高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

ヤンデレ系女子を拾ったその日に告白された

公開日時: 2021年2月5日(金) 23:25
更新日時: 2021年2月14日(日) 06:58
文字数:4,531

「一人暮らし二日目で女を拾う事になろうとは……」


 謎の女性を一番スクリーンの前で下ろし、後の事は零に任せて俺は一人風呂に入り、現在、風呂から上がり女湯である一番スクリーンの前で考えていた。女性をこれからどうしようか、家具が何一つないのは何でだろうかと俺の悩みは尽きない。


「あの女性がもし零と同じ家なき子だったらどうすんだよ……」


 熊外駅で絡まれた時、女性の髪はボサボサ、身体からは鼻を刺すような異臭がした。実家があるのならそんな事は早々ないはずだ。零の件もあったので一概に絶対ないとは言い切れないがな。その事は考えないようにしてだ、あの女性が家なき子だった場合どうするかが重要だ


「はぁ~……あの女性に帰る家があろうと無かろうと気が重い……」


 熊外駅で倒れた時は俺をキョウスケ君とやらと間違えていた事に気が付いたっぽいけど、ハッキリ言って俺はあの女性がまだ勘違いをしているんじゃないかと疑っている。その事もあってかあの女性はなるべくなら家有り子であってほしい


「全ては本人に直接聞くしかないのか……」


 俺一人で考えていても答えが出るわけでも何でもない。全てを知っているのはあの女性だけだ。なんて事を考えながら待つ事三十分


「女の風呂が長い事に関しては何も言わないけどよ、三十分は長くないですかねぇ……」


 男の俺は五分弱くらいで出てきたと言うのに零達は未だに出てこない。女性に付いてる刺激臭が落ちないのか、それとも、何かに手間取ってるのか……


「まぁ、風呂が長い理由はどうでもいいとして、これワンチャンもう一風呂浴びれるんじゃね?」


 零達の風呂が長い理由なんて俺には分からない。そんな事よりも俺はこのままだと湯冷めして風邪を引きそうだったのでもう一度風呂に入る事にした。



「おっそい! アンタ! いつまで待たせるの!」


 二度目の風呂から上がり、外へ出るとガウンを着たお怒りの零と女性が待ち構えていた


「わ、悪い、つい長湯してしまった」


 本当は二度風呂したんだが、それを零に言うとブチ切れられそうだったので長湯した事にした。


「ふん! 恭が長湯するわけないでしょ! 大方待ちきれなくて二度風呂したってところなんじゃないの?」


 零、見てないのによく分かったな


「いやいや、俺だって汗を搔いたら長湯くらいするぞ」

「ふ~ん……」


 本当は汗を搔いた時でも長風呂はしない。それを見透かしているのか零は俺に冷ややかな視線を送ってきている


「そ、それより、そっちの人、見違えるくらい綺麗になったな!」


 俺の言うそっちの人とはもちろん、駅で持ち帰ったヤンデレ系女子の事だ。


「そりゃそうよ! お風呂に入ったんだから! それより聞いてよ! この子の元カレって酷いのよ!」

「何が?」

「この子と付き合ってるのに他にも彼女がいたの! しかも! この子の親戚もこの子のご両親がこの子の為に残した遺産を全て食いつぶしてこの子は今まともに生活できる状態じゃないらしいのよ!」

「そうか。大変だったんだな。それより、零」

「何よ?」


 零の話でこの女性は俺達が持ち帰るまでいい扱いを受けてなかったのは理解した。それはいいとしてだ────────


「この子じゃなくてちゃんと名前で呼んでやれ。この子だけじゃ俺が戸惑うから」


 これまでの境遇を話してくれるのはいい。ただ、この女性にも名前はあるんだからちゃんと名前で呼んでやらなきゃ困ると思うぞ?まぁ、名前を聞いていたらな


「その事なんだけどね、アタシはお風呂場で名前を聞いたからいいとして、恭、アンタには自分の口からちゃんと自己紹介したいって聞かなかったのよ」


 零の隣にいる女性を見るとコクコクと頷いていた


「そうかい。んじゃ、まぁ、自己紹介と行きますか。って言っても零は済ませてるんだっけ」

「まぁね」


 一緒に風呂に三十分以上も一緒に風呂入ってたんだから当たり前っちゃ当たり前だが、案の定、零は自己紹介を済ませていたようだ


「じゃあ、俺から。駅でも名乗ったと思うが、俺の名前は灰賀恭。この家?の家主だ」


 ここを家と言っていいのかは微妙なところだ。ここで暮らしている以上は家と言わざるを得ないのも事実だけどな


「わ、私は八雲闇華やくもやみかです……え、駅では勘違いをしてしまって申し訳ありませんでした……」


 女性……八雲闇華は俺に向かって勢いよく頭を下げた。それにしても名前が闇華でヤンデレ……


「だ、誰にでも勘違いはある。それに俺は気にしていないから大丈夫だ」

「そ、そう言っていただけると嬉しいです」


 誰にだって勘違いはある。だから闇華さんが俺をキョウスケ君とやらと勘違いしたのは気にしない。そんな事よりも……


「闇華さんが言っていたキョウスケ君とやらと俺ってそんなに似てるのか?」


 駅で絡まれた時に闇華さんは俺を躊躇する事なくキョウスケ君と呼んだ。つまり、俺とそのキョウスケ君とやらが似ていたからだ


「似てます……女の子を侍らすところとか、闇華だなんて名前の私に優しくしてくれるところとか……」

「そ、そうか……」

「はい……ですが、貴方はキョウスケ君じゃなく恭君ですよね?」


 俺がキョウスケ君じゃないと解ってるのか悲しそうな笑顔を浮かべる闇華さん。出来る事ならキョウスケ君のフリだけでもしてやるべきなんだろうが、生憎俺はそこまで人間出来てない


「ああ。俺はキョウスケ君じゃない。女の立場からすればフリでもしてほしいとは思うが、生憎と俺はそこまで気の利いた事なんて出来ない」

「い、いえ! 恭君にキョウスケ君のフリをしろだなんて言いませんよ!」


 手をワタワタと振る闇華さんは駅で絡んできた人と同一人物だとは思えなかった


「そ、そうか……ところで駅で会った時に闇華さんから刺激臭がしたんだが、アレって何の臭いだったんだ?あっ、答えたくないなら答えなくていい」


 鼻を刺すような刺激臭。今は風呂上りだからかそんな臭いは全くしないが、駅で会った時は酷いだなんてもんじゃなかった


「あ、アレは、キョウスケ君の家に行った時に別の女の子からかけられたトイレの洗剤の臭いです……その前は親戚からタバコの吸い殻が入った水をかけられました……」


 俺達と会う前までの闇華さんは想像以上に酷い扱いを受けていたらしい。これは本人の意志によるところが大きいが、一応、聞くだけ聞いとくか


「そうか。随分大変な思いをしたんだな。ところで闇華さんは行くところあるのか?」

「え……?」


 行くところがあるかって聞いただけなのにポカンとする闇華さん。俺そんなにおかしい事聞いたか?


「え?じゃなくて、闇華さん駅で会った時は手ぶらだったみたいだし、行くところあんのかなぁ~? って思って聞いたんだが、行くところがあるならそれでいい」


 駅で闇華さんが倒れたのは空腹が原因だ。そんな人がどこに行くのだろうかと疑問ではある。俺から聞いといてなんだがな


「私に行く宛てなんてありません……。零さんが話した通りキョウスケ君は浮気して、親戚も私の両親が残した遺産を食いつぶしたら私を召使いのようにコキ使い始めました……。恭君には言ってませんが、私、親戚から逃げてキョウスケ君のところに行きました。ですが、キョウスケ君は他の女の子といるだけじゃなく、私を門前払いしました。愛していたのにッ! あい……していたのに……ううっ……」


 闇華さんは親戚やキョウスケ君とやらの事を思い出したのか涙を流し始めた。キョウスケ君とやらはただの女好きで親戚は闇華さんの両親が残した金が目当てだった。話を聞く限りじゃ俺にはそう言っているようでならなかった


「ねぇ、恭……闇華ちゃん、家に置いてあげられない?」


 泣いてる闇華さんの頭を撫でながら今まで黙っていた零が口を開いた


「俺は別に構わないぞ」


 零を拾った時も思った事なのだが、この家は俺一人で住むには広すぎる。それが零を拾って住む人数は増えたが、それでもまだまだ広い。今更闇華さん一人増えたところでどうって事ないのだ


「本当!? 後で止めたとか言わないでよね!」

「言わねぇよ! 零! お前もだがな! ここにいたきゃ好きだけいろ! 俺は追い出す気なんてねーから!」


 零も闇華さんも学校や仕事の事は後で考えるとしてだ。行く宛てがないなら好きなだけここにいればいい。どうせ俺一人で住むにはこの家は広すぎるんだからな


「言ったわね!」

「ああ! 言ったさ! 零も闇華さんも行く宛てがないなら好きだけここにいろ! どうせ俺一人で住むには広すぎるからな!」

「その言葉忘れんじゃないわよ!!」

「ああ! 忘れねーさ! いたいなら好きなだけいろ!」


 喧嘩っぽくなってしまったのは気にしないとして、何回も言うが俺一人で住むには広すぎる。住まいである十四番スクリーンもこの建物全体も。だったら行く宛てのない女の子の一人や二人を住まわせてもいいんじゃないかと思う


「って家主の恭は言ってるけど、闇華ちゃんはどうする? ここに住む? それとも、親戚の人のところへ帰る?」

「わ、私は……親戚の元へ帰るは嫌です……。ですから、恭君さえいいと言うのなら私をここに置いてもらえませんか?」


 目に涙を貯め、まるで許しを請うように見つめてくる闇華さん。その表情は不安一色に染まっている


「さっきも言ったと思うけど、行く宛てがないなら好きなだけここにいてもらって構わない。零から全て聞いてると思うが、ここは元デパートだった建物だ。住まいにしろ建物全体にしろ俺一人で住むには広すぎる」

「ほ、本当ですか!? 後で出て行けとか言いませんか!?」


 零然り、闇華さん然り、俺はそんなに薄情な人間に見えるのか?


「言わない言わない。好きなだけここにいればいい」

「じゃ、じゃあ! 私もここに住んでいいんですね!?」

「ああ、構わない」

「ありがとうございますッ!」

「うわっ!? や、闇華さん!?」

「ちょっと! 恭! 何してんのよ!!」


 感極まって俺に抱き着いて来た闇華さん。それに戸惑う俺。何故か闇華さんに抱き着かれた俺を咎める零。見る人が見れば修羅場のように見えなくもない今の状態は中学の頃の俺からは考えられない


「俺に文句を言うな! 抱き着いて来たのは闇華さんだ!」

「分かってるわよ!」

「だったら俺に文句を言うのはお門違いだ!」

「知ってるわよ! ただ何となく気に入らないの!」


 何となくで怒られたら俺の身が持たないんですけど!?


「そうかよ!」


 何となくで怒られたら堪ったもんじゃないと思いつつ抱き着いている闇華さんに視線を移すと……


「恭君、私、貴方の事をどうしようもなく愛してしまいました。ですので私は貴方の側を離れません。ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと側にいますね♪」


 光のない目でとんでもない爆弾を落とした


「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」


 俺と零は闇華さんの落とした爆弾にただただ驚くばかり。ヤンデレ系女子を拾ったと思えばその拾った女子から会ったその日に告白されるとは思わなかったよ……

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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