高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

琴音を甘やかした結果・・・・

公開日時: 2021年2月5日(金) 23:32
更新日時: 2021年5月3日(月) 21:59
文字数:4,052

「あっ、恭くんおはよう」


 闇華を甘やかす時間、彼女と二人布団に入り、少し話をしたところで寝てしまった。げっ! 目が覚めると琴音に膝枕されていた。うん、俺が寝ている間に闇華の番が終わり、琴音の番が回って来たところで俺が寝ていて起こすのもどうかって事で琴音が膝枕したと、こんなところだな


「おはよう、琴音。順番が回って来たなら起こしてくれて構わなかったのに」


 琴音がいるという事はだ、闇華は俺より先に起きて出て行った。そう考えるのが自然だ


「気持ちよさそうに寝てる恭くんを起こしちゃ悪いでしょ?それに、ここ最近、頑張ってたからたまにはゆっくり寝かせてあげたいなって思ってね」


 ここ最近頑張ってたと言われても俺は何もしてない。した事と言えば能力を暴走させたくらいだ


「別に頑張ってない。それを言うなら琴音の方が大変だっただろ?何しろ意味不明な教師に絡まれたんだから飛鳥を守らなきゃいけなかったんだから」


 ニュースの特集で時々取り上げられているモンスターペアレント。その対応に追われる教師は本当に大変だ的な内容で報道されているが、キチガイ染みた教師の事は事件が起こらなきゃ取り上げない。おかしな世の中だ


「私は何もしてないよ。結局飛鳥ちゃんは神矢って人に捕まっちゃったし……それに、学校の先生を誰一人として動かせなかったから……ホント、私って無力だよね……」


 俺の頬に温かい水滴が落ちてくる。それが琴音の涙だという事はすぐに解った


「無力でも一人の女の子を守ろうとしただろ?」

「そ、そりゃ、一緒に住んでるんだから当たり前だよ……半分家族みたいなものだし」


 家族……か……拾われた者同士でシンパシーでも芽生えたか?


「家族か……まぁ、間違いではないな」

「でしょ? 私や藍ちゃん、飛鳥ちゃんには本当の家族がいるけど、零ちゃんと闇華ちゃんには……」


 零と闇華には家族がいない。それを口に出す事はせず、目を伏せる琴音。彼女達の家族に関しては俺も何とかしてやりたいと思った事はある。思った事はあっても実際には何をどうしていいか分からない。


「そうだな。でも、別にそれって血の繋がりだけじゃないと思うぞ?」


 夏希さんと由香を家族として認めないと宣言した俺が言えた立場じゃないのは重々承知だ。もしかしたら俺に家族を語る資格なんてないのかもしれない


「血の繋がり……恭くんそれって……」


 琴音がその続きを言う事はなかった。彼女が言おうとしているのは多分、俺の家族についてだ。親父達をぶん殴った場面は見られてないが、俺の家ここに乗り込んで来た時に親父達の顔を見りゃ俺が何をしたかなんて一目瞭然だ


「ゴールデンウィークでの親父達を見りゃ解かるだろ。家族って血の繋がりだけじゃないってな」


 家族ってのは血の繋がりだけじゃない。皮肉にも俺はそれをゴールデンウィークで証明してしまっている。ここまで来ると笑うしかない


「恭くん、それって────」

「俺は琴音達の事を家族である親父達よりはずっと大切な存在だと思っている」


 琴音の言葉が終わる前に俺は今思っている事を言う。琴音が抱いてる不安を少しでも軽くなってくれるのを祈って


 これからどうなるかは分からない。もしかするとあの時みたいになるかもしれない、俺の隠し事が原因で琴音達が離れていくかもしれない。どれだけ考えたって先の事は分からないけど、今を精一杯生きていくしかないと俺は思う


「恭くん、もう叩き出すだなんて言わないよね……?」


 琴音が不安に満ちた表情で俺を見下ろす。自分が言った事とはいえ、叩き出すとかそれに近しい言葉は余程堪えたみたいだな


「言わねーよ。泣かれた挙句、爺さんまで飛んで来たら面倒だからな」


 あの時の俺は爺さんがいなかったら琴音達を本気で叩き出そうとしていた。叩き出した後の事なんて考えてなかったあたり俺らしいっちゃらしい


「むぅ~、そこは『琴音達を泣かせたくないからな』って言うところじゃないの?」


 不満気な琴音が頬を膨らませ、こちらを睨んでくる。威嚇してるつもりか何かなんだろうけど、頬を膨らませているあたり自分よりも年上の彼女を可愛いと思ってしまう


「俺に歯の浮くような台詞を期待するな」


 俺は歯の浮くような台詞がポンポン浮かぶような人間じゃない


「恭くんに期待した私がバカですよ~だ!」


 そう言って琴音はそっぽを向いてしまった。零や闇華、飛鳥だってそんな事……しないとは言い切れないな


「バカとは言ってないだろ? 俺に歯の浮くような台詞が似合わないって言ってるだけで」


 爺さんや親父なら歯の浮く台詞の一つや二つすぐに浮かぶんだろうが、生憎俺には無理だ


「それでも女の子は期待しちゃうんですぅ~」


 ダメだ……完全に拗ねてる……


「悪かったって……」

「つーん」


 幼い子供の様に拗ねる琴音に対し、つい笑みが零れる。別に琴音を子供っぽいって思っているわけじゃないぞ?


「琴音」

「何? 女の子の気持ちが解らない恭くん」


 拗ねた琴音の精神攻撃! 俺の心が少しだけ傷ついた! 事実だから言い返せないけど!


「そろそろ膝が疲れただろ?」

「そうだね、早く退いてくれないかな?」


 こりゃマジで怒ってますね


「悪かったよ」


 俺は起き上がると琴音の背後へ回り込んだ。そして……


「ふぇ!? きょ、恭くん!?」


 琴音を思い切り抱きしめた。我ながらワンパターンで一歩間違えれば痴漢と言われても仕方ない行動だ


「悪い、俺に歯の浮くような台詞は無理だ。だから、こうして行動で示させてもらう」

「え、えっと、そ、その……あうぅぅぅぅ……」


 抱きしめられると思っていなかったのか、琴音はプシューという効果音が出そうなくらい真っ赤だ。ここからじゃ耳しか見えないが、耳が真っ赤って事は顔も真っ赤なんだろうという憶測を立てる。確認する術がないから何とも言えないけどな


「今から言う事は聞いてても聞いてなくてもどっちでもいい」


 俺は真っ赤になっているだろう琴音に前置きをし、一呼吸してから続けた


「あの日、琴音達がバカな俺の為に泣いてくれたのは本当に嬉しかった。そんな琴音達を見て、自分の為に泣いてくれる人の姿を見て俺は救われた。本当にありがとう」


 自分の為に泣いてくれてありがとう。客観的に見れば俺は自意識過剰な人間に見える。それでも言うべき事はちゃんと言わなきゃいけない。今それを言った。笑いたい奴は笑えばいい


「恭くん……」

「何だ?」

「抱きしめるのはいいから私の正面に座ってくれる?」


 琴音が何をするつもりかは皆目見当もつかない。琴音がそうしろというなら俺は大人しくそれに従うだけだ


「分かった」


 俺は抱きしめるのを止め、琴音の正面に回り胡坐を掻く


「胡坐……別に座り方を指定したわけじゃないしそっちの方がちょうどいいか……」


 一瞬だが、胡坐に不満があるのかと思った。しかし、そんな事はなく、特に不満を言われはしなかった


「えーっと……」


 不満を言われはしなかったものの、戸惑いは拭いきれない


「恭くん、今から私の言う事に黙って従ってね?何をするのか聞くのもナシ」


 有無を言わさないオーラを纏った琴音に俺は────────


「わ、分かった」


 そう答えるしかなかった


「よろしい」


 琴音は立ち膝で俺の方へやって来るとそのまま俺に抱き着く形で座った


「抱きしめて」


 言われた通り琴音を抱きしめる。抱きしめられた琴音はというと……


「はわぁぁぁぁぁぁぁ~」


 とろけそうな笑顔で俺の顔に頬擦りを始めた。俺は動物園のウサギか?それとも、赤ん坊か?


「えーっと……琴音?」

「にゃ~」

「いや、にゃ~じゃなくてね?」

「にゃ? にゃに?」

「にゃに? じゃなくてね? 今は琴音を甘やかす時間だから好きに甘えてもらって構わないんだけどね? 何で猫化してんの?」


 琴音を甘やかす時間だから甘え方については言及しない


「久々に甘えられたからに決まってるにゃ~」


 あ、そうだったんですね。で? 猫化する理由は? 何? 琴音さんは甘えると猫化する人なんですか?


「あ、はい。それで? 琴音は甘えると猫化するのか?」

「恭くん限定でそうにゃ~」


 恭くんそれ初耳


「俺限定で猫化するって初耳なんだけど?」

「初めて言ったにゃ~。恭くんは嫌だったかにゃ?」


 嫌ではない。ただなぁ……琴音のこんな姿を他の連中が見たらなんて言うか……


「別に嫌ってわけじゃねーけど……何だ……いきなりの事で戸惑ってはいる」

「それは慣れるしかないにゃ! 頑張るのにゃ!」


 慣れろと言われましても……とりあえず努力はしてみるけどよ……


「努力します」

「そのいきにゃ!」


 俺は今日、琴音の知られざる一面を知った。年上女性に猫みたいに甘えられるのは悪い気はしない。戸惑いはするけど。


「零達が見たら何て言うか……」


 俺でさえ今まで琴音のこんな一面を見た事がない。零達も同じだとしたら何て言うかなんて予想もつかない


「恭くん! 今は私の時間にゃ! 他の娘の事を考えちゃ嫌なのにゃ!」

「わ、悪かった」


 琴音、俺を睨んで怒るのはいい。ただな、猫語じゃ全く持って迫力がないぞ?


「本当に悪いと思ってるのにゃ?」

「ああ、琴音と二人の時に他の女の名前を出して本当に悪かったと思っている」


 今は琴音の時間だ。言い換えるのなら琴音だけの時間と言ってもいい。そんな時間に他の女の名前を出すだなんてデリカシーに欠ける。


「許してほしいかにゃ?」

「ああ、許してほしい」

「それじゃあ、登下校と学校に行ってる間、毎日私とメッセージでやり取りをすると約束したら許してやるにゃ!」


 零、闇華と続き琴音もか……いや、学校内で喋る奴なんて限られてるから別にいいけどね


「分かった。それでいいなら喜んで」


 要求が二人と被っている。そんな気がしたが、学校内で会話をする人間と言えば由香か瀧口くらいしかおらず、零、闇華とも同じ約束をしたんだからいいか。そう思った俺は彼女達と同様に二つ返事でOKを出した


「にゃ! 約束にゃ!」

「ああ、約束だ」


 こうして俺は零、闇華と続き琴音ともメッセージでやり取りをする約束をしてしまったが……残る東城先生と飛鳥も同じ要求をしてこないかと変な勘繰りをしてしまう。よく言うだろ?二度あることは三度あるって

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