高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

朱莉さんって二重人格?

公開日時: 2021年2月5日(金) 23:28
更新日時: 2021年3月6日(土) 22:45
文字数:3,903

「朱莉さん、俺が昔東城先生と結婚すると言ったのは本当ですか?」


 闇華達の自己紹介が済んだところで俺は朱莉さんに聞こうと思っていた事を聞く。東城先生がこの場に同席しているとややこしい事になる。聞くなら今しかない


「それって恭が四歳の頃の話?」


 何歳頃に言ったかなんて覚えてない


「何歳の頃に言ったかは覚えてません。俺が父から聞いたのは幼い頃に将来は東城先生と結婚すると言ったって事だけですから」

「そう。覚えてないんだ……口を開けば藍と結婚するっていつも言ってたのに……」


 幼い頃の俺、お前はいつもそんな事言ってたのか?


「恭君? どういう事ですか?」

「さっきから黙って聞いてれば聞き捨てならない事が多いんだけど? ちゃんと説明してくれるよね? 恭クン?」


 幼い頃の俺が言った事で闇華と飛鳥という野獣を目覚めさせてしまったようだ。コイツらは連れてくるべきじゃなかったな


「闇華、飛鳥。下の毛も生え揃ってないガキが戯言をいちいち拾うな」


 こんな事で嫉妬されてたら俺の身が持たない


「そうだよ。それに、恭は藍だけじゃなく、一緒に遊んでくれてた年上の女の子全員に言ってたから何も心配ないよ」


 朱莉さん?それは俺にとって十分心配する事ですよ?幼い頃の俺は女……特に年上女性に対して節操がなかったって言ってるようにも聞こえますよ?


「恭君!! 私にはそんな言葉言ってくれた事ないのに酷いです!!」

「私は同級生であっても一応、年上なんだよ!? 恭クン!!」


 東城先生がこの場にいなくてもややこしくなった


「幼い頃に言った事で俺は何一つ覚えてない!! それに! 物事の善し悪しが分かる年代になってまでガキの戯言を本気にしてる奴なんていねーよ!」


 子供の頃にした約束。それを今でも覚えている奴がいないだなんて言わない。実際問題その約束を糧に今まで頑張ったなんて話もないわけじゃないしな


「恭君!! それはそれで酷すぎます!!」

「闇華ちゃんの言う通りだよ!! 幼い頃の約束を大事にしてる人だっているんだよ!?」


 俺の失言によりさらにややこしくなった


「ともかく! 俺が聞きたいのは幼い頃に東城先生と結婚するって言ったかどうかだ! 弁明なら後でいくらでもすっから闇華も飛鳥も黙ってろ! 話が前に進まねぇ!」

「「むぅ~……」」


 とりあえず闇華と飛鳥は黙らせた。さて、話の続きだ


「すみません、朱莉さん。話を脱線させてしまって。で、話の続きなんですが……」

「うん、恭が藍と結婚するって言ったかって話だったよね?」

「はい」

「それは本当だよ。恭が四歳の頃に将来の夢は藍のお婿さんだって言ってたのも藍を始め恭と一緒に遊んでくれてた年上の女の子達にも同じ事を言ってたっていうのもね」

「マジか……」


 俺は朱莉さんの話を聞いて絶望した。爺さんや親父のような女に節操のない男にはなるまいと思っていたのに幼い頃の俺が女に節操がなかっただなんて……


「うん。マジ。正確には恭と一緒に遊んでくれる子って男の子も女の子も年上しかいなかったし男の子の方はともかく、女の子の方は藍を始めみんな『将来私と結婚してくれる?』って聞いて恭が『うん!! 僕、将来は〇〇ちゃんと結婚するよ!!』って言ってただけなんだけど」


 朱莉さんの話から推測するに幼い頃の俺はどういうわけか同年代の子と一緒に遊ぶ事はせず、同性であれ異性であれ年上と遊んでいたらしい。んで、女の子の方は結婚の意味をちゃんと理解してなかった俺に誘導尋問を掛けた。こんなところだ


「それじゃあ俺は女にだらしない節操ナシじゃないんですね?」

「そうだよ。どっちかって言うと藍達ががっつき過ぎてただけ」


 女子は男子よりも成長が早いと聞いた事がある。当時の東城先生を始めとする女子はマセガキばかりだったんだな


「よ、よかったぁ~爺さんや親父のように女にだらしなかったわけじゃなくて……」


 爺さんや親父とは違うと分かったところでホッと胸を撫で下ろす。二人とも嫌いじゃないけど、破滅を招く異性関係を構築するのだけは止めてほしいと常々思っていた


「どちらかというと藍達が野獣だっただけ」


 普段の東城先生からは想像出来ないけど、今の話で朱莉さんの言ってる事はかなり真実味を帯びていた


「だ、そうだ。闇華、飛鳥。納得したか?」

「「はい……納得しました」」

「ならよし! 言っとくけど今の話は零や琴音には内緒だぞ? 言ったら面倒な事になるからな」

「「分かりました」」


 とりあえず今の話は零達に黙ってろと二人に釘を刺したから一先ずは安心だ。


「お茶入ったよ」


 闇華と飛鳥に釘を刺し安心したところで東城先生が人数分の湯飲みと茶菓子の乗ったお盆を持ちやって来た


 東城先生がお茶を持って来たところで話は一旦止め、ティータイム。出てきたのは緑茶と羊羹だからティータイムというのは相応しくないか


「私がお茶入れてる間に盛り上がってたみたいだけど何話してたの?」


 東城先生? 貴女は何で中断した話を蒸し返すんですか?


「恭が昔どんな子だったかって話だよ。それと藍が再会した時に学年を誤魔化した話」


 朱莉さん、話の内容を素直に伝えないでくれません?後々面倒事に巻き込まれるの俺なんですから


「ふーん。で? 恭ちゃんは昔の話を聞いてどう思ったの? ついでに私が学年を誤魔化してた事についても」


 昔の話と学年を誤魔化した事についてどう思ったかと聞かれましても答えに困るだけなんですけど……


「別にどうとも。昔の俺は何で同じ歳の子と遊ばなかったのかな? とか、何で学年誤魔化したのかなって思ったくらいだ」


 幼い頃、東城先生から酷い目に遭わされたとかなら俺は怒り狂っていたか冷たく接してたと思う。しかし、特にこれと言った事がなかった。咎める理由などない


「そう」

「ああ」

「幼い頃の恭ちゃんが年上の子としか遊ばなかったのは近くに同じ歳の子がいなかっただけで私が再会した恭ちゃんに学年を誤魔化したのは将来を考えて本当の事を伏せただけって事は言っておく」


 現在の東城家が一軒家だという現状と自分の親父、東城先生の父親の職業を考えると昔住んでいたところは病院の公宅だという事は容易に想像出来る。ここで分からないのは公宅には同じ歳の子が住んでいなくても近くの家に一人くらいは同じ歳の子が住んでいてもおかしくないという事だ


「それはいい。俺がおや? って思ったのは幼き日の俺は何で年上の子としか遊んでなかったか? って事だけだ」


 朱莉さんから話を聞き、年上としか遊んでなかったという部分がどうしても引っかかる


「あの頃公宅住んでる子供は私を含めてみんな小学生だったから。で、近くの家に子供はいたけどみんな恭ちゃんよりも年下……今で例えるなら小学校六年生から中学校三年生くらいの子しかいなかった。それもあったけど、私を含め当時公宅に住んでいた子達はみんな恭ちゃんが大好きだったから」


 不思議な事もあったもんだ。公宅に住んでいた子達は全員が年上で近くの家に住んでいた子達は全員が年下。東城先生がサラッと言った大好き宣言よりも俺は極端すぎる当時の状況にリアクションが出来なかった


「昔の恭クンは極端な環境にいたんだね」

「ですね。公宅に住んでた子が年上ばかりでも近くの家に一人くらいは同年代の子がいてもおかしくなのに」


 全く持って飛鳥と闇華の言う通りだ。こんな妙な事もあったもんだ。


「恭の現状を考えると何も不思議じゃないよ。デパートの空き店舗なんて不思議なところに住んでるんだから」


 朱莉さんの一言に俺達は反論出来なかった。世界中探してもデパートの空き店舗に住んでる高校生なんて俺くらいなものだ



 お茶を飲み終えた俺達は朱莉さんの提案で東城先生の荷物を詰める組と朱莉さんの手伝いでアルバムを整理する組に分かれた。東城先生の父親はどうしてんだ? って? 朱莉さん曰く二日酔いで寝てるらしい


「恭、二人きりだね……」


 俺は現在、朱莉さんと二人きりで物置部屋にいる。荷物を詰めるチームとアルバムを整理するチーム分けをした時、朱莉さんが『恭と二人で話があるから』と有無を言わさず俺を物置部屋に引きずり込んだ。余り物となった闇華と飛鳥は必然的に荷物を詰めるチームとなったわけだ


「朱莉さんが強引にそうしたんでしょ? それに、俺と強引に二人きりになったって事は東城先生には聞かれたくない話でもあるんですか?」

「ぴんぽーん! だいせーかーい! 昔から恭って察しがいいね!」


 状況確認。ここは東城家の物置部屋。目の前にいるのは東城先生の母親である朱莉さん。今はその朱莉さんと二人きり。で、目の前にいるハイテンションな女性は誰だ?


「お褒めの言葉は光栄なんですけど……急にテンション上がりましたね?」

「こっちが素だよ? って言うか、藍の真似して喋るのって疲れるわ~」


 ぶっちゃけちゃったよ……


「真似してたんですか……」

「あったり前でしょ! そもそも! 藍は外見私似、性格夫似だよ!」


 知らなかったよ!


「知りませんでしたよ」

「教えてませんでしたよ!」


 う、ウザイ……担任の母親とはいえ何だ? このウザさは


「東城先生が誰に似たとかはともかく、何で俺と二人きりになったんですか?自分の本性を見せるためだけじゃないでしょ?」


 中学時代、爺さんに引っ張りまわされて大人のお姉様がいる店に放り込まれたお陰で年上女性がする事に驚かなくなった。悲しいかな灰賀家の性


「まぁね! 恭が私や藍の話を聞いただけで素直に信じるとは思わなかった。だから実際に証拠を見せてあげようと思ったんだよ!」


 朱莉さんと東城先生の話を信じてないとは一言も言ってない


「は、はあ……証拠ですか……」

「うん! ちょっと待ってて!」


 朱莉さんは大量に詰まれた物の中から一冊のアルバムらしき物を引っ張り出した。中身は俺が知る由もない


今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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