高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

俺はヤンデレを侮っていた

公開日時: 2021年3月14日(日) 23:47
文字数:4,255

 皆さんは犬の嗅覚が人間の何千倍、何万倍も優れている。って話は聞いた事あるだろうか?特定の臭いなら何百倍も犬の方が優れているらしい。話は変わるが、ヤンデレの執念というのは恐ろしい。一人の異性を愛しすぎるが故なのか、自分が好意を抱いた異性にはとことん尽くし、拘る。どこにいようと必ず自分が好きになった奴を捕まえようとするんだからヤンデレの執念は恐ろしい


「なぁ、逃げ出そうとした事は謝るからいい加減許してくれないか?」


 七人のヤンデレに捕まった俺は有無を言わさず管理人室へ連れ込まれ、両手両足を手錠で繋がれベッドに張り付け状態。当人達は……


「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん」

「兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん」

「恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭恭」


 同い年組の零、闇華、由香は一心不乱に同じワードを繰り返しながら俺の胸板に頬ずり。年上組はというと……


「恭ちゃん、私から逃げるなんて酷い……私はこんなにも恭ちゃんを愛しているのに……ねぇ?どうして私を愛してくれないの?私が恭ちゃんの担任だから?私が根暗な女だから?それとも、他に好きな人いるの?ねぇ?ねぇ?答えて……答えろ!!!!!!」

「恭クンは私の事嫌いなんだね……私を愛してくれない恭クンなんていらない……来世では恭クンと結ばれるといいな……きっと結ばれるよね?だって私達は運命の赤い糸で結ばれてるんだから……」

「ご主人様……想子は例え貴方がどこへ行こうとも付いて行きます。どう変わろうとも変わらず愛しております。想子にはもうご主人様しかいないんです……ご主人様に見捨てられるくらいなら……ご主人様が想子を見て下さらないのなら……ご主人様を殺して想子も死にます」

「恭くんが望むなら私は何でもするよ?どんなマニアックな事でも喜んで受け入れるし恥ずかしい姿も晒せる。どんな形でもいいから恭くんの側にいさせてくれないかな……。え?ずっと俺の側にいろ?う、嬉しい……恭くん……結婚してくれだなんて……」


 被害妄想に取り憑かれ、運命の赤い糸で結ばれてると乙女チックな妄想を垂れ流し、俺と心中しようとし、空想上の俺にプロポーズされて喜ぶ始末。一部物騒な事を言ってるのもいるが、包丁を向けられたり、首を絞められたりと命の危機に繋がるような事がなかったのは唯一の幸い。こうなった原因は俺にあるというのは残念ながら自覚せざる得ない。いつもとは逆方向に歩いたのに先回りされてたとは思わんかった。捕まったのが運の尽き。現状を受け入れるしかないのだ


「零達はともかく、神矢想子までこうなるとは……」


 出会った当初は零<ツンデレ>、闇華<ヤンデレ>、琴音<ドジっ娘>、藍<クール>、飛鳥<男装系女子>、由香<義姉>、神矢想子<堅物>とそれぞれ個性があったのに今じゃ全員揃ってヤンデレ一辺倒。各自が持つ個性の後にヤンデレが追加された感じになってしまった。


『仕方ないんじゃない?なんてったってお母さんとバカ恭弥の子供なんだからさ~。もっと言うと灰賀家と四十九院家の血をバランスよく、それでいて濃く受け継いでるしさ』


 のほほんとした笑みでとんでもない事を言う早織とその隣でうんうんと納得した感じで頷く神矢想花。勝手に納得しないでくれませんかね?俺にも分かりやすく説明してくれません?


『時が来たらね。今はダメ~。お母さん達を甘えさせてくれてないし~』


 甘えさせたら教えてくれるんですかそうですか。灰賀家と四十九院家の血をバランスよく、それでいて濃く受け継いでる話は気になる。今優先させるはヤンデレ共だ。コイツらをどうにかしてぇが両手両足は手錠で繋がれてて動かせねぇ。残る武器は言葉しかないが、全員狂ってて話を聞きそうな感じじゃない


「完全に手詰まり……。はぁ……一瞬でも付き合うならヤンデレだと思った俺がバカだった……」


 ヤンデレが話を聞かない、好きな人は独占するってのは理解してた。最近零達のヤンモードが表に出てこず、独占欲を顕わにしてこなかったから忘れかけてた。俺の周囲限定でヤンデレって伝染するんだった……。自分のバカさ加減を嘆いたところで零達の耳には全く届いてない。現に今も────


「お兄ちゃんはアタシのもの……誰にも渡さない……」

「兄さん、私とずっと一緒ですよ♪」

「恭、お義姉ちゃん以外の女なんて見えないようにしてア・ゲ・ル」

「恭ちゃんは何もしなくていいんだよ?ぜ~んぶ私がやってあげるから……」

「恭クン、今回はお茶目で許してあげるけど、次やったらユルサナイ……」

「ご主人様は想子だけ見ていればいいんですよ。他の女なんて必要ありません」

「恭くん、何でもしてあげるから何でも言ってね?私、恭くんの為なら何だってしちゃうんだから♡」


 各々が自分の世界に入ってる。妄想の中の俺がどうなったか……考えただけでも身の毛がよだつ。頼りの早織達幽霊でさえ────


『きょう、お母さんは二度ときょうから離れないよ……ずっとず~っと一緒だよ』

『恭様……想花が永遠に愛してあげる……。誰の手も届かない場所で永遠にね』


 ヤンデレに感化されてしまっている。


「マジでコイツら嫌いになりそうだ……」


 刃物を持って迫られたり、殺し合いされるよりかはマシだが……何も身動きを封じる事はないだろ……逃げ出そうとした俺が悪かったけどよ……。俺は天井を眺めながら時が経つのを待った




 あれからしばらく。完全にとは言えないが正気を取り戻した零達によって手錠を外され、ベッドから解放された俺は一度自室へ戻ると伝えて管理人室を出た。零達は終始不満の声を上げてたが、ご褒美で釣り黙らせたから問題ない。


「た、助けてくれないかい?」


 部屋に戻ると瀧口が管理人室にいた時の俺と同じく両手両足を手錠で繋がれ、ベッドに拘束されてた。傍らには零達と同じくハイライトの消えた目をしている北郷と求道。彼女達は俺が部屋に入ると勢いよく振り返った。マズい奴にマズいところを見られたという顔ではなく、言うなれば死体を埋めてるところを見られた殺人犯みたいな感情を感じさせないような顔。


「邪魔するなら殺すよ?灰賀」

「そうですわ。いくら私達のキューピットである灰賀君とはいえ邪魔するのは許しませんわよ?」


 零達からハイライトの消えた視線を浴びせられたばかりで月一回かそこらのペースで見てるから視線は怖くも何ともない。一番怖いのは行動だ。自分の求愛行動を邪魔されたヤンデレが何をしでかすか予測不可能。霊圧があったとしても怖いものは怖い


「邪魔はしねぇよ。忘れモンがねぇか確認しに来ただけだ」


 本当はヤンデレ共の手を逃れ、二度寝したかったんだが……求道と北郷の為だ。大人しく零達の元へ戻るとするか


「なら出てって。アタシ達はこれから祐介と愛し合うんだから」

「見たいなら見ていても構いませんわよ?ただ、灰賀君の命は保証しかねますけど」


 ハイライトの有無や性別関係なしに睨まれたらビビる。ビビッて腰抜かすか漏らすかはソイツ次第。だが、俺はハイライトの消えた目で睨まれるのには慣れている。北郷と求道がヤンデレの目で睨んでこようと怖くはない。


「何するつもりかは知らねぇが、お前らのイチャつきなんて見たかねぇよ。忘れ物はなかったみたいだし俺は行く。邪魔して悪かった」


 瀧口の恋人達が騒ぎ立てる前に俺は部屋を出た。中から瀧口の『薄情者ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』という大絶叫が聞こえたが、無視だ無視。俺は馬に蹴られたくはない




 部屋を出て俺は考えた結果、管理人室へ戻る事にした。零と闇華、由香は心配ないだろうが、飛鳥、琴音、藍、神矢想子の方は物凄く心配だった。飛鳥達は夏休み前の一件で因縁があった連中。特に飛鳥と神矢想子は被害者と加害者。また子供返りされでもしたらマジで面倒な事になる。電話した時に爺さんからぶち壊したレクをもう一度させろと面倒なお達しがあるってのに飛鳥のトラウマが蘇ったら目も当てられない。


「マジめんどくせぇ……」


 コッソリ抜け出せないものか……と考えながら管理人室のドアを開け、中へ入る。リビングの方から言い争っているような零達の声がした。耳を澄ませてみると……


「ご主人様は私のものなの!!」

「違います!! 恭クンは私のものです!!」

「二人共寝言は寝て言いなさい!! お兄ちゃんはアタシのものよ!!」

「バカな事言わないでください!! 兄さんは私のです!!」

「違う。恭ちゃんは私の」

「藍ちゃんこそ勘違いしないで!! 恭くんは私のだよ!!」

「違うよ!! 恭は義姉であるあたしのだよ!!」


 全員が俺の所有権を主張しているが、俺は誰のものでもない。親権という意味で言うなら俺は早織のものだ。母親だし


「見つかる前に逃げるか……」

『そ、そうだね~。お母さんもあれは止められる自信ないよ……』


 苦笑を浮かべる早織と無言で眉間に手をやり溜息を吐く神矢想花。そして、溜息すら出ない俺。零達の争いを止められる者あるいは止める方法を知ってる人がいたら是非とも連絡をくれ。放り込んでやるから。


「今日は厄日か?」


 俺は見つからないよう管理人室を後にするとそのまま談話室へと向かった

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