高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

ちょっと由香達の元を離れただけなのに

公開日時: 2021年2月7日(日) 23:21
文字数:4,179

 両親がイチャつくところを子供の立場から見るとキツイものがある。幼い頃は自分の両親が仲良くしている姿を見るだけで幸せだったし、これからもずっと仲良くしてほしいと思った。幼い子供だからそういった考えが出来るわけで、高校生ともなると不仲より断然いいが、さすがに見ているこっちが恥ずかしくなり、バッタリ出くわした日には他人のフリをしたいくらいだ


「ごめん、お前が家に住みたい理由をもう一回聞かせてくれ」


 俺はラノベに出てくる難聴系主人公になった覚えなどないし耳が悪くなったわけでもない。単に由香が家に住みたいと言った理由が信じられないというか、信じたくないというか……そんな感じだ


「だーかーら! 恭弥さんとお母さんのイチャつく姿を見てるのが嫌だから恭の家に住みたいの!」


 幽霊状態だった時に家へ忍び込んだ事がある。その時は親父も夏希さんも普通だった。普通のどこにでもいる夫婦でイチャイチャしてなどおらず、ぶっちゃけ、今の話が由香の作り話じゃないかとすら思える


「由香が家に住みたいのは解かったけどよ、親父と夏希さんがイチャついてる姿なんて想像出来ないんだが……」


 再婚相手として紹介された時は二人共そんな気配全く見せず、それは幽霊状態で家に行った時も変わらなかった。まぁ、紹介された日にも幽霊状態だった日にもいろいろあったからイチャつく余裕なんてなかったと言われればそれまでなんだけど


「それは恭が家の現状を知らないからそんな事が言えるんだよ! お母さんも恭弥さんもあたしがいるってのに目の前でキスするんだよ!? 信じられる?」


 リス見たいに頬を膨らませ、顔を近づけてくる由香。相当鬱憤が溜まっているのか、目には怒りの炎がメラメラと燃え滾っているように見える


「信じられるも何も前例がないから想像出来ない。あと近すぎ」


 前例というのは言うまでもなくお袋の事だ。俺が生まれたばかりの頃や新婚の頃に親父がお袋と人目も気にせずイチャイチャしてましたってなら……うん、そういった話って爺さん辺りから俺の耳に入って来ても不思議じゃない


「今はそんなの気にしている場合じゃないよ! 信じられないも何もそれが真実なんだよ!!」


 由香にとってほんの数センチ動いただけで俺とマウストゥマウスでキス出来る距離だってのは取る足らない事なのかよ……。


「真実って言われてもなぁ……。お袋からは人目も気にせず親父とイチャついたって話聞いた事ねぇしなぁ……」


 前例─────つまり、前妻であるお袋とも親父が同じ事をしてましたってなら由香の話にも信憑性が出てくる。前科があるからな


「なら早織さんに聞いてみればいいじゃん! お母さんと同じようにイチャイチャしてたって答えるからさ!」


 まだ何にも聞いてないのに何でお袋と親父がところ構わずイチャついてた前提で話を進めるんだか……


「はぁ……、だ、そうだが、お袋よ、その辺どうなんだ?」


 由香と話しているだけじゃ埒が明かないと思い、俺はお袋に話を振る。親父関係の事なら俺よりもお袋の方が適任だ


『ふぇ!?』


 おい、今までずっと聞いてただろ……、なのに何だ?その反応は?まさか聞いてなかったとか言わねーだろうな……?


「今までずっと聞いてただろ?まさかとは思うけどよ、聞いてなかったのか?」

『あ、いや、聞いてなかったわけじゃないけど~……、なんてーの?む、昔の話なんて忘れたと言いますか~……ね?こんなおばさんのお話なんて聞いても面白くないと思うよ~?』


 お袋がおばさんで話が面白いか面白くないかは置いといて、自分の新婚時代の話をするのはお袋でも恥ずかしいか……


「お袋がおばさんかとか、話が面白くないとか、由香の為だとかは置いとくとしてだ、ここは俺の為に恥を忍んでお袋の新婚時代の話をしてくれないか?」

『う~、で、でもぉ~、は、恥ずかしいよぉ~……』


 自分の子供に新婚時代の話をするのは恥ずかしい。話す側からするとそうだろう。だがな、聞く方も恥ずかしいんだ。もっと言うなら何が悲しくて旅行中に海へ来てまで両親の新婚時代の話を聞かなきゃならねーんだよ


「恥ずかしいのは俺も同じだよ。何が悲しくて海へ来てまで両親の新婚時代の話を聞かなきゃならんのやら……。とりあえずお袋が新婚時代どうだったかを話してくれ」


 幼い頃ならいざ知らず、高校生にもなって両親の初々しかった頃の話など聞きたくない


『でもでもぉ~、恭弥のバカとイチャついた話を聞いたきょうに嫌われたくないよぉ~……』


 お袋は何を言っているのだろうか?自分の父親と母親がイチャイチャしたって話を聞いてドン引きこそすれど嫌う事はない


「引きはするけど嫌いはしないから大丈夫だよ、お袋」


 俺はお袋を安心させるつもりでそう言った。しかし……


『うわぁ~ん! きょうにドン引きされたらお母さん生きていけないよぉ~』


 と、泣き出してしまった


「バカ恭! 慰めになってない!」


 今まで黙っていた由香が触れないお袋をそっと抱きしめる。触れないから形だけなんだけどな


「はぁ……」


 由香が大丈夫ですよ、早織さん。なんて言ってお袋を慰めている中、俺は溜息しか出てこなかったのだが、よくよく考えてみればお袋の口から新婚時代の事を語らせる必要なんてない。千才さんや紗李さん達の記憶を覗いたようにお袋の記憶も覗けばいいんだから。って事で俺は自分の必要性を感じなくなり、由香がお袋を慰めている間にそっとその場を離れた




 お袋&由香の元を離れる事に成功した俺は誰にも見つからずに遊べる穴場を探し、彷徨っていた


「どこかにいい穴場はねぇもんかなぁ……」


 釣り人じゃないから穴場を探す必要なんてないと思われても仕方ない。俺が探している穴場とは魚がよく集まる場所ではなく、静かに海を満喫できる場所だ。小説とかならこの条件に該当するのは岩場だ。だから、穴場を見つける前にまずは岩場を探すところから始めなきゃならない


「一人静かに海を満喫できる穴場といえばやっぱ岩場なんだが……、右を向いても左を向いてもあるのは海と砂……。ダメだ、岩場が見つかる気がしない……」


 砂漠で遭難するよりはマシだけど、砂と水のみの景色というのも見慣れてしまえばこれほど空しいものはない


「大人しく由香の元へ戻るか……」


 一人になりたくて由香の元を離れた俺。罰ゲームの事は当然、頭にあるものの、やっぱり一人の時間というのはほしい。


「トイレに行っていたとでも言えば何とかなんだろ」


 手元に時計がないから具体的な時間は分からない。俺が由香の元を離れてから五分くらいしか経ってないだろうから今すぐダッシュで戻れば平気だろ




 なんて思っていた俺がバカだった。騒ぎにならないうちに戻ろうと走って由香がいる場所まで戻って来たはいい。俺がいなくともトイレに行ったのだと勝手に解釈してくれると思っていた。俺の思いに反し、由香─────いや、由香達は……


「恭……どこに行ったの……?」


 顔を覆い、泣いてる由香


「大丈夫だよ、きっと恭クンはすぐに戻って来るよ!」


 泣いてる由香の肩をそっと抱き、慰める飛鳥


「落ち着いて、今零達がホテルの人に知らせに行ってるから」


 自分の腕を必死に抑え、何かを堪えている東城先生。そして……


「グレー、私達の事嫌いなのかな?」


 なぜかマイナス思考の茜


「マジかよ……」


 いなくなった前提で話を進める由香達を見て俺はそっと溜息を吐いた。悪いとは思っているが、こんな調子だとトイレにすら行けない。行けたとしても毎度毎度こんな感じじゃ心休まらないのは明白だ


「茜と盃屋さん以外はお袋の姿見えてるし、お袋はお袋でチート能力使って簡単に俺の居場所なんて特定出来るだろうに……」


 茜と盃屋さんはともかく、由香達はお袋の姿を見て話が出来る。当のお袋はチートにも似た力で俺を探し当てる事ができ、多分、どこに逃げようとも零達の側にお袋がいれば簡単に見つかってしまうのは言うまでもない。そのチートお袋はというと……


『きょう……お願いだから戻ってきて……』


 この世の終わりみたいな顔で虚空こくうを見つめていた


「で、出づらい……」


 女性陣が揃いも揃ってポンコツと化していて非常に出づらい。いや、勝手な事した俺が悪いんだけどね?こんな騒ぎになってるとは思わないじゃん?


「見つかる前に逃げるか」


 今の彼女達に見つかったら最後、どんな要求をされるか分かったものじゃないと思った俺はそっとその場を離れ─────


「恭さん、どこに行くんですか?」

「そうだぞ、ヘタレ」


 られなかった。逃走を試みたところ、水着姿の双子に見つかったからだ


「そ、蒼……、み、碧……」

「恭さん♪もう一度聞きますけど、どこに行くんですか?」


 全身に嫌な汗が伝う。目の前にいる蒼の笑顔が怖いとかじゃなく、背後から向けられる殺気のせいだ


「え、えっと……、み、みんな暑いだろうから、の、飲み物でもか、買ってこようかと思ってな」


 もちろん、今のは嘘だ。暑いのは事実だが、俺は飲み物なんて買ってくる気は毛頭ない


「そうでしたか♪でも、その前に恭さんにはやる事がありますよね?」

「な、何の事だ?お、俺にやる事なんてあるわけないだろ?と、トイレに行って戻って来たばかりなんだからよ」


 トイレに行ったというのも当然、嘘。本当は一人でのんびり遊べる穴場を探していた。目の前の双子にもそのように、背後にいる由香達にもそれを伝えるとマジで何をされるか分からないので咄嗟に嘘を吐いた


「そうでしたか、てっきりボクは一人でのんびり遊べる穴場を探しに行ったのかと思いました」


 満面の笑みでさも見ていたかのように俺の行動を言い当てる蒼。コイツはエスパーか?


「そ、そんなワケないだろ?大体、俺がゆ、由香達から、は、離れるだなんてあ、あるかよ」

「ですよね!恭さんが由香さん達を置いてどこかに行くだなんてそんな事あり得ませんよね?」

「あ、当たり前だろ! じ、自分の周りに集まる、れ、連中の性格は把握済みだ!」

「ですよね!」

「ああ! 海に来てまで一人で遊ぼうだなんてアホのやる事だろ!」

「恭さんならそう言ってくれると信じてました! さすがに海に来てまで一人になりたいだなんて思ってたボクがバカでした!」


 どうにか蒼を言いくるめた後、由香達に誠心誠意謝罪をし、何とかその場を取り成した。戻って来た零達には盛大に説教をされたが、急な便意に襲われたと言ったら碧以外の女性陣が顔を真っ赤にし、お袋はなぜか昔を懐かしんでいた



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