高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

俺って恐怖の対象なのか?

公開日時: 2021年2月8日(月) 23:27
文字数:3,789

「俺の目的はいつになったら果たされるんだ?」


 誰に問うでもなく、俺は青年達がロリッ娘に説教をされるというシュールな光景を眺めながら呟いた。ここに来てからというもの、真実の連続で本来の目的が果たせずにいる。


「と、とりあえずお説教が終わるのを待つしかないよ。うちのお祖母ちゃんもそうだけど、年寄のお説教って長いから」


 聞いたわけじゃないのに律儀にも答えてくれる東城先生。年寄の説教が長いのはどの家でも共通なのか


「出来る事なら早く終わってほしいものだ」


 真央の事はもちろん気になる。それ以上に真央と先輩声優が俺の部屋で喧嘩した結果、部屋で暴れてないかの方が重要だ。何しろ二人?が喧嘩しているのは俺の部屋。半分手ぶらで来たとはいえ、あそこには私物のパソコンや監視用モニター、零達のパソコンと電子機器が多く、万が一壊れでもして修理するとなると保証が切れている場合はいくらになるか……想像しただけでも恐ろしく、学生組の懐事情を考えると度合によっては修理費が……


「そればかりは私には分からない。日頃の積み重ねとかもあるだろうしね」


 東城先生の言う通り青年達が日頃から麻雀を打ち、上がる度に雄叫びを上げているとなると曾婆さんの鬱憤は相当なもの。それが今爆発したとしたと仮定すると説教がいつ終わるか予測不能でおまけに青年三人組に反省の色が見られないともなると説教だけで日が暮れる


「はぁ……俺、麻雀と曾婆さんが嫌いになりそうだ」


 子供の立場からすると大人が正座させられ、説教をされている姿というのは非常に情けなく、幻滅する。その原因となったゲームと長々と説教を垂れている人物を嫌いになる勢いだ


『きょう……今の言葉、アウトだよ』


 何を言っている?俺がお袋に問いかけようとした時だった


『恭ぅぅぅぅぅぅ~! 私の事嫌いにならないでぇぇぇぇぇぇぇぇ~!』


 半べそ掻いた曾婆さんがもの凄い勢いでこちらに来た


「は?え?な、何だよ?」

『恭に嫌われるのいやぁ~!』

「え?え?」

『何でも言う事聞くからぁ~、何でもするからぁ~』


 戸惑う俺を余所にボロボロと涙を流し、懇願する曾婆さん。見た目が見た目なだけに幼女を泣かせている気がしてならない


「俺は嫌いになりそうだって言っただけなんだけど?」


 加えて言うと麻雀と曾婆さんが嫌いになりそうだとは言った。だが、曾婆さん単体で嫌いになりそうだとは一言も言ってない


『あ、あはは、お祖母ちゃんはきょうに嫌われるのだけは極端に嫌がるんだよね~』


 苦笑いを浮かべるお袋から出た衝撃の真実。つか、俺は曾婆さんにあった事すらないんですけど……その辺どうなってるんだ?


『仕方ないわね。あの時だって詩織さんは灰賀君の顔見てすごくだらしのない顔をしてたんですもの。溺愛している曾孫から嫌いだなんて言われたらそうなって当然よね』


 千才さん、何が仕方なくて何が当然なのか全く理解できないんですが……その辺の説明してもらっていいっすか?


「わ、私も恭ちゃんに嫌いだって言われたら首を吊るか海に身を投げる自信がある」


 東城先生も東城先生で何言ってんだ?それと、青年三人組、お前らが原因何だから苦笑いを浮かべてないで助けろ


「と、とりあえず落ち着いてくれませんか?」


 このまま千才さんを除く女性陣に喋らすと重たい方向へ話が進む予感がした俺はひとまず曾婆さんを落ち着かせようと試みる。


『恭、私の事好き?』


 何言ってんだ?このロリッ娘


「え、えっと、ま、まぁ、み、身内としては好きですよ」


 お袋の実母。俺にとっての祖母はしばらく会ってないからどんな感じだったか忘れてしまったが、今現在接している曾婆さんがどんな人間なのかというのは何となく解かる。この曾祖母にしてこの曾孫ありという俺の予想が正しいのなら高確率で……


『え~! 異性として好きじゃないの~?』


 こうなる。そりゃもう、年甲斐もなく頬をぷっくりと膨らませ、私不満です感を全面に出してる。いい歳した婆さんが拗ねんなと喉元まで出るもそれをさせないのは彼女の見た目が完全に小学校低学年くらいの少女で客観的に見ると聞き分けのない妹をどうしようかと困っている兄という構図だからだ


「この曾婆さんにしてこのお袋か……勘弁してくれよ……こっちは過激派のリーダーに話があるってのによ……」


 お袋と同じような不満をぶちまける曾婆さんを前に頭を抱える俺。


『そうなの?それならそうと早く言ってくれればよかったのに』


 不満顔から一転、曾婆さんは目を丸くした。言ってくれればいいのにと言う曾婆さんに一言。アンタがそうさせなかったんだろうが!


「誰のせいで……いや、もういい。それよりも過激派のリーダーはどこにいるんだ?」


 誰のせいだと議論を始めると話が余計に長くなる。そうなる前に俺は過激派リーダーの居場所を聞く事にした


『え?そこにいるじゃん』


 曾婆さんが指をさした方向にいるのは先程の青年達。


「そこにいると言われてもいるのは見た目ロリに説教された情けない青年三人組なんだが?」

『うん。そこに正座している情けない青年三人組が恭が言ってる過激派のリーダー』

「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」

『『う、嘘……』』

『『『ど、どうも……』』』


 事も無げに言う曾婆さんと驚きを隠せずにいる俺と東城先生。信じられないといった感じのお袋と千才さん。そして、気まずそうに頭を掻く青年三人組。探していた人が簡単に見つかったのはよかったが、何と言うか、斜め上過ぎて言葉が出ない


『まぁ、過激派とは名ばかりでこの子達は今じゃ単なるイタズラ坊主集団なんだけどね~』


 俺達の思いを余所に笑顔で真実らしき事を語る曾婆さん。お袋から聞いてた話と違うぞ?


「聞いてた話と全く違うんですけど……」


 お袋から聞いてた話じゃ過激派の連中は輝いてる人達に復讐しようとしているって聞いた。だからこそ復讐をするなとは言わないが、どうにか思いとどまるように説得をしに来た。それが蓋を開けるとビックリ!単なるイタズラ集団だと言うではないか


『早織ちゃんからは輝いてる人に復讐をしようと目論んでいたよ。まぁ、私が言っても信じられないと思うから詳しくは本人達から聞いて』


 曾婆さんが青年三人組を一瞥するとその中の一人が立ち上がり、俺の方へ来た


『え、えっと、俺から話をさせてもらっていいっすか?』


 こちらへ来た青年はいかにも好青年といった感じの爽やかな雰囲気を醸し出す人物。こんな人が復讐だなんてとても信じられない


「は、はい、話してくれるなら誰でもいいです」


 彼は咳払いを一つすると口を開いた


『えっと、詩織さんが言ったように俺達は輝いてる人に復讐をしてやろうと計画してました。実際、貴方を含め、大勢の人間が来た時には乗り込んでやろうという意見も出てたくらいです。その意見は結局頓挫してしまいましたけど』


 そう言って力ない笑みを浮かべる青年。復讐を思いとどまってくれたのはいい事だけど、その結論に至った理由を知りたい


「差し支えなければ頓挫した理由って聞いても大丈夫でしょうか?」


 頓挫した理由が復讐なんて間違っていると思い直したとかだったら俺としては嬉しい限りだ


『一つは復讐した後、自分達に何が残るかを考えた結果、何も残らないって事に気が付いたからです。もう一つは恭さん、貴方の存在ですよ』

「俺の存在?」

『ええ、貴方が霊圧を強めた日があったじゃないですか』

「俺が霊圧を強めた日?」


 俺が霊圧を強めた日?はて、そんな日あったか?


『きょうが幼い頃のアルバムをみんなでコッソリ見てた日だよ~』


 俺が記憶を巡らせているとお袋が耳打ち青年の言う霊圧を強めた日を教えてくれたが、あの時は肩に重い石を乗せたくらいの霊圧しか当てておらず、俺の感覚じゃ言うほど強くは当ててない


「あー、あの神隠し擬きがあった日か。でも、あん時は重い石を両肩に乗せたくらいの量しか当ててないぞ?」

『恭さん、貴方それ本気で言っています?』


 青年が訝し気な目で俺を見る


「え、ええ、本気ですけど……?」

『『『『『『はぁ……』』』』』』


 俺の言葉に幽霊組全員が深い溜息を吐いた


「え?何?もしかしてそんなに強かった?」


 溜息の意味が理解できず目を白黒させる俺。何か間違った事を言ったのか?


『恭さん、いい機会ですからお伝えしますけど、貴方の力────いや、貴方の存在は我々からすると一種の恐怖なんですよ』


 今まで何一つ怖がられる事をしてこなかったのに随分な言われようだ


「恐怖って言われても困るんですが……それよりも復讐を思い止まった理由を話してくださいよ。こっちは連れが一人身体を乗っ取られて大変なんですから」


 俺がどう恐怖なのかは今起きている騒動が解決した後だ。それよりも今は真央が最優先だ


『今のお話の流れで察していただけたら助かったんですけど、いきなり恐怖の対象と言われても理解できませんよね……』

「当たり前です。というか、恐怖の対象だって言われた俺はすごく不愉快なんですけど?」

『それについては申し訳ありません。ですが、今の俺にはそうとしか言えませんので。さて、復讐を思い止まった理由ですが、一つはさっきお話した通りです。で、もう一つが恭さん、貴方がいたからです。具体的に言いますと俺達は貴方を敵に回したくないんです』


 青年は冷静に語って見せてはいるものの、何となく声が震えている。そんな気がした


「は、はあ……」


 そんな彼を前に俺はどんな反応を返せばいいのか分からなかった

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