高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

俺は何だかんだで文化祭をサボる事にした

公開日時: 2021年12月13日(月) 23:12
文字数:3,722

親父達の理解に苦しむ奇行────もとい由香の日から三日。その間、何もなかった。いや、早織と神矢想花が次は自分達の番だと騒ぎ出すかと思ったのだが、一年中自分達の日だから今更割り振られても困るとの事。俺もそう思う。さて、俺は忘れていたかったのだが、今は文化祭の時期。自身の通う高校が通信制高校な上に監禁……されてたから学校関係はノータッチで。長ったらしく話しても仕方ないから結論を言おう。今日は文化祭の日なのだ


「めんどくせぇ……」


 多くの生徒と教師で賑わう灰賀女学院校舎にある教室の一角。そこが俺のクラスが出店を出す教室。現在その教室へ向かっている最中なのだが、足取りが重い……普通の高校生は文化祭と聞いたらテンション上がるのだが、怠け者でめんどくさがりな俺は文化祭、体育祭等の学校行事は面倒でしかない。もちろん、準備も。自分の為の努力は惜しまないが、自分に得がない事は大嫌いだ。ごめん、単に文化祭とかリア充がキャッキャウフフするイベントがこの上なく面倒だけだ


『きょう~、せっかくの文化祭なんだからそういう事言ったらダメでしょ~?』

『そうよ。高校の文化祭は後に何物にも代えがたいものになるの。楽しまなきゃ損よ?』

「うっせ。面倒なものは面倒なんだよ」


 中学の頃も文化祭は面倒だった。あの時は環境が環境なだけに準備どころか出し物を決める段階でサボってた。都合のいい時だけ仲間だ友達だ言う奴は信用できねぇ……


『きょう……やっぱり、中学生の頃の事をまだ……』

『恭様……まだ立ち直れてないのね……』


 目元にハンカチを充てる幽霊二人組だが、コイツらの言うトラウマ的なものは何もない。中学時代の思い出はロクなものがねぇのは事実だから何も言えんが、心に深い傷を負うような出来事は何もなかった。単に学校行事に取り組む時と普段の扱いがあまりにも違い過ぎてクラスの連中も担任も存在そのものがバカバカしくなっただけだ


「文化祭にトラウマはないんだが……はぁ、めんどくせぇ」


 文化祭出るの嫌がっただけでどうしてここまで言われなゃならんのやら……俺は踵を返す。マジで嫌になってきた


『どこ行くの~?』

『目的地は逆方向よ』

「帰る。怠け者の俺が文化祭に参加するのは間違っている」


 本来文化祭の準備も文化祭参加も怠け者の俺には無縁。他者と協力して物を作るなら別に文化祭じゃなくてもいい。授業の課題とかで十分。俺は文化祭に参加しなくていい。いいよね?


『ダメ~! お母さんはきょうと一緒に文化祭デートするのを心待ちにしてたんだから~!』

『早織さんに同じく! 私も恭様と文化祭デートを心待ちにしてたのよ!?』


 片方は実の母親何だよなぁ……と思いながら俺は二人にジト目を向ける。デートするだけなら文化祭じゃなくてもよかろうて……例えば、今から学校行事をほっぽり出して適当に街をブラブラするでも立派なデートなわけだしよ


「文化祭じゃなくてもデートは出来るだろうに……。はぁ……」


 文化祭デートって聞くと特別感があるが、普通のデートなんよなぁ……いや、幽霊だって事と女性二人に男性一人じゃデートは成立しないんだけどよ


『私達にとっては文化祭でデートする事に意味があるんだよ!!』

『女の子には文化祭デートは特別なのよ!』


 普通のデートも文化祭デートも変わらんだろうに……


「はぁ……」


 俺は二人の意見を無視し、歩き続ける。二人が女の子を名乗るにはかなり無理がある年齢だというのには突っ込まないでおこう


『きょう!』

『恭様!』

「うるせぇよ。家には帰らねぇから安心しろ」


 文化祭をサボると二人から大バッシングを受ける。それだけは避けたい。文化祭デートだけがデートじゃないように学校から出るだけ、家に帰るだけがサボりじゃない。サボる方法ならいくらでもあるのだ


『帰らないならどこに行こうって言うの!?』

『言っておくけど、街に繰り出すとかはナシよ?』


 サボり=その場所を抜け出すって構図には草しか生えんのだが……


「帰らねぇよ。つか、校舎から出るつもりは毛頭ない。見つからない場所で開催式が終わるのを待ってほとぼりが冷めたタイミングで適当にうろつく。文化祭を見て回るんだ、立派な文化祭デートだろ?」


 保健室か屋上にでも隠れてりゃ誰かに見つかる心配はない。なんてったってこの二か所は文化祭中どころか普段も人が来るなど余程の事がない限りない。別に教材室でもいいのだが、あそこは文化祭関係なしに鍵がかかってる可能性がある。だったら容易に侵入できて時間も潰せる屋上か保健室に隠れてた方が吉。俺の場合、霊圧を察知されてって可能性が無きにしも非ずだが、いつも通りの手で来た奴を追い返せば何の問題もない


『きょう、何だかんだでお母さん達とのデート楽しみなんだね~』

『素直じゃないわね。恭様』

「そういう事言うなら帰るぞ?」

『ごめんて!』

『お願いだからそれだけは止めて』

「なら余計な事は言うな」


 今までの俺ならここで迷わず帰宅していたと思う。そもそも文化祭の準備にすら参加してなかった


「俺も甘くなったもんだ……」


 自分の甘さを悲観しつつ俺は保健室へ向かった









「案外すんなり入れたな……」


 ダメ元で保健室へ来てみたのだが、ドアには鍵がかかっておらず、簡単に侵入成功。もしもを考えると保健室のドアには鍵をかけない方がいいのかもしれないが……サボり癖が付いた人間が侵入するかもしれないって考えるとセキュリティ面では少々雑なんだが……面倒な文化祭をサボれるだ、文句は言うまい


『そうだね~、ちょっと不用心な気もするけど、誰にも邪魔されないならいいか~』

『細かい事は気にしないでおきましょう。それより、せっかく私達だけなのだから何か特別な事をしましょよ』

「特別な事って……学校の保健室で特別もクソもねぇだろ」


 保健室で異性と一緒ってシチュエーションは刺さる人には刺さると思う。一緒にいるのが幽霊じゃなかったら。しかし、俺達は現在身を潜めている立場。適当な理由付けてサボってるわけじゃないから眠りこけるわけにはいかないし、今回の文化祭は星野川高校と灰賀女学院の合同。早織達とほとぼり冷めるまで喋り続けるのも無理。人が入って来たら大変だしな


『保健室で女の子と一緒なんだよ~? 何か求める事があるでしょ~?』

『恭様には欲というのがないのかしら?』


 俺が女に興味ないみたいな言い方だが、俺にだって人並みに欲はある。隠れてる身の上だから欲に溺れたらヤバいから出さんけど


「俺達は隠れてる身だ。欲を剥き出しにして見つかったら文化祭デートはおじゃんにはならんだろうが、時間が短くなるだろ。それでいいなら俺は一向に構わんが、サボれる時間が短くなるのを考えると隠れてる時間は安全に過ごしたいんだよ」

『それはそうだけど~』

『求められないのは女として悲しいわ』


 不満全開な顔で俺を見る早織と神矢想花。この二人は文化祭デートがしたいのか、俺に求めてほしいのかどっちなんだよ……


「文化祭デートの為に我慢できないんですかねぇ……」


 俺は呆れるしかなかった。女心がマジで分からない


『それとこれとは話が別よ。デートはしたいけど、女として求めて欲しいのよ』

『もうちょっと女の子の事お勉強しないとダメだよ~』

「はいはい」


 女心と秋の空とはよく言ったものだ。コロコロ変わるものを勉強したところで時間の無駄でしかない。だが、勉強しないと後で苦労するのも事実。こればかりは学ばざる得ないといったところだ。書籍の上だけで学べないものだろうか……





 保健室に身を潜めてからしばらく。スマホを見ると藍、飛鳥、由香から大量の不在着信があった。学校にいる時はサイレントマナーにしてあるから全く気付かんかった


「どうせ文化祭参加の催促だから折り返さなくていいか」


 不在着信と共に時間を確認すると九時ちょい過ぎ。ちょうど開催式が開始される頃だ。体育祭と違って文化祭は室内が多いから分かり辛くて敵わん


『今回ばかりはお母さんも同感だけど……』

『後の事を考えると怖いわね……』


 早織達が心配してるのは見つかった時の事だろう。神矢想花の言う通り後の事を考えると怖いものはある。見つかった時のリスクを考えると恐怖でしかないのだが、よく考えて欲しい。サボってたって言うと人聞き悪いが、行きたかったのに行けなかったと言えばどうだろう? 前者より後者の方がダメージは少ないと思わないか?


「サボってた、面倒だから電話に出なかったって言うから人聞きが悪くなるんであって腹が痛くてトイレに籠ってたとでも言えばアイツらだって次からは連絡の一つくらい寄越せって言うだけでそれ以上何も言わねぇよ。面倒だからサボったって事実から目を逸らせられれば問題ねぇだろ」


 俺はサボる事に関しては全力を出す男。嘘の一つだってお茶の子さいさいなのだ


『そういうのはよくない気がするし、母親としては怒るところなんだけど……文化祭にノリ気じゃないきょうを無理矢理連れて来たから怒るに怒れない……』

『大人である私達がきちんと正すべきなのだけど……霊圧の勝負で勝てる気がしないから何も言えないわね』

「話が分かってくれて助かる」


 誰も霊圧を盾に脅してないのだが、理解があって何より。俺は開催式の終了時間までぼんやり天井を眺め続けた

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