高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

琴音と東城先生を堕としてみた

公開日時: 2021年2月9日(火) 23:28
文字数:4,739

「次は琴音の番だな」


 零に続き、闇華を撃破した俺は琴音に視線を向ける


「え、えっと、よ、よろしくお願いします……」


 零、闇華の衝撃的(?)なキスシーンを目の当たりにしたせいなのか、若干委縮しているようにも見える。俺からするとどう思っていようと知った事ではなく、あくまでも彼女達が望んだ事を実行しているに過ぎず、責められる筋合いはない


「よ、よろしく……」


 責められる筋合いも遠慮する必要もないものの、零と闇華にしたように下げてから上げる作戦が琴音に通用しない。零は言わずもがな、闇華もここぞという場面では攻めの姿勢を見せ、時には俺を翻弄してくる。言わば攻め型の二人だったからこそ通用した作戦だ。対して彼女は零や闇華に流され気味な傾向があり、自分からグイグイ来るとしたら二人きりで人の目が全くない時くらいだ。その証拠に挨拶も控えめだしな


「キスする前に一ついいかな?」

「何だよ?」

「私には零ちゃんや闇華ちゃんとは違って簡単にはいかないよ」


 簡単にはいかない……か。お前はこれから俺と戦うのか?間違いでもないから否定はせんけど、静かに対抗意識を燃やすのは勘弁してほしい。


「そんなの百も承知だよ」


 琴音は零や闇華みたいに積極的ではない。それは東城先生と飛鳥の学校組と声優組も同じだ。学校組に関して言えば男モードの飛鳥は積極的と言うよりも空気が読めないと言った方が正しい。狙ってそうしてるのかわざとなのかは本人に確認してみない事には何とも言えない部分があり、その詳細は不明。東城先生は言わずもがな普段のクールな言動が物語っている。由香は積極的半分、消極的半分ってところだな。声優組は知り合って間もないから分からないとだけ言っておく


「そっか。それなら恭くんがどうやって私を攻略するのか楽しみにしてるね」


 デコにキスするだけだったはずなのにいつの間にか俺がこの場にいる女性を攻略する事になってんだけど……。これは気にしたら負けなのか?


「言ってろ」


 琴音の安い挑発に乗ったはいい。策もある。どう切り出すか全く考えてないだけでな!とりあえず琴音をギャルゲーのヒロインに変換して考えるとだ、彼女の場合、世話好きな年上お姉さんだ。オマケに年上という事で舞台設定によっては常に家にいて炊事、洗濯に追われるのは間違いなし。当然、男との出会いなんてねぇから好きになるとしたら必然的に父親以外の男性。つまり、主人公なのだが……


「どう?私を堕とす算段はついた?」


 余裕の態度で来られると攻略に困る。東城先生や真央、茜もだけど、成人女性キャラは主人公よりも年上故に男性慣れしてるかガードが堅い設定のキャラが多い。キャラによるけど。琴音みたいなタイプは弱ったところが狙い目なんだけど……弱ってないんだよなぁ……策はあるから困るのは話の進め方だけ悩む。キス以外の事もせにゃならんしな


「まぁな」

「じゃあ、やって見せて」


 自分は零達みたいにはならない。彼女の挑発的な態度から絶対的な自信が伺える


「慌てんなって。それより、ちょっと世間話でもしようぜ?」

「いいよ。私も恭くんが普段学校でどんな感じなのか気になってたところだったしね」


 はい、引っかかりました。零や闇華とは違って簡単にはいかないって言ってたのはどこのどいつだ?


「俺の学校生活の話なんて藍ちゃんから聞けるだろ?」


 聞こうと思えばいくらでも聞ける。主に東城先生や飛鳥からな。センター長もいるけど、あの人の場合はいつも職員室にいて俺を含む生徒との交流なんてあってないようなものだ。それを考えると担任の東城先生や同級生の飛鳥から聞いた方がいい気もしなくはない。方や担任で方や同級生とはいって全て把握しているとは限らないんだけど


「聞こうと思えば藍ちゃんや飛鳥ちゃんから聞けるけど、やっぱりこういうのって本人から直接聞きたいんだよ」


 学校生活の様子なんて本人に聞くよりも第三者に聞いた方がありのままの様子を詳細に教えてもらえると思うのは俺だけか?


「さいですか。っつっても俺の学校生活なんて寝てばかりだから面白くもなんともねぇぞ?」


 睡眠障害を患ってはいない。中学時代に出席より欠席の方が多かった俺が普通の人間が起床する時間に起きられるわけがない。昼夜逆転してたわけじゃねーけど、大抵スーパーが開店する時間に起床する時間が多く、就寝時間は日付が変わった一時間後くらいだった。そんな俺が学校で寝ないわけがないだろ!結論、俺の学校生活の話なんて聞いても面白くない


「いいんだよ。私は恭くんが学校に行って感じた事を聞きたいんだから」


 俺は小学校に入りたての子供か?俺が子供だったら琴音は母親って事になるぞ?こんなダメ人間が息子とか彼女は嫌じゃないのか?


「感じた事って言われてもなぁ……クラスの連中とはほとんど喋んねぇし、喋ったとしても由香だけ。他のクラスだと飛鳥だけの学校生活だから感じた事を話せと言われてもなぁ……」


 東城先生の手前、授業が退屈過ぎるだなんて口が裂けても言えない俺は悩んでる体を装う。星野川高校の授業はマジで退屈だ。勉強が出来ないとかそういった意味ではなく、教師が一方的に喋り、生徒はそれを聞くだけ。こんな授業のどこに面白さを感じろってんだ?以上が俺の本音だが、星野川高校教師の東城先生が同じ空間にいるからそんな事言えるわけがない


「何でもいいよ?毎日充実してるとか、窓からの風景を見てこう感じたとか、何かない?」


 毎日が充実していると言うなら学校にいる時よりも家にいる時の方が充実している。窓からの景色だって学校からよりも家から見た方が断然いい。景色に関しては建物の規模が違うから仕方なく、口に出して言う事じゃない。だが、今の質問で話を進めやすくなった


「毎日は充実してるな。琴音や零達、多くの人を拾ってから色褪せていた俺の世界が一気に明るくなった」

「うんうん! それで?」


 子供の様に目を輝かせ、前のめりになる琴音。俺の学校生活にここまで興味を示したのは彼女が初めてだ


「それで、こんな学校生活ってか日常も悪くねぇなと思えるようになったが、学校生活一番の楽しみは何と言っても琴音の弁当だ」

「えっ……?」


 絶賛されるほど美味い飯を作った覚えなんてない。目を丸くする琴音の顔にはハッキリとそう書いてあった


「琴音からすれば楽しみと言われるほど美味い弁当を作った覚えはないかもしれない。だけどな、俺は琴音の飯があるからこそ怠い、めんどい学校も楽しく登校出来るし多少辛い事があっても我慢できるんだ」

「で、でも、私は恭くんが飛鳥ちゃんが子供返りした時に何もしてあげられなかったよ?」


 飛鳥の子供返りはこの場にいる誰にも非はない。非があるとすれば神矢想子ただ一人で彼女が気に病む必要など皆無だ


「関係ねぇよ。当事者の飛鳥は当然の事ながら教師って立場の藍ちゃんやセンター長は表立って行動出来なかった。生徒である由香や状況を知らない零と闇華だって心配して飛鳥にずっと付いてた。心の支えにはなってたが、あくまでもそれは飛鳥のだ。俺の心を支えていたのは琴音、お前だ」


 もっと言うなら琴音を拾ってなきゃ今頃俺は不健康な生活を送っていてもおかしくなかった。特に昼


「そ、そう言ってくれるのは嬉しいけど、わ、私は肝心な時に何も……」


 琴音は家にいる事が多いから学校で何が起きてるか、俺の身に何があったかを知るのは一番遅い。でも、零達同様、心の支えになっているのは事実だ


「いいんだよ、俺の側にいてくれればな。そんな琴音を俺は心の底から愛してるんだから」


 俺は琴音を抱きしめ、頭をホールドすると手櫛の要領でそっと撫でる


「で、でも、わ、私は失敗ばかりで……」


 自己肯定感が低いのも考え物だが、この期に及んでまだ抵抗するのかよ……


「失敗してもいいだろ。つか、失敗しない人間なんていねぇ」

「で、でもでも!」

「でももストもねぇよ」


 俺はホールドしていた琴音の頭を離し、その手を額へと移動させ、前髪を上げ、額へそっと唇を付ける


「えっ……?」


 弁当を絶賛した時同様、琴音は目を丸くした


「まぁ……なんだ?いつも頑張ってくれてる琴音へ俺からのご褒美だ」


 恥ずかしさで耐え切れなくなった俺は彼女から顔を逸らし、頭を掻き、視線を琴音へ移すと……


「ご、ご褒美……」


 と呟いて零達と同じ状態になった



 琴音が座り込み、勝ちを確認し、東城先生の前に移動すると……


「恭ちゃん……」


 これから自分がされる事に胸を躍らせているのか熱い視線をこちらへ向ける東城先生がいた


「お待たせ藍ちゃん」


 零、闇華、琴音とデコとはいえ女性にキスをするのは恥ずかしい。その上、三人の女性へ歯の浮くような台詞と共に愛してるって言ったんだ。まともな精神の持ち主だったら気絶モンだ


「う、ううん、待ってないよ」


 拭いきれない羞恥心を残したままだが、この後に由香、真央、茜が待ち構えていて時間を取られるわけにはいかない。東城先生は見ての通りクールな女だ。零や闇華、琴音みたいに伏線を張るだなんて事をすると逆効果で彼女の場合、ストレートに自分の思いを伝えた方が効果的だったりする


「ならよかった」

「う、うん……」


 いつもはクールな彼女が今に限っては恋する乙女みたいになってるのはどうにもやりづらい……


「藍ちゃん、いつもは恥ずかしくて口には出さないけど、感謝してる。担任としての東城藍にも同居人としての東城藍にも。側にいてくれてありがとう」

「い、いきなりだね。私にも零や闇華、琴音みたいに当たり障りのない話をしてから確信に迫ってくると思ってたよ」


 恋する乙女モードだった東城先生が一気に普段通りに戻る。若干驚いてるようにも見え、俺が彼女の立場だったら同じ事を思うだろう。他の人間にやったらいきなり感謝されても……と戸惑い、何かあるのではと勘ぐられてしまっても仕方ない。クールな東城先生だからこそ可能な作戦なのだ


「クールながらも真っ直ぐな藍ちゃんには同じように真っ直ぐに自分の気持ちを伝えた方がいいと思ってこうした。それに、日頃ダメな部分を散々見せてるんだ、今更取り繕っても意味ないだろ?」

「ダメだとは思ってないよ。例えダメなところがあったとしてもその部分も含めて恭ちゃんが好きだから」


 さすがに不登校や高校中退者を主に受け入れてる学校の教師だけあってネカティブ発言への返しが上手い


「それはそれで照れるな」

「今更だね。私と恭ちゃんの仲でしょ?」


 俺と東城先生の仲か……確かにその通りだ


「だな。だったら遠慮はいらねぇよな?」

「うん」


 遠慮しなくていいならさっさと言うに限る


「それじゃ遠慮なく言わせてもらうけど、教師東城藍には感謝してっけど、女性として見るなら俺は藍ちゃんを愛してる」

「うん……」


 零や闇華、琴音とは違い、愛してると言われても顔色一つ変えない東城先生。俺が何を言うのか予め予想してるのか?それならそれで次の手を使うまでだ


「藍ちゃん」

「何?恭ちゃ────」


 東城先生が言い終える前に俺は彼女の前髪を上げデコに唇を落とした。だが、顔色どころか表情一つ変わる様子はない


「やっぱ藍ちゃんはこの程度じゃ満足しないか……」

「うん。愛してるとは言われなかったけど、ちゅきーって言われてたくさんキスされてたからね」


 東城先生の話に出てくる俺が何歳の俺なのかは置いといて、彼女が顔色一つ変えなかった理由は今の話で理解した。幼い頃の延長戦だと思えばキスされた程度の認識しかないわな


「ガキの頃と一緒にすんな」

「えっ────?」


 俺は東城先生の腕を掴み強引に抱き寄せると彼女の耳元へ顔を近づけ、そして────


「藍、お前は俺のモンだ。ずっと側にいろ」


 と一言囁いた。顔色一つ変えなかった東城先生もこれには参ったようで……


「は、はいぃぃぃ……」


 恍惚の表情でその場にへたり込んだ

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