高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

お袋が何を言ってるのか理解できない

公開日時: 2021年2月5日(金) 23:35
文字数:4,015

『悪いお袋、言ってる意味が全く持って理解出来ない』


 由香が俺に好意を持っている=夢の中へ入れました。これで納得する奴がいたら出て来い。俺に詳しく説明しろ


『え~! 今ので理解出来なかったの~! 全くきょうは鈍いなぁ~』


 普段はお袋に殺意なんて抱かない俺だが、今回ばかりは軽く殺意湧いたぞ……誰が鈍感だって?あ?俺ほど敏感な人間なんてそうはいないだろ?あら、やだ何か卑猥……


『俺のどこが鈍いってんだよ?俺は近所じゃアイツは敏感だって事で有名だったんだけどよ』

『それ、きょうが自分でそう思ってるだけで実際は灰賀家の息子はいつも死んだ魚のような目をしている廃人予備軍って噂しかなかったよ~』


 ちょっと?確かに敏感だって噂はたった今作ったけどよ、それ以上に自分の息子が廃人予備軍呼ばわりされてたのはいいのか?母親としてどうなんだ?ん?


『お袋?俺その噂初耳なんだけど?っていうか、息子が廃人予備軍とか言われてもよかったのかよ……』


 俺が親なら自分の子供にそんな噂が立ったら嫌だ


『別に~?きょうの高校入学と同時に恭弥と別れてお母さんが養ってあげるつもりだったし~?あわよくば大学までは行ってもらうとして、その後はニートでも可! むしろニート推奨!』


 ダメだこの母親……


『どこの世界に息子のニート化を推奨する親がいるんだよ……』

『ここ!』


 ドヤ顔で胸を張るお袋に溜息すら出ない……この人はアレだな。息子をダメにするタイプだ


『とりあえずお袋が俺をどうしたいのかは後でじっくり話し合うとして、由香の話に戻ろか。何で由香が俺に好意を持っている=簡単に夢へ入れるって事になるんだよ?』


 自分に好意を持っているってだけで夢の中に入れるのなら現状の俺は零や闇華の夢にだって入れる。という事になる


『そりゃ由香ちゃんの夢には元々きょうがいたからだよ~。噛み砕いて話をすると夢の世界の在り方とかの話になって長くなるからしないけど、今回の場合は由香ちゃんの夢には由香ちゃんに都合のいい設定のきょうがいた。心当たりない?』


 お袋の言った事には心当たりがあり過ぎる。由香の夢じゃ俺は一人暮らしをしておらず親父と夏希さんが再婚したとほぼ同時期くらいに交際してる事になってた。元々由香とは血の繋がりなんてないから恋人になろうと結婚しようと法律的にも世間体的にも問題はない。


『心当たりしかないな。つか、お袋よ』

『ん~?』

『由香の夢に入ってすらいないアンタが何で由香の夢を詳細に語れるんだよ?』


 実家にいた時は女の勘で誤魔化されたが今はそうはいかない。キリキリ吐いてもらう


『女の勘だよ~』


 あれだけ詳細に由香の夢を語っておいて女の勘に逃げるか……仕方ない、あの手で行くか


『そうかそうか。女の勘か。ちゃんと理由を説明してくれないと口利かねーぞ?』

『え……?』


 お袋は笑顔のまま固まった。


『え……?じゃない。ちゃんと説明してくれないと俺はお袋と口を利かないし、距離を取る。以上だ』


 幼い頃なら女の勘、お母さんだからと誤魔化されてた。しかし、物の分別が付くようになってからはそうもいかない。女の勘や母親だからと言われて誤魔化されはしない


『う、うそ……だよね?きょうがそんな事言うわけないよね?ね?ねぇ!?』


 口を利かない、距離を取ると言われて動揺したお袋は俺の身体を揺さぶってくる。だが、今の俺は魂だけの存在。そんな事をされたところで気分が悪くなるなんてのはない


『本当だ。俺は最低限自分で言った事は実行する男だからな』


 お袋と距離を取る。今まで見守ってくれていた手前あまりやりたくはない。それでも時には距離を取って互いの存在について考える時間があってもいい。俺らの場合はそれが今だってだけで。なんて思いはしたものの、本当はただのコケ脅しだ


『お、お母さんはそんな冗談に騙されないよ! きょうがお母さんに、人に冷たくできないのは知ってるんだから!』


 涙目で最後の抵抗をして見せるお袋だが、涙目の時点で抵抗しきれてない


『いつの話だよ……。ま、ちゃんと説明してくれないってなら由香の夢に入れた理由についての説明もいらん。その代わり俺はお袋と向こう一週間一切口利かない』


 言った! ついに言ったぞ! 普段から疎ましいと思った事なんて一度たりともない。今回に関して言えばお袋が由香の夢がどんなものかを詳細に知ってる理由は今後の為になると思った。で、説明を求めたら女の勘とか言って誤魔化した。俺的には口を利かない理由としては十分だ


『や、やれるものならやってみなさい!! きょうはお母さんから離れられないんだから!!』


 その通りだ。依存的な意味ではなく守護霊的な意味で俺はお袋から離れられない。でもなぁ……


『側にいたって口を利かないくらいなら出来るだろ。離れられないのと一言も会話しないのは話が別だ』


 側にいるからと言って会話する必要なんてない。末期のカップルを見てみろ。せっかくのデートだってのに恋人の会話そっちのけでスマホ弄ってんだぞ?カップルに出来て俺に出来ない道理はない


『でも!でも! きょうは昔から寂しがり屋だからすぐに音を上げるでしょ!? ねぇ!?』


 お袋よ、いつの話をしてるんだ?


『それはガキの頃の話だろ。今の俺は違うからな?とにかく、お袋が由香の夢を詳細に知ってた理由を説明してくれるまで口利かねぇから』


 泣きそうなお袋を残し、部屋から出ようした時だった────────────


『待って……』


 今にも消え入りそうなお袋の声が部屋全体に木霊した


『何だよ?』

『ちゃんと説明するから行かないで……』

『だったら最初からそうしろ』


 健全な男子高校生が母親と一切口を利かない。健全な女子高生が父親と一切口を利かない。そんなの当たり前だと思う。全員が全員そうじゃないのは十分理解している。それでも難しい年頃となると異性の家族と口を利きたくなくなる。不思議な事にな


『ごめんね……でも、説明するときょうに嫌な思いをさせちゃうと思ったから……』


 お袋が女の勘と言って誤魔化したのは俺に不快な思いをさせない為らしい。そんなのは俺が決めることであってお袋が決めることじゃない


『嫌かどうかは俺が決める』


 上手い返しが思いつかず、俺は一言言うだけだった


『ごめんね……それより、きょう、こっち向いて?振り向いてくれないというのはお母さん寂しいな……』

『分かったよ……』


 言われた通り俺はお袋の方を向く。すると……


『……………』


 お袋の瞳から大粒の涙が流れていた


『えっと……悪かった』

『いいよ。誤魔化そうとしたお母さんも悪いんだから』


 夏希さんを泣かせても心は痛まない俺でも実の母親であるお袋を泣かせたとあれば良心が痛む。これはきっとこの人が実の母親だからなんだろう


『そうかもしれないけどよ……とりあえずお袋が由香の夢を知ってた理由を話してくれ。不快かどうかはその後で決める』


 誤魔化そうとしたお袋が悪い。言いたかないがそれは事実だ


『それを話すにはまずお母さんときょうの霊圧がリンクしてるっていう話からしないといけないんだけどそれでもいい?』


 ここに来て新しい情報が登場するとは……


『それでも構わない。今の説明が今後役に立つのならな』


 お袋が説明してくれた事を全て理解しきれるか?と問われるとそんな自信はない。聞くと聞かないとじゃ大きな差はあるけどな


『分かった。じゃあ、霊圧のリンクから説明するけど、まぁ、霊圧のリンクなんて言ってはいるけど、簡単に言えばきょうの見ている景色をお母さんも見る事が出来るし、スマホのGPSと同じできょうがどこにいるかが簡単に分かってしまうんだよ』


 お袋の説明はそりゃあもう簡単だった。端的に言えば“俺がお前の目になるぜ!!”が洒落にならなくなり、俺は常にセンサーを付けられているって事になる。そんな予定はないが、失踪なんてしたらお袋が捜索側にいたら簡単に居場所を特定されてしまうようだ


『簡潔かつ分かりやすい説明をありがとう。つまり、俺とお袋の霊圧がリンクしてるから由香の夢がどんな内容だったかを知ってると。そう言う事か?』

『うん……でも、きょうからすると常にお母さんに監視されてるようで嫌でしょ?』


 お袋の言う通り常に監視されている感は否めない。お袋が生きてたならな。が、お袋は幽霊で常に俺と一緒にいる。そんなの今更だ


『お袋が生きてる人間なら常に監視されんのは嫌だな。だが今のお袋は幽霊で守護霊として俺に憑いてるから今更だろ』


 常に一緒にいるのに今更監視されてるようで嫌だなんて言う気すら失せる


『きょう……』

『それにだ。お袋と再会した日から俺はアンタを疎ましく思った事なんて一度たりともない』


 お袋は俺のする事を否定しない。それはそれでって感じはする。思うところはそれだけだ


『いや……じゃないの?』


 不安気な表情で俺を見つめるお袋。嫌じゃないかと聞かれれば……どうなんだろうな……別に見られて困るような生活してねぇしなぁ……


『母親に見られて困るような生活はしてないからな。嫌かって聞かれると答えに困る』

『そっか……』


 俺の答えを聞いて安心したのかお袋はホッと胸を撫で下ろす。


『まぁ、今言えるのは俺の黒歴史をペラペラ喋るなって事だけだ』


 アレは本当に勘弁してほしい。


『き、気を付けます……』

『よろしい』


 それから零達がいつもの騒がしい朝を迎えた。



 零達が各々学校へ向かい、琴音は家事をしてる中、俺とお袋は案の定暇を持て余してた。そんな時だった


『きょうに言い忘れてた事が一つあった~』

『いきなりだな』

『今思い出したからね~』


 お袋の言い忘れてた事って何だ?


『何で今思い出したかは聞かないとして、言い忘れてた事って何だよ?』


 お袋の唐突な発言は今に始まった事じゃない。昔からだからすっかり慣れっ子だ


『他人の夢に入っていられる時間は最低五時間、最高八時間までだよ~』

『それ夢の中に入る前に言え!!』


 俺はお袋の頬を全力で引っ張った。何で最初に言うべきことを今更になって伝えるかな!! 俺のお袋は!!


今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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