「おねーちゃん」
下書きに励んでいると、不意にベッドに腰掛け読書していたアメリから声をかけられる。
「なーに?」
「最近お菓子作ってないね?」
ほむ。言われてみれば、バレンタイン以来特に作ってないですねえ。
「じゃあ、またみんなを招いてお菓子作りする?」
「うん!」
ふむふむ。それじゃ、何作りましょうね。あ、プリンなんてどうかな?
「プリン作ってみる?」
「おお! プリン! 作りたい!!」
ふふ、すごい食いつきようね。
「じゃー、材料用意しないとだね。私も作るから、五人ぶん。牛乳と卵結構使うなあ。とりあえず容器だけは用意してもらわないとだし、ちょっと私から保護者の皆さんに話通しとくね」
LIZEを立ち上げ、アメリがプリンをみんなと作りたがっている旨を書き込む。
すると、皆さん子供たちに意思確認して、さくっと同意を取り付けてくださいました。
白部さんがいつものようにご同行の許可を求められたので、快くOK。材料も六人ぶん用意することに。
ただ、プリンは作るのにたいそう時間がかかるため、十二時半という早めの時間に集合。私たちの昼食も三十分ほど前倒しすることに。さーて、お買い物行きましょ~。
◆ ◆ ◆
翌日。お昼を手軽に済ませ、みんなが来るまで下書きを進めつつ待機していると、ミケちゃん、白部姉妹、そして最後にクロちゃんの順にやって来ました!
「すみません、材料まで用意していただいて」
「お気になさらないでください。クロちゃん、持って来るの大変ですからね。クロちゃんのぶんだけ用意するってのもあれですし」
恐縮する白部さんに、気さくに返す。
「さて、みんな! みんなはプリン好きかなー?」
子供たちが、口々に「好きー」とか「大好きー!」と答える。
「今日は、みんなが大好きなプリンを作っちゃいまーす! 結構簡単だから、お楽しみにね! じゃ、まずはエプロンをかけましょう~」
みんなで一斉に装着。
「さて、カラメルをまずは作るんだけど、うちのコンロが二口しかないし、一度に作っちゃったほうが早いから、誰か代表者に作ってもらいまーす。やりたい人ー!」
子供たち全員が、ハイハイと勢いよく挙手する。
「うん、じゃあじゃんけんで決めよっか。はい、じゃーんけーん……」
じゃんけんの結果、アメリがカラメルを作ることに。
「それじゃあ、やっていこうかアメリちゃん。みんなはよく見ててね。お砂糖三百六十グラム、水とお湯を九十ミリリットルずつ用意してくれるかな?」
「はーい」
計量して、カップに用意するアメリ。
「じゃあ、この手鍋でお砂糖と水を中火で煮詰めてね」
言われた通り、ぐつぐつ煮詰めていくと、カラメル臭が立ち込める。
「焦げちゃわない?」
「カラメル作るからね。少し焦がすのよ。……ん、ストップ! 火を止めて。OK。あとは、お湯を入れてちょうだいな。跳ねるから気をつけてね」
じゅううという音ともに、湯気が立つ。
「よし、これをみんなで器に少しずつ回し入れていこう。一気に入れちゃうとほかの人の分が足りなくなるから、本当に少しずつね」
手鍋をたらい回しにして、耐熱容器にカラメルを注いでいく。白部さんも楽しそう。
「次に、プリン本体を作るよー。ボウルを三つ用意しました! 二人ずつのペアになって、卵四つ、お砂糖百六十グラムずつ入れてね!」
私とアメリのペア、白部姉妹、ミケちゃん&クロちゃんでペアを作り、材料を注いでいく。
「で、これらで混ぜまーす」
泡立て器とハンドミキサーを使い、卵液を作成。
「おっけーです! 次に、沸騰しないように気を付けて、八百ミリリットルずつ牛乳を温めて、温まったらボウルに入れてハンドミキサーで混ぜてね」
コンロが二口なので、まずはアメリとミケちゃんが牛乳を温め、ボウルでプリン液を作る。
白部姉妹も、これに続く。
「それでは、こし器を順番に使って、均等にプリン液を容器に入れましょー」
先ほどカラメルを入れた容器に、プリン液を順番に注いでいく。
「次に、薄手のふきんを鍋底に敷いて、その上に容器を並べていきます。四つぐらい入るかな? あとは、お鍋に容器の半分ぐらいになるまでお水を入れて、蓋をして中火で熱して……湯気が出てきたら弱火に。このまま、二十分蒸すよ。クロちゃんが暗くなる前に帰らなきゃいけないから、クロちゃんからやっていこうか」
こうして、二口のコンロを駆使しながら、プリンを固めていく。
コンロが空くまでは、私たち大人は立ったまま、子供は着席して雑談。白部さんの子供でもわかる医学豆知識が面白くて、思わず聞き入ってしまう。そんなことをしているとタイマーが鳴ったので、プリンの様子を見る。容器を振ると、プルプルと軽く震える。
「うん、できてるね。じゃあ、クロちゃん、ミケちゃん。火から卸して、粗熱を取りましょう。このバットにお水を張って、その上に並べてね。ぬるくなったら水を取り替えて」
言われた通りに、バットに並べ冷ます二人。この後、私とアメリ、白部姉妹のぶんも作り、冷めた端からわかりやすく上から順に冷蔵庫に並べていく。
最初のプリンが固まってから一時間経ち、クロちゃん&ミケちゃん組のプリンができあがりました。
「おめでとう~。完成だよー! 二人とも、試しに一個だけ食べてごらん」
スプーンを手渡すと、ひとすくいしてぱくっ。キラキラと目を輝かせる二人。
「ちゃんと美味しいみたいね?」
こくこくと頷く二人。
「すごく美味しいです……!」
「さすがミケ、ジョーデキね!」
こうして、あっという間に二個空になってしまいました。そんな二人を羨ましそうに見るアメリとノーラちゃん。
「二人のぶんも、もうすぐできるからね」
二人の頭を撫で、慰める。
「でもこれあれね、うちだと一人ぶん足りないわ」
「そうね。作り方はわかっただろうから、おうちで皆さんに改めて作ってあげるといいと思うよ」
「うん! そうする!」
悩むミケちゃんにアドバイスすると、明るい返事。良き哉良き哉。
そうやって過ごしていると、私たちのぶんができました。
アメリも試食すると、「美味しい!!」と自分で大絶賛。
「ノーラちゃんはもうちょっと待ってねー」
と、白部さんと二人でよだれを垂らしそうなノーラちゃんを慰める。
白部姉妹のプリンが冷えるのと前後してクロちゃんのタイムリミットが来てしまったので、残りの容器をラップで包んであげて、送り出す。
戻ってくると、空になったプリン容器を前に、にこにこ笑顔のノーラちゃんがおりました。
「カン姉! 美味かった!」
それはもう、ご満悦な表情。白部さんも、自分のプリンの出来に満足している模様。
「私、お菓子作りなんてほとんどしたことないですけど、こういうのもいいですねえ」
「でしょう、でしょう。やはり、自分で作ったものって美味しいですからね!」
こうしてプリン作りも無事終わり、皆で順に調理器具を洗っていく。食洗機に入れて汚れが落ちるレベルになったら、あとは食洗機任せ。
「今日は、本当にありがとうございました。ノーラちゃんに、とてもいい経験をさせてあげられて」
お見送りする段階になり、白部さんから深々とお辞儀される。
「いえいえ、大したことは。また今度、何か作りましょう」
「カン姉! プリン美味しかった! ありがとーな! また、なんか教えてくれよな!」
「神奈おねーさん、今日はありがとう。明日にでも、みんなにプリン作るわね」
ノーラちゃんとミケちゃんからも、お礼を言われる。
名残惜しいけど三人を見送り、私たちも屋内に戻るのでした。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!