高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

危ない妄想は自分が関わってるなら全力で止めるべきだと思う

公開日時: 2021年2月5日(金) 23:29
更新日時: 2021年3月18日(木) 23:36
文字数:4,015

 小学生の時に算数で文章問題が出たと思う。その時に言われたのがちゃんと文章を読みなさいって事だ。同じく小学生の頃によく言われたのが人の話はちゃんと聞きなさい。俺は今、小学生の頃に言われた二つの言葉の有難みを身をもって体感している


「ちゃんと学校行事に関する事スケジュール確認と先生の話を聞いておけばよかった……」


 加賀一家を拾った翌日。俺は星野川高校女将学習センターの校舎ではなく、中殿川ちゅうでんかわの河川敷に来ている。六月も中盤に差し掛かり、コートが不要なくらい太陽が照り付け、気温が上昇。後数週間もすれば海やプールが解禁され、本格的な夏が始まる


「恭クン、自業自得っしょ……」


 隣にいるのは別のクラスにいるはずの飛鳥。今日は強歩鍛錬の日であり、クラス順とは銘打ってはいるが、この学校に関して言えば言わずもがな。クラスなんてあってないようなものだ。


「せ、正論なだけに言い返せない……」


 飛鳥の言う事はド正論だから言い返せない。年間スケジュールを確認し、東城先生の話をちゃんと聞いてなかった俺が悪い。ぐうの音も出ないとはまさにこの事だ


「これに懲りたら先生の話はちゃんと聞いて年間スケジュールはしっかり確認した方がいいっしょ」

「だな。次からはそうする」


 この会話の後、俺と飛鳥は二~三言喋ったところで開会式のアナウンス。と、言っても望むに当たっての諸注意だったり、水分補給はマメにしろという当たり前の事、強歩鍛錬においてはクラス、学年関係なく友達と楽しく歩くなり走るなりしろ的な事を言われただけで終わった


「で? 何で飛鳥と由香がいるんだよ?」


 開会式が終わり、俺は一人気楽にのんびり歩く予定だったのだが、こちらにやって来た女子が二名。飛鳥と由香だ


「べ、べっつにぃ~、お、俺は恭クンが寂しがってるかなぁ~って思って!」

「あ、あたしも……」


 なんて言ってる割に顔が赤いですよ? 日差しのせいですか?


「残念ながら俺は寂しがってない。一人気楽にのんびり歩く予定だったから二人共友達と歩いていいぞ」


 女二人と一緒に歩く? いつも家にいる時は人と一緒なんだ。たまには一人にさせろ


「またまたぁ~、恭クン強がっちゃて~」


 飛鳥が俺の頬を突いてくる。強がったつもりはないんだけど?


「あ、飛鳥の言う通りだよ! 中学の頃から一人でいる事多かったけど本当は寂しかったんでしょ?」


 由香は由香で何言ってんだ? ゴールデンウィークの時にも言っただろ? 俺はクラスの連中に興味も関心もなかったって


「いや全然全くこれっぽっちも寂しいと思った事なんてない」

「「…………………」」


 由香の言った事を否定した途端に黙る二人


「えっと、用がないなら俺はもう行く」


 黙る二人を放置し、歩き……


「恭。待って」


 出せなかった。東城先生に引き留められたからな!


「な、何でしょうか?」

「昨日恭が逃げた後で誰が丸谷さんや加賀さんの事誤魔化したと思う?」

「と、東城先生、飛鳥、由香さん達です」

「うん。そうだよ。恭のお爺さんが校舎を提供してくれた人の友人で丸谷さん達と加賀さんはその人が経営する会社の社員って事で何とか誤魔化せたって昨日説明したよね?」

「は、はい……」


 俺の望みを知ってか知らずか東城先生、飛鳥、由香の三人は丸谷達と加賀が校舎を提供した人が経営する会社の社員で未来を担う高校生の為に防犯訓練の犯人役を買って出たと説明してくれたお陰で俺は質問攻めに遭う事なくこうしていられる


「じゃあ、そんな飛鳥と由香、私にご褒美をくれてもいいと思わない?」


 労働には対価を支払う。ボランティアじゃない限り当然の行為だ。


「ご、ご褒美と言われましても……げ、現状俺には手持ちがないわけでして……」


 会長である爺さんの孫だから財布に大金が入ってるかと言われれば答えは否。男子高校生が大金なんて持ち歩いていたら何に使うか分かったもんじゃない。カツアゲに遭うかもしれない。普通はそう考える。俺の場合は現状大金叩いてまで買いたいものがないから持ってないだけで


「私達が欲しいのはお金じゃなくて恭と過ごせる時間だから」


 あのー、東城先生? 貴女と飛鳥は家で好きなだけ俺と過ごしてますよね?


「えーっと……若干約二名とは割と一緒にいる時間が多いと灰賀恭は思うのですが……」


 若干約二名というのは言うまでもなく飛鳥と東城先生


「足りない。だから恭には私達と一緒に歩いてもらう。異論反論苦情は受け付けないから」


 こうして俺は強制的に東城先生、飛鳥、由香の三人と一緒に歩く事が決定した。どうせなら東城先生は生徒の見張り、飛鳥と由香はクラスで仲がいい奴と一緒に歩いてほしかった。俺を忘れてな




 東城先生達を引き連れ、傍から見れば女二人、男二人という男女比が半々だが、実際は男一人、女三人というなんちゃってハーレムパーティーで強歩鍛錬スタート……


「おかしいって」


 とはならなかった。並びがおかしい


「何もおかしくないよ。恭。普通普通」

「明らかにおかしいですからね? 東城先生? 俺が一番前で何でその後ろを東城先生達が付いてくる形になってるんですか?」


 まぁ……ザックリ前から説明するとだな、俺、東城先生、飛鳥、由香の順でRPGに出てくるパーティーみたいな並びになっている。おかしいだろ?


「恭! 日焼けは美容の天敵なの!」


 由香、外にいる時点でその言い訳は通用しない!


「自分がどこにいるか思い出してから出直してこい」


 太陽が照り付けているというのに帽子の一つも被らず屋外にいる時点で美容に気を使っているとは思えない


「恭クン! 俺は恭クンのかっこいい後姿が見たいから後ろにいるだけ! 悪いのは東城先生と由香だけっしょ!」


 飛鳥、東城先生と由香の間に挟まれてる時点で裏があるんじゃないかと思われても仕方ないからな?


「人と人の間に挟まれてる奴が何を言っても説得力がないぞ」


 強歩鍛錬開始前の飛鳥は逆らえないほどの正論をかましてきたんだけどなぁ……


「恭。早く歩いて」


 東城先生の一言で諦めた俺は無言で歩き出した。俺は将来尻に敷かれるタイプだと痛感させられたよ……トホホ……



 歩き出してから何分が経った……?どこがゴールなんだ……?俺はそれだけを考え歩き続けた。最初は会話もあったよ?でもさ、コンクリで目玉焼きが出来そうなくらい暑いと……ねぇ?会話もなくなってきますよ。現に後ろの東城先生達は……


「恭ちゃん、お風呂にする? ご飯にする? それとも……わ・た・し?」

「恭クン、私達が結婚してから初めての夜だね……」

「恭……私の事やっとお姉ちゃんって呼んでくれたね……お姉ちゃん嬉しい……」


 暑さにやられ妄想の世界へと旅立っていた。


「ダメだ……三人共妄想の世界へフルダイブしてやがる……いや、ヘルダイブか」


 ここに闇華がいなくて本当によかった。しみじみと思う


「え?きょ、恭ちゃん……そ、そんな……は、恥ずかしい……」


 恥ずかしいのは俺だ。教師が何想像してんだ?


「きょ、恭クン……そ、そこは……だ、ダメだよ……き、汚いよ……」


 汚いのは飛鳥、お前の妄想だ。俺に何させようとしてんだ?


「きょ、恭……いきなりどうしたの? お姉ちゃんに抱き着きたくなったの? ふふっ、いいよ。好きなだけ抱き着いて」


 黙れ由香。俺はいきなり女に抱き着く趣味は全くない!


「はぁ……」


 器用にも歩きながら身を捩じらす三人の妄言に突っ込みが追い付かない。コタツは人をダメにすると言うが、暑さは人の脳みそを溶かすらしい。マジで溜息しか出ない


「これが学校行事だって解ってんのか? コイツ等」


 妄想の世界にドップリ漬かっている三人を見てどうしようかと頭を悩ませる俺


「俺関係じゃない妄想だったら全力で放置しているんだけどなぁ……」


 三人の妄想に俺が出てきてないのなら全力で放置していたところだ。でも実際は俺がバッチリ出てきているこれを放っておくと俺はもれなく担任に手を出し、同性と肉体関係を持ち、同性の同級生に姉弟プレイを要求する変態という不名誉な渾名を付けられる可能性がある


「とりあえずそうだな……」


 炎天下の中を歩いていても意外と脳は機能する。俺の脳は現在、妄想の世界から抜け出せなくなった三人の女を如何にして妄想から引きずり出すかを暗中模索している最中だ


「ショック療法でも試してみるか」


 考えに考え抜いた結果、三人にはショック療法を試そうという結論を導き出した


「恭ちゃん、これからはパパだよ?」

「恭クン、私を恭クン好みの女に調教していいよ?」

「恭、これからはお姉ちゃんがずっとずーっと側にいてあげる……もう独りぼっちにはさせないからね」


 三人の妄想が酷くなってる……


「いい加減にしないと三人共嫌いになるぞ」

「「「いやっ!! 嫌いにならないでっ!!」」」


 ショック療法は成功したようで三人共妄想の世界から無事に帰還したようだ


「嫌われたくないなら妄想の世界に行ったきり帰ってこなくなるな。妄想するのは止めないから」


 俺だって妄想するから強くは言えない。三人のように自力で帰って来れなくなるほどじゃなく、軽い妄想だ。自分がしている事を他人にするなとは言わないけどよ……さすがに帰って来れなくなるほどとなるとちょっとなぁ……


「「「じゃあ、嫌いにならない?」」」


 女三人が上目遣いでこちらを窺う。なんだろう?いけない気分になってきた


「ならないならない。いつも通りでいてくれればな」

「「「ほんとう……? うそじゃない?」」」

「本当だ。嘘じゃない」

「「「よかった……」」」


 ホッと胸を撫で下ろす東城先生達を見て一段落付いたと思ったのもつかの間。ゴールに辿り着くまで俺は三人から『本当に嫌いになってない?』としつこく聞かれ続けた。その度に『嫌いになってないから安心しろ』と言い続けた



 ゴールに辿り着いてからはあっという間で着いた順からその場で随時解散。教師陣は学校に戻ると思いきや生徒と同じように現地解散となり、俺は行きは別として、帰りは東城先生達と一緒に帰る事に。家に帰った後の俺は昨日同様飯も食わず泥のように眠りこけたと言っておこう

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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