焼印の魔銃士 ~理不尽な冤罪で魔力封印の焼印を押されて追放。未来を断たれた少年は、魔銃を手に成り上がる。追放した国は魔族に攻められて滅亡しましたが一切手助けしません~

琴猫
琴猫

序章

序章 焼印刑を受けよ

公開日時: 2021年2月6日(土) 22:59
文字数:1,861

ノベリズム初投稿です。

よろしくお願いします。

□□□―――□□□―――□□□

 

「―――謀反者の息子リベル・ライニスよ。貴様を焼印刑に処す」

 

 玉座の間。玉座に座る国王の言っていることを、騎士たちに引っ立てられたまだ10歳の幼い少年…謀反者として処刑された宮廷魔杖士の息子、リベル・ライニスははっきりと理解することができなかった。

 

 目の前には1人の男の死体がある。つい先ほどまで生きていた男、リベルの父、宮廷魔杖士のフリドム・ライニスの、斬首された死体だ。切断された首の面から血が溢れ、内臓が覗く父親の様を、リベルはまざまざと見せつけられていた。

 

「………と、父さま………?」

 

 跪かされていたリベルは、膝で這うままに父に近寄ろうと―――だが1歩も動かないうちに両脇を固めていた騎士が「動くなッ!」と殴りつけ、リベルの頭を強引に冷たい床に押し付けた。

 

 それを止める者はいない。国王も、居並ぶ貴族たちも、皆、ニヤニヤと幼い少年が蹂躙される様を見ているだけだ。

 国王、ギリアル4世もまた口の端に嘲笑の笑みを浮かべつつ、重々しく口を開いた。

 

「――――リベル・ライニスよ。本来であれば子である貴様に父親の咎が及ぶことなどあり得ぬ。だが、そなたの父フリドムは我が王国に対し、許し難い不忠を働いたのだ」

「………う……そだっ!!」

 

 全身で跪くよう強要されながらもリベルは必死に抗しようとした。

 リベルの全身から光が漏れる。―――魔杖術の光だ。

 だが、それはリベルの両手両足に嵌められた手枷足枷に吸い寄せられていき、何ら術を発することはない。

 

「無駄だ。貴様のことはよく聞いておる。若干10歳ながらも魔杖士として将来を嘱望されているとな。だが、それももう終わりだ。お前に未来などない」

 

 カツ、カツ、と誰かの靴音が近づいてくる。

 そして床に頬を押し付けられているリベルの眼前に〝ソレ〟が見せつけられたとき、幼いながらも泣くまいと必死に堪えていたリベルは「ひ………っ!」と小さく悲鳴を上げてしまった。

 

 金属の棒。その先には複雑な文様が描かれた円形が――――少し離れたここまで熱が感じられる程に熱されていた。

 

「ククク………。その〝魔力封印の焼印〟もまた、魔杖具である。その焼印を受ければいかな魔杖士とはいえ、魔杖力が封じられ、二度と魔杖の技を使うことができなくなる」

 

 じりじり、と焼印を持った男が一歩、また一歩と近づいてくる。幼いリベルは震え、逃げ出そうとするが頑強な騎士がそれを許さない。

 その時、リベルはぐい、と頭を上げさせられた。そして、ビリビリ―――という布が力ずくで裂かれる音と共に、それまで着ていた服が破られる。

 

 そして、剥き出しになった胸に―――――

 

 

「二度と魔杖士として生きられぬ身体にしてやろうぞ!」

 

 

 国王の無慈悲な宣告。

 真っ赤になるまで熱せられた鋼鉄の焼印がリベルの胸の素肌に、押し当てられた。

 

 肉が焼ける音。

 激痛。

 絶叫。

 

 止めるものは誰もいない。

 父はもう死んだ。

 この場に並ぶ誰も、リベルを助けようとはしない。それどころか、邪悪に顔を笑みで歪ませている者ばかりだった。

 

 

 宮廷魔導士フリドム・ライニス3等勳爵。

 国王暗殺の謀反を企てた罪で、玉座の間で糾弾されたその場にて斬首刑。抗弁する間も与えられなかった。

 

 その息子、リベル・ライニス。10歳。

 魔杖士として生きられないよう、その胸に〝魔力封印の焼印〟を刻んだ上で、貴族としての身分を剥奪。奴隷階級へと落とされる。

 

 奴隷となったリベルは、王都中を引き回された。素肌にボロ布だけを着せられ、犬のように首輪をつけられ、奴隷商人に引っ立てられるまま、裸足で冷たい石畳の上を歩かされる。

 

 引き回されたリベルを待ち受けていたのは、心無い人々からの侮蔑、嘲笑、石や残飯、汚物を投げつけられ、倒れ込めば、鞭で打たれる。

 

 魔杖具によって繁栄する王都ウェルンの姿は、それまでと全く別の光景に映っていた。

 

 

 

 

 

 奴隷商人の店。檻の中に閉じ込められたリベル。

 そこでの日々のことをリベルははっきりとは覚えていない。何日、何ヶ月そこにいたのかも。

ただ、自分が人間ではなく、奴隷で動物以下のゴミクズだということを、言葉で、嘲笑で、鞭で、ありとあらゆる暴力で心と身体に刻み込まされた。

 

 そしてある日―――お前は明日、リベルの愛嬌のある顔立ちや華奢な身体を気に入ったある変態貴族に買われることになった、と奴隷商人から宣告される。

 

 もう、何も感じなくなっていた。自分は人間ではなく、モノ。

 自分が誰かすら、リベルにはどうでもよくなっていた。もう、自分の名前すら思い出せなくなっていた。

 

 

 

 そして、夜明けを迎え―――――――――――――

 

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート