今日は、久しぶりに四人集まっての勉強会! なにげに、押江先生と白部さんも、久しぶりのお顔合わせですね。
やっぱり、白部さんが教師役をなさっていると、ピタッとピースがはまったような光景になるなあ。
私は真留さんが来るまで暇なので、漫画など読んでいます。教師をしようにも、折りたたみ机、さすがに七人がけは厳しいので。
せめて、お茶ぐらいはこまめに淹れようと、ちょくちょく読書中断しているものの、なんか罪悪感。白部さんは、「直に教えたほうがいいデータが得られますので、お気になさらず」と仰ってくださるけれど。
とはいえ、私も仕事の合間の大切な休息タイム。リラックスするのも大事よね。
ぺらり……。ぺらり……。
この、紙を繰る感触いいなあ。私はやっぱり、電書に移行できなさそうだ。
ぬ!? インタホンが! スマホの時計を見ると二時。真留さんだ! 罪悪感とかいいながら、読みふけってしまった。
「どちら様でしょう?」
一応確認。
「こんにちは。真留です」
「はーい、今出ますねー」
では、お迎えに上がりましょう。
「こんにちは~。スーツ暑いですよねえ。中へどうぞ」
「ありがとうございます。では、失礼して……」
真留さんを、リビングにごあんなーい。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
彼女をリビングに通した後、アイスティーをお出しする。
「アメリちゃんたちは、相変わらず勉強ですか?」
「はい。天才児向け教育を、受けてまして」
「天才! 驚きましたね。しかし、じゃれついてもらえないのは寂しいですね」
驚いたり、寂しそうにしたり、忙しいね、真留さん。
「なんでしたら、休憩を提案してきましょうか?」
「いえいえ。悪いですよ」
「まあまあ、月イチの機会ですし」
というわけで、先生と白部さんに休憩を提案。快諾していただき、アメリたち子供組が、リビングにやってきました。先生と白部さんも、雑談している模様。
「なんだか、すみません」
「ふふ、アメリも真留さんに会いたかったもんねー?」
「うん!」
直球の好意に、照れる真留さん。今日は、いろんな表情を見せてくださるなあ。
「こほん、ではさっそく打ち合わせに入りましょう」
「はい」
お団子状態で、真留さんの操作するノートPCの画面を覗き込む子供たち。まあ、隠すような内容じゃないからいいけど。
「おお!? アメリ死んじゃった!」
アメリちゃん、内容にびっくり。
「うん。『あめりにっき』は次で終わるんだ。で、今のアメリを描いた、『新・あめりにっき』が始まるんだよ!」
「おお~……」
なにせ、自分の死と再生のドキュメンタリーのプロットを見てるのだから、興味津々。
「読み切り以上に、先生の悲しみが伝わってきます……」
涙してしまう真留さん。本当に、今日は多彩な表情を見せてくださる。彼女も、愛猫家だものね。
「優輝も、こんな風に悲しかったんだね……」
ミケちゃんが、珍しく……っていったら失礼だけど、神妙な表情になる。
「きっとね。愛する者との別れは、いつだって辛いよ」
おじいちゃんが亡くなったときを思い出す。最期は病院で管だらけになって、息を引き取ったおじいちゃん。もう、二度と会えないんだという実感が湧いたのは、翌日になってからで、それは大泣きしたものだ。
「でも、アメリが生き返ってくれたときは、本当に嬉しかった。本当に、本当に嬉しかった」
目をつぶり、再会を思い出す。あまりにも突飛がなさすぎて、当時まだ名なしだったしまだくんで、本人かどうか確認したっけね。
「アタシがこの体になったときも、ルリ姉泣いてたなあ」
「お姉ちゃんも、『嬉しいよ、嬉しいよ』って、わんわん泣いていました」
あの、まりあさんが! 嬉し涙とはいえ、号泣する彼女って、ちょっと想像できない。でも、当然の反応なんだろうな。
虹の橋の女神様に選ばれるには、飼い主との深い絆が不可欠らしい。
だから、喪った悲しみと、蘇った嬉しさは、とても大きいわけで。私が何より、その体験者だ。
「先生」
「はいっ!」
いけない。つい、ぼーっとしてしまった。
「これでいきましょう」
「はい!」
GOが出た! 八年ありがとう、あめりにっき。お疲れ様。あなたは、新・あめりにっきとして蘇るからね。
「真留おねーさん! アメリ、明日誕生日なんだよ!」
「そういえば、そうだったね。お誕生日おめでとう。私も、仕事がなかったら、お祝いに伺ったんだけどな」
アメリの頭を撫でながら、優しく、そして少し寂しそうに微笑む真留さん。
「あの、今後オフのときは、ぜひいらしてください! お隣で誕生会するんですけど、きっと、お隣の皆さんも歓迎してくださいますので!」
「そうですね。そのときはぜひ。川内さんにも、声をかけてみますね」
未来の話に、微笑み合う私たち。
「真留さん」
居住まいを正す。
「四年間、あめりにっきの担当を努めてくださり、ありがとうございました。これからは、新・あめりにっきをよろしくお願いします」
「気が早いですよ、先生。そういうのは、原稿を受領してからです」
「ですね」
たしかに、気が早い。思わず照れ笑い。
「とはいえ、連載お疲れ様でした。新、ヒットさせましょう!」
「はい!」
力強く、頷き合う。
「お茶、ありがとうございました。次の打ち合わせがあるので、そろそろお暇します」
「お疲れ様でした」
お辞儀し合い、子どもたちと一緒に、門まで送る。
互いに、再度別れの挨拶とお辞儀をして、去って行く彼女の姿を見つめるのでした。
「さーて! 明日のためにも、お仕事頑張ろー! えい、えい、むん!」
ガッツポーズで気合を入れ、寝室に向かう私たち。明日を、素晴らしい日にするぞー!
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