高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

爺さんは何をしに来たんだ?

公開日時: 2021年2月10日(水) 22:35
文字数:4,107

 零達女性陣が退出し、お袋との会話もなくなり、俺の部屋はようやく一人部屋本来の静けさを取り戻せ────


『恭ー?ワシじゃ! お爺ちゃんじゃ!』


 なかった。ドアをノックする音と共に聞こえる爺さんの元気な声により、俺の安息が終わりを告げてしまったのだ


「面倒なのが来た……」


 生活面や拾ってきた連中の件に関しては頼もしい祖父だが、今は相手にするのすら怠い


『きょ~う~?いないのかのぅ~?茜ちゃん達からは部屋にいるって聞いたんじゃがのぅ~?』


 普段からウザいなぁ~と常々思っている我が祖父が今日に限っては二倍ウザく感じてしまう。茜達と喧嘩?をしたのが原因でウザいと感じるのか、それとも、爺さんに対しては鬱憤が溜まってたからなのかは分からないけど


「居留守使って立ち去るのを待つか」


 下手に出て行けばなし崩し的に彼を部屋に招き入れなきゃならなくなる。そうなるくらいなら居留守を使ってやり過ごすに限る。俺は目を閉じ、爺さんが去るのを待った。だが────


『恭ー?女の子がたくさんいるいいとこ行こうぜー?』


 俺が居留守を使っていると察した爺さんは大声で騒ぎ始めた。


「う、うるせぇ……」


 外で騒ぐ爺さんはとどまる事をせず、出てこないと分かるや否やデカかった声のボリュームを上げ、先程よりもさらにデカい声で騒ぎ始めたのだ。これには俺も……


「だぁぁぁぁぁぁぁ!! うるせぇ!!」


 ベッドから飛び起きてしまう。見ず知らずの人間が騒いでるのならまだしも身内が騒いでるとなると話は別だ。俺はベッドから出ると足早にドアの方へ行き、ロックを外し────


「うるせぇよ!!」


 勢いよくドアを開けた。


「なんじゃ、いるじゃないか」


 ドアを開けるといたのはふてぶてしい態度の爺さん。この糞ジジイ……俺が部屋にいると最初から知った上で騒いでいたのかよ……


「寝てたんだよ! アンタが大声で騒ぐから目が覚めちまったろうが!」


 寝ていたというのは当然、嘘だ。少しでも爺さんに罪悪感を植え付けるためのな!


「寝てた?零ちゃんと藍ちゃんの話とはちと違うぞ?儂が聞いた話じゃ秘密について散々講釈を垂れてたと、そう聞いてるのじゃが?」

「アイツら……」


 どこかで爺さんと会ったらしい零と東城先生はここであった事を喋ったようだ。よりにもよって面倒な年寄に


「そんなわけで恭が茜ちゃんや真央ちゃんを泣かせたのも知っとるぞ?」


 俺が秘密について話したという時点で察しはしていた。この部屋で起きた事全てを話しているだなんてのはな!


「そうかい。で?何の用だよ?女泣かせんなって説教でもしに来たか?だったら帰れ」


 爺さんを適当にあしらい、ドアを閉めようとした。その時────


「まぁまぁ、せっかく孫に会いに来たんじゃ、そう邪険にするでない」


 このジジイはドアの間に足を入れ、閉めるのを阻止してきやがった


「はぁ……」


 こうなったら追い出すのは実質不可能と諦めた俺は不本意ながら爺さんを部屋へ招き入れる



「適当な場所に座ってくれ」

「すまんのう」

「そう思うなら帰れ」


 爺さんを部屋に招き入れ、適当な場所に座るように促すと俺は冷蔵庫の中から缶コーラを二本取り出す。このジジイがコーラを飲めるかどうかは知るか。


「はぁ……恭弥の女装は相変わらず気持ち悪いのぅ」


 缶コーラを二本取り出し、コップを用意してる最中、爺さんが唐突に親父をディスり始める


「いきなりなんだよ?」


 プルタブを開け、コーラをコップに注ぎながら返す。灰賀の一族はいきなり意味不明な事を言い出すから困る


「別に?孫と祖父が話をするのにいきなりも何もないじゃろ。言ったじゃろ?儂はお主と話をしに来たと」

「茜達の次は爺さんかよ……マジでめんどくせぇ……」


 二人分のコップにコーラを注ぎ終え、それを持って振り向くと爺さんは椅子に腰かけていた。まぁ、老体には背もたれの付いた椅子の方がいいのかもしれないか


「まぁ、そう言うな。儂だってこれからする話は面倒なんじゃ」


 面倒ならするなよ……


「面倒ならしなきゃいいだろ」


 俺は爺さんにコーラを渡しながら向かい側の椅子に腰かける。コーラでよかったか?って確認なんてするか。この部屋の冷蔵庫にはコーラしかなく、他の飲み物を出せと言われたら買いに出ないとならねぇし


「じゃな。女というのはつくづく面倒な生き物じゃよ」


 やれやれと肩を竦めた後で爺さんはコップに口を吐けた。自分で出しといてなんだが、年寄が炭酸を摂取してよかったのか?


「なら何で婆さんと結婚したんですかねぇ……矛盾してんだろ」


 爺さんの言う事は矛盾している。女が面倒だと言うのなら結婚なんてせずに独身を貫けばいい。なのに結婚し、子供までいるのは明らかな矛盾だ


「そうじゃな……恭の言う通り矛盾してる。じゃが、面倒だと思いながらも好きになり、愛してしまったから結婚したんじゃろうな」

「そんなもんかねぇ……」


 恋愛というのはよく分からん。そう思いながら俺はコップに口を吐けた


「そんなもんじゃ。して、恭」

「何だよ?」

「お主、茜ちゃんと真央ちゃんに隠し事してるそうじゃな」

「ああ。してるけど?それがどうかしたか?」

「別に。どうもせん」

「なら何で聞いたんだよ?」


 このジジイは全てを知った上で聞いてきたから質が悪い


「恭も隠し事をする年齢になったんじゃと思うてのぅ。そうか……恭もそんな歳になったか……」

「隠し事をするのにそんな歳もこんな歳もあるか。人に言えない、知られたくないから隠し事なんだよ」


 人に言えて知られたいなら隠し事じゃない。知られたくないし言えないから隠し事だ


「じゃな。人間誰しも人に言えない事や知られたくない事の一つ二つある」

「だろ?爺さんは零と藍ちゃんから聞いてて知ってると思うが、今回の事は極力知られたくねぇんだ。特に特定の人間にとはいえ、大勢の人に名前と顔、声を知られている茜と真央にはな」

「それはあの娘達が信用出来ないから知られたくないのか?」

「信用出来ない……ってわけじゃねぇ。爺さんはあの二人の仕事を知ってるだろ?」


 二人の所属する事務所の社長である操原さんは爺さんの友人で彼の職業を知っているのなら茜と真央が信用出来ないからって言葉は出てこないはずだ


「当然じゃ。儂の友人なんじゃからの」

「だったら茜と真央が信用出来ないからってのは出てこねぇんじゃねぇのか?」

「そう言う恭が茜ちゃんと真央ちゃんを声優だからって理由で遠ざけているように見えるのは儂の目が節穴じゃからか?」


 声優だから遠ざける事はしない。有名人のゴタゴタに巻き込まれたくないとは思っていても職業で人を差別するだなんていくら何でも偏見が過ぎる


「あの二人が声優だから遠ざけてるんじゃなくて、あの二人に妙なレッテルが付かないために距離を取ってるだけだ」


 彼女達は声優で声優ってのは作品やファン有りきの職業。俺のせいで出演出来る作品やファンが減ったら目覚めが悪い。だからお袋の事やオカルト関係の事からは遠ざけ、関わらないのが彼女達にとって一番いい


「それはあくまでも恭の意見じゃろ?茜ちゃんと真央ちゃんの意見はどうなる?」

「さぁな。本来関わるべき事じゃない話を強引に聞き出そうとしてんだ、茜と真央がどう思ってようと俺の知ったこっちゃねぇ」

「なら、何であんな事したんじゃ?」


 あんな事?何の話だ?


「あんな事?」

「恭のアルバムを盗み見ていた日にお主は儂らに微量ながら霊圧を当てたじゃろ」

「ああ、それか。あれは単にムカついたからだ。無断でアルバムを見られたんだ、誰だって腹が立つだろ?」


 誰だって隠れて自分の写真を見られるのは嫌だろ?特に昔の写真ならな


「それに関しては謝る。じゃが、それと茜ちゃん、真央ちゃんに隠し事をするのは話が別じゃないのか?」

「説教をするなら帰れ。茜と真央が俺が隠してる事を話せっつーならアイツらの方が先だ」


 俺には隠し事を話せと言っておいて自分達は話さないのは理不尽だ。人の隠し事を知りたいならまず自分が話さないとな


「儂は別に説教をするつもりなんてない。ただ、恭が茜ちゃんと真央ちゃんをどう思っているのか知りたかっただけじゃ」

「俺が茜や真央、零達をどう思ってようがどうでもいいだろ?」

「はぁ、昔は素直な子じゃったのに……」


 悪かったな! 素直じゃなくて!


「うるせぇ。生憎俺は祖父と女について語り合う趣味は持ってねぇんだよ」


 親父とも恋バナをするのは躊躇われるのに祖父となんてもっと出来るかってんだ


「儂だって孫と女について語り合いたくなんてないわい! 仕方ないじゃろ! 零ちゃん達に頼まれたんじゃから!」


 爺さん……アンタ、それでいいのか?


「いい歳してパシリかよ……」


 直接聞きに来れない零達も零達だけど、パシリみたいに使われる爺さんもどうかしてるぞ……


「喧しいわい! 元はと言えば恭が一人フラッとどこかへ行ったのが悪いんじゃろうが!」

「うぐっ! そ、それを言われると何も言い返せねぇ……」


 爺さんが放った苦し紛れの攻撃は俺にダメージを与える。元を辿れば俺────というか、お袋が単独行動さえしなければ茜と真央が泣いて出て行く事なんてなかったのは事実だ


「そうじゃろうそうじゃろう。早織さん関係の事を茜ちゃんと真央ちゃんに言えないのは分かるが、彼女達はアルバムを盗み見た日に起きた事についてかなり違和感を持っとるようじゃから諸々バレるのは時間の問題じゃぞ?」

「はいはい。バレたらバレた時考えるわ」


 バレるのは時間の問題だったのね……初めて知った……。まぁ、爺さんに言った通りバレたらバレた時に考えればいいんだけど


「呑気なもんじゃな」

「何が言いたい?」

「いや、早織さん関係の事を茜ちゃんと真央ちゃんには頑なに隠そうとする割に警戒心が低いんじゃなと思うてのう」


 爺さんが何を言っているのか分からない


「何を言っているんだ?」

「何を言っている?そうじゃなぁ~、これな~んじゃ?」


 厭らしい笑みを浮かべた爺さんが懐から取り出したのは黒く小さな物体。何かの機械であるのは確かだが……何なんだ?


「何だよ?それ?」


 俺が物体を指さして尋ねると爺さんは先程よりもさらに厭らしい笑みを浮かべ────


「盗聴器じゃ!」


 とドヤ顔で言った。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 ビックリして声がでっかくなっちゃった!

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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