神奈さんとアメリちゃん

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第五百十四話 ありがとうございます、真留さん

公開日時: 2022年3月4日(金) 21:01
文字数:2,250

 今日は、久しぶりに四人集まっての勉強会! なにげに、押江先生と白部さんも、久しぶりのお顔合わせですね。


 やっぱり、白部さんが教師役をなさっていると、ピタッとピースがはまったような光景になるなあ。


 私は真留さんが来るまで暇なので、漫画など読んでいます。教師をしようにも、折りたたみ机、さすがに七人がけは厳しいので。


 せめて、お茶ぐらいはこまめにれようと、ちょくちょく読書中断しているものの、なんか罪悪感。白部さんは、「直に教えたほうがいいデータが得られますので、お気になさらず」とおっしゃってくださるけれど。


 とはいえ、私も仕事の合間の大切な休息タイム。リラックスするのも大事よね。


 ぺらり……。ぺらり……。


 この、紙を繰る感触いいなあ。私はやっぱり、電書に移行できなさそうだ。


 ぬ!? インタホンが! スマホの時計を見ると二時。真留さんだ! 罪悪感とかいいながら、読みふけってしまった。


「どちら様でしょう?」


 一応確認。


「こんにちは。真留です」


「はーい、今出ますねー」


 では、お迎えに上がりましょう。


「こんにちは~。スーツ暑いですよねえ。中へどうぞ」


「ありがとうございます。では、失礼して……」


 真留さんを、リビングにごあんなーい。


「どうぞ」


「ありがとうございます」


 彼女をリビングに通した後、アイスティーをお出しする。


「アメリちゃんたちは、相変わらず勉強ですか?」


「はい。天才児向け教育を、受けてまして」


「天才! 驚きましたね。しかし、じゃれついてもらえないのは寂しいですね」


 驚いたり、寂しそうにしたり、忙しいね、真留さん。


「なんでしたら、休憩を提案してきましょうか?」


「いえいえ。悪いですよ」


「まあまあ、月イチの機会ですし」


 というわけで、先生と白部さんに休憩を提案。快諾していただき、アメリたち子供組が、リビングにやってきました。先生と白部さんも、雑談している模様。


「なんだか、すみません」


「ふふ、アメリも真留さんに会いたかったもんねー?」


「うん!」


 直球の好意に、照れる真留さん。今日は、いろんな表情を見せてくださるなあ。


「こほん、ではさっそく打ち合わせに入りましょう」


「はい」


 お団子状態で、真留さんの操作するノートPCの画面を覗き込む子供たち。まあ、隠すような内容じゃないからいいけど。


「おお!? アメリ死んじゃった!」


 アメリちゃん、内容にびっくり。


「うん。『あめりにっき』は次で終わるんだ。で、今のアメリを描いた、『新・あめりにっき』が始まるんだよ!」


「おお~……」


 なにせ、自分の死と再生のドキュメンタリーのプロットを見てるのだから、興味津々。


「読み切り以上に、先生の悲しみが伝わってきます……」


 涙してしまう真留さん。本当に、今日は多彩な表情を見せてくださる。彼女も、愛猫家だものね。


「優輝も、こんな風に悲しかったんだね……」


 ミケちゃんが、珍しく……っていったら失礼だけど、神妙な表情になる。


「きっとね。愛する者との別れは、いつだって辛いよ」


 おじいちゃんが亡くなったときを思い出す。最期は病院で管だらけになって、息を引き取ったおじいちゃん。もう、二度と会えないんだという実感が湧いたのは、翌日になってからで、それは大泣きしたものだ。


「でも、アメリが生き返ってくれたときは、本当に嬉しかった。本当に、本当に嬉しかった」


 目をつぶり、再会を思い出す。あまりにも突飛がなさすぎて、当時まだ名なしだったしまだくんニシキアナゴで、本人かどうか確認したっけね。


「アタシがこの体になったときも、ルリ姉泣いてたなあ」


「お姉ちゃんも、『嬉しいよ、嬉しいよ』って、わんわん泣いていました」


 あの、まりあさんが! 嬉し涙とはいえ、号泣する彼女って、ちょっと想像できない。でも、当然の反応なんだろうな。


 虹の橋の女神様に選ばれるには、飼い主との深い絆が不可欠らしい。


 だから、喪った悲しみと、蘇った嬉しさは、とても大きいわけで。私が何より、その体験者だ。


「先生」


「はいっ!」


 いけない。つい、ぼーっとしてしまった。


「これでいきましょう」


「はい!」


 GOが出た! 八年ありがとう、あめりにっき。お疲れ様。あなたは、新・あめりにっきとして蘇るからね。


「真留おねーさん! アメリ、明日誕生日なんだよ!」


「そういえば、そうだったね。お誕生日おめでとう。私も、仕事がなかったら、お祝いに伺ったんだけどな」


 アメリの頭を撫でながら、優しく、そして少し寂しそうに微笑む真留さん。


「あの、今後オフのときは、ぜひいらしてください! お隣で誕生会するんですけど、きっと、お隣の皆さんも歓迎してくださいますので!」


「そうですね。そのときはぜひ。川内せんだいさんにも、声をかけてみますね」


 未来の話に、微笑み合う私たち。


「真留さん」


 居住まいを正す。


「四年間、あめりにっきの担当を努めてくださり、ありがとうございました。これからは、新・あめりにっきをよろしくお願いします」


「気が早いですよ、先生。そういうのは、原稿を受領してからです」


「ですね」


 たしかに、気が早い。思わず照れ笑い。


「とはいえ、連載お疲れ様でした。新、ヒットさせましょう!」


「はい!」


 力強く、うなずき合う。


「お茶、ありがとうございました。次の打ち合わせがあるので、そろそろお暇します」


「お疲れ様でした」


 お辞儀し合い、子どもたちと一緒に、門まで送る。


 互いに、再度別れの挨拶とお辞儀をして、去って行く彼女の姿を見つめるのでした。


「さーて! 明日のためにも、お仕事頑張ろー! えい、えい、むん!」


 ガッツポーズで気合を入れ、寝室に向かう私たち。明日を、素晴らしい日にするぞー!

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