高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

闇華VS東城先生の戦いに巻き込まれた俺はその後、口を滑らせたと思う

公開日時: 2021年2月5日(金) 23:26
更新日時: 2021年3月1日(月) 23:15
文字数:4,601

「…………」

「…………」


 初登校で他クラスとはいえ厄介な同級生に目を付けられ、担任との意外な過去が発覚し、その上初日から東城先生の終業時間まで学校に残り精神的疲労がMAXの俺は現在、女の闘いに巻き込まれていた。


「今日は厄日だ」


 テーブルを挟み睨み合う闇華と東城先生。夕飯前にこの二人は何してんだよ思う。


「ちょっと恭! こうなった原因はアンタにあるんだから何とかしなさいよ!」


 無茶を言うな零。女の戦いに割って入ったら碌な事がないのは女子と関わった経験が少ない俺だって分かるぞ


「無理だ。っていうか、何でこうなったんだろうな」

「アタシが知るわけないでしょ」


 闇華と零にはちゃんとメールで連絡は入れた。女性の同居人が増える事も言ったはずだから闇華VS東城先生の戦いなんて起こるはずないんだけどなぁ……どうしてこうなったかなぁ……とりあえずここに至るまでの経緯から探るか



 話は東城先生の終業時間まで遡る


「初登校で下校時刻越して残される事になろうとは……」


 この時の時刻は十八時。ゲーセンとかなら高校生だとバレた途端に補導されている時間だ


「ごめんね、灰賀君。初登校から遅くまで居残りさせるだけじゃなくて先生方の仕事まで手伝ってもらっちゃって」

「いえ、どうせ暇でしたから」


 十八時という事で職員室内に残っている先生はほんの僅か。他の先生は子供の迎えやら何やらでとっとと帰宅。んで、残っているのは東城先生を含め女性教員が三人と男性教師が三人。合コンなら女三人、男四人とバランスの悪い組み合わせだ


「そう言ってもらえると助かるよ。それに、他の先生からも助かったって言ってた」


 東城先生が言った通り俺はテストの採点はともかく、レポートの仕分けや各教室の簡単な掃除などの雑用をやらされた。普段は教師がやるものらしい。でも暇を持て余した俺は暇つぶしにと自分から手伝いを買って出た


「そりゃどうも」


 普段の俺ならめんどくさくて先生の手伝いなんて絶対にしない。暇じゃない限りは


「これからも何か手伝ってほしい事があったら灰賀君に頼むね。幼い頃にお母さんの手伝いよくしてたしね」


 お母さん……か。言われてみれば母親の手伝いをよくしていたな。それもあれがあってから出来なくなったけどな


「そうですね。気が向いたら手伝いますよ。ところで東城先生」

「ん? 何?」

「まだまだかかりそうですか?」


 仕事を早く終わらせろというつもりで言ったわけじゃない。あんまり遅く帰ると琴音が心配する


「もう終わったよ」


 パソコンの電源を落とし、帰り支度する東城先生。学校内での事で特にこれと言った原因は見当たらない。


 学校を出た俺達は女将駅に向かい、適当な電車に乗って熊外駅へ。そのまま家へ向かって歩いてきて……で、家に着いた時に東城先生がお約束のリアクションをかまし家に入って玄関のドアに鍵を掛けてエレベーターに乗って住まいである十四番スクリーンここに来た。原因はここに入る直前だな


「恭ちゃん」

「何だ?」

「一緒に住んでる人達ってどんな感じの人達なの?」


 今日初対面の東城先生にとって一緒に住んでる人達の人柄というのは気にならないはずがない


「ツンデレとヤンデレとドジっ子」


 雑な答えかもしれないけど零達の性格を知っている俺からするとこれ以上ない的確な答えだ


「私は人柄を聞いたつもりなんだけど……」

「俺も人柄を答えたつもりだよ。それに、入ればすぐに解かる」

「そう」


 入る前のやり取りに変なところはないな。


「ああ。ツンデレとドジっ子はともかく、藍ちゃんの過去を話せばヤンデレは嫌でも釣れる」


 俺が幼い頃に言った事を闇華に言えばどうなるかだなんて火を見るよりも明らか。だから絶対に黙っててほしいところではあった


「ふーん、ヤンデレね……じゃあ、こうすれば簡単にいぶり出せるわけだね」


 悪戯っ子のような笑みを浮かべた東城先生は俺の腕に抱き着いて来た


「それはそうだけどよ、歩きづらいし靴も脱がなきゃいけないから離れてくんない?」


 ラブコメとかで女が男の腕に抱き着いてっていうシーンはよく見る。俺はそれを見て特に何も思わなかった。実際自分がそれをされると女性特有の柔らかさと匂い、温もりを感じる以前に歩きづらいかった


「嫌。せっかく再会出来たんだから離さないよ」


 大人の女性に離さないと言われて嬉しくない男はいないだろう。特にクールな女性にこんな事を言われたら感無量だと思う


「今はいつでも会えるだろ」

「うん。だから会えなかった分の充電」

「さいですか」


 幸せそうな顔で会えなかった分の充電とか言われたら無理に引きはがす事なんて出来ず、俺は東城先生の成すがままだった。そんな時……


「恭君、部屋にも入らず何してるの?というか浮気?私がいるのに?」


 背後から闇華の声が


「や、闇華……」


 振り返るとそこには目のハイライトを失った闇華が立っていた


「うん。お帰り恭君。ところでそっちの恭君に抱き着いてる雌豚は何?」


 初対面の女性を雌豚呼ばわりする闇華。いつも以上に口が悪かった


「雌豚じゃない。私は東城藍。今日からここに住む」


 雌豚と言われた事を気に留めてないような様子で自己紹介をする東城先生。さすがに通信制高校で教師をしているだけあって多少の暴言に対するスルースキルは身に着けているようだ


「ああ、貴女が恭君のメールにあった入居者でしたか。私は八雲闇華。恭君の妻です」

「は? 妻? 恭ちゃんは私と結婚するって言ってたんだけど?」

「はい? 恭君は私のプロポーズを受け取ったんですよ? 貴女と結婚するだなんてあり得ません」


 部屋の前で勃発する闇華VS東城先生。女の戦い。どうやら原因は部屋に入る前にあったみたいだ



 で、互いに部屋の前で睨み合うのはどうなのよって事になり中へ入り今に至る。


「貴女、恭君の何なんですか?」

「部屋の前で言ったと思うけど、私は恭ちゃんと結婚の約束をした言わば婚約者だよ」


 東城先生の言葉に嘘はない。ただし、幼い頃に言った事で当事者である俺が覚えてない


「婚約者?恭君には私という妻がいるのにですか?」


 闇華さん?俺は貴女の告白を受けいてたつもりはないし、結婚した覚えもない。そもそも、俺も貴女も結婚できる年齢じゃないんですけど?


「それは貴女の妄想。私は実際に将来結婚するって言われた」


 そりゃ言いましたけど、ガキの戯言と笑い飛ばしてくれませんかねぇ……


「…………」

「…………」


 無言で睨み合う二人。もう嫌……


「恭、アンタ最ッ低」


 零の汚物を見るような視線が俺に刺さる。俺が何したってんだよ……


「そんな目で俺を見るな。東城先生の言った結婚の約束っつーのは俺が幼い頃の話だ。で、零も知ってるだろうが俺は闇華と結婚した覚えは全くない」


 方や過去の事を、方や承諾した覚えのない事を引き合いに出されても困る


「はぁ……」


 止めて零さん。何も言わずに溜息吐かないで


「何だその俺が悪いみたいな感じの溜息は」

「アンタが悪いんでしょ。とは言ってもこのままじゃ埒が明かないわね」


 目の前には未だに睨み合う東城先生と闇華が。零の言う通りこのままじゃ埒が明かない


「そう思うのなら何とかしてくれ」

「してくれ? それが人にものを頼む態度かしら?」


 くっ……! コイツ……人が下手に出てりゃ調子に乗りやがって……


「な、何とかしてください……」

「何とかしてください零さんって言ったら助けてあげるわよ?」


 厭らしい目で俺を見る零が悪代官に見える。チッ、背に腹は代えられない


「な、何とかしてください零さん」

「仕方ないわね。恭がそこまで言うなら何とかしてあげるわ」


 お前が言わせたんだろうが!


「た、助かる。それで? 何か策はあるのか?」

「まぁね。アタシにドーンと任せなさい」


 零はおもむろに立ち上がった。その姿が俺にはとても頼もしく見えた


「このまま睨み合いしてても仕方ない。闇華さんだっけ? 悪いけど恭ちゃんを諦めてくれない?」

「藍さんでしたっけ?そういう貴女こそ恭君を諦めてくれませんか?」


 闇華達は睨み合っていたと思ったらまた言い合いを始めた。零! 早く止めてくれ!


「ちょっと! アンタ達!」

「「何?」」


 言い争っていた闇華達の視線が零に向いた。よしっ!これであわよくば全て忘れてくれ!結婚とか結婚とか


「アタシと二人で住み始めた時に恭が好きな女のタイプを言ってたんだけど聞きたくないかしら?」


 零さん?貴女はこのタイミングで何を言いやがりますか?


「「聞きたい!」」


 闇華、東城先生?聞きたいじゃないよね?何?俺の好きなタイプの女性は自分だと信じて疑わない目は?


「なら耳をかっぽじってよーく聞きなさい!」

「「ゴクリ……」」


 生唾を飲み、零の言葉を待つ闇華と東城先生。俺は嫌な予感しかしない


「恭が前に『中学生はなぁ!! ババアなんだよ!! 女子高生と付き合うとかあり得ねぇから!! 二十代?骨じゃん!!』って言ってたわよ」


 零のこの一言で部屋の空気が凍った。コイツマジで何言ってんの?


「恭君……」

「恭ちゃん……」


 闇華と東城先生がハイライトが消えた目で俺を見つめる。え?何?東城先生もヤンデレの部類だったの?


「…………拙者はこれにてドロン!」


 零の落とした爆弾処理に困った俺は一目散に逃げ出した。『中学生はババアなんだよ!』だけだったらまだ何とかなった。それだけだったらな。でも『女子高生と付き合うとかあり得ない、二十代は骨』とか言われたら言い訳のしようがない


「「マテ……」」


 ハイライトの消えた闇華と東城先生が追いかけてきた。その顔はさながら廃校脱出ホラーゲームに出てくるキャラのようだった事を言っておこう。



 結局俺のホラゲ体験は夕飯ギリギリまで続き、二人に『俺の好きなタイプは下は一歳差から上は十歳差までだ』という事で終息した。大ボラを吹いた零にはキッチリガッツリ仕返しをし、一件落着。とはならなかったんだなこれが


「ね、寝苦しい……」


 ホラゲ体験をした後、夕飯となり改めて自己紹介をした東城先生と仲良くなったのは意外な事に闇華だった。で、今は就寝なのだが、寝苦しい事この上ない。原因は俺が夕飯の時に言った一言だ



 地獄のホラゲ体験が終わり夕飯。この部屋に来た時はあの有様だったので改めて自己紹介という事で零、琴音、闇華の順で自己紹介をした。その自己紹介が終わった後の話


「よく生きてたわね~、恭」


 ケラケラと笑いながら俺の生還を祝う零。追いかけられる原因はコイツが作ったんだけどな


「追いかけられる原因を作った奴が何をぬかしてんだ!」

「幼い頃の話とはいえアンタの言動が招いた事でしょ!」

「喧しいわ! 幼い頃は幼い頃! 今は今だろ! それに! 何勝手に俺をロリコン扱いしてんだよ!」

「え? 違うの?」

「ちげーよ! ふざけんな!」


 と、まぁ、ここまでは割かしいつもと同じだった。


「アタシはてっきり恭はロリコンだと思ってたんだけど?」

「違うよ? 俺はロリコンじゃないよ? つか、次俺をロリコン認定したヤツは叩き出すし、話し掛けられてもシカトするぞ」


 東城先生とは幼い頃の仲らしかったし、零、闇華、琴音とはそれなりに長い付き合いだったからこれくらい大丈夫だと思っていた


「「「…………」」」」


 大丈夫だと思っていたのは俺だけだったようで零達は皆一様に無言で涙を流していた


「お、おい、どうしたんだよ?」

「「「…………」」」」


 無言で涙を流し続ける零達は俺が何を言っても全く反応を示さなかった。結局俺はあの後誰とも会話する事なく就寝時間となったのだが、女性陣は無言で俺に抱き着いてきて今に至る。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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