高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

真央と茜は雑誌や動画で見るよりも可愛いと思う

公開日時: 2021年2月9日(火) 23:28
文字数:4,532

「残り二人か……」


 零&闇華、琴音&東城先生、飛鳥&由香と順調に進み、いよいよ真央&茜。こうしてペアで区切ると灰賀女学院ペア、年上女性ペア、同じ学校ペア、声優ペアと分かりやすい組み合わせになってるのが今になって笑えてくる


「恭殿! 次は拙者の番でござる!」


 目の前に立つ真央は子供の様に目を輝かせる。そんな姿を見ると期待に応えないわけにはいかないが、正直に言うと話をどう進めたらいいか分からない。というのも、声優である真央と茜は職業上、愛を囁かれた事もあれば囁いた事もある。何が言いたいかというとだ、数多くの作品に出ている彼女達が今更俺ごときが愛してると言ったところで満足するのか?って事に他ならない


「あ、ああ……」

「さぁ! 早く! 拙者にも愛してると言ってキスをするでござる!」


 キラキラした目でそんな事を言われると今になって止めないかとは聞けない。東城先生と由香の時に使った多くを語らずとも俺の心の内は知ってるだろ?的な感じで無理矢理誤魔化すのも不可能。こりゃ、飛鳥と由香以上に面倒だ。ちょっと待てよ?急かされてるなら別に前振り要らなくね?


「分かったよ」


 俺は真央の前髪を上げる。すると────


「きょ、恭殿?は、恥ずかしいでござる……」


 なんという事でしょう。何もしてないのに顔を真っ赤に染め、恥ずかしがってるではありませんか


「もしかして男にこうして髪上げられんの初めてか?」

「う、うむ……」

「告白された事あんのに?」


 二人で山に行った時に聞いた話じゃ告白が絶えなかったと言っていたからこういう事はされ慣れてると思ってたんだけどなぁ……。っつっても俺が聞いたのは小学生時代のエピソードだから関係ないか。


「告白された事があるのと髪を上げられた事あるのは別問題でござる!」


 仰る通り。告白されるのと髪を上げられるのは別問題だ


「確かにな……」


 彼女の言う事は何一つとして間違ってなく、反論の余地はない。それはそうと俺はどうしてしまったんだ?前髪を上げただけなのに真央が可愛く見えて仕方ない


「きょ、恭殿?そ、そんなに見つめられると恥ずかしいでござるよ……」

「わ、悪い……」


 俺としては見つめてたつもりはないにしろ、否定すると飛鳥の時と同じように水掛け論が始まりそうだったから素直に謝っておく


「い、いや、ちょっと恥ずかしかっただけで、い、嫌ではなかったからいいでござるよ……」

「そ、そうか……」

「う、うむ……、嫌ではなかったでござる……」

「そ、そう言ってもらえると幸いだ……」


 恥ずかしさから俺は彼女の額から手を離し、顔を逸らす。対して真央は下を向いて俯いてしまった。って! 真央はともかく! 俺は初めて彼女が出来た中学生かよ! 今時中学生だってちゃんとした恋愛してるわ! 知らんけど!


「きょ、恭殿……」

「何だよ」

「い、いつになったら、あ、愛してるって言って、き、キス、してくれるのでござる?」


 そうでした。危うく忘れるところだった


「い、今しようと思ってたんだよ。真央はせっかちだな」

「し、仕方なかろう! ほ、欲しいものは一刻も早く手に入れたい性分なんでござるよ!」


 俺よりも年上で声優として働いてる真央の子供っぽい一面。ネットで調べれば一発で出てくるんだろうしラジオやイベントで見せているとは思う。真央ファンなら知ってて当然の一面で口を揃えて子供っぽい彼女もいいと言うだろう。でも俺は真央のファンなら知ってて当然の一面を近くで見たのも相まってか彼女が可愛く見えて仕方ない


「別に悪いとは言ってねぇよ。ただ、可愛くて愛おしくなっただけだ」


 可愛く見えたというのに嘘はない。愛おしくなったというのも本心だ。恋愛感情から来る愛おしさか?と聞かれると答えに困るけどな


「かっ、可愛い……、愛おしい……」


 どちらもイベントやラジオで言われ慣れているはずの言葉なのに真央の反応は初めて言われましたと言わんばかりの反応だった


「何?その初めて言われたみたいな反応」

「は、初めてでござるよ! 心から好いている男性から可愛いとか愛おしいだなんて言われたのは!」


 なるほど、真央は心の底から本気で好きだと言える人が今までいなかったとこういう事か。その先については……本人の証言から察してくれ


「はいはい。ったく、雑誌や動画で見た時は可愛い人だなって思ったんだけどな……」


 真央が騒いでくれて助かった。あのまま大人しかったら俺は立て直せなかった


「悪かったでござるな! 雑誌や動画みたいに猫かぶってなくて!」


 言っちゃったよ……雑誌や動画じゃ猫かぶってるとか、灰屋真央ファンが一番聞きたくない言葉だぞ


「悪いとは言ってない。真央はありのままが可愛いし、俺はそんな真央を愛してるぞ」

「え?なんて?聞こえなかったでござる」


 ニヤついた顔で視線をこちらへ向ける真央は俺よりもずっと幼く見える。オイこら、今の聞こえてただろ?耳まで真っ赤にしといて聞こえなかったはねーだろ?デコにキスしてないからもう一回言うけど!


「今度はちゃんと聞いとけよ?」

「うむ!」


 俺は彼女の前髪を上げ、そして─────


「真央、愛してる」


 と言って額へキスをした


「お、お花を摘みに行ってくるでござるー!!」


 俺からバッと離れた真央はそのままトイレの方へ走って行った。



 真央がトイレへ走って行ったのを見送ると茜の前に立つ。彼女の番が終わったら俺は恥ずかしさでどうにかなってしまうだろう


「にゃはは~、待ちくたびれたよ、グレー」

「待たせたつもりはないぞ?」


 顔合わせした日と同じ笑顔を浮かべる茜から待ちくたびれた感じはせず、むしろ前よりもリラックスしているようにすら見える。


「待ったよ。グレーが思っている以上に」

「そ、そんなに待たせたか?」

「うん。だって、私はずっとこの時を待ってたんだもん」


 俺と茜はグレーとheightとしてなら二年か一年くらいの付き合いで灰賀恭と高多茜の付き合いはついこの間からという互いの事を知っていると言えば知ってるし、知らないと言えば知らないという微妙な関係。だからこそ彼女の言うずっとの長さが掴めずにいる。俺の物差しで言うなら茜を待たせていたのは零達の要望に応えている間の時間だから精々五分~十分程度だと思ってる。


「そのずっとってっつーのは零達の要望に応えていた間の時間を指してのずっとか?それとも、俺と対面で会うまでの間のずっとか?」

「もちろん、後者。私はあの時からグレーが好きでずっと会いたかった、触れたかった。だから、ずっとこの時を待ってた」

「あの時ってもしかしなくても例え世界の全てを敵に回しても~って発言をした日か?」

「そうだよ。それ以外にあるの?」


 首を傾げる彼女に悪意がないのなんて解っている。解ってはいるものの……人の黒歴史を掘り返すのは是非とも止めていただきたい。茜から見ると素敵な思いでに見えると思うけど、俺からすると単に恥ずかしい過去だ


「それは出来れば忘れてほしいんだけどなぁ……」

「嫌だよ。初めて人を好きになった日なんだから忘れないよ」


 恋する乙女フィルターというのは恐ろしい。俺の黒歴史が素敵な思い出に変換されてるってんだからな。アレか?恋する乙女は強いのよ! ってか?喧しいわ!


「そうか」

「うん、そうだ」


 恋愛経験ゼロの俺が言おう!! 恋する乙女は強い! 恥ずかしい過去を綺麗に浄化出来るんだから間違いない! もういっその事汚れた川とかに恋する乙女を放り込めば川の水が綺麗になるんじゃねーかって錯覚するくらいだ


「はぁ、ゲーム内で顔が見えねぇからって調子に乗ってあんな事言わなきゃよかった……」


 人から好かれるのは悪い気はしねぇけど、ゲーム内で顔が見えず、オマケに夜だったからって調子に乗て例え世界の全てを敵に回しても俺だけはheightの味方だとか言うんじゃなかった……つか、この台詞寒すぎだろ……


「グレーにとっては黒歴史でも私はあの言葉でかなり救われたよ?」

「そりゃどうも。あんな寒い台詞で救われた人がいて俺は嬉しいぞ」


 対面で例え世界の全てを敵に回しても俺だけはお前の味方だ! なんて言われてみろ。俺は普通に引くぞ


「あの言葉がなきゃ私は今頃声優になってなかった。ありがとう、グレー」


 人気声優から改めてお礼を言われるとむず痒い。闇華達が真央を拾ってくる前まで俺にとって有名、無名に関わらず声優とは雲の上にいる存在だった。しかし、真央が家に来てこの旅行でheight────茜とサシのオフ会をし、今じゃ雲の上の存在が一気に身近な存在だ。人生何があるか分からないとはよく言ったものだ


「俺は何もしてねぇ。声優になれたのは茜の努力があったからだ」

「それでも、折れそうになった私を励ましてくれたのはグレーだよ」


 励ましたつもりはないんだよなぁ……。夜のテンションとゲームだし顔が見えねぇだろうから多少クサい事言っても平気だろって軽いノリで言った事も結構あるし


「まぁ、茜がいいなら礼は受け取っとく」

「うん!」


 と、これまでの話は置いといて、別の黒歴史が流出する前に話題を切り替えるとするか


「んじゃ、過去の話はこれまでにして、茜の要望を叶えるとしますか」

「うん」


 要望を叶えるとは言ったはいいものの、どうしよう……二人の将来像でも語るか?


「あー……何だ?茜とはスペースウォー内では長い付き合いだけど、こうして現実で知り合ったのはついこの間だろ?」

「うん」

「ついこの間までは互いの素性を全く知らなかったのにな」

「そうだね。最初にグレーが自分は中学生だって言った時は正直、本当かどうか疑った。中学生だって言っといて本当は自分より年上だったらどうしようってすら思ってたよ」

「それは俺も同じだよ。声優の卵って言われてかなり疑った。ネカマじゃねぇのか?ってかなり警戒したぞ」


 ネットじゃ自分の素性なんてのはいくらでも誤魔化しが利き、現実じゃ大した事ない奴でもなりたい自分になれる。美男美女だろうと年収億単位稼ぐビジネスマンだろうと変幻自在で内心疑っていても本当か否かを確認する奴なんてまずいない


「グレー、さすがにそれは失礼じゃない?」

「仕方ねぇだろ。ネットじゃ職業や容姿、性別なんて好きに変えられるんだからよ」

「そ、それはそうだけど……」

「ならいいじゃねぇか。大切なのは過去じゃなくて未来なんだからよ」


 過去がない奴に未来はないって言ってた人もいて俺もそれには同感だ。が、過去ばかり見てると今度は先の未来へ進めず、立ち止まってしまう。過去を振り返るというのはもちろん大切だけど、未来の事も見据えなきゃいけないと俺は思う


「じゃ、じゃあ、これからの話をしようよ! グレーは私の事どう思ってるの?」

「どうもこうも愛してるぞ」


 無理矢理言わされた感が否めず、俺個人としてはやり直したい。俺の意見はどうでもいいとして、茜はこれで満足──────


「グレー……私、今すごく幸せだよ……。や、やっと……やっとグレーから愛してるって言われた……」


 してたわ。涙流して喜んでるわ。こうして涙まで流して喜ばれると照れるな……


「俺ごときの愛してるなんかでいいなら気が向いた時に言ってやるよ」


 後は茜の前髪をそっと上げ、額へキスをした。


「次は唇にお願いね」


 照れ笑いする彼女の顔はどの動画や雑誌で見るよりも可愛く映ったのは心の内に留めておこう。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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