高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

幽霊幼女が実は年上だったらしい

公開日時: 2021年6月6日(日) 23:16
文字数:4,056

「話を聞かせてもらおうか?」


 幽霊達を引き連れて自室に戻った俺は茜に幼女を任せ、早織と神矢想花を正座させていた。大人二人を見下ろす行為に心地よさなど感じない。高校生のクソガキに正座させられる大人が情けなく感じるからだ


『聞かせろと言われてもきょうが住む前からあの子がここにいて気配を感じたお母さんが時々話し相手になりに行ってました。想花ちゃんや千才ちゃん達が来てからはみんなで行ったり、二人で会いに行ってたってだけなんだけど……』

『早織さんの言う通りよ。定期的に話をしに行っていただけよ』


 なるほど、分からん。分かったのは幽霊達が時々あの幼女の話相手になっていた事だけだ


「話し相手になっていたのは理解したが、恐れもせずに俺の前に姿を現せた理由とかの説明をしてくれ……アンタらにとって俺は恐怖の大魔王的な存在なんだろ?」


 実感は湧かねぇけど、俺の霊圧は暴走すると街一つ壊せるって言ってたじゃねぇか。幽霊達からすれば俺は恐怖の大魔王。初見だったら尻尾巻いて逃げ出してもおかしくないと思うんだが……


『確かにその通りだけど、あの子……いや、あの人も最初は怖がってたけど、お母さん達がきょうは基本人畜無害の働きたくないが心情な優しい子だって説明したら納得してくれたよ~?』

『私があの人に会った時はすでに恭様に会いたい! って言ってたわよ』


 理解力が落ちたようだ。二人が何を言ってるのか全く理解できない。俺をどう見てるかはよく分かったけどな


「アンタらが俺の事をどう思ってるかよく分かった。面倒だからあの幼女がこの建物に住み着いてる時期とか、生きていれば何歳なのかは聞かねぇ。今の口振りからするとあの幼女の方が俺らよりも年上くせぇし。これからどうするかは当人達で話し合ってくれ」


 俺はそれだけ伝えてキッチンへ向かった。本当だったら幼女について事細かに聞くべきなんだろうが、早織達があの幼女をあの子からあの人と言い換えた時点で年齢が上なのはお察し。曾婆さんがそうだったように幽霊に実年齢を聞くだけ時間の無駄だ。容姿と実年齢が一致しねぇんだからな





「はぁ……」


 キッチンに着いて早々溜息が漏れる。最近男でも女でも家なき子と遭遇してなかったから油断していた……


「面倒事になってないだけマシか」


 俺の出会いには必ずと言っていいほど面倒事が付いてくる。比較的平和だったのは零と闇華、琴音を拾った時くらいか?


「あの幼女どうすんだ?」

『どうするって~?』

「家に置くのか、成仏してもらうのかって事だ」


 今までの奴らと違って今回は厄介事がない。俺としては本人が望むならここに置いていいと思っている。本人がここにいたいと望むならな


『その事なら本人の意志は確認済みよ。ここにいたいって言ってたわ』

「そうかい」


 この後、茜達を呼び寄せ、自己紹介となった。幼女────凛音りおんちゃん……いや、凛音さんは生きていれば早織より十個年上との事。彼女が亡くなったのは事故でも何でもなく、病気らしい。んで、幽霊になった理由は単に人生を謳歌したかったから。亡くなった年齢が三十代……この話は止そう。女性の年齢に触れるのは男としてナンセンスだ。話を元に戻すとだ、この建物にいたのは本人曰く楽しそうだったから。まぁ、誰に憑くかは零達が帰ってきてから決めるとしてだ……


「茜、近いんだが……」

「えー! これくらい普通でしょ?」


 すり寄って来る人気声優をどうにかする方が先だ。話し合いが終わった途端にこれ。勘弁してくれ……毎度の事ながら俺の周りに集まる奴は全員とは言わねぇが、依存心の高いヤツばかりなのか?


「普通じゃねぇよ。俺だって健全な男子高校生なんだ。茜みたいな美人にすり寄られたら理性がぶっ飛びそうなんだが……」

「え? 私美人? 嬉しいー!」


 満面の笑みを浮かべた茜は俺の胸板に頬ずりしてきた。俺如きダメ人間に美人と言われただけで喜び過ぎだろ……


『むぅ~、お母さんには美人とか可愛いって言ってくれないのにぃ~……きょうのバカ』

『恭様? 私にも言いなさい』

『お兄ちゃん! 女の子には優しくしなきゃめっ! だよ!』


 早織と神矢想花は……いつも通りだからいい。しかし、凛音さん? 仮にも俺より年上なんですからお兄ちゃんは勘弁してくれませんか……反応に困るんで


「あのなぁ……」


 俺は思った事を言っただけなんだが……嫉妬心の強い奴はこれだから困る。これじゃ女子と事務的な会話すらままならないぞ……


『ほら! お母さんにも可愛いって言って!』

『私には美人と言いなさい。早く』

「グレー! もう一回美人って言って!」


 早織、神矢想花、茜が顔を近づけてくる。俺よりもいい男はたくさんいるんだからソイツらに言ってもらえ。特に早織。アンタには親父がいるだろうが


『お兄ちゃん頑張って!』


 凛音さん、今は応援するより助けてくれませんか?


「勘弁してくれよ……」


 俺に歯の浮くような台詞は似合わないってのは分かってるだろ? はぁ……



 早織、神矢想花、茜の三人に詰め寄られ、彼女達一人一人に美人だと告げる事でこの場をどうにか収めた。その時の反応は……察してくれ。イヤンイヤンと身体をくねらせていたとだけ言っとく





「暇だ……」


 あれから一時間。やる事がない俺は再び暇を持て余していた。監禁生活マジ理想と豪語していたが、理想は理想のままにしておいた方がいいと思う。暇を持て余すのが苦痛だとは思わなかった


「暇じゃないでしょ。私がいるんだから」


 リスみたいに頬を膨らませ俺を睨む茜。人がいても暇なものは暇なんだが……


「茜がいてもやる事がなきゃ暇なんだが……」

「むぅ~! 私とイチャつけばいいじゃん」

「そういう問題じゃねぇから。つか、俺にテンプレバカップル的な事を期待すんな」


 バカップルはいつでもどこでもイチャつく。電車なんかで時々目にした事あるが、正直な感想を言おう。別に好きだよって言うのとか二人きりの時でもよくね? 電車とか公衆の面前でする事じゃないだろ


「たまにはいいじゃん!」


 何もよくない


『きょう~、茜ちゃんとイチャつくのが無理だったらお母さんとでもいいんだよ~?』

『恭様、早織さんと茜さんが無理なら私にしなさい。二人のようにテンプレは求めないわ』

『お兄ちゃん! 遊んで!』

「グレーは私とイチャつきたいんだよね! そうだよね!」


 自分の母親とイチャつくとかヤバい奴だし、テンプレですら難しいのに別の何かを求めんな。約一名イチャつきとは全く別の要求してるのはスルーしよう。最後のは突っ込まない。イチャつくねぇ……いまいちピンとこない。誰かイチャつき方を教えてくれよ


「何を言っているのやら……つかよ、俺とイチャつきたいなら自分がしたい事すりゃいいじゃねぇか」


 必殺! 相手に全てを任せよう! 俺がイチャつくネタを考えるからわけわかんなくなるんだ。ヤンデレを満足させるのと同じだ。相手のしたい事に全力で付き合う。困った時はこれに限る


『え!? いいの!?』

『恭様がそう言うなら私達遠慮しないわよ?』

「徹底的にやるから覚悟してね!」

『やったー! お兄ちゃんと遊べるー!』


 顔をぱぁぁと輝かせる早織達。凛音さんだけズレてるのだが……まぁいいか。実年齢が早織よりも上だったとしても見てくれは幼女。指摘すると説明がめんどくさそうだ


「はいはい。んじゃ、順番が決まったら言ってくれ。それまで俺は寝るから」


 茜達の事だ。順番を決めるのに一時間は掛かる。寝て待つ俺は悪くない


「『『『分かった!!』』』」


 力強く頷いた女性陣を見届けると俺はその場に寝そべり目を閉じた




『…………オイこら』


 目を開けたら頭を抱えたもう一人の俺がいた。どうやら今回はコイツの方から俺を呼んだらしい


「何だよ?」

『監禁生活に関しちゃ何も言わねぇが、イチャつく方法を女性陣に委ねちゃダメだろ……』

「何で」

『アイツらヤンデレ。任せたら身の安全保障できないOK?』

「OK」

『俺達みたいなダメ人間に相応しいのは確かにヤンデレだけどよ、アイツらの思考くらい読もうぜ?』


 もう一人の俺が言う事に反論できない。全く持ってその通りなのだから。しかし、俺にだって言い分はある


「確かにお前の言う通りだが、アイツらだっていい大人だ。未成年の俺に手を出したらどうなるか予想できないわけじゃあるまいて。自分の欲望をぶつけ、バレたら警察沙汰になるのくらい予想できるだろ」


 早織と神矢想花は物理的に手を出せないから除外するとしてだ、茜は人気声優。ただでさえ彼氏の存在が発覚すると炎上しかねないのに未成年の男子に手を出すだなんて危ない橋は渡らないだろ。当然真央も。成人組は自分の立場があるからな、自分の欲望を爆発させ、身を滅ぼすだなんてバカな真似をするはずがない


『ヤンデレにンな常識通用するかよ。好きな人を独占できればいい人種だぞ? むしろ既成事実ができて好都合だと思うまである』

「そうなったらそうなっただ。本当は嫌だが、万が一の時は責任取るさ」

『はぁ……自分自身ながら危機感薄すぎるだろ……』

「うっせ。お前も俺なら分かってるだろ? アイツらだったらそうなっても悪くないと思ってるってよ」

『分かってるさ。言ってみただけだ』


 俺達は顔を見合わせ、深い溜息を吐いた。我ながら女性陣に甘い


「俺達ヤンデレに甘くなったよな」

『だな……拒否する理由がないから別にいいんだけどな』

「そうだな。それより聞きたいんだが」

『何だ?』

「早織達をここに呼ぶ方法とかねぇか? 今はいいかもしれねぇが、後でバレた時に説明がめんどくさい」

『ここに呼ぶのは簡単だ。生者なら手を繋いで寝ればいい。幽霊達はお前が寝る時に身体のどこかに触れてりゃ自動的にここへ着く。ここへ来る方法は分かってるよな?』

「ああ。お前に会いたいと強く願えばいいんだろ?」

『そうだ。同居人達をどう説得するかは任せるし、会いに来るのはいつでも構わない。タイミングを見て来てくれ』

「了解」


 早織達をここへ呼び寄せる方法を聞いたのはほんの気まぐれだった。ヤンデレ話に花を咲かせるのも悪くはないのだが、聞きたい事は聞ける時に聞いといた方がいいと思っただけ。ただそれだけだ

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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