高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

今日は俺の初登校

公開日時: 2021年2月5日(金) 23:26
更新日時: 2021年2月26日(金) 15:19
文字数:3,606

 水曜日。普通の高校よりもかなり入学式は遅かったものの、無事高校入学を果たし、今日はその初登校。で、俺、灰賀恭は女将駅に向かう電車に揺られている最中だ。ここで少しだけ俺の通う高校。『星野川高校ほしのかわこうこう』について説明すると、校則は特になし。服装は入学式とかの式典とどこかに見学に行くとか以外の時は基本自由。HRについては……これは学年と曜日の関係で省かせてもらう


「今日から高校生なんだが、如何せん私服だとそんな実感が沸かないんだよなぁ……」


 今日から高校生になったとはいえ制服ではなく私服での登校だ。普通の高校なら新しい制服に身を包み、登校するから自分はこの春から高校生になったという実感と新たな認識を持って登校すると思う。俺の場合は私服だからそんな実感も認識も全くない


「高校生って実感もだが、俺って入学式の日にかなり目立ったからなぁ……」


 入学式の日、琴音と母ーズのおかげで俺は嫌でも目立ってしまった。騒がなかったのは彼等なりの優しさなのか、人との対話に慣れてないからなのか、それとも、俺を変な奴と認識したからなのか……それは分からない


「とりあえず波風立てないようにしねーとな……」


 入学式に目立ちまくった俺は目立たないようにしよう。そう心に決めた。


「さっと、そろそろ女将駅かな」


 電光掲示板を見ると『次は女将』と表示されていた。俺は降りる駅で慌てないよう余裕を持って降りる準備をした


『次は女将~、次は女将~』


 電光掲示板を見て次が女将駅だというのは知っている。まぁ、電車ってのはいろんな人が利用する。電光掲示板は耳の聞こえない人への配慮でアナウンスは目の見えない人への配慮なんだろう。


『女将に到着しました。お降りの方はお忘れ物ないようご注意ください』


 女将駅到着。俺は電車から降り、出入口から見える階段をそのまま下に降り改札へ。そのまま切符を通し改札を抜けた


「さて、改札を抜けたはいいが、ここからまた歩くのか……」


 改札を抜けた俺はこれから始まる高校生活に胸を躍らせながら……ではなく、若干憂鬱になりながら駅の外へ。自意識過剰と言ってしまえばそれまでだ。でも、入学式の日に撮った集合写真を見たら嫌でも思い出してしまう。一人の生徒だけ身内が多いって事に


「さて、ここから歩いて何分掛かるかな」


 駅から学校までのルートは至って単純。駅を出て右方向に真っ直ぐ行くだけ。地図上では単純な道で大した時間は掛からないと思われる。しかし、地図で見るのと実際に歩くのでは距離が違う


「ま、ルートは単純だからすぐ着くだろ」


 駅を右方向に一直線だから余程の方向音痴じゃない限り迷う事はない。俺はそう思い歩き出した。


「駅周辺だけあってデカい本屋にホテルがあんのは当たり前だよなぁ……」


 家の近くにある熊外駅周辺とは違い、女将駅周辺にはデカい本屋やホテルがある。人が多く密集する駅だけあって近くにデカい店やホテルがあるのは当たり前だとは思う。それを間近で見ると人が集まる場所だという事を痛感させられてしまう。


 女将駅から歩く事十分と言ったところか、デカい本屋、ホテルの前を通り過ぎ、左側に見えてきたのは植物園


「夏はいいとして、冬や春はさすがに営業してないよなぁ……」


 植物園の人達には失礼かもしれないが、人気がないとどうしても廃墟に見えてしまう。決して外観がどうとかの話ではない。大きな木が多いせいか暗く、その木にカラスが止まっているからそう見えるってだけだ


「これから三年間ここを通るのか……」


 電車の中では高校生だという実感は大して湧かなかった。自分の中では高校に通うという目的があるだろうけど、周囲からしてみれば遊びに行くと思っている者、これから仕事に行くと思っている者といるだろう。だから高校生になったという実感と自覚が沸かなかった。


「電車じゃ湧かなかった高校生になったって実感が植物園を見て湧くとは……俺ってどっかズレてんのか?」


 植物園の前を通り過ぎ、歩く事五分。『星野川高校』という看板が取り付けられた四階建てのビルが見えてきた。普通は高校と聞くと大きな校門と大きな校舎を思い浮かべるだろう。しかし、俺の通う高校は通信制高校で各学年登校日か決まっている。授業によっては不便を感じるかもしれないが、まぁ、人数だけで考えると校舎が小さくても何ら問題はないという事のようだ


「ここがこれから三年間通う場所か……」


 目の前にそびえ立つのは家よりも小さいビル。とてもじゃないが学校の校舎とは言い難い。そんな建物でも俺が三年間お世話になるのには変わりないけどな


「とりあえず入るか」


 登校してきてとりあえずもクソもない。何しろ今日から俺の高校生活が始まるのだから


 一階の玄関を通過し、二階へ上がる。この建物は一階は教師が車を止める為の車庫になっている。だから必然的に職員室は二階、三階、四階となる。


「校舎に入ったはいいけど、教室ってどこだ?」


 校舎に入った俺が最初に分からなくなったのは教室の場所と自分のクラスと職員室の場所だ。


「こんなちっぽけなビルでもせめて玄関に職員室の場所くらい書いた紙貼っとけよな……」


『星野川高校』について俺は何も知らない。この学校の歴史や前の校舎がどこにあったのか等、俺は自分の通う高校だというのにそのほとんどを知らないのだ。興味ないからそれはどうでもいいんだけど。それより、職員室の場所を記載した案内がないのはどうかと思う


「とりあえず二階に行くか」


 中学時代不登校だった俺でも学校というのは時々不親切だと感じる事がある。一番分かりやすいのは職員室の場所だ。インターホンを鳴らせば職員室へ通じるとかなら口頭で職員室の場所を伝えればいい。そうじゃないところはちゃんと玄関の案内板のようなものに職員室の場所くらい分かるようにしとけと思う


「エレベーターは……動いてないよな」


 玄関を潜ってすぐのところにエレベーターがある。あるのだが……誰がどう見たって動いてない。エレベーターがエレベーターの役割を果たしてない


「階段で行くしかないのか……いや、二階に上がるだけだから別にいいんだけど」


 俺の家だって最初はエスカレーターもエレベーターも動いてなかったからこの学校の事を強く言えない。



 二階に着いた俺は職員室がどこにあるのかを探しはしなかった。『職員室』と書かれた札が大きな扉にぶら下げてあり探す必要がなくなったからだ


「教室の場所聞きに行くか」


 クラスが分かってたとしても教室の場所が分からないんじゃ話にならない。俺は自分のクラスを知ってても平然と自分のクラスがどこかを聞く人間だけどな!


 と、言う事で、職員室へ突撃


「失礼します」


 職員室へ入る時はノックと一言声を掛ける。ただ、この学校に関して言えばノックしようにも扉は全開でノックする場所がないから失礼しますの言葉だけになってしまう


「おはよう、灰賀君」


 俺の声にいち早く反応したのは担任である東城藍先生。入学式の日といい、今日といい、この人とのエンカウント率高いな


「おはようございます、東城先生」

「うん、おはよう。ところで職員室へ何か用?」

「自分のクラスと教室の場所を聞きに来ました」

「教室の場所はともかくクラスについては入学式の日に名簿を張り出していたはずなんだけど……」


 若干困ったような表情を浮かべる東城先生。入学式の日に名簿が張り出されていたとしても俺は自分の身内の対応でそれどころじゃなかったから覚えているはずがない。


「クラスに関して言えば入学式の日は自分の事で一杯一杯だったので覚えてません」

「はぁ……呆れたいところだけど、実際その通りだから強く言えない」

「すみません」

「いいよ。灰賀君のクラスはC組で教室は四階の一〇三教室」

「分かりました。ありがとうございます」


 俺は東城先生に言われた通り四階の一〇三教室へ向かった



「ここか。俺のクラスは」


 教室の前に来た俺は何も考えずに中へ


「…………」

「…………」

「…………」


 教室内は人がいるにも関わらずシンと静まり返っていた。


「マジか……」


 教室に入り、改めて俺はいろんなものを抱えた連中が集まる学校に入学したんだなと実感した


「高校に入学早々ボッチ決定とかのレベルじゃねーなこりゃ」


 通信制高校で同じ中学の奴と出会うだなんて雲を掴むような話だ。だって何だかんだで普通高校に入学したり、通信制高校に入学したとしても別の学校だったりするからだ。それでも、クラスの連中と親睦を深めようとお喋りしているようなモンだと思っていた


「あれですか?このクラスはボッチだけを集めたクラスって事でよろしいでしょうか?」


 このクラス……いや、多分、どこのクラスも似たような感じなんだろうけど、クラスの割合的に女子より男子の方が圧倒的に多い。女子の方が少ないという事は女子同士のグループが出来やすいはずだ。その女子連中が揃って無言なんだけどな


「ひとまず席確保して寝よ」


 俺は適当な席を確保し、東城先生が来るまで寝る事にした

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