女性陣の望みを叶え終えた俺は現在────
「めっちゃ恥ずかしいぃぃぃぃぃぃぃ!!」
ベッドの上で悶絶していた。こういう罰ゲーム的なものは終わった後で一気に羞恥心が押し寄せ、自分は何をしていたんだ?と後悔し、結果、死にたくなるか相手の顔がまともに見れなくなる。本当にね! 俺は何してたんでしょうね!
「そんなに落ち込まなくてもいいじゃない。アタシは嬉しかったわよ?」
事もなげに言うのは零。お前は言われる側だったから嬉しいだなんて言えるんだよ! 言わされた方あるいはやらされた方はスッゲー恥ずかしいんだぞ! その辺り解ってんのか?
「うるさい黙れ。言われたりされたりした方はいいよな! 恥ずかしいのはその時だけなんだからよ!」
枕から顔を離せない俺は恨みを込めて言った。言った通りされる方は気楽なモンだ。恥ずかしいと感じるのはその時だけで終わってしまえばなんのそのなんだからよぉ……
「私も零ちゃんと同じで今まで明確な好意を伝えてくれなかった恭君に愛してるって言われて嬉しかったですよ?」
「零にも言ったけど嬉しいのはされた側だけでさせられた方は恥ずかしいだけなんだっつーの!」
彼女達に愛してるって言ってキスするのが仕事だったら俺だって我慢する。恥をかいた分の対価が得られるからな。だが、今回の場合、金を全く使わなかった代償が大きく、先程までの光景を客観視すると俺は単なる女好きにしか映らない。本当に人前じゃこんな事出来ねぇ
「恭ちゃんは私達に愛してるって言うのそんなに嫌だったの?」
枕に顔を埋めていて表情は分からないから声だけで判断するしかないが、東城先生は今確実に泣きそうになってるに違いない。声が涙声だ
「嫌だったわけじゃねぇ。ただ恥ずかしかっただけでな」
高校入学まで俺は女子と交流らしい交流をしてこなかった。由香と関わってただろって?一方的に絡まれたのは俺の中じゃ交流って言わねぇんだよ!で、話を戻すとだ、俺も一応、幼稚園、小学校、中学校と段階を経て今に至ってるわけだから女子と全く関わりがないのかと言われるとそうではない。必要最低限の挨拶や事務的なやり取りはしてきた。女子とは。女性との交流は……頼む、聞かないでくれ……。いずれ話すから
「だったらいいじゃないの?私達は恭クンから愛してるって言ってほしかったし、恭クンはこんな美人な女の子八人に愛してるって言えた上にキスまで出来たんだから。WinーWinでしょ?」
飛鳥が言うように美人な女子達に愛してるって言えてキスまで出来たんだから文句はない。普通の男子なら完全に役得でしかない要望なんだけど、俺には文句しかない。喧嘩になるから口には出さんけど、マジで文句しか出てこねぇ
「そうだな……。もうそれでいい」
考えすぎて頭がショート寸前の俺は気のない返事を返す
「恭くん、何か適当……」
「頭がショートしかけてるんだからこれくらいは勘弁してくれよ……。後、少しでいいから余韻に浸らせてくれ」
祭りだって準備期間ややってる最中は楽しいけど、終わると一気に消失間が襲ってくるだろ?それ同じだ
「グレー……」
「恭殿……」
何とも言えない。真央と茜の心境としてはこんな感じだろう。俺が彼女達の立場だったら何も言えんし
「言いたい事はあるだろうけど、とりあえず飯行ってきたらどうだ?俺と零はラーメン食ったからいいけど、闇華達は朝飯まだだっただろ?」
俺は零とラーメンを食べて腹は減ってない。多分、零も同じはずだ。対して闇華達は言わずもがな、飲み物は飲んだかもしれんけど、飯は食べてない……よな?この部屋は女性陣がいつの間にか持ち込んでいた菓子類が多く、闇華達が何をいつ口にしたか全然分からない
「そうですね。いい時間ですし、朝ご飯に行きましょうか。私達は恭君と零ちゃんがラーメン屋さんデートしてる間コーラしか口にしてなかった事ですし」
「そうだね、恭ちゃんと零が二人仲良くラーメン食べてた間私達はコーラ以外何も口にしてなかったからお腹空いた」
闇華も東城先生も言い方にトゲがあるな……
「それじゃあ、早いとこ行かないと朝ご飯終わっちゃうよ?恭クンと零ちゃんが二人仲良くラーメン屋に行ったくらいのスピードじゃないと今からじゃ間に合わないかもしれないしね」
「そうでござるな! 恭殿が零殿をラーメン屋に連れ込んだ時の速さは必要でござる!」
あの……飛鳥さん?真央さん?時間の話をするのに俺が零と二人でラーメン屋行った事言う必要ある?
「はぁ、あたしお腹ペコペコ……恭が零ちゃんと二人でラーメン屋に行ったからお腹が空いてしょうがないよ!」
由香さん?貴女の腹がペコペコなのと俺がラーメン屋に行ったのと何の関係があるんでしょうか?
「それじゃあ、由香ちゃんが餓死しないうちに朝ご飯食べてこよっか。恭くんが零ちゃんをラーメン屋さんに連れ込んだ時くらい早くしないとお料理少なくなっちゃうしさ」
琴音……お前もか……
「早く行けよ……」
闇華達の会話に突っ込み切れなくなった俺はベッドに顔を埋めたまま目を閉じた。もう知らねぇ、闇華達が拗ねてようとお袋が剥れてようと知った事か……
闇華達が朝飯に行き、部屋に残ったのは────
「恭、さっきから早織さんが拗ねてるんだけど」
「あーうん」
ラーメンを食べたペア。俺と零だけだった
「あーうんじゃないわよ! 早織さんが拗ねてるって言ってるでしょ! 何とかしなさいよ!」
未だ枕に顔を埋めたままだからお袋の顔が見えず、零の言ってる事が本当かどうかは分からないが、多分嘘だ。お袋が拗ねた場合、最初に『むぅ~!』とか『むっす~』とか怒ってますアピールをするというパターンが多い。それがないという事は零の言ってる事は嘘の確立が高い
「何とかって言われてもこの状態じゃどうにもならんだろ。それにだ、お袋は本当に拗ねてんのか?」
「拗ねてるわよ! だから早く起きなさい!」
業を煮やした零は俺の身体を揺すり始める。起きてはいる。ただ、顔を上げたくないだけで
「嫌だよ。起きろって言うならお前が俺と一緒に寝りゃいいだろ?」
逆転の発想だ。俺が起きるのではなく、相手と一緒に寝てしまえば万事解決。俺って天才か?
「寝るわけないでしょ! また闇華達に文句言われるわよ?」
「それは面倒だな。しゃーない、起きるか」
枕から顔を離し、零の方を見る。すると────
『やっと顔見せたね~、きょう』
拗ねてるどころか逆にニッコニッコのお袋と
『随分とお疲れのようね、恭様』
凛とした神矢想花がいた
「うるせぇ。あんな事させられたら疲れるし恥ずかしくて顔なんて上げられるか」
『そうだねぇ~、さすがにアレはお母さんも恥ずかしいと思ったよ~』
いつもなら『むぅ~! お母さんには言ってくれないクセに!』とか言って拗ねるお袋が今日に限って拗ねるどころか膨れっ面すら見せないだと?
「だろ?それをやらされた方は見てた奴の三倍は恥ずかしかったぞ」
『うんうん。きょうはよく頑張ったよ。お疲れ様』
き、気持ちわりぃ……。言いたかねぇけどお袋は完全に闇華達側のハズだろ?どうなってんだよ?
「おう。ところでお袋よ」
『ん~?何~?』
「何を企んでいるんだ?」
『別に何も企んでないよ~?ただ、きょうの身体少し貸してほしいな~とは思ってるけど~』
消しゴム貸して~みたいな軽いノリで身体を貸せと言うんじゃないお袋よ
「サラッととんでもねぇ事言ったよこのお袋」
お袋の発言にもビックリだが、一番ビックリしてんのは零が全くと言っていいほど驚いてない事だ
『え~! とんでもなくないよ~! お母さんからしたら普通だよ~』
幽霊のお袋からすると普通の事でも俺にとってはとんでもない事だというのをそろそろ学んでほしい
「それはお袋だからだろ?つか、俺と二人きりならまだしもここには零もいるんだからぶっ飛んだ発言は控えてくれ」
闇華達は朝飯に行ってていないけど、ここには零がいる。俺と二人だけだったらオカルト染みた話をされても構わない。零は事情を知ってるからいいようなものの、これが真央か茜だったら……考えたくねぇ
「アタシは別に構わないわよ?興味あるし」
小物感覚で身体貸せって発言には突っ込まないのかよ……っていうか、いいのかよ……
『零ちゃんはいいって~。それで?きょう、身体貸してくれないの~?』
「貸す。やり方分からねぇから勝手にやってくれ」
俺は二つ返事でお袋に身体を貸す事を選択。お袋なら悪いようにはしねぇだろうからいいだろ
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