高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

天然入ってても教師だと難しい部分があると思う

公開日時: 2021年2月5日(金) 23:34
文字数:3,891

 我ながら意地悪な質問をしたと思う。


「え、えっと~、今日はお休みの日だから飲み会の為に集まったんじゃないかな?」


 今日が土曜日だというのを考慮すればこんな答えが返ってくる。当たり前の話だ。ただし、その答えは今日が休日だからこそのもの。これが平日だったら何て答えた?飲み会の為?平日でも晩酌してる人はしてるけど、決定打には欠ける


「その答えは今日が土曜日だからこそ出た答え……ですよね?」

「う、うん、明日は日曜日だからお休みでしょ?だからもしかしたらそうなんじゃないかなって思って……」


 母ーズが飲んでたのはセンター長がさっき言ったように今日が土曜で明日が日曜。つまり、二日酔いになっても一日の休みがあるからだ。大人ってよく解からない。それはそうと……


「それはあの飲んだくれ母ーズ単体の事情です……申し訳ありません、質問を変えます。ここにいる東城先生と飛鳥を除く三人……二人は俺と同じ歳で一人は成人しています。何でここにいると思います?」


 俺は零・闇華・琴音を指してセンター長に問いかける。彼女達は何故ここにいるのかと。さて、センター長は何て返してくる?何か駆け引きみたいになってんな……まぁいいか


「え、えっと……三人共灰賀君の親戚でたまたま遊びに来てるとか、下宿させてもらっているとか?」


 センター長の答えは前者がハズレ、後者はハナマルをやるのは無理でも三角をやってもいいものだった。


「惜しい! 下宿……まぁ、下宿っちゃ下宿ですけど」

「え~! 下宿で惜しいんじゃ分からないよ~!」


 下宿以上の答えが思いつかなかったのか、センター長は白旗を揚げた。確かに下宿で惜しいなら答えに困るわな。彼女達の事情を知らない人としては


「あんまり引き延ばすのも面倒なんで言いますが、さっき飲み会してた母親とセンター長が仲良くなった娘、ここにいる東城先生を除いた女子達は経緯や状況は違えど皆一様に金がなく、住む場所すら危うかった人達です」


 俺は状況を説明し、その後は言わなかった。拾ってきたなんて言ってみろ、人さらいとか騒ぎ出してもおかしくない。それを見越して言わなかったのだが、彼女……俺が最初に拾った女子は違った


「恭、その人と話をさせてもらえないかしら?」


 俺が最初に拾った女子。津野田零。彼女が大人しくしているはずがない。


「か、構わねぇけど、何話すんだ?」


 今はヤンデレよりのツンデレ。ツン1:ヤン9という限りなくヤンデレに偏りつつあるツンデレの彼女が大人、教師としての尊厳を守りたいが為に自分が現在置かれている状況を話そうとしない彼女に何を語る?


「別に。アンタと会った時にアタシが置かれていた状況を話すだけよ。いいでしょ?」


 零がする話は俺が今まで彼女達を思って黙っていた事。他人である俺が話していいものかと言いあぐねていた事だった


「まぁ、当事者だった零が話すってなら俺は止めない。好きにしろ」


 零はもちろん、闇華、琴音、飛鳥に双子。彼女達の家庭事情を自身が話すんだ。俺に止める権利なんてない


「好きにさせてもらうわ」


 俺は席を立ち、零と交代。闇華達の元へ


「零の話を聞いてセンター長は何を思うか……見ものだな」


 闇華達の元へ行くと俺は一言呟いた。第三者である俺が零や闇華、琴音の置かれていた状況を話したところで信憑性に欠ける。本人から話をされりゃ少しは信じるだろ


「恭君、あの人って頭が固いんですか?」


 腰を下ろしてすぐ闇華からの質問が飛んできた。今話した感じだと天然系(?)の割に融通は利かない。頭が固いかどうかと聞かれたら回答に困る。だから俺は────────


「さぁな。あの人とは学校で関わる事なんてあんまねぇから分かんねぇ」


 学校での関わりを踏まえ、自分が抱いた印象をありのまま答えた


「私が見た感じですと口調は恭君のお母さん、早織さんに近しいものがありますが、考え方と言った部分では凝り固まったような感じが……」

「そうか?まぁ、真面目な父、天然系の母に育てられりゃ口調は母に、考え方は父に。逆も然りだが、その辺はどうなんだろうな」


 自分に当てはめて考えてみると霊圧が強いのはお袋に、親父要素は……思いつかない。


「私に聞かれましても……」


 闇華の場合は両親がいない。だから両親のどちらかに似るという感覚がよく理解出来ないんだろう


「だな。とりあえず成り行きを見守るとしよう」


 俺は零の方へ視線を向け、喧嘩だけはしないでくれよ。そう祈るしかなかった



「さて、アンタが恭の通う学校で一番偉いってのはさっきの話で分かったわ」


 自己紹介もせずいきなりだな。零


「一応、これでもセンター長だからね~。灰賀君の通う学校じゃ一番偉いのだよ!」


 そんな無礼な零に怒りを露わにする事なく、東城先生を弄る時の口調で胸を張るセンター長。さすがに通ってきている生徒が一癖も二癖もある連中だと多少の無礼はスルー出来るってか?星野川高校の生徒と大して関わりないけど


「ふーん、まぁいいわ。アンタが何で駅近で家賃タダなんて普通じゃあり得ない物件を求めたかは知らない。恭が事情を話すように言っても大人として、教師としての尊厳なんて下らないものの為に黙っていてアイツもアイツで無理に聞き出そうとしなかった。アタシが家主だったら強引にでも聞き出してたところよ」


 高圧的な態度でセンター長の言ってた事を一蹴する零の姿は心なしか某団長に見える


「下らなくなんてないよ~! 君はまだ子供だから理解出来ないだろうけど、大人になると法律とか以外にも守らなきゃいけないものってたくさんあるんだよ~!」


 両手をワタワタさせ、反論するセンター長。うん、子供が駄々こねてるようにしか見えない


「そういうものなのかしら?アタシには理解出来ないわね。何しろ父親がこの上なく情けなかったから。無様な姿の大人や情けない大人なんて見飽きてるわ」


 零の口ぶりから察するに彼女の父親は彼女が幼い頃から借金まみれだったのだろう


「こら! お父さんを情けないなんて言っちゃダメだよ~!」


 幼い子供を叱る母親みたいな態度で零を叱るセンター長。しかし────────


「アタシが小さい頃から借金まみれでつい二か月前にその借金を娘であるアタシに押し付けて自分は失踪するような父親を情けないって言って何が悪いのかしら?」


 零はセンター長のお叱りをものともせず、態度を崩さず言った


「それでも、お父さんの事を悪く言ったらダメだよ~!」


 センター長は指導しているつもりなんだろう。生憎とその指導は零には全く効果がなかったみたいだがな


「アタシの父親なんだからどう言ったっていいでしょ。それより、アタシがここにいる理由を話してもいいかしら?」


 全くの初対面であるセンター長から注意されるのに嫌気が差したらしい零は話を本題へと切り替える


「そうだね、君はそれが目的で灰賀君と代ったんだもんね! いいよ!」


 センター長もセンター長でさっきのやり取りで零の家庭環境をある程度察したのか、これまでの態度を崩さない


「さっきのやり取りで解ってると思うけど、アタシは父親の借金が原因でここに来た。正確に言うなら父親に借金を押し付けられ、帰る家もなくなってこの建物の前で途方に暮れてたところで恭に拾われたが正解ね」


 もっと正確に言うなら家の周辺の散策から帰って来たところでお前から一方的に絡まれたが正解だけどな!


「そっか~、大変だったんだね~。でも、灰賀君って偉いね、見ず知らずの女の子を簡単に拾っちゃうんだから」

「そうね。アタシもそう思うわ。初対面で見ず知らず、名前も知らない女の子を家に上げた挙句、そのまま住まわせるんだから」


 そりゃ、デカすぎる、広すぎるでしたからねぇ! 一人で住むには持て余すんですよ! 部屋とか! 部屋とか!


「それで?君は何がいいたいの?」

「恭ならアンタの全てを受け入れてくれるわよ?アンタの事情を全てバカにしたりしない。家もお金もなかったアタシをアイツは何も言わずに受け入れくれた。アタシが言いたい事はそれだけよ」


 零は言う事を言った後、立ち上がり、こちらへ戻って来た。


「零ちゃん、お疲れ様です」


 戻って来た零にいち早く労いの言葉を掛ける闇華。彼女は本当にマメだな


「ありがとう、闇華。でも、次はアンタの番よ?」

「ええ、分かってます」


 闇華は立ち上がると俺に一言行ってきますと言ってセンター長の元へ。それから順番に琴音、東城先生、飛鳥と話をし、そして────────────


「えっと……最後は俺ですか?」


 なぜか俺の番が回ってきてしまった


「当たり前でしょ! 家主なんだから!」


 最初に交代した零が鼻を鳴らしながら言う。


「恭君なら出来ますよ」


 俺の肩にポンと手を置き聖母のような笑みを浮かべる闇華。


「私を救ってくれた恭くんなら大丈夫だよ! ガンバ!」


 目の前で握りこぶしを作り、応援してくれる琴音。


「私の家族を救ってくれた恭クンに救えない人なんていないって!」


 俺をヒーローみたいに言う飛鳥。


「恭ちゃん、武田先生をお願いね?」


 不安気な表情の東城先生。そんな彼女達に俺は……


「揃いも揃ってバトルマンガ的なのは気のせいか?」


 突っ込みを入れた


「「「「「気のせい! とにかく! 行く!」」」」」


 彼女達に背中を押された俺はセンター長の元へ


「えっと……」


 テーブルに就いた俺は俯くセンター長を前にして言葉に詰まった。


「ねぇ、灰賀君」


 俺が何を言うべきか悩んでいるところでセンター長から声が掛かる


「は、はい」


 特に悪い事をしたわけでもないのに何で俺がビビってるんでしょうかねぇ……


「先生の話、聞いてくれるかな?」

「お、俺でよければ……」


 この状況で説教なんてされるわけがない。そう思った俺はセンター長の話を聞く事にした。

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