時間でございます! 私もアメリもおめかしして、いざ出陣!
お隣のインタホンを押してお通しされると、さすが主賓だけあってまりあさんがすでに到着されてました。私に続くように、白部さんたちもイン!
皆さんとご挨拶を交わし、しばし雑談。
「本はいつ頃出るご予定ですか?」
「編集部から、来週末と伺ってます」
にこやかに答えるまりあさん。出版って嬉しいものねえ。
「わたしもデジタル画にしたら、もうちょっと出版ペース上げられるんでしょうけど、どうしても独特のにじみを多用した絵を使うもので……」
なるほどと、私たちデジタル絵師三人衆が興味深くお話を伺う。特に、デジタル水彩のさつきさんはアナログとの差異が興味深いようだ。
「でも、さつきさん。フリアトにもにじみ機能ありますよね?」
「あるっすね。けど、まりあさんの絵とか拝見すると、やっぱりアナログとは味が違うっす。どっちが上とか下とかないっすけど」
へー。
「聞いてちょうだい! ミケ、とうとう自転車乗れるようになったわ!」
一方、絵師組の談義をよそに、胸を反らして自転車トークを繰り広げるミケちゃん。
「おお~! 補助輪なしでもう乗れるの!? すごい!」
「うぐ……補助輪は、まあ、そのうち取るわ。ええ……」
一気にしょげるミケちゃん。彼女には悪いけど、この調子の浮き沈みの激しいところ、ほほえまだなー。
「頑張って。コツを掴めば、割と簡単だよ……!」
二人を応援するクロちゃん。
「ルリ姉~。アタシも自転車欲しいぞー」
「次のお給料が入ったら、買いましょうね」
「やあやあ。めいめい、和やかにお話が弾んでいるようで」
ひょこっと、エプロン状態の優輝さんがこちらにおいでになりました。
「料理、完成しました。皆さん、ダイニングにどうぞ」
優輝さんに先導され、ぞろぞろと移動する。
すると何のご縁か、テーブルに私が真留さんに供しようと思ってとりやめた、メバルのアクアパッツァが載っているではないですか! それにプラス、スライスされたフランスパンとオリーブオイルの小皿も。
「あら、これ昨日私が担当さんにお出ししようとして、断念したやつですよ」
「ええ、昨日のお話で神奈さんがこぼされてたので、せっかくだから作ってみようかと思いまして」
にこやかに優輝さんが答える。ほんの一言話題に出しただけなのに、何気ないやりとりも、よく覚えてらっしゃるのねー。
「ところで、皆さんはドリンクはソフトドリンクとお酒、どちらがいいですか?」
「私は……そうですね、たまにはお酒を」
めいめい、好きなものを注文していくと、優輝さんがそれを注いでくださった。
注ぎ終わり彼女も着席すると、口上を述べる。
「この度、まりあさんがめでたく『くろねこクロのたび』最新作を脱稿されました。本日はそれを祝し、ささやかながらパーティーを楽しみたいと思います。それでは、いただきましょう!」
皆でいただきます&乾杯。
メバルのアクアパッツァ、いいおだしが出てる! さすが旬のもの。これを真留さんに振る舞えなかったのは、やっぱりちょっと残念かな。まあ、アメリちゃんの手料理を代わりに振る舞えたので、良しとしましょう!
はまぐりも美味しいなあ。メバルとダブルで濃厚な味わい。
フランスパンをオリーブオイルに浸して食べると、これまた美味しい。ここで白ワインをくいっといくと、実にたまらない。本当に、優輝さんは料理がお上手だなあ。
「ものすごく美味しいです。優輝さん、本当に料理お上手ですよね」
賛辞を述べようとしたら、まりあさんに先を越されてしまった。
「ありがとうございます。キャンプ趣味もあって色々作っているうちに、気づいたら上達してた感じで」
照れくさそうに後頭部を撫でる彼女。
皆も次々に賛辞を述べると、さらに照れくさそうにする。
「それにしても、クロもアメリも自分が主人公の本とか描いてもらって、ちょっとうらやましいわね。ねえ、優輝。ミケが主人公のゲームも作ってよ!」
「ミケが主人公の? うーん、やってみたいのはやまやまだけど、ちょっと難しいかなあ」
腕組みして考え込んでしまう優輝さん。かくてるのみなさんの作風って、恋愛物だものねえ。
「そういえば、くろねこクロのたびは、どうして旅をテーマにされようと思われたんでしょうか?」
ふと思いついた疑問をまりあさんに訪ねる。
「クロちゃんは元野良でしたけど、この子がどんな世界を見てきたのかなって空想してたら、何だか想像力が膨らんでしまいまして。一方で、猫時代から内気な子でしたから、そんなクロちゃんが旅をして、いろんな出会いをしたら楽しいんじゃないかなって思ったんです」
なるほど。
「クロちゃんの旅の続き、楽しみです! 新刊が待ち遠しいです」
「ありがとうございます。今度は意外なところに行きますよ」
嬉しそうに微笑む彼女。意外なところかー。どこだろう、気になるなあ。
こうして祝賀会は和やかに楽しく進み、お開きに。
まりあさんとクロちゃんは由香里さんの運転するバンに揺られ、ご自宅へ。私たちも皆さんに別れを告げ、帰宅するのでした。
今日も一日楽しかったな。私は飲酒しちゃったから、ダンスゲームはなしだね。下書き進めましょっと!
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