神奈さんとアメリちゃん

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第二百六話 限界ノーラ

公開日時: 2021年4月29日(木) 17:01
更新日時: 2022年2月27日(日) 12:30
文字数:2,198

 食事から戻り、私はお仕事。ノーラちゃんたちはゴッドレンジャーごっこを再開。


 しばらくそうやって過ごし、三時が近づいてきたので「それでは、ちょっとしたおやつを作ってきますね」と離席。


「おねーちゃん、アメリも手伝うよ?」


「あ、大丈夫~。すぐできちゃうから、ノーラちゃんと遊んでてちょうだい。ノーラちゃん、アメリ大好きだもんねー?」


「おー! アメリ、大好きだー!」


 拳を突き上げるノーラちゃん。ほほえま。


「おお~……。わかった、ノーラ、いっぱい遊ぼう!」


 というわけで、私は一人キッチンへ。


 さて、三分でクッキングする脳内BGMでも流しますかー。


 用意するもの~。パンの耳、卵一個、牛乳百ミリリットル、お砂糖大さじ一杯~。以上! わお、お手軽ぅ!


 ボウルに卵を溶いて、牛乳とお砂糖入れて、泡立て器でカシャカシャ~っとね。


 で、ここにパンの耳を漬けまーす。


 あとは、熱したフライパンにバターを引いて……じゅううぅ~っと二分焼いてー。


 裏返して蓋をしてさらに二分。


 ……じゃーん、パンの耳フレンチトーストのでっきあがり~!


 あとは、卵液ももったいないから、甘~いオムレツにしちゃいましょ。


 よっし! あとは紅茶をれて寝室に戻りましょ~。



 ◆ ◆ ◆



「お待たせしました~。ほんとに、ちょっとしたおやつですけど」


 パンの耳フレンチトーストとプチオムレツ、そして紅茶を配膳する。


 皆からお礼を述べられ、私も折りたたみ机につく。


「耳なしサンドイッチ作るときは、よくこれやるんです」


「生活の知恵ですね~」


 白部さんから感心されてしまう。


「いやあ、母がよくこれやってただけですから」


 照れくさくて、後頭部を撫でる。


 しばし白部さんと談笑していたけれど、最中ふと「そういえば、ノーラちゃんとあまり深く話したことなかったなー」と思い至った。


 私がだいたい仕事中だし、ノーラちゃんはノーラちゃんで、アメリや保護者の白部さんと話が合うし。


 でも、以前まりあさんが病気で倒れたとき、クロちゃんやミケちゃんと深く交流したように、ノーラちゃんとももうちょっと深く触れ合ってみたい。そんな気持ちが、むくむくと芽生えた。


「ねえ、ノーラちゃん」


「なんだー、カン姉ー?」


「ノーラちゃんは、ゴッドレンジャーのどういうところが好きなの?」


 ノーラちゃんといえば、ゴッドレンジャー。とりあえず話の切り口として最も適切であろう話題を振ってみる。


「聞きたい? 聞きたい!? あのさ、ファイアレンジャーがまずかっこいい! すっごく仲間思いなんだ! でも、実はダークエレメントに生み出された存在であることに悩むんだ! あとさ」


 お、おう……。なんか開幕テンションマックスだし、お姉さん固有名詞がよくわからないわ……。


 とりあえず、なんかスイッチ入っちゃったみたいなので、しばらく聞き役に徹してましょう。ていうか、ノーラちゃんちょっと限界・・のケがあるかも。私も、アメリとあのバスケ漫画に関してはどうこう言えた筋じゃないけれど。


 引き続き、アクアレンジャーだとかアースレンジャーだとか、相変わらず謎の固有名詞がずらずら並ぶ熱烈トークを聞くことに。


 とりとめのない彼女の話を整理すると、地水火風光の五元素を司る五人の戦士・エレメントレンジャー(番組名でもある)が、闇の元素を司る悪の軍団・ダークエレメントと戦う話らしい。で、五人の戦士が乗り込む巨大ロボットがあのゴッドレンジャーなのだとか。


 ノーラちゃんはファイアレンジャーとやらも推しだけど、ゴッドレンジャーが見ての通りいたくお気に入りらしい。


 どうも私には、ヒーロー番組の燃え・・はピンとこないけど、バイブルバスケ漫画に重ね合わせると、ちょっと理解できるような気がする。


 話を聞くに、子供向けながら人間ドラマが魅力的な作品らしい。あと、バッドキングは全然違う番組に出てくる怪獣とのこと。


「でも、こないだ終わっちゃったんだ……」


 あきらかにしょげるノーラちゃん。


 あらま、改編期って四月じゃないんだ?


「う~。一気に喋ったら、喉乾いちゃったぞ~。紅茶のおかわりちょーだい!」


「おっけー。白部さんたちのぶんも、一緒にれてきますね。それにしても、ほんとに好きなんだねー、エレメントレンジャー」


「おー! 大好きだぞー!」


 瞳をキラキラ輝かせ、拳を突き上げるノーラちゃん。可愛い。


 アメリに話し相手を変え、今度は古生物トークを繰り広げる二人を背に、キッチンへと向かうのでした。



 ◆ ◆ ◆



「あ、そろそろお暇したほうがいいですね」


 腕時計を確認した白部さんが、そう切り出す。


「あら、もうかなり遅いですか」


 うち、猫耳としっぽを隠す関係上、カーテン閉めっぱだからなあ。


「はい。もうすぐ五時です。今日は本当にありがとうございました。また、ノーラちゃんと遊んであげてください。アメリちゃんも、ノーラちゃんといつも仲良くしてくれて、本当にありがとう」


「おお~……ノーラ、もう帰っちゃうのかー。また遊ぼーねー!」


「おー! またなー!」


 お辞儀する白部さんと、手をぶんぶん振るノーラちゃん。


「いえいえ。こちらこそ、朝から急なお話をしてしまい。では、お見送りしますね」


 もともと外出するつもりだったアメリは、キャスケットを被ってコートを羽織れば外に出れる格好なので、一緒に門までお見送り。


 再度改めて別れの挨拶を交わし、お向かいに戻った二人を確認すると、私たちも自宅に戻るのでした。


 もう、だいぶ暗いなー。晩ごはんの買い出しは車かな。春はまだ遠いねえ。

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