高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

満面の笑みを浮かべた零達が少し怖い

公開日時: 2021年2月12日(金) 23:11
文字数:4,151

 東城先生────いや、藍に黙って出てった理由を話し、部屋に戻った俺を待ち構えていたのは……


「おかえり! 恭!」


 零を始め、満面の笑みを浮かべる女性陣。そして────


「クソガキ……」

「恭、儂が悪かった……」

「灰賀君! 強く生きるんだ!」


 同情の眼差しを向ける加賀と爺さん。なぜか泣きながら俺へエールを送る操原さんだった


「男女で差があり過ぎるんですけど……」


 自分の居場所や戻るべき場所に帰り、笑顔で出迎えてくれるのは嬉しい。同情の眼差しを向けられ、泣きながらエールを送られると自分は何かしてしまったのか?と勘ぐってしまう。異なる二つの反応を見ると嫌な予感しかしないのは俺だけか?


「仕方ないよ。恭ちゃんが勝手に飛び出していったのが原因なんだから」


 隣にいる藍が特に気にした様子もなく言った。心配を掛けたって意味じゃ俺が原因なのは間違いない。けど、不気味過ぎる……いつもの流れなら光のない目をした零達で迎えられ、その場に居合わせた男性陣から同情の眼差しを向けられる。今回に限って言えば零達が満面の笑みで爺さんと加賀が同情し、操原さんが泣きながらエールを送る。今までにない流れだ


「一人の時間が欲しいって思うのがそんなに悪いんですかねぇ……」


 誰だって自分一人の時間が欲しくなる時があるって思うのは俺だけなんか?ん?


「一人の時間が欲しいって思ったのが悪いって言ってるんじゃなくて行き先も告げずにどこかへ行ったのが悪いって言ってるの」


 正論過ぎて何も言い返せねぇ……藍の言うように行き先も告げずに飛び出したら心配するに決まってる。まして俺は高校生。半分大人に差し掛かってるとはいえまだまだ子供だ。今はプライベートな時間だからそこまで大袈裟に怒られる事はない。これが学校行事だったら……考えるのは止めよう。教師に説教されるとか考えただけで憂鬱になりそうだ


「今度からどこにいても連絡が取れるようにしとく」


 黙って飛び出しても連絡さえ取れればそれでいい。どこに行くか告げるのは大事な事でも人による。行き先を告げて出かけたとして、快く送り出してくれるのなら俺だって黙って飛び出した挙句、スマホを機内モードにしない。そうしたのはどこにいるか知られると高確率でコイツ等が付いて来るからだ


「私が言いたいのはそういう事じゃないんだけど……話が長くなりそうだからこの話はここまでにしておく。それより、今後どうするの?」

「今後どうするって茜が家に越して来てそれで終わりだ。今回のストーカーばかりは高校生の俺じゃ対処できん」


 今回の事に関してはお手上げ半分、面倒になったが半分ってところだが……茜は納得してくれ────


「グレー、私を見捨てるの?」


 ませんよね! さっきまで笑顔だった顔が泣きそうな顔になってるし


「見捨てはしねぇよ。ただ、今回の事を対処するのは高校生の俺じゃなく、大人で社会人の操原さんに全て任せるっつーだけで」


 真央の一件では初対面の男子高校生である俺に頭を下げてまで助けを求めてきたくらいだ。そんな彼が所属声優を雑に扱うとは考えづらい。そう思って操原さんの方へ目を向けると……


「す、済まない……、茜ちゃんの事を何とかしたいのは山々なんだけど……」


 苦虫を嚙み潰したような顔をしていた


「山々なんだけど何ですか?真央の被害は対処出来て茜の方は対処出来ないとは言わないでしょ?」


 爺さんと長い付き合いをするくらいだから簡単に人を見捨てるような事はしないはず。動きたくても動けない事情があるとしたらそれは何だ?


「じ、実は……」

「実は?」

「茜ちゃんの事は対応しないとマズいとは思っていたんだが……その……」


 初めて会った時とは違って歯切れが悪い。後ろめたい事がないならスパッと言える対応しなかった理由を説明出来るはずだ


「その、何ですか?真央の時とは違って歯切れが悪いみたいですけど、後ろめたい事でもあるんですか?」


 考えたくはない。考えたくはないけど、操原さんも大人で仕事をしている身。汚い事の一つや二つしてきてても不思議じゃない。俺の心が汚れているから変に疑ってしまうのか、大人は汚い事をして当たり前だと思っているから汚い事をしている前提で考えてしまうのか……どっちなんだろうか?


「後ろめたい事は何もない! 何もないんだ……ただ……」

「ただ?ただ何ですか?」

「茜ちゃんや真央ちゃんは知ってると思うが、今、事務所の方も大変な事になっていてそれどころじゃないんだ」


 事務所の方が大変な事になっていると言われても何がどう大変なのか言ってくれないと分からないぞ……。聞いたところで俺に出来る事なんてないけど


「具体的に何がどう大変なのか言ってくれないと分かりません。聞いたところでガキの俺に出来る事はなさそうですけどね」


 俺はどこぞの小さい名探偵じゃないし電撃を放てる中学生でもない。大人が直面している大変な事態をスマートに解決出来る程の知恵も力もない


「そう……だろうな……。子供の君に話したところで解決はしないだろうな……」


 力なく笑う操原さんの姿は本当に疲れ切っているように見える。追い詰められてたのを更に追い詰めてしまったようだ


「解決は出来なくても話を聞く事くらいは出来ますし話してみて楽になるって事もあるでしょうから話すだけ話してみては?」


 大人の話に子供が首を突っ込むべきじゃないのは理解している。俺に出来る事がなく、騒動に巻き込まれたくはないと思ってても疲れ切っている彼を見てると言わずにはいられなかった


「し、しかし、これは大人が解決すべき事で子供の君や無関係な人を巻き込むわけには……」

「零達や加賀はともかく、俺は旅行中に茜から今回の事で助けてほしいって言われました。面倒事が一つ増えたところで俺にとっては今更なんですよ」


 旅行中、茜の部屋に連れ込まれ、話を聞いた時、俺には拒否するって選択も出来た。拒否しなかったのは目の前で泣いてる彼女を放っておく事は出来なかったから。拒否したところで零達に俺がしてきた事をバラされたらこの状況になってただろうから無駄だったかもしれない。全く、俺の日常はいつから波乱万丈になったのやら……と、天を仰いでいた時────


「ちょっと恭! 今さらっとアタシ達を仲間外れにしないで! 茜と知り合った時点でアタシ達も立派な関係者よ!」

「そうです! 茜さんと私達は友達なんですから困っていたら助けるのは当然です!」


 零と闇華から不満の声が上がり、飛鳥達も────


「恭クン、私達を危険に巻き込まないように気遣ってくれるのは嬉しいけど、それはないよ!」

「そうだよ恭ちゃん。私達は同じ家に住む者同士。だったら助け合わなくちゃ」

「恭くんの騒動は私達みんなの騒動だよ」

「お義姉ちゃんに隠し事なんて百年早いよ!」


 零と闇華同様、不満の声を上げた


「隠し事をするとか仲間外れにするとかってつもりはないんだが……」

「「「「「「言い訳しない!!」」」」」」

「はい……」


 女は強し。子供を産めるだけあって男性よりも強く作られているらしい


「は、話の続きをしてもいいか?」


 やっべ、操原さんの事忘れてた


「ど、どうぞ……」

「あ、ありがとう。それで、話の続きなんだが、私の事務所で起こっている騒動は話せない。だが、こっちの騒動が解決次第にはなるが、茜ちゃんのストーカー被害にも対応すると約束する!」

「は、はあ……」


 操原さんの事務所で何が起きているのかは分からない。事務所の方が一段落したら対応すると言われても……


「そういうわけで灰賀君には手間を掛けるが、事務所の騒動が収まったら必ず連絡する! だから……だからそれまで茜ちゃんの事を守ってやってくれ! この通りだ!」


 そう言うと操原さんは俺の前まで来て土下座。大の大人が……それも、爺さんと同じ年の男性が自分の半分も生きてない男子高校生に土下座してまで頼み込むって余程追い詰められてなきゃ出来ない芸当だ。


「「しゃ、社長……」


 その証拠に茜と真央は口元を手で覆い、土下座する操原さんを見つめ、零達や加賀は何も言えず黙ってるだけ。そんな中、爺さんは……


「恭、大の大人がここまでしてるんじゃ、引き受けてはやってくれんかのう?」


 真剣な顔で俺を見つめていた。こんな事されたんじゃ……な?


「大の大人が高校生のクソガキに土下座なんて止めてくださいよ……。言われなくても茜を……いや、家にいる全員ちゃんと守りますよ。事務所の騒動が終わった後もね」


 拾った以上最後まで面倒を見る。犬や猫を拾った時に親が必ず言う言葉だ。家にいる連中は犬猫じゃないが、拾った以上はちゃんと面倒を見るのが俺の責任だ


「ほ、本当か!?」


 俺の言葉を聞いた操原さんが勢いよく頭を上げた


「本当ですよ。家にいる連中は全員訳アリで拾ったら最後まで面倒を見なきゃいけない連中ばかりですから。それが一人増えたところでどうって事ありません」


 本当、何で俺の周りには訳アリな奴ばかりが集まるのやら……


「そ、そう言ってもらえると助かるよ! では! ウチの事務所の子達を頼む! 私はこれから事務所に戻らなきゃいけないからこれで失礼する!」


 立ち上がり、矢継ぎ早に用件だけ言うと操原さんは足早に部屋を出て行った。


「恭、今言った事忘れんじゃないわよ?」

「ちゃんと最後まで面倒を見てくださいね?恭君?」

「恭くん、責任取ってよね」

「途中で投げ出したら許さないからね、恭ちゃん」

「今のはプロポーズの言葉と受け取っていいのかな?恭クン」

「恭殿!拙者頑張るでござる!」

「ちゃんとお義姉ちゃんの面倒をみるんだよ! 恭!」

「グレー、これからよろしくね!」

「まぁ……何だ?クソガキ、これからも世話になる」


 操原さんが去った後、零達と加賀がいい笑顔で言ってきたので俺は……


「忘れねぇっつーの」


 一言だけ呟いた。ここで終われば物語的にはめでたしめでたしだったのだが……


「まぁ、最後まで面倒を見るも何も恭・由香ちゃん・零ちゃん・闇華ちゃんは義理の姉弟じゃから死別や留学、他県に行くなどしない限り離れ離れになる事はないんじゃがのう!」


 我が祖父がとんでもない爆弾を落とした


「お、お爺様?今、何と仰いました?」

「ん?ああ、恭にはまだ言っとらんかったが、お前に義妹が出来たぞ! 今更紹介するまでもないが、零ちゃんと闇華ちゃんじゃ!」

「はい?」


 俺は頭の中が真っ白になった

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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