「すみません。私がこう、ポロッとこちらに遊びに来たいと言ってしまったために」
ミケちゃんの提案から始まった交遊会。ティーセットを囲んで、いつものメンバーがフル出動ですが、相変わらず、良夫さんはご遠慮なさいました。
ただ、優輝さんがもう仕事に入っているというのは以前伺った通りで、さつきさんはキャラクターデザインに、由香里さんは全体のスケジュール管理に取り掛かっているとのこと。
「いえいえ。あたしもちょっと、休息が欲しかったですしね。仕事してばかりじゃ、壊れちゃいますから」
そう言って、からから笑う優輝さん。ほんと、おおらかな方でありがたい。
今日のお茶請けは、クッキー。例によって、由香里さんの手作りです。美味しいですねえ。うまうま。
猫耳幼女四人は、「大航海世代」で対戦中。思えば、これも久しぶりな気がする。
現在優勢なのはクロちゃん。一日の長があるミケちゃんのアドバンテージは、失われつつある模様。ほんとに、この子たち物覚えいいものね。
「あ。絹が上がった」
クロちゃん、絹を大量に買った直後に、イベントで超鬼引き。
「うっそ! なんでここで、そのイベント来るのよ!」
ミケちゃんの悲鳴。にぎやかだなあ。
「おお~。今日のクロは、運がいいね!」
「うん。……洒落じゃないよ? 今日は、ついてるみたいだ」
好調なのに、ポーカーフェイスなクロちゃん。
「うおおおお! アタシの鉄砲も上がれよおおお!」
ノーラちゃんも、負けず劣らずにぎやか。
「みんな頑張ってー!」
チアガール・ともちゃんの声援を受け、皆奮闘!
私たちも、口々にみんなを応援!
クロちゃん逃げ切り! みんなで拍手。
「やるわね、クロ」
爽やかな顔で手を差し出すミケちゃん。
「たまたまだよ。ありがとう」
手を握り返す彼女。
向こうっ気の強かったミケちゃんと、人見知りだったクロちゃん。二人とも、こんなに成長して……。
「アメリ、お疲れ様」
隣席に戻ってきたアメリの、頭を撫でる。
「おお~。三位だった! でも、面白かった!」
お陽様笑顔。勝っても負けても、この子はマイペースだ。
「悔しいぜー。ビリッケツだぁ~!」
白部さんに撫でられながら、嘆くノーラちゃん。サッカーのダメージはもう引きずってないみたいだね。白部さんが、上手くやってくれたんだな。
「ノーラちゃん、そろそろ、あれ言わなくていいの?」
「おー……そうだな! あの、みんな!」
白部さんに促され、突如起立し、かしこまるノーラちゃん。
「アタシ、次の試合では、もっとキョーチョセーに気をつける! 心配かけてごめん!」
スパッと頭を下げる。
一瞬あっけにとられた後、拍手。皆さんも、私に続く。
「私こそ、ごめんね。もっと言い方に気をつけるべきだった」
「ウチも。すまねえ、ノラ子」
「二人は悪くねーよ! アタシ、考えたんだ。自分が逆に、同じことやられたらって」
ばつが悪そうに、もじもじする彼女。
「でさ、アタシ、やっぱ良くなかったなって! 監督にも、みんなにも、改めて謝ったんだ。そしたら、『わかればいいよ』って、笑顔で赦してくれた!」
ノーラちゃんも、お陽様笑顔。彼女は、いい選手になる。そう、確信した。
「いい感じにまとまったところで、もっとクッキー食べて食べて。丹精込めて、たくさん焼いたからね」
由香里さんに促され、クッキーに手を付ける子供たち。例によって、ノーラちゃんの「うめー」シャウトが響き渡ります。
「ああ、友美、またポロポロこぼして……。すみません」
「大丈夫っすよ。コロコロ取ってくるっす」
離席するさつきさん。
「そうだ。ゲームなんですけど、騎士さんが……。あ、まりあさんにネタバレになっちゃうかも」
「大丈夫ですよ。彼女のルートは、グッド、バッド、両方のエンド見てますから」
「わかりました。最後、互いに身分を捨てて、二人で放浪の旅へ……。感動しました」
「ありがとうございます。頑張って、シナリオ書いたかいありますよ」
元々にこにこしてるけど、さらに顔を綻ばせる優輝さん。
「まだ全部クリアしてませんけど、次はどんなご作品を構想されてるのでしょうか?」
「現代、ファンタジーときましたから、SFにするつもりです」
SF!
「作るの難しくありません? ほら、メカとか……」
「SFだからって、メカ出さなきゃいけない決まりもないので、大丈夫です。タイムリープものを考えてるんですよね」
へー!
「ま、これ以上言うとネタバレになるんで、あとはナイショで。さつきも、いいキャラ作ってくれてますよ」
「お褒めに預かり、光栄っす~」
コロコロを手に、戻ってきたさつきさん。ともちゃんの座っているあたりをコロコロします。
「友美、お礼言おう? ありがとうございます」
「ありがとー!」
「いえいえ。どういたしましてっす」
食べかすのついたペーパーを、ゴミ箱にポイ。
「そういえば、アメリちゃんの勉強のほうはどうですか?」
優輝さんに、不意に尋ねられる。
「すこぶる楽しそうに、授業受けてます」
「おおー! 生物面白い!」
「それは何より。さつきに、聞いた通りですね」
うんうんと、頷く優輝さん。
それぞれの夢に向かって、邁進する四人娘。
彼女たちが、夢を掴み取ることを願ってやまない。
手を伸ばし、ともちゃんの頭を優しくぽんぽん叩く。不思議そうに、上目遣いでそれを見る彼女。
この子は将来、どんな夢を見るのかな?
「あ、そうだ優輝さん。明後日は何時頃伺ったらよろしいでしょう?」
「そうですねえ……。ケーキを焼かれるかにもよりますけど、焼くなら十時、お料理なら十一時頃にでもお願いします」
「わかりました。アメリと一緒に伺いますね」
傍らに座るアメリの頭を、よしよしと撫でる。誕生日まで、あと僅か。本当に、早いものだ。
「そうだ、神奈さん。大航海世代しませんか?」
不意に、切り出してくる優輝さん。
「ええ……いいですけど、私弱いですよ?」
「何があるかわからないのが、このゲームのいいところです」
というわけで、私、優輝さん、まりあさん、白部さんの保護者戦。
ゲームスタート!
……。
……え? えええ~!? 勝っちゃった……。
「おおー! おめでとうございます!」
優輝さんを筆頭に、拍手をいただく。
「うわあ……私、初めてこういうゲームで勝ちました……!」
思わず感動!
こんな感じで楽しく交遊会は進んでいき、クッキーもなくなったところで、お開きとなりました。
「今日は、ありがとうございました」
玄関で、かくてるの皆さんに頭を下げる。
「はい。明後日に限らず、いつでもまた、いらしてください」
頭良下げる五人。
「では、失礼します」
白部さんとともに、外に出る。まりあさんと親子さんたちは、車で送っていくそうです。
今日も、楽しかった! 明後日は、きっともっと楽しいよね!
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