高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

俺は知らない間に親父達を強く殴っていたらしい

公開日時: 2021年2月5日(金) 23:28
更新日時: 2021年3月8日(月) 00:17
文字数:4,829

「まさか親父が再婚するとはな……」


 お袋の形見であるペンダントを取り戻し、アルバムを回収した俺は熊外駅を目指している最中だ。


「それも再婚相手がアイツの母親だっつーんだから世間は狭いな」


 ゴールデンウィークの午後に一人で外を歩く。気楽なモンだ。親父の再婚をちゃんと祝っておけばよかったと後悔する事すらしてない俺はきっと親不孝者なんだろうとは思う。だが……


「過去に自分をイジメていた連中の一人と家族になるからって言われてすぐに信用なんて出来ねぇよなぁ……」


 自分が弟だからとかそういう問題じゃない。自分をイジメてた奴を信用する奴がいると思うか?いないだろ?そんな奴と家族?あり得ないだろ


「家族になりたいなら俺抜きでやってくれってな」


 親父が再婚しようと何しようと俺には関係ない。未成年じゃあるまいし結婚するのにいちいち許可もいらんしな


「家に帰ったら零達に洗いざらい聞かれるんだろうなぁ……」


 実家に帰る事は伝えてあるものの、具体的な用事は伝えてない。当事者である俺が知らなかったんだから伝えようがないと言った方が正しい。それにしても……


「爺さんはよく結婚を許したな……何を考えているのやら」


 俺も結婚したきゃ勝手にしろと言ったからある意味では爺さんと同じなのかもしれない。


「はぁ……」


 何も言えない……親父にも女性とその娘にも……マジでやるなら勝手にやってくれ


 じりりりりん! じりりりりん!


 実家であった事を思い出し、呆れていたところに着信が入った


「誰だよ……」


 ズボンのポケットからスマホ取り出し、相手を確認すると着信画面には『親父』の文字が。


「あんな事あった後によく電話なんて掛けられるよな……神経が図太いのやら、それとも、タダのバカか……」


 俺は応答拒否をタップし、スマホをズボンのポケットへ戻す。多分、親父からの電話に出る事は未来永劫ないだろう。



 あの後も何度か親父からの着信はあった。着信はあったが、俺は一度も応答する事はなく、終いにはマナーモードにし、着信があっても無視。着信という着信を無視し続けながら歩く事三十分。


「やっと着いた……」


 目的地である熊外駅に辿り着いた。


「このまま家に帰ろう……んで、帰ったらとっとと寝よう」


 外はまだ十分に明るい。なのに俺は眠い。何故か?話の通じない奴と話をしたからだ


「寝る前に風呂だな」


 家にいる時は気にも留めていなかったが、ふと手を確認すると若干赤くなってる。これが腫れ上がって赤くなっているのか、それとも、アイツ等の血で赤くなっているのかは分からない。痛みを感じないって事はアイツ等の血なんだとは思う。この調子だと足の方も赤くなってるよな……


「手はともかく、靴下に付いてたら落とすのに手間だぞ……」


 地肌に付いた血は洗えば落ちる。衣類に付いた血はそうはいかない。最悪の場合、洗っても落ちない。どうか靴下に血が付いてませんようにと祈りながら俺は家への帰路に着いた。



 家に着き、そのまま部屋の前に来た俺。実家にいた時間、実家から熊外駅まで向かう時間。どちらも大して多くはなかったはずなのにかなり疲れた


「ただいま~」


 精神的にも身体的にも疲労感が拭えぬまま部屋の中へ。


「おかえり! 恭!」


 部屋の中に入るとちょうど出入口で待ち構えていた零が出迎えてくれた。コイツは一体いつから待ち構えていたんだ?


「ただいま、零」


 出迎えてくれたのは嬉しい。が、零は今の俺にとって要注意人物だ。実家はどうだったか、何があったかを聞かれちゃ堪ったもんじゃない


「おかえり! 外は暑かった?」

「ああ。暑かった。だから冷たい飲み物を用意するように伝えてきてくれないか?」

「分かった! 琴音に伝えておくわね!」


 零はキッチンの方へ走って行った。その隙に俺は靴を脱ぎ、靴下を確認する。すると……


「やっぱ付いてたか……」


 案の定靴下は赤く染まっていた。


「見つかれば確実に面倒な事になるな……」


 俺の履いてる靴下は元々の色は赤ではなく白。足の部分が赤く染まっていて脛の部分は白いまま。見つかれば零じゃなくてもその理由を問いただしてくるに違いない


「見つかる前に脱いでどっかに隠しとかなきゃな。手の方は……適当に転んだって言い訳しとくか」


 赤く染まった靴下を脱ぎ、アルバムの入ったスポーツバッグの中へ放り込んでからリビングへ向かった


「お帰りなさい、恭君」


 リビングへ入るとそこには昼飯の後片付けをしていたらしい闇華がいた


「おう、ただいま。闇華」


 闇華に軽く帰宅の挨拶をし、適当な場所に持っていたスポーツバッグを置く。さっきバッグの中へ放り込んだ靴下はスマホとペンダントが入っているのとは反対側のポケットに突っ込む


「恭君、お昼は食べましたか?」

「いや、まだだ。実家に長居するのもどうかと思って用事済ませてとっとと帰って来たから何も食ってない。ところで飛鳥と双子はどうした?」

「みんなキッチンで琴音さんのお手伝いしてますよ」

「そうか」


 アイツ等がキッチンへ行っててくれたのは不幸中の幸いだ


「ええ、今日は珍しく琴音さんのお手伝いをするらしいです」

「へぇ~、そりゃ珍しい」

「でしょ? ところで恭君」

「何だ?」

「手の甲が赤くなってますけどケガでもしたんですか?」


 実家についてより先に手の甲が赤い事を聞かれるとは思ってなかった


「あー、ちょっとな」


 咄嗟の事で上手い言い訳が思いつかずはぐらかしてしまった。これで誤魔化しきれるといいが……


「ちょっと? ちょっと何ですか?ケガなら手当しなきゃいけません! 正直に話してください!」

「ケガではない。ちょっとペンキ塗りたての街灯に当たったんだよ。そん時に付いたんだと思う。ちょうど汗も掻いた事だから風呂に入って来るわ」

「そうですね……そうした方がいいと思います」


 闇華を誤魔化した俺はズボンのポケットからスマホとペンダント、手紙を出し、テーブルの上へ置く。そのまま手紙はゴミ箱に放り込んだ。


「んじゃ、風呂行ってくるから。零が飲み物を持ってきたら俺は風呂に行ってると伝えてくれ」

「分かりました」


 闇華に言伝を頼み、俺は部屋を出た


「さて、風呂の前にランドリーで靴下の洗濯をしないとな」


 部屋から出て俺は真っ直ぐ風呂に行かずにランドリーである七番スクリーンへ向かった


「血って洗濯して落ちんのか?」


 衣類に付いた血液を落とすには三十度以下のぬるま湯で水洗いしてから洗濯するといいって話を聞いた事がある。あくまですぐに洗濯する場合だが……俺の靴下に付いた血液は今日付いたものでも時間はそれなりに経っている。


「とりあえず漂白剤ブチ込んで洗濯すりゃ何とかなんだろ」


 ランドリー内を物色すると都合よくアルカリ性漂白剤を見つけた。それを持って洗濯機の前へ


「三十分もありゃ元に戻るだろ」


 汚れた靴下と洗剤、漂白剤を入れ、タイマーを三十分にセットしてランドリーを出た俺はそのまま風呂へ


「あっ、着替え……」


 風呂に向かう道中で俺は着替えを持って来てなかった事を思い出した。夜なら備え付けのガウンを着ればいい。今は昼だからそうもいかない


「ここが元・映画館で助かった」


 着替えを忘れていた事を思い出し、ふと横を見ると運がいい事に洋服部屋である六番スクリーンの前にいた


「ちょっくら着替えを取りに行きますか」


 ちょうど六番スクリーンの前にいた俺は着替えを取りに中へ入る。この部屋に入ると嫌でも娘命じゃなかった頃の親父を思い出す。まぁ、思い出すだけなんだけど



 着替えを取った俺は今度こそ風呂を目指す。ちなみに着替えのラインナップは黒のボクサーパンツ、黒のTシャツ、黒のジャケット、Gパン、黒い靴下とズボン以外は全て黒だ。この時期だと黒い服って脇汗が目立たないから黒い服はいい


「黒い服って汗が目立たない代わりに熱を吸収しやすいのが難点なんだよなぁ……」


 二番スクリーンへ向かう途中、俺は黒い服の難点を考えていた。厨二病を拗らせた奴は好んで黒い服を着るらしい。その理由は単にカッコいいからだろう。俺の場合は脇汗を目立たせたくないからだ


「熱を吸収しやすい代わりに汗が目立たないのがいいんだけどよ」


 黒い服の難点を上げながら歩き、男湯の前に来ていた


「黒い服の難点を上げるのは後だ。今はさっさと風呂に入るか」


 思考を中断させ、男湯の中へ入った。脱衣所で服を脱ぎ、タオルを持って風呂場に入るとすぐに湯舟には浸からず、身体を流す。


「流すついでにそのまま洗うか」


 流したついでに洗ってしまった方が手間は掛からない。洗面器にお湯を入れ、ボディーソープを二~三回タオルに付け、そのタオルを洗面器へ入れて泡立て手を擦る。


「やっぱ血だったか」


 赤茶色に変色したタオルを見て俺はケガをしたのではなく、親父達の血が付いたのだと確信する。そんなに強く殴った覚えはないが、知らず知らずのうちに出血するほど殴っていたようだ




「あれ? 恭は?」


 恭君がお風呂に行くと部屋を出て五分くらいが経った時、零ちゃんがコーラを持って入ってきました。もしこの場に恭君がいたら飲み物を持ってくるのに何分掛かってるんだと怒られてたかもしれませんね?


「お風呂に行きましたよ?」

「そう……せっかく冷えたコーラを持って来てあげたのに……」


 恭君がお風呂に行ったと伝えると零ちゃんは唇を尖らせました。零ちゃん、タイミング悪すぎですよ?


「まぁまぁ、外は暑かったようですし、恭君だって早く汗を流したかったんでしょう」

「そういうものかしら? まぁ、いいわ。闇華、恭が何の用で実家に帰ったかって知ってる?」

「さあ?私も実家に戻った理由を聞こうとは思いましたけど、その前に恭君はお風呂に行ってしまって何も聞けませんでした」

「そっか。それにしても実家かぁ……」

「何か思い入れでも?」


 零ちゃんは『まぁね……』と言いながら私の向かい側……いつもの席に座り、ポツリ、ポツリと実家への思いを話し始めました。そんな時……


「恭の電話、鳴ってるわね」

「そうですね。どうしましょう?」


 恭君の電話がヴ―、ヴ―と激しく揺れ始めました。その着信が電話かメールかは分かりません。


「アタシ達が代わりに出た方がいいのかしら?」

「ほ、本人がいないのに勝手に出たらマズいと思いますよ?」

「それもそうね」

「ええ! 親しき中にも礼儀ありです!」


 私と零ちゃんは勝手に電話を取るのは良くないという事で鳴り続けているのをあえて放置してそのままガールズトークを続行しました。零ちゃんの実家に対する思い入れは単に帰れる場所や待っててくれる人がいる事が羨ましいという内容でしたが、私もそれには同感です。私達には帰る場所も待っててくれる人もいませんから



 ガールズトークが始まって五分した時─────


「恭ちゃんいる?」


 キッチンから電話を片手に持ち、慌てた様子で藍さんが


「いえ、今はお風呂に行ってますけど……恭君がどうかしましたか?」

「うん。恭ちゃんのお父さんから手紙読んだか? って電話が来てるから確認しに来たんだけど……」

「手紙?」

「うん……」

「恭君の手荷物はそこに置いてあるスポーツバッグだけで手紙なんて……」


 私が見た時に恭君が持っていたのはスポーツバッグ一つだけで手紙なんて持っていませんでした。あっ、もしかしたらバッグの中へ入ってるかもしれないと思った矢先の事


「その手紙ってもしかしてこれの事?」


 零ちゃんの手には二通の封筒が。『灰賀へ』『恭君へ』と書かれているのを見て私はすぐにそれが恭君へ宛てて書かれた手紙だと察しました


「分からないからおじさんに確認してみる」


 藍さんは『手紙って……』と電話の相手に確認を取る。少しして『はい、はい、そうですか……分かりました』と言って電話を切りましたが……電話の感じで重要な物だと分かります


「零ちゃん、その封筒どこにあった?」


 電話を切った藍さんは何やら真剣な表情で零ちゃんを見ています。別に零ちゃんが悪い事をしたわけではありませんよ?


「封も切らずにゴミ箱に捨ててあったわよ」

「そっか……」


 封も切らずに手紙を捨てた? 恭君は何でそんな事をしたのでしょう?

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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