおそらくは揺れなんて感じてない。と、なると……


「東城先生や零達にも聞いてみる必要があるよなぁ……」


 精神が子供に戻っている飛鳥はこう言っちゃなんだが当てにならない。そうなってくると同じ校舎にいた東城先生や学校は違えど同じ女将にある学校へ通っている零達に訊く他ない。ただ、車から窺った様子じゃ街の様子は普段と何ら変わりなかった。


「俺と神矢だけが感じた揺れかぁ……」


 えらくピンポイントな気がしてならない。二人の人間だけが感じた揺れだなんてピンポイント過ぎる


「零達が帰ってくるのを待つか……」


 一人で考えていてもしょうがないと思った俺は零達の帰りを待った。その間に部屋着に着替え、飛鳥と遊んで時間を潰した




 零達が帰宅し、揺れを感じなかったかを聞いたが、零達は口を揃えて揺れなんか感じなかった、俺の気のせいじゃないかと言い、悪戯に時間だけが過ぎた。東城先生は同じ建物内にいたからもしかしてと思ったのだが、答えは琴音と同じ。それから晩飯を食って風呂に入り、現在、部屋の住人は俺を除いて夢の中だ


「零と闇華、碧と蒼はもちろん、東城先生まで揺れなんて感じなかったとは……何が一体どうなっているんだ?」


 零達がスヤスヤと寝息を立てている中、俺は神矢に呼び出された時に感じた揺れの原因がどうしても気になって眠れない。布団に入ったはいいが、現代科学を以てしても説明がつかない現象が起きたという事実が頭から離れないでいた


「考えていても仕方ない。トイレにでも行くか」


 布団から出て零達を起こさないように移動する。いつもなら部屋に備え付けてあるトイレを使うのだが、今回に限ってはエントランス隅にあるデカいトイレに行きたくなり、スリッパを履いて部屋の外へ


「そういやここって深夜でも電気は点いてるんだったな」


 別に夜中部屋から抜け出して夜遊びをしようとは思わない。今までは気にも留めなかったが、ここは通路もエントランスも電気は常に点いたままだ。


「まぁ、電気が点いてようと点いてなかろうと基本的に薄暗いから同じか」


 営業している時からここはそうだ。基本的に薄暗く、足元を照らすライトは必要ないにしろ他のフロアと比べると暗い方だった。だから今更暗いとは思わない


「よくこんな場所に部屋を構えたものだ」


 全く前が見えないとは言わないが、こんな薄暗い場所を住まいにしようとよく考えたものだ。爺さんや親父に対し、皮肉にも似た感情を抱きながらトイレへ向かった


 トイレに着いた俺は意外な発見をした


「ここは明るいんだな」


 営業時なら時期によっては多くの人でごった返しているトイレ。エントランスや廊下は薄暗いながらも電気が点いていた。俺達が普段使っているからある種当たり前だと思っていたが、部屋にトイレが備え付けてある以上使われる頻度は少ないと思われていた場所まで電気が点いているとは思わなかった


「俺達じゃ電気の点け方なんて分からないから関係ないか」


 部屋の電気はスイッチがあるから誰だって簡単に点けたり消したり出来る。それとは違い、トイレや廊下、エントランスの電気はスイッチはあるんだろうけど場所が分からない。俺達にはどうしようもない



 用を済ませ、化粧台で手を洗い終え、ふと鏡を見た時だった


「我ながらひっでぇ顔だなぁ……」


 神矢想子と出会ってからというもの、飛鳥の精神が子供に戻ってしまったという事もあってか自分の顔がやつれて見える


「このままいくとそのうち幽霊でも見えてきそうだ」


 冗談抜きでこのままだと幽霊が見えてもおかしくない。今だって鏡には俺の顔と背後に青白い光が……ん? 青白い光?


「何だろう? 俺は疲れているのか? 心なしか背後に青白い光が見えるぞ?」


 このトイレの蛍光灯の色は白だ。だから白い光が降り注ぐのは当然として、青って何だ?アレか?ここを改築した時に爺さんがここに悪戯か何かを仕掛けたとかそういう感じのアレか?


「爺さん……何してんだよ……」


 孫の通う校舎にエアガンを隠すくらいだからこの建物にも何か仕掛けてても不思議じゃないとは思う。ただ、そういうホラー的なものは要らないと俺は思うんだ


『きょ~う~』


 そういう幽霊の囁き見たいなエフェクトも要らない。しかも、女の声で恐怖心を煽ろうとするのは特にな


「はぁ……こういう悪戯は本当に勘弁してほしいものだ。マジで」


 ここはお化け屋敷じゃねーんだよ。それに、どこの誰に頼んだか知らねぇけど、お袋みたいな口調とかマジで悪質だ


「爺さんに言ってこの仕掛けは外してもらうか」


 お袋が死んだのを引きずってないと言えばウソになる。それにしたってこれは悪質過ぎる


『ちょっと、きょう~、無視はよくないと思うんだけどなぁ~』


 幻聴まで聞こえるようになったか……マジ疲れてんな俺


「とっとと寝るか」


 鏡越しに見える青白い光を無視し、トイレから出ようとした時だった


『ちょっと! きょう! 無視しないで!』


 突然何かに引っ張られるようにしてトイレに引き戻された


「うおっ!? な、何だ!?」


 トイレに引き戻された俺は何が何だか分からず目を白黒させる。え? 何? ポルタ―ガイスト!?


『きょう、お母さんは人を無視するような子に育てた覚えはないんだけど~?』


 目の前には俺の母を名乗る青白い光。アレだ。振り込め詐欺よりも質が悪い


「えーっと、これも爺さんが仕掛けた悪戯なのか?」

『悪戯じゃなくてお母さん本人なんだけど~? きょう、もしかして幽霊とか信じない派?』


 信じない。青白い光がお袋? そんな冗談通じるのは子供とか迷信を信じこんでる年寄りだけで現代っ子たる俺には通用しないんだよ!


「信じないな。顔を見たわけじゃなし、それに、今まで俺はその手の類は見た事がない。信じろって言う方に無理があるだろ」


 サウンドノベルゲーはホラー系統のものが多いし、もう少ししたら怖い話を集めた番組とか、映画のテレビ放映なんかがあるから幽霊もいるんだろうなぁくらいには思う。自分の前に出てきて信じるかは別として


『だよねぇ~、きょうは自分の目に見えないものは昔から信じなかったもんねぇ~』


 納得したと言わんばかりの返答を返す光の玉。昔の俺を知ってようと信じないモンは信じないぞ


「信じてほしいなら光の玉とか曖昧な姿じゃなくってお袋の姿になって出直せ。それか、俺とお袋しか知らない事の一つでも言って見せろ。そうしたら信じてやる」


 ある種の怪現象に襲われたとは言え恐怖心が全く湧いてこないのは映画やドラマみたいな感じで襲い掛かってきたりせず、のほほんとした感じだからか?


『きょうとの秘密のエピソードかぁ~……そうだねぇ……きょうが病気のお母さんを付きっ切りで看病してくれたりとか、お母さんが生まれ変わったら結婚してくれる? って聞いてきょうが生まれ変わって記憶があったらなってぶっきらぼうに答えたくらいしかないなぁ~』


 光の玉はとんでもない俺の黒歴史を暴露しやがった。中学時代、お袋の看病を付きっ切りでしたのは事実だ。日に日に弱っていくお袋を見て心を痛めたのもよく覚えている。弱っているお袋から生まれ変わったら結婚してくれるかと聞かれて記憶があったらなって言ったのも事実だ


「…………え? 本当にお袋? マジで?」

『さっきからそう言ってるでしょ~疑り深いのは相変わらずだね~』

「いや、疑うだろ! いきなり青白い光が出たと思ったらいきなり話しかけてきてそれがお袋!? 信じられんわ!」

『たしかに、きょうの言う通りだ~、じゃあ、この姿なら信じられる?』


 目の前の光は玉の形から人の形へと変化する。その顔には見覚えがある。毎日見ていた顔だ


「お、お袋……」


 病気で亡くなった俺のお袋だった


『うん~、きょうからすると久しぶりだねぇ~。お母さんからすると毎日見てたから久しぶりって感じはあんまりないけどねぇ~』


 眠そうな目にのほほんとした喋り方。とても結婚していて子供がいるようには見えない外見。ついでに白のワンピース。紛れもなく俺のお袋だった


「ま、毎日見てたって……い、いつから……?」


 死んだお袋にまた会えたという嬉しさと感動よりも毎日見られていたという事実を確認する方が俺の優先度的に高いのはどうなんだ? とは思うも聞かずにはいられない


『ん~? そうだねぇ……お母さんの葬儀が終わってきょうが部屋で一人号泣していた日からかなぁ~』


 あ、うん、その話は俺が中二の時だから最初からだ


「さ、最初から見てたんですね……」

『まぁねぇ~、いやぁ~、息子に号泣されるだなんてお母さん愛されてたんだぁ~』


 デレっとした笑顔で身体を左右に振るお袋。おい、涎垂れてんぞ?


「まぁ……俺が辛い時に側にいてくれたしな……」


 照れ隠しにポリポリと頭を掻く。お袋には辛い時に側にいてくれて救われたが、まさか死んでからも側にいたとは思いもよらない


『そりゃぁ~息子だし~、きょうがある程度自立出来たらお父さん捨ててきょうと二人で暮らす予定だったしぃ~』


 おい、デレっとした顔で何とんでもねぇ事言ってんだ? 聞きたくなかったわ! そんな人生設計!


「そんな人生設計聞きたくなかった……つか、お袋」

『ん~? なに~?』

「ずっと側にいたんだったら知ってると思うけど、神矢と話し合いしてる時に感じた揺れはお袋がやったのか?」

『あ~、あれねぇ~……その話をするにはお母さんの実家の話からしないといけないんだけど……』

「お袋の実家の話?」

『うん……それでもいいなら話すよ~』


 最近は父方の祖父母としか話しておらず、母方の祖父母とはあまり連絡を取っていない。それを考えるといい機会なのかもしれない


「長くなってもいい。聞かせてくれ」


 意を決しお袋を見る。この話を聞いた後で俺はどんな決断をするかは分からないとしても聞く事に意味がある


今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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