高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

お袋が珍しく単独行動に出た

公開日時: 2021年2月9日(火) 23:28
文字数:3,011

 突っ込み疲れた俺は……世の男子にとっては最もオイシイと言われるだろう美女、美少女の着替えシーンを見ず、ふて寝?をしてしまい、気が付いたら……


「いやぁ~! 絶景でござる~!」


 頂上にいた。ちなみに時刻は午前十時を回っているらしく、これから日差しが強くなり気温が上がる一方。八月が早く終わればいいのにと思う反面、夏休みがずっと続けばいいのにと思ってしまう。


「真央は昨日も来てるでしょ。しかも、恭ちゃんと二人で」

「いやいや! 藍殿! 絶景は何回見てもいいものでござるよ!」


 神矢想花に身体を乗っ取られた次の日だというのに同じ場所、同じ景色を見て感動出来る真央の精神はどうなっているんだ?俺なら直接の原因ではないにしろ一端を担っている場所や人物、景色を見てはしゃぐ気にはとてもじゃねぇけどなれない


「確かに真央さんの言う通り絶景です!」


 俺と二人でという言葉にいつもなら反応を示す闇華が無反応。ここから見る景色はそれほど絶景って事らしい


「確かに絶景よね。昼の景色もいいけど、夜の景色も見てみたいわ」


 零の意見に女性陣が頷く。普段ゲームばかりの俺でもこの景色は絶景だと思うし、何もなければまた来たい。


「零ちゃん、ホテルの人に夜も見れるか聞いてみれば?」

「そうね! 戻ったら聞いてみましょう!」


 通ってる学校が違うせいか、普段はあまり交流のなさそうな飛鳥と零が楽しそうに話をしている場面というのは見ていて新鮮だ


「うん! もしも大丈夫だって言われたら恭クン誘って夜も来ようよ!」

「当たり前よ! 叩き起こしてでも来させるんだから!」


 叩き起こされるのは嫌だなぁ……せめて寝た状態のまま簀巻きにして運んでくれねぇかなぁ……。なんて思っていた時だった


「零ちゃん達が楽しそうでよかった……」


 小声でボソッと呟いたお袋は静かに彼女達の元を離れる。何かを思い詰めたような感じじゃないし理由もなく単独行動をするような人じゃないから俺の身体使って失踪するだなんて事は考えにくいが……



 零達の元を離れたお袋は一人下山。だが、ホテルに戻る気配はない。だからと言ってどこかに遊びに行こうという感じでもない。彼女はどこへ向かっているんだ?


「はぁ~、きょうは何も聞かずに身体貸してくれたけど、理由くらい説明しなきゃダメだよね……」


 零達の元を黙って離れた上に単独行動。中身がお袋だって事を知ってる零はちゃんと理由を話せば解かってくれるはず。しかし、闇華達はどうだ?特に何も知らない真央と茜にバレた時には質問攻めか説教フルコースのどちらかは避けられないのは明白で考えただけでも恐ろしい


「ごめん、きょう。これから行く場所に着いたらちゃんと説明するから今は辛抱してね」


 辛抱しろって……俺は辛い目には遭ってねぇぞ?これからどこに行くか、何をするかすら言われてねぇのに辛抱しろと言われても俺からしたら何のこっちゃだ


「にしても零ちゃん達に黙って抜け出したのはマズかったかなぁ……」



 零ちゃん達が楽しそうでよかった……とか失踪をほのめかす事言っといて今更何を言ってるんだこの母親は。マズいどころの話じゃねぇから、もうそろ零達の誰かから電話掛かってきてもおかしくないから


 じりりりりん! じりりりりん!


 ほらぁ! 掛かってきたぁ! 俺しーらね! 黙って抜け出したのはお袋なんだからちゃんと言い訳しろよ?


「どどどどどどうしよう?で、電話……、と、とりあえず、で、出ないと……だよね?」


 お袋はズボンのポケットで鳴ったスマホの着信音に動揺を隠し切れないでいる。黙って抜け出したツケが回ってきたんだ、相手が誰であれちゃんと対応しろ


「ひ、ひとまず、あ、相手を確認しなきゃ!」


 お袋はポケットからスマホを取り出し、電話の相手を確認する。


「あ、飛鳥ちゃんかぁ……、はぁ……」


 どうやら掛けてきてるのは飛鳥のようだ


「これは……出ないと後々面倒な事になるよね……?」


 俺的には出ても面倒な事になるんだよなぁ……。つか、早いとこ出るか切るかしてくれませんかねぇ……自分で設定した着信音だとはいえうるさくて敵わん


「ど~う~し~よ~う~!」


 スマホを手にしたままお袋はその場でしゃがみ込むと頭を抱え、唸り始めた。悩めるお袋の心情などお構いなしに電話は鳴り続け、そして……


「よ、よかったぁ~! 鳴りやんだぁ~!」


 ピタリと鳴りやんだ。


 じりりりりん! じりりりりん!


 鳴りやんだと思ったのもつかの間。再び俺のスマホが悲鳴を上げる。さっきは飛鳥で今度は誰だ?


「げっ! 今度は闇華ちゃん……」


 今度は闇華か。一回ダメだったからもう一回。掛ける人間を変えるのは当たり前だよな……。


「ど、どうしよう……」


 お袋は飛鳥から着信があった時と同じく唸っている。俺なら単独行動を取ったという負い目があるからそのまま応答拒否して機内モードにして気が付かなかったフリするぞ……。後が怖いもん


「で、出なきゃダメなのは解ってるけどぉ……どうしよぉ~」


 出なきゃダメだと解かってるのなら出ればいいだろうに……何を迷う必要がある?


「きょうの今後に関わるからこれから行くところは絶対に知られたくないのにぃ~!」


 俺の今後に関わる?何の話だ?


「もういい! 出ない!」


 お袋は闇華からの着信を応答拒否にし、立ち上がるとスマホをズボンのポケットに戻し、再び歩き出した。彼女はどこへ向かい、何をするつもりなのかは分からず、今の俺にはそれらを聞く手段はない。俺の今後に関わり、飛鳥からの着信に応答せず、闇華からの着信は拒否。俺の周囲にいる人間には知られたくない事のようだ



 お袋が歩き出してからしばらく。彼女が辿り着いた場所は曾婆さんがいる廃墟だった


「とうちゃ~く!」


 その口振りは失踪を仄めかした人だとは思えないくらい明るい。そんなお袋は軽快な足取りで廃墟内に入る


「さてっと、早いとこ用事を済ませて帰らないとね」


 そう言うとお袋はどこかへ向かった。ここへ来たから向かう場所は俺が考えた限りじゃ一か所しかない。しかし、その場所に何の用があるのか、それを知るのはお袋のみ。


「零ちゃんか藍ちゃんのどっちかを連れて来ればよかったかなぁ……」


 目的の場所へ向かっている道中、唐突にお袋の口から出たのは後悔にも似た言葉。挙がったのは中身がお袋だって知っている零と昨日一緒にここへ来た東城先生の二人。知られたくないと言いながらも誰かを連れて来ればよかったとは……俺は自分の母親が何をしたいのか分からなくなってきた


「飛鳥ちゃんと闇華ちゃんには後で事情を話して謝らないとなぁ……」


 謝るくらいなら真央と茜以外にはちゃんと事情を説明しとけよ……。零だって中身が違う以外の事は何一つとして知らねぇんだぞ?


「はぁ……、きっとみんな心配してるんだろうなぁ……」


 当たり前だ。飛鳥と闇華は心配して電話してくれたのに出なかったのはお袋だぞ?


「でも、仕方ないよね……、こればかりはきょうの今後に関わる問題だし」


 さっきから気になってんだけど、俺の今後に関わる問題って何ぞ?そろそろ具体的な解説がほしい


「とは言ったものの、きょう本人にすら言ってないんだよねぇ……」


 お袋はタハハと笑い、頭を掻いた。問題の中心にいる俺が何も聞かされてないのはどうなんだ?



「やっと着いた……」


 俺がお袋の目的に悶々としているうちに目的地に到着したらしい。その場所は曾婆さんがいるカフェだった


「久々に生身の身体で動くとしんどい~」


 不満を一つ漏らし、額の汗を拭うとお袋はカフェの中へ歩を進めるのだった

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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