神奈さんとアメリちゃん

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第五百十三話 みんなで遊ぼ! ―後編―

公開日時: 2022年3月3日(木) 21:01
文字数:2,696

「すみません。私がこう、ポロッとこちらに遊びに来たいと言ってしまったために」


 ミケちゃんの提案から始まった交遊会。ティーセットを囲んで、いつものメンバーがフル出動ですが、相変わらず、良夫さんはご遠慮なさいました。


 ただ、優輝さんがもう仕事に入っているというのは以前伺った通りで、さつきさんはキャラクターデザインに、由香里さんは全体のスケジュール管理に取り掛かっているとのこと。


「いえいえ。あたしもちょっと、休息が欲しかったですしね。仕事してばかりじゃ、壊れちゃいますから」


 そう言って、からから笑う優輝さん。ほんと、おおらかな方でありがたい。


 今日のお茶請けは、クッキー。例によって、由香里さんの手作りです。美味しいですねえ。うまうま。


 猫耳幼女四人は、「大航海世代」で対戦中。思えば、これも久しぶりな気がする。


 現在優勢なのはクロちゃん。一日の長があるミケちゃんのアドバンテージは、失われつつある模様。ほんとに、この子たち物覚えいいものね。


「あ。絹が上がった」


 クロちゃん、絹を大量に買った直後に、イベントで超鬼引き。


「うっそ! なんでここで、そのイベント来るのよ!」


 ミケちゃんの悲鳴。にぎやかだなあ。


「おお~。今日のクロは、運がいいね!」


「うん。……洒落じゃないよ? 今日は、ついてるみたいだ」


 好調なのに、ポーカーフェイスなクロちゃん。


「うおおおお! アタシの鉄砲も上がれよおおお!」


 ノーラちゃんも、負けず劣らずにぎやか。


「みんな頑張ってー!」


 チアガール・ともちゃんの声援を受け、皆奮闘!


 私たちも、口々にみんなを応援!


 クロちゃん逃げ切り! みんなで拍手。


「やるわね、クロ」


 爽やかな顔で手を差し出すミケちゃん。


「たまたまだよ。ありがとう」


 手を握り返す彼女。


 向こうっ気の強かったミケちゃんと、人見知りだったクロちゃん。二人とも、こんなに成長して……。


「アメリ、お疲れ様」


 隣席に戻ってきたアメリの、頭を撫でる。


「おお~。三位だった! でも、面白かった!」


 お陽様笑顔。勝っても負けても、この子はマイペースだ。


「悔しいぜー。ビリッケツだぁ~!」


 白部さんに撫でられながら、嘆くノーラちゃん。サッカーのダメージはもう引きずってないみたいだね。白部さんが、上手くやってくれたんだな。


「ノーラちゃん、そろそろ、あれ・・言わなくていいの?」


「おー……そうだな! あの、みんな!」


 白部さんに促され、突如起立し、かしこまるノーラちゃん。


「アタシ、次の試合では、もっとキョーチョセーに気をつける! 心配かけてごめん!」


 スパッと頭を下げる。


 一瞬あっけにとられた後、拍手。皆さんも、私に続く。


「私こそ、ごめんね。もっと言い方に気をつけるべきだった」


「ウチも。すまねえ、ノラ子」


「二人は悪くねーよ! アタシ、考えたんだ。自分が逆に、同じことやられたらって」


 ばつが悪そうに、もじもじする彼女。


「でさ、アタシ、やっぱ良くなかったなって! 監督にも、みんなにも、改めて謝ったんだ。そしたら、『わかればいいよ』って、笑顔で赦してくれた!」


 ノーラちゃんも、お陽様笑顔。彼女は、いい選手になる。そう、確信した。


「いい感じにまとまったところで、もっとクッキー食べて食べて。丹精込めて、たくさん焼いたからね」


 由香里さんに促され、クッキーに手を付ける子供たち。例によって、ノーラちゃんの「うめー」シャウトが響き渡ります。


「ああ、友美、またポロポロこぼして……。すみません」


「大丈夫っすよ。コロコロ取ってくるっす」


 離席するさつきさん。


「そうだ。ゲームなんですけど、騎士さんが……。あ、まりあさんにネタバレになっちゃうかも」


「大丈夫ですよ。彼女のルートは、グッド、バッド、両方のエンド見てますから」


「わかりました。最後、互いに身分を捨てて、二人で放浪の旅へ……。感動しました」


「ありがとうございます。頑張って、シナリオ書いたかいありますよ」


 元々にこにこしてるけど、さらに顔を綻ばせる優輝さん。


「まだ全部クリアしてませんけど、次はどんなご作品を構想されてるのでしょうか?」


「現代、ファンタジーときましたから、SFにするつもりです」


 SF!


「作るの難しくありません? ほら、メカとか……」


「SFだからって、メカ出さなきゃいけない決まりもないので、大丈夫です。タイムリープものを考えてるんですよね」


 へー!


「ま、これ以上言うとネタバレになるんで、あとはナイショで。さつきも、いいキャラ作ってくれてますよ」


「お褒めに預かり、光栄っす~」


 コロコロを手に、戻ってきたさつきさん。ともちゃんの座っているあたりをコロコロします。


「友美、お礼言おう? ありがとうございます」


「ありがとー!」


「いえいえ。どういたしましてっす」


 食べかすのついたペーパーを、ゴミ箱にポイ。


「そういえば、アメリちゃんの勉強のほうはどうですか?」


 優輝さんに、不意に尋ねられる。


「すこぶる楽しそうに、授業受けてます」


「おおー! 生物面白い!」


「それは何より。さつきに、聞いた通りですね」


 うんうんと、うなずく優輝さん。


 それぞれの夢に向かって、邁進する四人娘。


 彼女たちが、夢を掴み取ることを願ってやまない。


 手を伸ばし、ともちゃんの頭を優しくぽんぽん叩く。不思議そうに、上目遣いでそれを見る彼女。


 この子は将来、どんな夢を見るのかな?


「あ、そうだ優輝さん。明後日は何時頃伺ったらよろしいでしょう?」


「そうですねえ……。ケーキを焼かれるかにもよりますけど、焼くなら十時、お料理なら十一時頃にでもお願いします」


「わかりました。アメリと一緒に伺いますね」


 傍らに座るアメリの頭を、よしよしと撫でる。誕生日まで、あと僅か。本当に、早いものだ。


「そうだ、神奈さん。大航海世代しませんか?」


 不意に、切り出してくる優輝さん。


「ええ……いいですけど、私弱いですよ?」


「何があるかわからないのが、このゲームのいいところです」


 というわけで、私、優輝さん、まりあさん、白部さんの保護者戦。


 ゲームスタート!


 ……。


 ……え? えええ~!? 勝っちゃった……。


「おおー! おめでとうございます!」


 優輝さんを筆頭に、拍手をいただく。


「うわあ……私、初めてこういうゲームで勝ちました……!」


 思わず感動!


 こんな感じで楽しく交遊会は進んでいき、クッキーもなくなったところで、お開きとなりました。


「今日は、ありがとうございました」


 玄関で、かくてるの皆さんに頭を下げる。


「はい。明後日に限らず、いつでもまた、いらしてください」


 頭良下げる五人。


「では、失礼します」


 白部さんとともに、外に出る。まりあさんと親子ちかこさんたちは、車で送っていくそうです。


 今日も、楽しかった! 明後日は、きっともっと楽しいよね!

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