「ケーキ作りも、楽しいものですねえ」
十時を少し過ぎたあたり、由香里さんとケーキ作りなう。
アメリはミケちゃんと一緒に、久美さんと遊んでいます。優輝さん、さつきさんはお仕事。
スポンジを、ハンドミキサーでまぜまぜ。総勢十四人という大人数が出席予定なので、ケーキの材料も大ホールのさらに倍ぐらい。
私のご縁も、こんなに広がったんだなあ。
「神奈さん、お上手ですね」
「ありがとうございます。さすがに、一人暮らしも八年超えると、調理スキルも磨かれるものですから」
まあ、一人暮らしでも料理しない人は、とことんしないんだろうけどね。
「できました」
「では、予熱も済んだので、入れていきましょう」
ケーキを二つ型に入れ、オーブンにイン! いやあ、改めて大きなオーブンですこと。
「では、休憩しましょうか」
「はい」
彼女とともに、リビングへ。
「久美さん。面倒見、代わりますよ」
由香里さんが、子供二人と大航海世代を遊んでいた彼女に、声をかける。
「ええー。ちびっこと遊んでてえなあ。ダメか?」
「ダメということもないですけど」
「とりあえず、観戦していましょうか」
相変わらず、子供がお好きなご様子で。
現在、久美さんがリード中。それを僅差で追いかけるミケちゃん。アメリは、相変わらずマイペース。コンピューターはドベ。もう、終盤戦かな?
「おお~。猫がネズミやっつけてくれた! 偉い!」
「運いいわねー。猫カード、さっきちょうど引いたばかりじゃない」
「おう、海賊がなんぼのもんじゃい!」
三者、にぎやかにプレイ中。良き哉良き哉。
「勝ったぜ~。強くなったなー、ミケ子」
「まーね。でも、勝ちたかったわ」
「代わるか?」
私と由香里さんに、久美さんがコントローラーを差し出してくる。
「いえ、それだと、プレイ中に焼き上がってしまいますから」
遠慮する由香里さん。
「そか。アメ子、ミケ子、もう一戦いくかー?」
「おおー!」
「今度は勝つからね!」
というわけで、再度、三人のプレイを見守るのでした。
観戦中、アラームが。
「あ。焼き上がりですね。行きましょう」
由香里さんが、ご自身のスマホを見る。
では、参りましょうか~。
オーブンから熱々のスポンジを取り出し、自然冷却します。
「冷めるまで、暇ですねえ」
「この状態じゃ、冷ます以外出来ませんからね」
しょうがないですよね、という感じに肩をすくめる彼女。
というわけで、またもリビングに舞い戻り。再び、観戦するのでした。
◆ ◆ ◆
「そろそろ冷めた頃合いですね」
「行きましょう」
二人でキッチンへ。
「これはコツが要るので、わたしがやりますね」
細くて長~い包丁を取り出す、由香里さん。器用に、スポンジを水平斬り!
「鮮やか!」
ぱちぱちと拍手。
「ありがとうございます。では、クリームを作りましょうか」
「はい」
今日のケーキは、残暑もまだ強いので、甘夏のショートケーキ。
クリームを泡立て、剥いた甘夏をスポンジに敷き詰めてクリームを塗り、さらにスポンジでサンド。
あとは、コテのように包丁できれいに表面にクリームを塗っていく。
むう、由香里さん上手だなあ……。私のは、ちょっと不格好。とほほ。
「お上手ですねえ。私のは、なんかイマイチで」
「ありがとうございます。料理は愛情ですから、神奈さんのケーキもきっと美味しいですよ」
「ありがとうございます」
フォローされてしまった。
ともかく、続いて残りの甘夏をきれいにトッピングし、絞り器でクリームを絞って、飾り付け。
最後に中心に、チョコペンで「Happy birthday Amelie!」とチョコペンで書いたチョコ板を添える。
「できましたー」
「こちらもです」
「神奈さん、アレやりましょう!」
手を、頭のやや上に構える彼女。はて……? ああ!
「「いえーい!」」
ハイタッチ! 以前これ、見られたんだっけ。覚えてらしたのね。
「じゃあ、冷蔵庫に入れておきましょう」
「お願いします」
相変わらず大きな冷蔵庫に、安置されるケーキ。
ボウルなどを食洗機に入れた後、二人で、キッチンをあとにするのでした。
「優輝ちゃん、呼んできますね」
そのまま、二階に上がっていく由香里さん。私はリビングへ。
少しして、優輝さんが降りてきました。
「じゃ、キッチン使わせてもらいますね」
「あの、私もなにか、お手伝いしましょうか?」
慌てて挙手。
「え? 神奈さん、ケーキ作りでお疲れでしょう」
「せっかくの、愛娘の誕生日ですから」
「そういうことでしたら」
頷く彼女についていき、再度キッチンに立つ。
「といっても、あたしのは、だいたい仕込み終わってるんですけど……」
そう言って、冷蔵庫からラップにくるまれた黄色い塊を取り出す彼女。
「ピザですか?」
「Exactly! あたしの十八番ですからね」
テーブルに大きなクッキングペーパーを敷き、その上に粉を打つと、今度は調理台のほうでピザを押し広げていく。
「少し、離れててください」
立てた人差し指の上に生地を乗せると、くるくると回し始める!
「うわ! すごい!」
なんかのテレビで見たような光景に、びっくり!
「ありがとうございます」
お礼を述べながら、生地を遠心力で広げていく彼女。
かなり大きな生地になると、器用にさっきのペーパーの上に安置。
「あざやかですねえ」
「ありがとうございます。もう、慣れですね」
照れくさそうに、はにかむ彼女。
「では、トッピングしていきましょうか」
「はい」
トマトソースを塗り、その上に生地で十字に境目を作る。
その上にピザ用チーズをまぶし、片方にはマヨネーズも塗っていく。
あとは、マヨネーズサイドの左に、小さく切ったチキンの照り焼きときざみ海苔、右側には、エビとミニトマト、ブロッコリーを乗せ、それぞれ、さらにマヨネーズを絞ります。
「神奈さん、そっち自由にやってみてください」
「はい」
彼女が出した具材は、ペパロニ、おナス、ミニトマト、ブロッコリー。
ピザ屋さんみたいな感覚で、載せていけばいいのよね。優輝さんは、オーブンを予熱中。
よいしょ、よいしょ。
「ふう」
完成~!
「お疲れ様でした。あとは焼成ですね。さつきに声かけてきますので、リビングで休んでいてください」
「はい」
オーブンにピザを入れた後、そう言って、彼女は二階に上がっていきました。ややあって、さつきさんが降りてきて、「まりあさんとクロちゃんを、お迎えに行ってくるっすー」と、出かけて行きます。
いやはや。誕生日のときは、皆さんいつも、こんな大変なことをなさっていたんだなあ。
すごいな。
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