高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

俺の決断は周囲からすると驚きを隠せないようだ

公開日時: 2021年2月5日(金) 23:29
更新日時: 2021年3月15日(月) 13:41
文字数:4,979

「お前を撃ったの俺なんだけど文句あんのか?」


 俺は不意打ちを食らって大層怒ってらっしゃる犯人の前に出た


「お前かぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 俺が名乗り出た途端にブチ切れるは犯人の男。もしかしなくても情緒不安定?


「俺の手に持ってるモン見て聞いてんならアンタはバカだな」


 犯人の男が持っているのは包丁。コイツが来た時の状況は知らないし、別に興味もない。にしたってよくもまぁ、包丁一本で強盗なんてしようと思ったな。あと、由香は何で捕まったん?


「おちょくってんのか! クソガキ!」


 おちょくられていると思ってるなら自分がそうされる覚えがあるって事だ


「おちょくってるな。完全に」


 高校生……それもつい三か月前までは中三だった奴におちょくられる大人というのは職業や肩書関係なしに惨めというか哀れというか……


「人質がどうなってもいいのか!!」

「ひっ! た、助けて……」


 男は怯える由香の首筋に包丁を向ける。おちょくったはいいが、このままだとヤバいな……怒りで何を仕出かすか……


「人質を殺すとお前は確実に取り押さえられんぞ? それでもいいのか?」


 由香には微塵も興味はない。死のうが生きようが俺にとってはどうでもいい事だ。しかし、教師や他の生徒に余計なトラウマを植え付けるのと癪だが親父達を悲しませるわけにはいかない


「ちっ……このクソガキ……」


 男は忌々し気に吐き捨てる。コイツからすると俺は完全にクソガキだ


「クソガキで結構。つか、そのクソガキに不意打ち食らってブチ切れてるのアンタなんだけどな」


 いくら何でも不意打ちでブチ切れるだなんて気が短すぎる


「俺ぁな! ガキにおちょくられんのが一番嫌いなんだよ!! それより! さっさと金詰めろや!! 人質殺されてぇのか!!」


 痺れを切らした男が叫ぶ。星野川高校に奪えるほど金なんてあったのかと思い事務担当の席を見ると金を詰めている生徒と教師の姿が。この学校は思ったより金持ちらしい


「はぁ……」


 高校の金を狙う犯人を見て俺は溜息しか出ない


「何だよ!! 何なんだよ!! その呆れたような溜息は!!」

「まぁ……何だ? 俺を人質にすればこの学校の十倍は金が盗れるなと思って」


 祖父母の地位や懐を自慢するわけじゃない。が、少なくともこの学校の十倍は盗れるだろう。何しろ爺さん会長、婆さん理事長。男がいくら要求したのかは知らんけど、星野川高校からむしり取るよりも倍額以上は盗れる


「金の額はともかく、お前みたいな冴えないクソガキなんて人質に取るか! 冴えなくても抵抗されると面倒だからな!!」


 この男さっきから失礼じゃない? 人の事冴えないとか酷くない? 人質にするなら男よりも女ってのには同意するけどさ


「まぁ、うん。冴えないって部分は置いといてだ。そんなアホみたいな女を人質に取るよりかは俺の方が要求する場所によってはこの学校以上の金が手に入ると思うぞ? つか、何で学校なんて襲撃したんだ? ついでに強盗してまで金を得ようとしている理由も教えてくれると助かる」


 ここが銀行だったら強盗犯に襲撃した理由も強盗してまで金を得ようとしている理由も聞かなかった。が、コイツは別だ。女子高生や女性教師目当てではなく、金目的で学校を襲撃してきた理由に興味が湧く


「そんなの金が欲しかったからに決まってるだろ! ここを襲ったのは簡単に金を奪えそうだと思ったからって理由だけどな!」


 熱い奴ならここで働いて金を得ろ的な言葉を強盗にぶつけて殴り掛かるんだろうな……俺はしないけど。それに、この強盗は金を奪えそうだとは言ったが大金とは言ってない。奪えれば金額なんて関係ないと言っているようにも思える


「あ、そう。金が欲しいなら働けばいいだけの話じゃないのか? 強盗なんてリスクを犯すより額に汗して働いた方がいいと思うぞ?」


 働いた事もなく、中学時代まで引きこもりだった奴が何を言う?と思われても仕方ない。普通の人間は仕事や学校に行ってる間、必要最低限の家事だけして後は引きこもるって生活を送っていた。俺が言っても説得力はないだなんて百も承知だ


「上司のミスを押し付けられてクビになった挙句、その上司が余所の会社に根回ししたせいで再就職出来ず家賃どころかその日の飯だって食えるかどうか分からない状態なんだよ!! 簡単に働けとか言ってんじゃねぇよ!! クソガキ!!」


 男が強盗なんてしてる理由は自分の遊ぶ金欲しさではなく、生きていく為か……それにしてもミスを押し付けた挙句、他社に根回しまでして再就職すらさせないだなんて世の中クソみたいな上司もいたもんだ。俺が爺さんの会社を継いだ時にはそんなクソにならないように気を付けないとな


「確かにアンタが言う通り俺はクソガキだ。中学の時は部屋に引きこもってたしな」

「はっ、お笑いだな! 中学時代に引きこもりだった奴が働けだなんてバカも休み休み言ったらどうだ?」


 俺の過去を嘲笑う男と顔を背ける人質の由香。二人の反応は大局的。由香の方はどうでもいいとしてだ、この男には警察に捕まる以上の屈辱を味わってもらおう


「そうだな。アンタの言う通りだ。ところでアンタは家族いんのか?」


 俺の質問でこの場にいる全員の表情が変わる。教師・生徒は理解不能といった顔をしており、強盗は目を見開いていた


「は? そんな事お前に関係あんのか? クソガキ」

「関係はないさ。ただ知りたいと思っただけだ」


 コイツに家族がいようといなかろうと俺には何の関係もない。所詮は他人だ。コイツが家族持ちだったら後で困るのは家族だ。独り身だったら困るのは強盗をしているコイツ一人


「だったら答える必要なんてないだろ? バカみてぇな事聞くなクソガキ」


 本当にバカみてぇだ。金が手に入ったらトンズラしてしまう人間に家族がいるのかどうか聞くだなんて


「だな。金を詰め終わるまでの暇つぶしにと思ったんだが……話題を間違えたか」


 飛鳥達は未だに金を詰め終わる気配がなく、ちょっとした暇つぶしにと思ったが、どうやら話題を間違えたようだ。仕事を紹介するとでも言えばよかった


「ったりめぇだ! 家族がいるっつったら仕事でも紹介してくれんのか? あ? クソガキのお前が!」


 家族の話題を出したのは間違えだが金の話には食いついて来たから結果オーライだ


「そうだな。クソガキの俺がアンタに仕事を紹介してやるよ。何ならついでに住む場所も紹介してやろうか?」


 俺が考えた強盗の男に味合わせる屈辱はクソガキと罵ってきた俺に雇われるというある意味では絶望からの脱却。ある意味ではクソガキに雇われるという滑稽な結末


「バカじゃねーのか? お前みたいなクソガキに俺と家族の住まいまで用意出来るわけねーだろ!」


 それが用意できちゃうんだよねぇ~


「そうだな。俺の言葉だけじゃ信用できないだろうな」

「だろ? それとも何か? 将来社長になって雇ってやるから強盗は止めろ! ってか?」


 男の言う通り順当にいけば将来俺は爺さんの後を継ぐ。それをこの場で言う必要はない。となると……爺さんに電話するしかない。これからの事を考えるとそうだな……俺の家にいつもいてくれる運転手が必要になる。


「強盗はまぁ……うん、後で俺がどうにかする。それより、電話していいか?」

「「「「「は?」」」」」


 この場にいる全員の目が点になった


「ああ、警察じゃないから安心しろ。つか、警察なんて呼んだら手に入りそうなものも手に入らなくなる」


 俺は全員の目が点になっているのを気にせず続ける。男を警察に突き出す?そんな事はしない


「「「「「はい?」」」」」


 全員事態がまだ飲み込めてないみたいで何より。生徒と教師には後で謝るとして、先に電話だな


「事態が飲み込めてないようで何より。あ、今から電話するから静かにしててくれよ」


 事態を飲み込めてない連中を全力全開で放置し、俺はズボンのポケットからスマホを取り出し、着信履歴から爺さんの番号に電話を掛けた


『どうしたんじゃ? 恭?』


 1コールもしないうちに爺さんが電話口に出てきた。トイレの時とは違い普通に出てくれて何より


「ちょっと相談があって電話したんだけどよ、今平気か?」

『大丈夫じゃが、珍しいのう。恭が儂に相談を持ち掛けるとは』

「ああ、俺もそう思う。だが、これは俺の一存では決められなくてな」

『ふむ、話を聞こう』

「いやー、爺さんに言われた物見つけて戻ったら強盗がいてよ、んで現在由香を人質に金奪おうとしている最中。で、俺はその強盗にクソガキって言われた」


 これだけ聞くと同級生に『○○って言われたぁ~』って泣いて親にチクっている情けない子供だ


『ふむ。まぁ強盗からしてみればお前はクソガキじゃな』


 お爺様? 実の孫に向かってクソガキはないんじゃないんですか? 否定しないけど


「クソガキは認める。本題はこっからなんだけどよ、俺と若干約一名は学校に通う時っていつも電車使ってるんだわ」

『じゃろうな。熊外駅から女将駅までなら駅一つ、電車じゃと三分程度で着く。それがどうかしたかの?』

「毎度毎度の電車通学って金の方がバカにならない。で、これから夏本番だろ? すると海とか行きたくなるだろ?」

『まぁのう。その時は儂も一緒に連れてって欲しいくらいじゃ』


 このジジイが海を純粋に楽しむとは思えないのは置いとくか


「それは都合が合えばな。で、本題なんだが、俺も自分の家に車の運転が出来る奴が欲しいと思うんだよ」

『儂としては恭の好きにすればいいと思うぞ? どの道儂の後を継がせる為に自分で社員くらい雇えといつかは言うつもりじゃったしな』


 この爺さんは放任すぎる。それでいいのか? 会社のトップ


「え? そうなの? じゃあ何? 良さそうな奴いたら拾っていいの?」

『拾うのは構わん。じゃが、拾ったら一言報告をくれ。その者をどんな目的で拾ったか分からん以上こっちとしては困る。特に今は友人達と共同で事業をしている最中じゃ。恭が拾ってきた者達にはモニターとして働いてもらう予定じゃからな』


 お爺さん? それ初耳なんだけど? もしかしなくても零達が持ってるスマホも実はモニタリングするためにってオチじゃないよな?


「初耳の予定は聞き流すとして、拾うのは俺の自由なんだな?」

『ああ。どうせ住む場所はお前の家じゃ。好きにせい。用がそれだけなら切るぞ? 今から婆さんの水着ショーを見なきゃならんのでな』

「あ、ああ……また何かあったら電話する……」


 電話を切り、スマホをズボンのポケットへ戻す。何だろう? 俺は今、強烈な吐き気に襲われているよ……っと、今はそれどころじゃないか


「オイ! 電話は終わったか?」


 男は電話が終わるまで律儀にも待っていてくれた。これで強盗なんだぜ? ビックリだよな?


「ああ。アンタの運命が今決まったよ。さっきの電話でな」

「「「「「はい?」」」」」


 全員が目を点にするリアクションというのは何度見ても面白いな


「だから、アンタの運命が決まったんだって!」

「バカ言ってんじゃねーよ!! お前みたいなクソガキに俺の運命を決められて堪るかよ!! 人質ぶっコロされてぇのか!!」


 声を荒げ、由香の顔に包丁を近づける男と涙を流しながら悲鳴を上げ、怯える由香。俺の言ってる事は確実に状況を悪化させている


「まぁ待て。人質ぶっコロす前に質問がある。それに答えてから人質殺してくんね?」

「人質を助けてぇとは思わねぇのか?」

「ぶっコロす宣言してる奴が何言ってんだか。それに今からする質問に答えたらお前は人質を殺そうだなんて思わなくなるって事だけ断言してやる」

「上等だ! 質問に答えたら俺は人質を殺す! 何でも聞けや!!」


 はい、生還フラグ立ちました


「なら遠慮くなく。アンタ、二種免持ってるか?」

「は? いきなり何聞いてんだ?」

「いいから答えろ。二種免、持ってんのか? 持ってねぇのか?」

「も、持ってる……それがどうかしたのか? 質問に答えたから人質殺していいんだよなぁ?」


 ニタァと下品な笑みを浮かべる男。由香は『こ、殺さないで……』と泣きながら懇願している。これで俺に勝ったつもりでいると本気で思っているなら滑稽だ


「人質殺すのはいいとして、とりあえずこれだけは言わせてくれ」

「あぁ? 何だよ? やっぱり人質は殺すなってなら手遅れだぞ?」


 誰がそんな事言うか


「人質を殺すなとは言わねーよ。俺が言いたいのはアンタを採用するって事だ」

「「「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」」」


 はい、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? の大合唱頂きましたー

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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