高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

何もかも面倒になった俺はかくれんぼを終わらせた(後編)

公開日時: 2021年3月7日(日) 23:39
更新日時: 2021年3月12日(金) 23:42
文字数:4,145

 クソうるせぇ同級生一同を黙らせた自称・世界一の平和主義者である俺は次に教師陣をどういぶり出してやろうか考えた。霊圧を使うのは決定事項だが、如何せん、俺はまだ自分の持ってるモノを完全には扱い切れてない。ホラゲに出てくる幽霊みたいに人間を浮かび上がらせてってのが出来りゃいいんだが……


「来なきゃ押し潰すって脅せばいいか。他の連中の手前派手な事できねぇし」


 一部事情を知ってる連中はともかく、その他大勢の連中は俺が激怒し、その威圧感で身体が重たくなった。と勘違いしてる節がある。零達を除く同級生達にはそのまま勘違いしたままでいてほしい。余計な事をして神矢想子の時みたいに化け物呼ばわりされたら敵わん。俺はスマホを取り出すと琴音の番号に掛けた


『も、もしもし……』

「おう。結論は出たか?」


 ワンコールしないうちに出たのは褒めてやる。しかし、彼女の声に覇気がないのは何でだ?


『ご、ごめん……まだ出てない……』

「そうか。別に急がなくていいぞ。つか、もう話し合う必要すらない」

『え……?』

「今から五分以内に隠れてる連中全員食堂に集合な。もし来なかったり、遅れたりしたら……押し潰す。もちろん、今この段階で拒否しても同じだ」

『お、押し潰す!? きょ、恭くん!? いきなり何を言うの!?』


 電話越しに琴音が焦っている様子が目に浮かぶ。何も知らない人間ならコイツ何言ってんだ?と鼻で笑って流す。だが、彼女は事情を知る人間。俺がこの場から動く事なく自分達を押し潰せるのを知ってる。出来ると知ってるからこそ慌てふためいてる。電話の向こうから『東城先生、灰賀君が五分以内に食堂に来ないと押し潰すって言ってますけど!?』という琴音の声と『う、嘘でしょ……』という藍の落胆にも似た声がした。


「精々焦ってくれ」


 俺は琴音と藍の焦り顔を思い浮かべながら電話を切り、早織と神矢想花の方へ視線をやった


『い、居場所が分からない人に霊圧をぶつける方法は相手の顔を思い浮かべるだけでいいんだよ!』

『そうよ! ひ、一人思い浮かべて霊圧を飛ばしたら後はその場に広げるイメージをすればいいだけよ! お、お風呂にお湯を溜めるイメージよ! 解かるかしら!?』


 何も言ってないのによく俺が行方不明の琴音達に霊圧当てたいと考えてるって解かったな。もしかして内助の功ってやつか?などとバカな考えは捨ておくとして、琴音の顔を思い浮かべて霊圧を飛ばして……後は、そこから広がるイメージでその場にいる全員に広げる……量は……無難に瀧口達に当てたのと同じでいいか。



 琴音達に霊圧を当ててから少し経ったかな?って頃。俺は不機嫌オーラ全開で昨日と同じ席に座り、琴音達の到着を待っていた。んで、その間、同級生達の様子を横目で窺うと……


「灰賀君って普段あんまり人と関わろうとしないからてっきり怒らないものだとばかり思ってたんだけどさ~、怒ったらとマジ怖いよね~」

「それな。入学式ん時はコイツ根暗くせぇからブチギレても大した事ねぇとばかり思ってた」


 本人がいる前にも関わらず堂々と陰口を叩いていた。チラホラと聞こえた陰口はどれもほぼ同じ内容。俺が怒った事が意外だったっていう声と大人しい奴が怒ると怖い。っていうありふれたものだ。最初のギャルとチャラ男は海に沈めるとして、灰賀恭という人間をよく知らん奴の評価はどうでもいい。瀧口達や零達のように俺をよーく知ってる人間はというと……


「こ、これからは灰賀君を怒らせないようにしようか……」

「そ、そうですわね……まだ死にたくありませんものね」

「アイツの機嫌が直ったらみんなで謝んない?許してくれるかは別としてさ、命乞いだけでもしてみた方がよくない?」

「あ、アタシ達もそうしましょう」

「そうですね……」

「恭クン、許してくれるかな……」

「あたしなんて中学時代の贖罪もしなきゃだから確実に殺されそうだよ……」


 全員苦笑を浮かべてはいるものの俺を鬼あるいは悪魔扱い。お前らの中で俺はあれか?殺人鬼か何かか?


「俺は鬼か悪魔かっつーの……」


 で、琴音達を待ってる間の暇つぶしに同級生達が叩いてた俺の陰口に聞き耳を立ててたんだが、当の待ち人は一向に来なかった。この後は盗み聞きしかしてないから少し時間を飛ばして、琴音達がここへ到着した後の話をしよう



 食堂のドアが勢いよく開け放たれた。現れたのは額に汗を滲ませ、息が上がっている琴音達。同級生達の中から短い悲鳴や驚嘆の声が聞こえた。この時点で何分待たされたかは数えてない。五分でここへ来いとは言ったが、実際、時間はどうでもよかった。俺の目的は彼女達をいぶり出し、バカじゃねぇの?とボロクソに言う事だからな。当ててた霊圧も増減は俺の気分次第。なんつって藍以外の奴らを連れ出したかは知らんが、よくやったと褒めておこう。


「よぉ、遅かったな」


 俺は不機嫌オーラを纏ったまま席を立ち、息を整えてる琴音達の元へ向かった。琴音と藍の事情を知る組は表情が恐怖一色に染まり、それ以外の約一名を除き恨みが籠った視線をこちらへ向ける。レクとはいえ、勝手にいなくなった教師連中を許さないと言うつもりは全くない。他人に依存してないからな、誰がどこでいなくなろうと俺にはどうでもいい。だが、連絡手段を取り上げといて探せというのは気に食わなかった。


「とりあえず正座な」


 俺が正座を言いつけると真っ先に従ったのは琴音と藍……それからオマケのアイツ。しかし、他の教師は……


「冗談じゃない!! どうして俺達が正座しなきゃならないんだ!!」

「そうよ! 私達が正座する理由なんてないわ!! そもそも! 東城先生達が大変な事が起きたって言うから急いで来たのに何も起きてないじゃない!!」


 事情を知らない男性教師と女性教師が抗議の声を上げた。女性教師の口振りから察するに不満一つ漏らさずに正座したアイツ含む三人は藍から大変な事が起きたと言われたようだ


「うるせぇ。黙って正座しろタコ」


 俺は二人がグタグタ言う前に20キロ相当に値する量の霊圧を当てた。するとどうだろう?彼女達は文句を言わずしてその場に座り込んだではないか。同級生に10キロ相当の霊圧を当てた時も思ったが、人間っていきなりペットボトル七本分の重さが身体に圧し掛かると咄嗟の反応が出来なくなるんだな。


「さて……正座してない二人が正座したら始める。っつー訳で正座してない文句発生マシーン二台。さっさと正座しろ」





 こんな感じで俺は教師……というか、駆け込んで来た大人達を正座させたわけだ。最初は文句発生マシーン二台もどうして自分達が正座しなきゃならないのかとピーピーうるさかったが、そこは霊圧ブチ当てて黙らせた。ちなみに幽霊二人は居場所の分からない琴音達へ霊圧を当てる方法を言ってからはずっと黙ったままだった。で、現在────


「最初にこんなバカげたレク提案したのはドイツだ?さっさと吐けコラ」


 俺は仁王立ちで正座する大人達を見下ろしていた。


「きょ、恭はそれを聞いてどうするの?」


 藍が怯えた目で俺を見つめながら尋ねてきた。どうするって……どうするんだろうな?何も考えてなかった。だが、正直に無策でしたと言う俺ではない。


「質問してるのは俺だ。アンタらは黙って質問に答えろ」

「で、でも、きょ、教師の立場から言わせてもらうと誰がレクを考えたかは言えないよ……」


 そう言って藍は目を伏せる。俺はこの一言で本格的にいろんな事がめんどくさくなってきた。そっちがその気なら俺にも考えがある


「そうか。言えねぇのは仕方ねぇよな。うん、仕方ねぇ。誰がレクを提案したか教えてくれなくていいからよ、他の連中にスマホと充電器返してやってくんね?それくらいなら出来んだろ?」


 今回のレクを誰が提案したものかは言えずともスマホと充電器の返却くらい出来るだろ。またかくれんぼをするつもりならこの程度は認めてもらわなきゃ困る。だが……


「ごめん、それも……出来ない……」


 藍のこの一言で俺は何もかもどうでもよくなった。スクーリング?勝手にやれ。スマホを取り上げた理由?もうどうでもいい。他の生徒との交流?知るかンなモン。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」


 俺は深い溜息を吐き、食堂を出ようと出入り口へ向かおうとした


「きょ、恭クン?」


 歩き出そうとしたところで飛鳥に呼び止められた。彼女の声が震えているが気にしない。だが、無視すると後々面倒なのは目に見えている。我が家の同居人ってどうしてこうも面倒な奴しかいないんだと内心毒づくが、類は友を呼ぶ。俺が面倒な奴だから自ずと周りに面倒な奴が集まるんだろうなと自分に言い聞かせる


「んだよ?用がないなら行っていいか?電話しなきゃならないところがあるんだ」

「う、うん……」


 俺は飛鳥の方を向く事なくぶっきらぼうに返すと食堂を後にし、部屋へ戻った。藍と琴音が俺の名を呼んでいたが、無視だ無視。気分的にも空気的にも返事をしないほうが俺の精神衛生的な意味でよさそうだしな




 部屋に戻ると俺はそのままベッドに寝ころんだ。あの人に電話はしないといけないとは思っている。思ってはいるものの、めんどくささの方が勝ってしまう。なぜか?今の俺にあの人のテンションに付き合うだけの気力がないからだ


「面倒だしこのまま寝ちまうかな……どうせ教師連中はかくれんぼ再開しようだなんて言い出さないだろ」


 俺がどうのじゃなく、教師連中の気持ちの問題だ。今日はスクーリング二日目。ネタを用意すると言った意味じゃまだ何とかなるとは思う。今更どんなネタを用意するんだ?って話なんだけどな。んで、ネタの話はどうでもいいとしてだ、このレクは多分教師連中が思い付いたものじゃない。あの人の指示なのは間違いなさそうだが、藍達教師陣に同じ事をしろと言っても……出来るな。姿眩ますだけだし。俺がどうのとか気持ちの問題関係なかったわ。すまん、忘れてくれ


『きょう~?この後どうするの~?』


 ぼんやりと天井を眺めてると早織が顔を覗かせた。食堂にいた時はビビって声掛けてこなかったのに……


「寝る。今日は疲れた。あの人に電話すんのも教師陣から詳しい話を聞いた後でボロクソ言うのも早織に霊圧関係の話を聞くのもめんどくせぇ。今日はもう寝る」


 そう言って俺は目を閉じた。今日一日大人の都合に振り回されてばかりだな……

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