神奈さんとアメリちゃん

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第四十四話 うどんのめがみさま ―前編―

公開日時: 2021年4月18日(日) 08:01
更新日時: 2023年1月7日(土) 20:17
文字数:2,204

バーベキューパーティーの後日、駅ビル「ゆらりと」の雑貨店「ハートマン」でクレヨンやスケブを買うついでに、新しい本を買おうと「麗文堂本屋さん」を物色していたときのこと。


 「くろねこクロのたび」も最新刊まで読み終わってしまい、アメリに読み聞かせるための本を探していると、まりあさんの著書の中に「うどんのめがみさま」という、ある意味非常にキャッチーというか、妙にインパクトあるタイトルの絵本を発見。


 ぱらぱらとめくってみたけど、絵もきれいだし、まりあさんの作品ならハズレはないでしょうと、買っていったわけです。


 そして、寝かせる前に読み聞かせてみたわけだけれど……。筋書きをざっくり述べると、「うどんの女神様が、お腹を空かせている子供たちに美味しいうどんを作って食べさせてあげて、みんな幸せになりました」という心温まるお話。けど、なぜにうどん?


 いや、うどんが悪いというわけではないけれど、ちょっとシュールじゃないかしら。


 電話で世間話ついでに素朴な疑問をぶつけてみると、どうもお中元でもらったビールを軽くひっかけてから書いたらあんな感じになってしまったらしく、妙に恐縮されてしまった。別に責めてはいないのだけれど……。


 ただ、内容自体は素晴らしいこともあってかなり好評で、続刊が決定しているとのこと。今度は新キャラとして、遠い宇宙そらからやって来たお姫様を加えるつもりだとか。


 というわけで、たった今そんな感じの雑談を終えたところなのです。仕事も一段落ついており、そろそろ晩ごはんの材料を買いに行こうかなーという状態。


「ねえ、アメリ。せっかくだから、今日はおうどん食べてみる?」


「おおー? 昨日のお話で、女神様が作ってたの?」


 くるりと椅子を回転させて話しかけると、ブロックでまたもや難解なオブジェを作っていたアメリが顔を上げ、興味深そうに問い返してくる。


「そうそう、そのおうどん。今日は女神様にならって、手打ちうどんを作ろうかなって」


「てうち?」


「あー、手作りって意味ね。うどんとかお蕎麦は、作ることを『打つ』っていうのよ」


 手打ちの意味を教えると、「おおー!」と目を輝かせる。


「で、今日も頑張り屋さんのアメリちゃんに、ちょっと手伝ってもらおうかなって」


「やる! おうどん打ってみたい!」


 おお、実に士気が高い。


「それじゃあ、着替えて出かけようか」


 というわけで、いつものスーパーへ!



 ◆ ◆ ◆



 うう、ちょっと肌寒いな。一枚羽織ってくれば良かった。昨日はそうでもなかったのに、もうこんな微妙な時期なんだなー。


「アメリは寒くない?」


「んー……。ちょっと寒いかも?」


 よく見れば二の腕をさすっている。まあ、寒すぎるってほどでもないけど、あとで秋物出さないと。


 ともかくも、さっさと中に入っちゃいましょ。


 もはや定番の店内BGMがお出迎え。どうやら冷房は切ってるみたい。ありがたや。


 さて! まずは本日の主役、薄力粉くん! で、極論するとこれとうちにある香味のつゆだけでおうどん作れちゃうけど、晩ごはんが素うどんっていうのもなんだか寂しい。


 天ぷらぐらい載せたいけど、さすがに揚げるのは手間だなー。材料持て余すし。うん、天ぷらはお惣菜で済ましちゃおう。


「アメリー。ここに並んでる天ぷらで、なんかおうどんと一緒に食べたいのある?」


 お惣菜コーナーで、プラパックに入った天ぷらたちを見せる。


「んー……? どれがなーに?」


 ああ、そこからか。


「えーとね。これがエビで、これがおナスで……」


 一つ一つ説明していく。


「この変なのはー?」


「これはかき揚げだね。小エビとか玉ねぎとかを一緒に揚げたの」


 説明後、しばらく視線をあれやこれやと移し、「これ!」とアメリが手に取ったのはエビ天。うむ、実に無難。


「一個だけでいいかな?」


 するとまた悩み出し、「これも!」と続いてイカ天を手に取る。


「うん、じゃあその二つはアメリ用ね。私は何にしようかなあ……」


 少し考えた末に、かき揚げとナス天をチョイス。こんなもんかな。


 あとは朝食用に食パンと牛乳をかごに入れ、おやつとしておなじみコラ・コーラとマスペもイン。


 さあ、お会計済ませて帰りましょ。



 ◆ ◆ ◆



「ただいまー!」


「ただいま~。うー、家の中はあったかいねえ」


 いやはや、こないだまで暑い暑いって言ってたのに。


 それでは早速、手を洗ってスマホを調理台にセット! うどんの打ち方を見てみましょー!


 まず、ボウルにぬるま湯で百二十ミリリットル弱の食塩水を作りまーす。


 続いて、薄力粉二百五十グラムを入れたボウルを用意。


「アメリ、ちょっとボウル押さえててくれるかな?」


 お願いすると、薄力粉のボウルを持ってくれる。


 食塩水三分の二ほどを回し入れ、薄力粉を手で勢い良く混ぜ混ぜ。いい感じに混ざったら、残りの食塩水も入れて、さらに混ぜ~る。


 とにかくダマを作らないのがコツらしいので、しっかりと混ぜる。


 混ぜ合わせていると、黄色いそぼろ状になりました。これで第一段階終了だって。ふう。


 これをこねてひと塊にしたら、清潔なビニールを敷いたテーブルで体重をかけつつ、押すべし! 押すべし!


 はー……。結構力要るなあ、これ。で、平たくなったらお布団のように三つ折りにして、またパワフルに押しまくる!


 生地が固く、なめらかになったら第二段階終了!


 あとは乾燥しないようにビニールで包んで、常温で一時間ぐらい寝かせるんですって。


「ふー。アメリ、休憩だよ~。寝室向こうで時間潰そう」


 というわけで、寝室で時間潰し。後半へ続く!

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