高校入学を期に一人暮らしをした俺は〇〇系女子を拾った

意外な場所で一人暮らしを始めた主人公の話
謎サト氏
謎サト氏

当初の予定通り俺は海へ行く

公開日時: 2021年2月7日(日) 23:21
文字数:3,481

 よく分からないクイズで罰ゲームをする羽目になった俺は零達を連れて一旦部屋へ戻って来た。どこへ行くにも零達の誰かと一緒なのはいい。家にいる時から風呂は一緒に入っていて異性と風呂に入るのは慣れっ子……と言いたいが、家では互いに水着着用で生まれたままの姿ではないから完全にとは言い切れない。問題はトイレだ。誰だって排泄しているところを見られるのは恥ずかしい。したがって常に一緒と言うわけにはいかないのだ。さて、どうしたものか……


「どこに行くにも零達の誰かと一緒じゃなきゃいけないとなると遊べる場所は限られてくるよな……」


 ベランダから海を眺め、今後どう動いていくかを考える。俺は男で零達は女。幼少期なら同じ部屋で着替えていても羞恥心は特に感じる事なく平然としていられた。まぁ、幼い頃なんて男女で身体つきの差なんてあってないようなものだ。違っている部分と言えばナニが付いてるか付いてないかくらいか


「なーに黄昏てんのよ!」


 物思いに更けていると背後から零の声が。振り向くと零だけじゃなく闇華達の姿もある


「黄昏てるんじゃなくてこれからどうしようかと考えていたところだ」


 本来の予定ではこれから海に行くつもりだった。その予定は婆さんによってものの見事に打ち砕かれたけどな


「どうするって当初の予定通り海に行って遊ぶのよ!」


 罰ゲームでどこかへ行く時には零達の誰かと一緒にいろって言われたの忘れてんのか?この女は


「遊ぶのはいいけどよ、海に行くって事はもちろん、水遊びをするって事だよな?」


 海での遊び方はいろいろだ。泳げない奴は浜辺で砂遊びをし、身体を動かしたい奴は海に入って泳ぐ。球技がしたい奴は同士を募り、浜辺でビーチバレー。どれもこれも王道ではあるものの、全てにおいて言えるのは水着じゃないとこの季節は暑いって事だ


「あったりまえでしょ! せっかくの海なのよ?水に入らなくてどうすんのよ!」

「だよなぁ……。それは分かりきっていたけどよ、そうなると水着に着替えなきゃならんだろ?」

「そりゃそうよ! 水遊びをするんですもの! 当然よ!」


 当然よ!じゃないんだよなぁ……零達は女だから集団で着替える事が出来ても俺は男でこの面子で海に行くと絶対に男女で更衣室が別れ、俺が一人になるのは必然。そうなると罰ゲームのルールに反した事になる。律儀に守る気なんて全くねーけど


「水着になって水遊びをすんのはいいけどよ、着替えはどうするんだよ?零達は女で俺は男。そうなると男女別々で着替えなきゃならんだろ?」


 こんな時、この場に蒼がいてくれれば……。今ほど蒼が頼もしいと思った事はない


「当たり前でしょ。その対策もバッチリしてあるから大船に乗ったつもりでいなさい!」


 自信あり気に胸を張る零。今回ばかりは彼女に任せるとするか


「分かった、零に任せる」

「よろしい!」


 零の策を信じ、水着と必要な物を持って部屋を出た。その後はいつも通りエレベーターに乗り、一階へ着くと案内板を確認。その地図にあった通りに進み、そして─────


「あ、あぢぃ……」


 海へ着いた。


「恭、開口一番がそれ?」

「暑いモンを暑いと言って何が悪い」

「これから海に入るんだから暑いって言わないの!」


 そう言って零はズカズカと女子更衣室の方へ歩いて行った。


「はぁ……こんな暑いなら涼しい部屋でゲームでもしてればよかった……」


 外へ出ると暑いなんてのは分かりきっていた。中学時代の俺ならこんな季節は外になんて出ずに涼しい部屋でゲーム。これが当たり前だった。


「恭クン、夏が暑いのは当たり前だよ! せっかくの海なんだから楽しまなきゃ!」


 飛鳥の言う事は間違ってない。夏は暑いからこそ夏なんだ。地域にもよるけどな


「それは分かってる。言ってみただけだ」


 夏だから外が暑いのは当たり前。それでも暑いと言わずにはいられない


「分かってるならよし! それじゃあ、私も着替えに行きますか!」


 飛鳥も更衣室へ向かって行った。行く前に振り向いて『恭クン!私の水着期待しててね!』なんてウィンクを飛ばしてきたのだが、見慣れているから期待しようがない。んで、残された闇華達はというと、飛鳥と零同様、俺に一言言って更衣室へ。最終的に残されたのは……


「由香が余り物か……」


 書類上の姉である由香だった


「人を売れ残りみたいに言うの止めてくれない?」


 隣にいる由香は余り物と言われたのが気に食わなかったのか俺をジト目で見る。住んでいる家が違うからコイツと二人きりになるだなんて滅多にない


「売れ残りとは言ってないだろ?余り物とは言ったけど」

「どっちも同じじゃない! とにかく! あたしを憐れむのは止めてよ!」


 憐れんだつもりはないんだけどな……。


「へいへい、悪かったよ。んで?何で由香が残ってんだよ?」


 他の連中は言うだけ言ってさっさと更衣室へ行ってしまった。全く、薄情な奴らだ


「あたしが恭の付き添いだから。それと、少し話がしたかったから」


 いつの間に俺に付きそう係なんて決まってたんだよ……?


「付き添い係がいつ決まったかは置いとくとしてだ、何だよ、話って」


 今までの教訓で分かっているのは俺に話があるという人間の話は碌なものじゃない。高確率で騒動の引き金になる話だ


「それは着替えてからするよ。だから早く着替えちゃお?」

「お、おい!」


 由香に手を引かれ、俺は男子更衣室へ連れて行かれ、そのまま放り込まれた


「あたしがいいって言うまでカーテン開けないでよ?」


 プールの更衣室は当然だけど分厚い壁で区切られていた。しかし、海の更衣室はそうではなく、なぜか区切っているのはカーテン一枚。防水用を使用しているだろうから簡単に透けて見えるだなんて事はないだろう。それでもカーテンの方を見るとシルエットだけではあるものの、由香のボディラインがくっきりと見えてしまう


「シルエットとしてお前の姿が見えるんだけど?」


 カーテンの向こうには丸裸の由香がいるに違いない。幸いな事にシルエットで彼女が何をしているか見えるから不用意にカーテンを開けずに済みそうだ


「あ、それはいいよ。そのシルエットでお義姉ちゃんの着替える姿を妄想してくれれば更によし!」


 何もよくない。俺だって健全な男子だから性欲はある。それとこれとは話が別で義理とはいえ姉に劣情を抱くだなんてしない。したらしたで俺がヤバい奴か度の超えたシスコンになってしまう


「しねーよ。義理……いや、書類上は姉に当たる人間に劣情を抱くほど俺は歪んじゃいないからな」


 義理の家族だから血は繋がっていない。親父と夏希さんを説得さえしてしまえば恋人になろうが結婚しようが自由だ。親父達が許せばの話だが


「それはそれで女として悲しんだけど……」

「お前は俺をヤバい奴か度の超えたシスコンにでもしたいのかよ……」


 由香の思いは度々聞いた事がある。俺を好きだと。でも、中学時代虐められ、ゴールデンウィークに思い切り彼女や親父、夏希さんをぶん殴った。そんな奴を好きになるだなんてどうかしている


「あたしは恭が義姉に劣情を抱くヤバい奴でも度の超えたシスコンでもちゃんと受け入れるのに……」

「俺が嫌だよ」


 そんなアホな会話をしているうちに俺の方は着替え終え、由香の方を見ると上を着ければ終わりという状態。


「着替え終えたからカーテン開けていいよ」


 由香のお許しが出たところで俺はカーテンを開けた。すると……


「ビキニか……」


 黄色のビキニを着た由香が立っていた


「ど、どうかな……、に、似合う……?」


 ほんのり頬を紅く染め、モジモジしている由香。零達の水着姿はいつも見ているから在り来たりなリアクションで済むが、由香の水着姿は初めて見る。


「あー……いいんじゃねぇの?いつも元気な由香に黄色がよく映えると思うぞ?」


 零達だったら似合ってるの一言で済ますのに、初めて見たってのもあってか俺にしては珍しく水着の色合い込みで褒めてしまった……明日は台風だな


「そ、そう……」


 耳まで真っ赤になり俯く由香。水着の感想を求めてきたのはそっちだろ?


「おう。こんなとこにいてもなんだし行くか」

「うん! 海までエスコートよろしく!」


 由香が俺の腕に抱き着いてきた。ラブコメの主人公なら腕に伝わる胸の感触でドギマギしているところだと思う。俺は違うぞ! 何しろ寝てたらいつの間にか零達が腕をホールドしているだなんてよくある事だからな! 女の胸の感触など慣れている!


「分かりましたよ、お姫様」


 腕を組んでる時点でお姫様じゃないような気がしてならない。しかしだ、女性には悪いけど、女というのは単純でお姫様扱いするとすぐに機嫌がよくなる傾向にある。零達とか特に


「よろしい!」


 由香と腕を組み、俺は海へ向かった


今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!

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