高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

俺は気が付いたら縛られていた

公開日時: 2021年2月5日(金) 23:34
文字数:4,165

 六月最終土曜日。本来なら俺は惰眠を貪り、怠惰で自堕落な休日を過ごすはずだった。その休日は奇しくもルームメイトである女性達によって叩き潰されてしまった。で、その休日を叩き潰した女性達が霊圧コントロールの特訓をするところを見学していた俺は自分もやった方がいいと判断し、空き缶を取りに部屋へ向かった。そこまではよかったんだけどなぁ……


「オイこら、俺を開放しろ」


 現在俺、灰賀恭は椅子に縛られ、動けないでいる。


「恭クン、私達が必死に特訓してるのに自分だけいい思いをしたんだから縛られて当たり前だよね?」


 目の前に仁王立ちしている女性陣の一人、内田飛鳥がジト目でこちらを見ながら言う。


「いい思いなんてしてねぇよ! 酒に酔った女達にもみくちゃにされたよ! 俺被害者よ?」


 今の俺は完全な被害者だ。そもそもの原因をまだ話していなかったな。話は今から三十分前に戻る




 三十分前────────────。


「うわぁ……め、めんどくせぇ……」


 十二番スクリーンから酒の匂いを感じた俺は原因を突き止めるために潜入。中では母ーズが酒盛りをし、娘達と俺の通う高校のセンター長がガールズトークで盛り上がっているという阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっていた


「どっちから突っ込めばいいんだよ……」


 休日とはいえ真昼間から酒盛りをしている母ーズから突っ込めばいいのか、外にまで酒臭さが漏れる中平然とガールズトーク出来る娘達&武田センター長に突っ込めばいいのかと対応に困った俺は────


「俺は何も見なかった。これは夢で本当はまだ布団の中でグッスリ寝ているんだ。そうに違いない」


 と、結論付けて十二番スクリーンを後にしようとした。そこへ────────


「あれ?恭じゃん!」


 娘達の一人。スエットTシャツ姿のギャル風女子が俺に気付いた


「ワタシ キョウ チガウ ヒトチガイ」

「ウケる! 恭、何でカタコトなの?中国人の真似?だとしたらぜんっぜん似てないから!」


 テンパってカタコトになってしまったのを彼女は俺が中国人のモノマネをしていると思ったらしくケラケラと笑っている。


「べ、別に真似したわけじゃない。それより、何で君達の母親は真っ昼間から酒盛りしてんの?」


 よくよく見るとあちらこちらにビールの缶を始め、酎ハイ、ハイボールの空き缶と日本酒の瓶が転がっている。どうやら臭いの元はこの放置された酒の残骸だったようだ


「何でって、毎週土曜は昼間から飲んでるよ?最初はウチらもどうかと思ったんだけどさ、楽しけりゃよくない?ってことで片付けて、後は見ての通り。普段交流の少ない娘とも仲良くなれるチャンス! と思って女子会開いてるってわけ」


 こ、コイツ等……毎週土曜にこんな事してたのかよ……。部屋に引きこもってて気が付かなかった俺は相当な間抜けだ


「毎週こんな事してんのかよ……」


 アホらし過ぎて溜息すら出ない。むしろ毎週毎週忘年会みたいな事をしててよく飽きないなと感心すらしてしまう


「まぁ、ウチ限定で言えばここに来る前は親子揃って生活に制限あったからね~、昼間から騒ぎたいって気持ちも理解出来るんだよ」


 見た目ギャルなのに母親の気持ちを理解しているいい娘だ。ん?ちょっと待て。俺が引き取った時は全員揃って黒髪ノーメイクじゃなかったか?


「さいで。ところで聞きたい事があるんだが……」

「ん?何?」

「俺が拾ってきた時は全員黒髪でノーメイクじゃなかったか?」


 俺の記憶が正しけりゃ娘達は全員揃って黒髪ノーメイクでオドオドしていた。なのに目の前の女子はどうだ?金髪に薄化粧。フランクに接してきてオマケに俺を呼び捨て。引き取って来た時の面影など微塵も感じない


「あー、確かにあの時はお先真っ暗で沈んでたし、恭のお婆さんに悪いと思って必要最低限のお金で生活してたから地味だったけどさー、ウチ本来はこんな感じだよ?」


 こんな感じだよ?と言われても交流が多いわけじゃないから分からん!


「いやいや、こんな感じだって言われて察せられるほど俺達って交流ないだろ」


 灰賀女学院に通っている生徒の中で交流があるとすれば同じ部屋で生活している零と闇華くらいだ


「一度会いに行ったのに覚えてないの?ヒドくない?」


 一度会いに行った?はて、この娘は会いに来た事があっただろうか?俺が零達以外であった事あるのは案内した日に来た黒髪ロングで清楚が服着て歩いてるような女子だけだ


「酷いも何も母娘達の中で俺のところに来たのは黒髪ロングで清楚が服着て歩いてるような女子だけだ」


 あの女子はいずこへ……時々そう思う


「それウチ」

「はい?」


 どうやら俺の耳は悪くなったようだ。目の前のギャルがあの時の女子は自分だと言ってるように聞こえる


「だーかーら! それ! ウチ!」


 今度は声のボリュームを上げるギャル。え?嘘だろ?


「いやいやいや」


 目の前で手を左右に振り、否定の意を見せる俺


「いやいやいや、マジマジ」


 俺の真似をし、目の前で手を左右に振るギャル


「いやいやいやいや、嘘だろ?」


 またも否定の意を見せる俺


「いやいやいやいやいや、マジで。何ならあの時の状況言おうか?」


 同じようにまたも目の前で手を振るギャル


「おう、そうしてくれ」


 ギャルの言ってる事が信じられない俺はあの日の再現してくれるというギャルの提案を受ける事に


「あ、あの、灰賀さんにお聞きしたい事があって来たんですけど……」


 俯いたギャルが消え入りそうな声で言う。確かにあの日こんな声を聞いた。だが……


「人づてに聞いたという可能性がある。それだけじゃ信じられないな」


 十二番スクリーンに住んでいる人達の人間関係がどうなっているのかは俺の知るところではない。だから今のは俺の勝手な憶測だ


「言葉が信じられないなら写真見せようか?」

「最初からそうしてくれ」


 ギャルはスエットのポケットからスマホを取り出し、少し操作した後、俺の目の前に突き出してきた。


「これが女学院入学したてのウチ」


 見せられたスマホに映っていたのは黒髪ロングで清楚が服着て歩いてるを体現したような女子。あの日部屋に来た娘だ。って事は……え?マジ?


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!? 嘘だろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」


 写真を見た俺は叫ぶしか出来なかった


「マジだよ。あーあ、せっかく再会出来たのに忘れられて悲しいなぁ……くすん……」


 わざとらしく嘘泣きをして見せるギャル。あえて言おう。分かるかぁぁぁ!!


「忘れられてて悲しいも何もあの日一回しか会ってねぇだろ! 今までだって交流なかったし!」


 初対面でも衝撃的な出会い方をしたか会った時の格好がものすごかったら覚えている。しかし、あの日の格好は……地味過ぎて覚えてない。そんな奴を二か月たった今でも覚えてるか?と聞かれれば答えは否! 覚えてるわけないだろ


「それもそっか」


 嘘泣きをしていたギャルはケロっとした顔をする。さっきまでの嘘泣きはどうしたんだ?オイ?


 とまぁ、ここで終わっていれば清楚からギャルにイメチェンしたんだね、お母さん達には飲み過ぎないように、ギャルには学友と仲良くな。そう言って俺は十二番スクリーンを後にし、零達と特訓する事が出来た。しかし……


「お母さーん! 恭が来たよー!」


 何をトチ狂ったかギャルはデカい声で俺が十二番スクリーンを訪ねてきているという事を告知しやがった。それを聞いた母ーズは……


「あらあら、恭ったらママに甘えたくて来ちゃったの?全く、冷静ぶってても子供ね」

「恭、私達は親子なんだからいつでも来ていいんだよ?」


 という二人の母の言葉から始まり……


「灰賀君も女子会に参加しに来たんだね!」


 という武田センター長の声を引き金に俺はこの部屋の住人にもみくちゃにされる事となった。それはね?別にいいんだよ?零達よりマシだし。問題はこの後だった


「へぇ、恭はアタシ達が必死に特訓してたっていうのに自分は女子会に参加ねぇ……いい身分よね?恭?」

「本当ですよね……恭君、特訓よりも女子会の方が大切だっただなんて知りませんでしたよ」

「恭ちゃん、有罪」

「恭クン、私達はキミと同じところに立てるようになろうと努力してきたのに……」

「私達との特訓よりも女子会を取るんだね……私は悲しいよ……」


 背後から聞こえるのは普段聞き慣れた声。だが、振り向いたらいけない、返事をしちゃいけない。俺の本能がそう言っていた。それよりももっとヤバかったのが……


『きょ~う~!! きょうの母親はお母さん一人でしょ~!!』


 ドスの利いた声のお袋だった。


「ま、待て! 俺は酒臭いなと思ってここに入っただけで別に女子会に参加したくて入ったわけじゃない! 本当だ! 信じてくれ!」


 慌てて振り向いた俺は酒臭い原因を突き止めるために十二番スクリーンに入っただけで女子会に参加したくて入ったのではないという旨を伝えるも……


「「「「「『問答無用!!』」」」」」


 言い訳空しく自室へ連行され、椅子に縛られる羽目になった。



 そして現在────────


 もみくちゃにされたところは思い出したくなくて割愛したが、俺がピンチなのに変わりはなかった。それよりも……


「俺を縛り上げる前に何で武田センター長がここにいるのか聞くのが先だろ!」


 縛り上げられた俺は零達に抗議する。縛られている事に対してはもちろん、武田センター長がここにいる事実に誰一人として突っ込まない事にもだ


「恭君、そんな事よりもまずは恭君が私達を差し置いて女子会に参加していた事に対しての判決がさきですよ?」

「闇華ちゃんの言う通りだよ。恭くん」

「当たり前よね!」


 闇華達は全く聞く耳を持たないらしい。しゃーない。ここはコイツ等の願いを叶えると共に俺もいい思いが出来る最高の提案をしようじゃないか。


「あー、はいはい、俺が悪かった。デートしてやるから許してくれ」

「「「「「『本当!?』」」」」」」

「ああ、本当だ。順番は零から拾ってきた順な」


 お袋まで食いついてくる意味はサッパリ理解出来ない。それは考えないようにしてだ。デート順は拾ってきた順にしておいた。じゃないと揉めるからな


「「「「「『分かった!!』」」」」」


 何でお袋まで納得してんだ?


「それよりも早く縄を解け。そして武田センター長はここにいる理由を説明してください」


 普通の家とは違い、デパートの空き店舗たるここは侵入しようと思えば簡単に侵入できる。武田センター長がそんな事をするとは思えず、説明を求めるが、どんな事情があるってんだか

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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