神奈さんとアメリちゃん

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第三百七十九話 近井さん、いらっしゃ~い!

公開日時: 2021年10月12日(火) 21:01
文字数:2,711

 さあさあ! お買い物も昼食も無事済ませ、あとは近井さんを待つだけです! リビング、ヨシ! 寝室、ヨシ! 衣服・メイク、ヨシ! 住所も以前、お伝えしてある。


 そわそわしながら、筆を走らせつつ待っていると、インタホンがピンポン!


「はーい、どちら様でしょう?」


 一応確認。


「こんにちは。近井です」


「こんにちはー。今、お迎えに出ますー」


 よっし! いらっしゃいましたよ~。


「アメリちゃん、近井さんたちいらしたよ~。お迎えに行きましょー」


「おお! ともちゃんと、おかーさん! 行く~!」


 というわけで、門までお出迎え~。


「こんにちはー!」


 さっそく、元気にご挨拶するアメリちゃん。私も、改めてご挨拶。


「こんにちはー!」


 ともちゃんも、元気にお返事。


「こんにちは。猫崎さん、今日はお世話になります」


 近井さんもともちゃんも、よそ行きということで、ちょっとおしゃれでフェミニンな服でおめかしされてます。


「はい。さほど広くない家ですが、おくつろぎいただければ幸いです」


 我ながら、言葉が固いなあと内心苦笑。ともかく、中にお通ししましょう。


 近井さんから飲み物とお菓子の入った紙袋をいただいたので、用意するために別行動。アメリには、とりあえずリビングにお通しするように言ってある。


 おお、クッキーとミルクティーですね。そういえば、アメリの好物ってまだ伝えてなかったか。まあ、いただき物にあれこれ言うのは贅沢よね。


「お待たせしました」


 アメリとともちゃんが楽しそうに談笑する中、配膳する。


「おねーちゃん、お菓子ありがとー」


「ありがとうございます。ともちゃんも」


「ありがとーございます!」


 勢いよくお辞儀するともちゃん。ほほえま。


「きちんとお礼が言えて偉いねー」


 頭をなでなですると、「褒められたー」と嬉しそうにお陽様笑顔。ふふ、ミニアメリ見てるみたい。


 そんなことを思いながらアメリを見ると、なんだか不服そう。


「アメリもきちんとお礼言えて偉いよー」


 こちらも頭をなでなで。「えへへ」ととろけるアメリちゃん。二人とも可愛いなあ。


「何話してたの?」


 アメリの横に腰掛け、盛り上がっていた内容を尋ねてみる。


「あのね、ピュアランドの話してた! ともちゃんも、ケイティちゃん好きなんだって。あ、そうだほら。見て、ケイティちゃんのコップ!」


 ミルクティーが入った、ピュアランド土産のマグカップをじゃーんと見せると、ともちゃんが「すごーい! ともも欲しい~」とキラキラ瞳。


「じゃあ、今度買いましょうね」


 と、近井さん。


「猫崎さんは、ピュアランドよく行かれるんですか?」


「いえ、それが実は、こないだが初ピュアランドでして。あそこはすごいですねえ。まさに夢の国で、童心に帰ってしまいました」


「いいですよね、ピュアランド。うちも家族でときどき行くんですけど、本当に友美喜んでくれまして」


 お、ピュアランドが共通の話題としていけそうですねえ。


 というわけで、しばしピュアランドトーク。


 しかし、ふと時計を見ると、三十分以上話し込んでしまっていた。


「あ、もうこんな時間……。すみません、今朝申し上げましたように仕事をしなければなりませんので、仕事場に戻りますね」


「おねーちゃん、だったら向こうにともちゃんたち連れて行こうよ!」


 ええ~? 初めてお招きした方を、寝室に?


「あら。私、漫画さんの仕事場とかちょっと拝見してみたいです」


 近井さんまで……。うーん。


「わかりました。近井さんがそうおっしゃるのでしたら……」


 というわけで、寝室にお連れすることになってしまいました。


「猫崎さん、ここでお仕事されてるんですねえ」


「はは……。お見苦しくて恐縮です」


 お茶菓子を配膳し直しながら、照れくささで変なはにかみをしてしまう。


「いえいえ。とてもご清潔にされていると思いますよ」


「ありがとうございます。では、私は仕事しながらで失礼します」


 PCのスリープを解除し、仕事モードに。


「ともちゃん、絵本読んであげるー!」


「ありがとー、アメリちゃん!」


 少しすると、「くろねこクロのたび」一巻の冒頭が聞こえてきました。


 近井さんの声がしないから、一緒に聞き入ってるのかな? それとも、私の仕事ぶりを見てたり?


 しばしすると、第一巻を読み終えた模様。


「面白ーい!」


「いい絵本ねえ。うたのさんってきっと、優しい方なんでしょうね」


「はい。とてもお優しい方ですよ」


 と言うと、「えっ!?」と素っ頓狂な声を上げる近井さん。


「お知り合いなんですか!?」


「友人として、お付き合いさせていただいてます。あの、いつぞや公園に、黒い長髪の猫耳人間の子いたじゃないですか」


「ええ。たしかにいましたね」


「彼女の隣りにいた保護者の方が、作者の宇多野まりあさんです」


 近井さん、「ええー! 私、ご一緒したことあるんですか!」と仰天。


「今度お会いしたら、きちんとご挨拶しなきゃですねえ」


「とても親しみやすい方ですよ」


 トーンを貼り付けながら、まりあさんのお人柄をアピール。


「あ、本といえば。『あめりにっき』、拝読させていただきました。大変面白いですね。猫だった頃のアメリちゃんのやることが、いちいち面白くて」


 くすくす笑うものの、「あ、本人の前で笑ったら良くないわよね」と取り消す。


「だいじょーぶだよー! アメリ、自分でも読んだけど、自分で自分が面白かった!」


 「自分」がゲシュタルト崩壊。


「あら、そう? アメリちゃん、本当に猫だったんだなあって、改めて感心しちゃった」


「お読みいただき。ありがとうございます。よろしければ、今書いてる原稿ちょっとだけご覧になりますか?」


「いいんですか? では、失礼します」


 背後に立つ彼女。


「あら、今の猫耳人間の姿ですね」


「はい。読み切りはそちらでいこうという話になりまして」


「漫画って、こうやって描かれるんですねえ~」


 しきりに感心されてしまう。しばし、仕事について雑談。


「八年……セミプロ時代も入れたら、もう十年選手になりますか。ほんと、時間って経つの早いですよね」


 年の割に長い職歴に、感心の声を上げる近井さん。


「私は、若い頃趣味でホームページ作っていて、そのとき培ったノウハウでWebデザインの在宅ワークを始めた感じですね」


 今度は、私が感心の声を上げる。


「お仕事としては長いんですか?」


「仕事しては、五年ぐらいです。友美の妊娠がわかって、これからお金もかかるだろうし、あまり体に負担をかけずに家計の助けになるようなことを、何かできないかと考えまして」


「なるほど」


 会話も一旦途切れたので、彼女は「それでは、失礼しました」と娘さんのところへ戻っていく。


 アメリは「くろねこクロのたび」二巻を朗読中。


 ああ、平和だなあ。近井さん親子とお知り合いになれて、本当に良かった。しみじみそう思うのでした。

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