高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

犯人の復讐したい相手は俺からすると意外な人物だった

公開日時: 2021年2月5日(金) 23:36
文字数:4,160

 ゴキブリは一匹見かけたら百匹いると思えなんて言われる。本当か嘘かは置いといてだ、多分昔の人は一匹のゴキブリを見つけ、続けざまに複数のゴキブリを見つけたからそんな事を言った。俺はそう考える。話は変わるけど、頭のおかしい奴を一人見つけたらどうなると思う?答えは……


「マジでお前らよくもまぁ、パンツを覆面にしようと思ったな……。一人くらいレジ袋とか百均で売られているような安い覆面にしようかって思いつく奴はいなかったのかよ……」


 百人はいないものの、複数人見つかるでした。俺は目の前にいるパンツを被った男女四人(男二人、女二人、うち一人は俺が煽った奴)にきれるしか出来ないでいる。ぶっちゃけると早く頭のパンツは外してほしい


「「「「…………」」」」


 さすがに高校生のガキに厭きれられたダメージがデカかったのか黙り込む四人の大人達。俺は厭きれる程度で済んでいるのだが、周囲の声を聞くとチラホラと聞こえるのは笑い声。殺される心配がなくなり、笑いを堪える必要がなくなった。その為なのか大声で笑う人はいなくとも、小さな声で笑う者や中には悶絶している者も多数いる


「はぁ……。三人寄れば文殊の知恵と言うが、アンタらはアレだな……、三人どころか四人揃ってもいい知恵は出て来なかったってのが一目で解かるな」


 そもそもの話、高校生で頭の悪い俺でさえ覆面の代用品候補が浮かぶというのにいい歳した大人が揃いも揃って覆面の代用品がパンツとか……、世の中の大人はアホしかいないのかと疑ってしまう


「「「「す、すみませんでした……」」」」


 謝れって言ってないのに何故か謝る立てこもり犯達。とりあえず俺は何から始めたらいいかを────考えるまでもなかった。やらせる事は決まっている


「謝んなくていいからよ、とりあえず頭に被ってるパンツ取ってくんね?真面目な話をしようとしてもパンツがチラついて話にならない」


 まだ覆面とかレジ袋だったら可愛げもあった。それがパンツってどうだ?可愛げなど欠片も感じない


「「「「はい……」」」」


 ションボリとした犯人達は頭に被っていたパンツを取り、それを自分達の着ているパーカーのポケットへと突っ込んだ。その光景はさながら好きな女子の下着を盗んだ男子中学生みたいでそれはそれで笑える


「さて、パンツも取り払ったところでだ、アンタ達は高校時代に自分達を虐めた警察官に復讐したくて伏古総合病院ここに立てこもり、人質を取った。合ってるか?」

「「「「合ってます……」」」」

「アンタ達バカじゃねぇの?とか言いたい事はある。だが、この場にいる全員が復讐するのを手伝うって決めた以上、トラウマを植え付けちゃってくれた警察官へ何らかの仕返しをするのは確かだ。でだ、具体的な復讐の方法というのは考えてあるんだろうな?」

「「「「…………考えてません」」」」


 呆れた事に犯人達はトラウマを植え付けた警察官を引きずり出すまでしか考えておらず、具体的にどんな復讐をするかを考えてなかったらしい。つまり、ソイツを引きずり出した後で何をするか具体的に決めようって魂胆らしい


「無計画過ぎるだろ……」


 俺は犯人達の計画性のなさに呆れ、怒りを通り越して言葉が出なかった。まずはどうやって復讐するかを考えるところから始めなきゃいけないのか……。まぁ、ここは病院だ。実行できるかどうかは別として人に苦痛を与えるのに打って付けの物はたくさんある。それをしてしまうと立てこもりの余罪が増えるから俺としてはオススメしないんだけどな


「「「「す、すみませんでした……」」」」


 無計画で行動する大人達にかける言葉が見つからない上に溜息すら出ず、俺はただ立ち尽くすしかなかった。そんな時だった


『きょう~、お母さんにいい考えがあるよ~』


 我が母が個室の時同様、考えがあると言ってきた。生憎ここには大勢の人がいるから返事を返すのは不可能だからアイコンタクトで話すように促す。上手く伝わったのかお袋は頷く


『犯人達が警察官の人に何かすると余罪が増えちゃうけど、幽霊なら何をしても罪には問われない。そこで! その警察官に強い恨みを持ったまま成仏出来ずにいる幽霊たちをお母さんが連れてくる! そして、その人達に警察官を恐怖のどん底に叩き落としてもらうってどう?』


 言っている事は物騒極まりないのだが、お袋の案は一石二鳥とも言える魅力的なものだった。だが、そんなに都合よくソイツに恨みを持った幽霊達を集められるものなんだろうか?と疑問を持った俺はお袋を一瞥した


『それなら大丈夫だよ~、きょうの霊圧が大きすぎて出て来れなかったみたいだけど、その人達は犯人達がここに立てこもった時から外に集まってるから~』


 何それ初耳なんだけど?


『聞かれなかったしお母さんだけ見てほしかったから言わなかった~』


 まぁ、前者は俺の自業自得だ。後者はリアクションに困るからノーコメントな。とりあえず連れてきてもらおう。幽霊達の集合に大した時間は掛からないだろうけど、一応、復讐する警察官の名前は聞いとくか……つー事でお袋、幽霊を連れてくるのは任せた


『おっけ~、ちょっくら行ってくるね~』


 お袋が幽霊達を呼びに行ってる間に俺は俺で警察官の名前を聞き出しておく事にしよう


「そういや復讐する警察官の名前ってなんて言うんだ?」


 俺は最初に会った立てこもり犯の男に声を掛けた。


「言ってなかったか?」

「聞いてねーよ」

「千才って言うんだよ」

「え────?」


 犯人から復讐したい警察官の名前が出た瞬間、俺は言葉を失ってしまった。犯人が口にした復讐したい警察官の名前は一度聞いた事があり、会った事もある。そんな人物の名前が出たんだからビックリするなと言う方が無理だろ


「何だ?聞こえなかったのか?俺らが復讐したい警察官の名前は千才って言うんだよ」


 聞こえたとか聞こえなかったとかの問題じゃない。千才という名前の警察官は東城先生の高校時代からの友人だと聞いている。考えたくはないが、犯人達を追い詰めたのは千才さんだけじゃなく、東城先生も同じ事をしたのではないか?と疑念が浮かぶ


「聞こえなかったわけじゃないさ。アンタ達にトラウマを植え付けたのは千才って名前の警察官なんだろ?」


 動揺を悟られない為、俺は努めて冷静な振る舞いをする。内心では犯人達を追い詰めたのは千才という名前の警察官一人だけで東城先生は無関係であってくれという思いでいっぱいだ


「ああ。そうだ」

「それに差し当たってなんだが、アンタは東城藍って知ってるか?」


 頼む! 東城先生の事は知っててもいい、だが、虐めに関与したとだけは言わないでくれ! そう願いながら俺は犯人の言葉を待つ


「東城藍?ああ、あの無口な女か。知ってるも何も俺はアイツと三年間同じクラスだった」


 東城先生、今じゃクールな印象だが、昔は無口だったんだな。俺が聞きたいのはそこじゃなく、虐めに関与したか否かだ


「そうか。それで?東城藍はアンタ達の虐めに関与してたのか?」


 怪文書の説明をする時に東城先生は千才さんは高校時代からの友達と言っていた。友達だから何でもかんでも話すのか?と言われれば必ずしもそうではない。しかし、犯人達を虐め、トラウマを植え付けた警察官に千才さんの名前が挙がった以上これは聞いておかなきゃならない。今後の為にもな


「東城?アイツは俺達の虐めとは無関係だ」

「そうか……」


 犯人の答えに俺はホッと胸を撫で下ろす。もしも犯人が東城先生も虐めに関与していたと答えていたら俺は彼女との接し方を改めるところだった。


「ああ。ところで何でそんな事聞いたんだ?」


 心底不思議そうな顔で俺を見る犯人。何でってそんなの決まっている


「東城藍は俺のクラスの担任だ。人の過去を詮索するのはよくないし、口を出す権利なんてない。だがな、虐めを行った経験がある人間の指導をアンタは受ける気になるか?ならないだろ?その確認だ」

「お前、東城の教え子だったのか……」


 目を丸くして俺を見る犯人


「まぁな。口数は少なくても俺達生徒一人一人をちゃんと見てくれる先生なんだ。過去の話だとしても虐めに関与なんてしていてほしくなかったんだよ。それに、彼女は千才さんを友達だと言っていたからな。万が一という事だってあるから念のためにな」


 東城先生と千才さんが高校時代どんな過ごし方をしたのかは分からない。本人達からもよく一緒に遊びに行ったという話を聞いた事がない。正直、千才さんがコイツらを虐めていたなんて話を今でも信じられないくらいだ


「そうか……、ならもう一度言うぞ?千才と東城は確かに行動を共にする事が多かった。しかし、俺達を虐めてたのは千才だけで東城は何もしなかった。もしかするとそんな事をしていたという事実すら知らないでいるかもな」


 知っていたら自分の勤める高校に呼ぶどころか連絡すら取ってない。そうじゃないのは犯人の言う通り東城先生はおそらく千才さんがしていた事を知らないでいる説が濃厚だ


「それは学校に行った時にでも確認するさ。それより、千才さんを呼ばなくていいのか?いるかどうかは来てるかどうかは知らねーけど」


 俺が知ってるのは千才さんが警察官である事だけでどこの課にいるかまでは知らない。来てるかどうかすらも分からない


「来てなかったらお前達をエサに呼び出すだけだ」


 犯人の言う通り千才さんが外にいる警察の中にいなかったら俺達人質をエサに呼び出せばいい。もしかしたら余計な人間が付いてくるかもだが、その時は俺が動きを封じればいいだけだしな


「それもそうだな。なぁ、もしも千才が外にいる警官の中にいてここに来たとする。その時に余計な奴が一人でもいたらどうする?」


 警察に嫌な思い出とかは特にない。が、警察というのは時として平気で人を裏切る。特に犯人の要求はそうだ。無能のクセに人を裏切るどうしようもない連中だ。だからこそ千才さんを呼び出す前にこれだけは聞いておかなきゃならない


「その時は人質を一人殺す。俺達の目的は千才一人だ。自分達のしている事は犯罪だってのは分かりきっている。それでも、譲れないものがある。例え世界を敵に回してもしなきゃいけない事、自分が泥を被ってでも償わせたい事があるんだよ」


 犯人の目には並々ならぬ決意が漲っていた。コイツは千才さんに何をされた?何を奪われた?この二つが俺の頭をグルグルと回り出した。


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