神奈さんとアメリちゃん

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第二百四話 ノーラと遊ぼう!

公開日時: 2021年4月29日(木) 07:01
文字数:2,290

「おねーちゃん!」


 朝食のトーストを今日もぬぼーっと食んでいると、一足どころか三足ぐらい早く食べ終わったアメリちゃんが笑顔で話しかけてきました。朝が元気でよろしいこと。


「なーにー?」


 牛乳で流し込み、応える。


「あのねあのね、今日はノーラのとこに遊びに行きたい!」


「んー、いいよー。でも、早朝はご迷惑だから、もう少し待とうね。私が連絡するから」


 ふわあ、と大あくび。


「わかった! 歯磨いて、着替えてくる!」


 まだ許可いただいてないのに、気が早いことで。


 アメリちゃんのためにも、なるべく早くしゃっきりしないと……ふあ。



 ◆ ◆ ◆



 さすがに白部さんが私より朝が弱いというのは考えられないけど、一応通話ではなくLIZEのメッセージでまずは確認を取ろう。


「おはようございます。今、よろしいですか?」


「おはようございます。どうされました?」


 おお、即座に返事が来た。


「アメリがそちらに遊びに行きたいそうなのですが、よろしいでしょうか?」


「構いませんが、逆に私たちがそちらに伺ってもよろしいでしょうか? 昨日、亀池堂さんでお菓子を買いまして、ご一緒にいかがでしょう?」


 ああ、まりあさんとご一緒に駅前に行かれたんだっけ。そのときのね。


「お気遣い、ありがとうございます。では、お待ちしております。何時にいらっしゃいます?」


「そうですね。では、そちらもご準備があるでしょうから、三十分後でよろしいでしょうか?」


「はい。では、お待ちしています」


 というわけで、メッセージのやり取り終了~。


「アメリー。三十分後に白部さんたちがこっちいらっしゃるって」


「おお~! 楽しみ!」


 すでに着替え終わって待機モードのアメリが、瞳をキラキラ輝かせる。さーて、私も着替えて部屋回りをきれいにしないと。



 ◆ ◆ ◆



 ふう、一通りきれいになったかな? すると折よく、呼び鈴が鳴りました。応対すると、果たして白部さん。挨拶を交わし、門へ向かう。


「改めて、おはようございます。ノーラちゃんも、おはよう」


「おはようございます」


「おはよー!」


 お辞儀する白部さんと、元気に拳を突き上げるノーラちゃん。その手には、ゴッドレンジャーが握られている。


「では、さっそく中へどうぞ」


「お邪魔します。ノーラちゃんも」


「おー? お邪魔しまーす!」


 というわけで、屋内へ。


 白部さんからお菓子を受け取り、寝室ヘお通しする。


「お待たせしました」


 お茶菓子を持って寝室に戻ると、白部さんたちがなんだかすでに懐かしい感のあるゴッドレンジャーごっこに興じていました。最近ご無沙汰だったものねえ、ゴッドレンジャー。


「くらえ、バッドキング! ゴッドブロー!」


「ぐわー、やられた~!」


 大怪獣・バッドキング退場。そして、愛を確かめ合うほえほえさんくじらはこぺんコンペイトウくん。そして、横転してる私の愛車。う~ん、様式美。


「あ、ありがとうございます。二人とも、お茶とお菓子をいただきましょ」


 白部さんが声を掛け、ゴッドレンジャーごっこは一旦お開きに。


 私も折りたたみ机を囲み、一緒にいただく。


「宇多野さんのおすすめのお店、美味しいですねえ」


 おせんべいをいただきながら、素直な感想をこぼす白部さん。


「ですね。私もまりあさん経由で知ったお店なのですけど、すっかりファンです。F市に住んでもう七年以上になりますけど、未だに知らないスポットだらけです」


 お茶を飲みながら、完全同意。特に、かくてるの皆さんには随分と色んな所へ連れて行ってもらったなあ。


「そういえば、ノーラちゃんは文字どのぐらい読めるようになりました?」


 ゴッドレンジャーからふと写真絵本のことを思い出し、白部さんに問う。


「ひらがな・カタカナのマスターまであと一息というところですね。『へ』とか『は』を超えられれば……」


 やっぱりそこかー。でも、順調なようで何より。


「早く、絵本一人で読めるようになるといいね」


「おー! 頑張って読めるようになる!」


 拳を突き上げ気合を入れるノーラちゃん。ほほえま。


「ノーラ、あのね。恐竜以外にも面白いのが、昔いたんだよ!」


「おー? 何だ?」


 カンブリア生物図鑑を取り出して広げ、これは何々と説明していくアメリ。珍奇な姿の生物たちに、ノーラちゃんも興味深げに図鑑を眺める。


 そういえばアメリ、新しい学習書欲しがってるのよね。うちも折を見て、駅前行かないと。ネット通販でもいいのだろうけど、やはり今のご時世だからこそ紙の書店に協力したいのと、実際中をざっと見て良し悪しを計りたいというのもある。


「白部さん、私には縁のない世界ですけれども、研究職ってやはりやりがいがありますか?」


「はい、それはもう。やりがいの塊です。猫耳人間の高いポテンシャルは、本当に興味が尽きない状態で。また、研究が始まって日が浅いですから、新発見の連続で。そういう意味でも非常に興味深いです。ただ……」


「ただ?」


「やはり、純粋に猫耳人間を愛でるという視点で見れなくなるときがあって、それが悩みです。みんな可愛いんですけど、つい観察眼的になるというか」


 あー、なるほど。観察眼で物を見る癖は、私にも職業病としてわかる。


「わかります、わかります。私も職業病で、つい。漫画家も、本当に色んなものを観察する癖がついてしまって」


 互いに苦笑する。


「そうだ。今日のお昼、ご一緒にうちで召し上がりませんか?」


「いえ、それはちょっと悪いですよ」


「まあまあ。美味しいお菓子のお礼ということで、ぜひ」


 屈託のない笑顔を向けると、「それでは、いただきます」とご同意いただきました!


 アメリとノーラちゃんは、カンブリア談義に花を咲かせている模様。良きかな良きかな


 こうしてお菓子も美味しく食べ終わり、私は仕事に戻るのでした。

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