日本語というのは大変面倒だと思う。今回は俺が面倒だと思う言葉の中から大丈夫をピックアップした。大丈夫という言葉は大変便利で承諾する時も断る時も使え、不安を抱いてる人に対して安心感を持たせられる言葉としてもよく使われる場面が多く、日常生活の中でかなり重宝されている。日本語の面倒さを語りだすとキリがないから本題へ入ろう。俺が何でこんな話をしているかと言うと────
「俺のマイスイートハートは母親の早織だな」
俺の身体に入ったお袋がトチ狂った事を言い出したからだ。
「早織さん、恭はそんな事言いませんよ?」
いきなり狂った事を言い出したお袋に対し、冷たく返す零。大丈夫って言ったよな?バレないようにするって言わなかったか?闇華達がいないからいいが、いたら確実にヤバい事になってたぞ?
「分かってるよ~。ただ、きょうの声でマイスイートハートって言葉を聞きたかっただけだよ」
人の声で遊ぶな。俺の声でマイスイートハートとか薄ら寒い事を口走るな
「はぁ……気持ちは分かりますけど、闇華達の前ではしないでくださいね?」
「もちろん!」
零、お袋を注意してくれたのは嬉しいけどよ、共感しちゃダメだろ……
「分かってくれたならいいです。それと、お願いがあるんですけど……」
「何かな?」
「い、一回でいいんで〝俺のマイスイートハートは零しかいない”って言ってくれませんか?」
この女、何言っちゃってるの?そんなのお袋がOKだすわけが……
「いいよ~。あ、何なら録音もしとく?」
あったよ。ちゃっかり録音の許可すら出しちゃったよ……
「はい!」
零は今までの中で最高にいい返事を返すとポケットからスマホを取り出し、操作するとそれをお袋の方へ向けた
「準備OK?」
「いつでもいいです!」
心なしか目がギラギラしてる零を前にお袋は一つ咳払いをすると大きく息を吸い込み、そして────
「俺のマイスイートハートは零しかいない。欲を言うと最初の女である零と母親の早織、二人セットで食いたいぜ☆」
俺が絶対に言わない台詞を口にした。俺のマイスイートハート~ってのは零の注文だから見逃すとして、何だよ?零とお袋をセットで食いたいって?こんなアホな事を言ったら零は引く……
「さ、最高デェス……」
どころか満面の笑みだったわ
「わ、私もきょう関係だと人の事言えないけど、さすがにこれはちょっと……」
満面の笑みを浮かべる零に顔が引きつるお袋。俺的には目くそ鼻くそでこの二人に大差なんてない。いや、どちらかと言えばお袋の方がヤバい気がしなくもないか
「うるさいです!早織さんだって恭の事好きならアタシの気持ち解りますよね?」
「そ、そうだけど……」
「だったらいいじゃないですか!」
「う、うん……」
お袋が零に押されているという光景は非常に珍しい。普段の生活で交流がない分、新鮮とも言え、中身が普通だったら俺だって微笑ましく思う。内容が普通だったらな
「でしょ!? アタシ何も間違ってないですよね?」
「う、うん……」
「早織さんだって恭に〝早織、愛してる”とか、〝早織、お前は永遠に俺のものだ”とか言われたいですよね!?」
「そ、そりゃ、言われたい……」
「ですよね! 言われたいですよね?」
「うん……、でも、きょうはお堅いところあるから言ってくれない……」
「大丈夫ですよ! 恭なら頼み込めば言ってくれますよ! アタシ達の時がそうだったじゃないですか!」
零達の場合は頼み込まれたからというより、ヘタレって言われっぱなしで癪に障ったからなんだけど……
「で、でも、私はきょうを脅迫出来る材料を持ってないし……」
お袋、何で真っ先に脅迫するって発想が浮かぶんですかねぇ……
「早織さん……」
零も零で何でそんな可哀そうな目をお袋に向けるんです?俺に愛してるって言わせるには脅迫しなきゃいけない決まりでもあるんでしょうか?
「零ちゃん、私どうしたらいいんだろう?」
どうするも何も脅迫から離れて普通にお願いすればいいと俺は思うよ?
「ネタをでっち上げて脅迫すればいいんです! 愛してるって言わないとイタズラするよ?って!」
低い! 脅迫するネタのレベルが低いよ! 低すぎるよ! イタズラって子供か!
「そっか! きょうにイタズラするよって言って脅せばいいのか!」
「そうです! 女の子からの脅迫だったら恭は喜びますから!」
喜びません!! 俺はドMじゃねぇんだよ! 女に脅迫されて喜ぶわけねぇだろ!! お袋もそれ名案みたないな顔すんな!
「だよね! きょうなら喜ぶよね!」
「もちろんです!」
「じゃあ! 夜にでもやってみる! ありがとう! 零ちゃん!」
「いえいえ! お役に立てて何よりです!」
と、俺への脅迫談義はここで終了。俺は今後、零達に頼みごとをされたら交換条件を突き付ける事を心に誓った
脅迫談義から少しして、零はパソコンにスマホを繋げて何かの作業をし、俺の身体に入っているお袋はゴロ寝と自由な時間を過ごしていた。
「ただいま戻りました」
零達が自由な時間を過ごしていると部屋のドアが開く音と同時に闇華の声がし、作業をしていた零は寝そべるお袋の元へ慌てて駆け寄り────
〝いいですか?闇華達の前ではいつも通りの恭を演じてくださいね?アタシも協力しますから”
と耳打ちで釘を刺す。いつもの俺を演じなきゃいけないというのはお袋も理解していたらしく、無言で頷いた。そんなやり取りがあるとは知らずに闇華達の足音が近づき……
「恭君、零ちゃんに何もしませんでしたか?」
闇華達到着。何かしたかと聞かれれば俺は何もしてない。お袋が俺の身体で零にクソ寒い事を言っただけで
「何もしてないぞ」
お袋が愛想なく答える
「本当ですか?零ちゃん」
余程俺が信用ならなかったのか闇華は零に確認を取る
「本当よ。アタシは恭に手を出されてないしアタシからも手を出しちゃいないわ」
「ならいいです。確認しておきますけど、恭君に手を出すあるいは恭君から手を出される時は……」
「分かってるわよ」
不敵な笑みを浮かべる闇華と零。俺に手を出す時か手を出される時が何なのか非常に気になる。信用してないわけじゃねーけど、真央と茜、由香、お袋と神矢想花以外には前科があり、身の安全に関して言えば信用ならない
「闇華ちゃん、今その話は置いといて、今日は山へ行くんでしょ?早く準備しないと」
「そうでした。早く着替えを済ませないとでしたね」
彼女達の恰好は寝間着。そのままだとバスがあるとはいえ、山に行くのには不適切。という事で……
「恭クン、外に出てて?私達の生着替えが見たいなら残ってもいいけどね」
俺なら溜息の一つでも吐いて部屋を出る。お袋はどうするんだ?中身的には女だから飛鳥達の着替えを見たところで何かしらの感情を抱く事はない。あくまでも中身的にはだ。外見的には完全にアウト。女八人が着替える場所に一人の男がいるというのはヤバい。お袋はそこんとこ汲んでくれていると信じてる
「女集団の着替えを眺める趣味はねぇよ。俺はトイレで着替えてくるから全員終わったら呼んでくれ」
「分かった。でも、もし心境の変化があったら言ってね?私は恭クンにならいいから」
飛鳥の言葉に零達が頷く。この痴女集団は早く何とかしないと俺はマジで捕食されるんじゃないか?この痴女発言にお袋が何て返すか……いつも俺の側にいるなら解かってるはず……さっきは俺の期待通り余計な事は一切言わず、俺が言いそうな感じで返したから大丈夫────
「お袋ので間に合ってる」
じゃなかった。全く持って大丈夫じゃない……この先を言うと俺の昔話をしなきゃならんから詳しくは説明しない。言えるのは全く大丈夫じゃないって事だけだ
「恭ちゃん、それはどういう意味かな?」
ほらぁ! お袋が余計な事言うから東城先生の目から光が消えちゃったじゃないか!
「その話詳しく聞きたいんだけど、いいよね?恭くん?」
東城先生に引き続き琴音もかよ……
「グレー?いくら何でも今のは聞き捨てならないよ?」
「そうでござるな、拙者も茜に同感」
声優コンビ、お前達もか……
「恭、いい機会だからあたしと家族の絆を深めるためにお話しない?」
「恭クン、私もキミと仲良くなりたいなぁ~」
東城先生、琴音、声優コンビと来て飛鳥と由香が来ないわけがない。という事は当然、零と闇華も……
「アタシは恭に着替えさせてほしいわ」
「偶然ですね、私も零ちゃんと同じ事、言おうと思ってました。恭君、お願いしますね?」
目から光が消えてました! こうなったのはお袋のせいだぞ! どうしてくれんだよ!
「零と闇華がいいなら着替え手伝ってやろうか?」
「「「「「「「「え……?」」」」」」」」
アウトぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!! 零達も意外そうな顔すんな!! そこは変態!!って言って俺をトイレに押し込むか部屋から叩き出すとこだろ!
「聞こえなかったんならもう一回言うぞ?お前達が望むなら着替え手伝ってやるよ」
二度も言うなよ!! 男が女の着替え手伝うとか傍から見たら怪しさ満点の光景でしかねぇよ!!
「「「「「「「「お、お願いします……」」」」」」」」
お願いすんなよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
「了解。んじゃ、キスの順番は零からだったから着替えは茜からな」
「やった!」
やった!じゃねぇから。ガッツポーズすんな!
「「「「「「「えぇ~!」」」」」」」
零達も不満の声を上げんなよ! つか、もう突っ込み疲れた……。約一名は中身がお袋だっつー事忘れてるしよぉ……
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