神奈さんとアメリちゃん

退会したユーザー ?
退会したユーザー

第二百六十話 まりあさんを祝おう! ―後編―

公開日時: 2021年6月11日(金) 21:01
文字数:2,083

 時間でございます! 私もアメリもおめかしして、いざ出陣!


 お隣のインタホンを押してお通しされると、さすが主賓だけあってまりあさんがすでに到着されてました。私に続くように、白部さんたちもイン!


 皆さんとご挨拶を交わし、しばし雑談。


「本はいつ頃出るご予定ですか?」


「編集部から、来週末と伺ってます」


 にこやかに答えるまりあさん。出版って嬉しいものねえ。


「わたしもデジタル画にしたら、もうちょっと出版ペース上げられるんでしょうけど、どうしても独特のにじみを多用した絵を使うもので……」


 なるほどと、私たちデジタル絵師三人衆が興味深くお話を伺う。特に、デジタル水彩のさつきさんはアナログとの差異が興味深いようだ。


「でも、さつきさん。フリアトグラフィックソフトにもにじみ機能ありますよね?」


「あるっすね。けど、まりあさんの絵とか拝見すると、やっぱりアナログとはが違うっす。どっちが上とか下とかないっすけど」


 へー。


「聞いてちょうだい! ミケ、とうとう自転車乗れるようになったわ!」


 一方、絵師組の談義をよそに、胸を反らして自転車トークを繰り広げるミケちゃん。


「おお~! 補助輪なしでもう乗れるの!? すごい!」


「うぐ……補助輪は、まあ、そのうち取るわ。ええ……」


 一気にしょげるミケちゃん。彼女には悪いけど、この調子の浮き沈みの激しいところ、ほほえまだなー。


「頑張って。コツを掴めば、割と簡単だよ……!」


 二人を応援するクロちゃん。


「ルリ姉~。アタシも自転車欲しいぞー」


「次のお給料が入ったら、買いましょうね」


「やあやあ。めいめい、和やかにお話が弾んでいるようで」


 ひょこっと、エプロン状態の優輝さんがこちらにおいでになりました。


「料理、完成しました。皆さん、ダイニングにどうぞ」


 優輝さんに先導され、ぞろぞろと移動する。


 すると何のご縁か、テーブルに私が真留さんに供しようと思ってとりやめた、メバルのアクアパッツァが載っているではないですか! それにプラス、スライスされたフランスパンとオリーブオイルの小皿も。


「あら、これ昨日私が担当さんにお出ししようとして、断念したやつですよ」


「ええ、昨日のお話で神奈さんがこぼされてたので、せっかくだから作ってみようかと思いまして」


 にこやかに優輝さんが答える。ほんの一言話題に出しただけなのに、何気ないやりとりも、よく覚えてらっしゃるのねー。


「ところで、皆さんはドリンクはソフトドリンクとお酒、どちらがいいですか?」


「私は……そうですね、たまにはお酒を」


 めいめい、好きなものを注文していくと、優輝さんがそれを注いでくださった。


 注ぎ終わり彼女も着席すると、口上を述べる。


「この度、まりあさんがめでたく『くろねこクロのたび』最新作を脱稿されました。本日はそれを祝し、ささやかながらパーティーを楽しみたいと思います。それでは、いただきましょう!」


 皆でいただきます&乾杯。


 メバルのアクアパッツァ、いいおだしが出てる! さすが旬のもの。これを真留さんに振る舞えなかったのは、やっぱりちょっと残念かな。まあ、アメリちゃんの手料理を代わりに振る舞えたので、良しとしましょう!


 はまぐりも美味しいなあ。メバルとダブルで濃厚な味わい。


 フランスパンをオリーブオイルに浸して食べると、これまた美味しい。ここで白ワインをくいっといくと、実にたまらない。本当に、優輝さんは料理がお上手だなあ。


「ものすごく美味しいです。優輝さん、本当に料理お上手ですよね」


 賛辞を述べようとしたら、まりあさんに先を越されてしまった。


「ありがとうございます。キャンプ趣味もあって色々作っているうちに、気づいたら上達してた感じで」


 照れくさそうに後頭部を撫でる彼女。


 皆も次々に賛辞を述べると、さらに照れくさそうにする。


「それにしても、クロもアメリも自分が主人公の本とか描いてもらって、ちょっとうらやましいわね。ねえ、優輝。ミケが主人公のゲームも作ってよ!」


「ミケが主人公の? うーん、やってみたいのはやまやまだけど、ちょっと難しいかなあ」


 腕組みして考え込んでしまう優輝さん。かくてるのみなさんの作風って、恋愛物だものねえ。


「そういえば、くろねこクロのたびは、どうして旅をテーマにされようと思われたんでしょうか?」


 ふと思いついた疑問をまりあさんに訪ねる。


「クロちゃんは元野良でしたけど、この子がどんな世界を見てきたのかなって空想してたら、何だか想像力が膨らんでしまいまして。一方で、猫時代から内気な子でしたから、そんなクロちゃんが旅をして、いろんな出会いをしたら楽しいんじゃないかなって思ったんです」


 なるほど。


「クロちゃんの旅の続き、楽しみです! 新刊が待ち遠しいです」


「ありがとうございます。今度は意外なところに行きますよ」


 嬉しそうに微笑む彼女。意外なところかー。どこだろう、気になるなあ。


 こうして祝賀会は和やかに楽しく進み、お開きに。


 まりあさんとクロちゃんは由香里さんの運転するバンに揺られ、ご自宅へ。私たちも皆さんに別れを告げ、帰宅するのでした。


 今日も一日楽しかったな。私は飲酒しちゃったから、ダンスゲームはなしだね。下書き進めましょっと!

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート