焼印の魔銃士 ~理不尽な冤罪で魔力封印の焼印を押されて追放。未来を断たれた少年は、魔銃を手に成り上がる。追放した国は魔族に攻められて滅亡しましたが一切手助けしません~

琴猫
琴猫

リベルとスカイエル

公開日時: 2021年2月12日(金) 17:00
文字数:1,492

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 深い水の底から浮かび上がるような、意識が戻る間隔。

 

「う………」

 

 頭が重い。

 全身が熱くて、クラクラする。

 苦しい。

 

 けれども、今自分を包み込む毛布の感触すら煩わしく、リベルはまだ意識が曖昧なまま、起き上がった。

 

「ここ、は………?」

 

 しばらくして、リベルは自分が今、スコフィールド家の自分にあてがわれた部屋にいることに気がついた。服も、いつの間にか寝間着に代わっている。

 窓の外は夜。ランプが、点けっぱなしになっており、部屋を淡く照らしている。

 リベルはベッドから抜け出そうとした………が、思うように身体に力が入らず、木の床の上に崩れ落ちてしまう。

 

 と、ドタドタ! と慌てて階段を上がる音が聞こえてきた。

 

「リベル! 気が付いたか………」

 

 部屋に飛び込んできたのは、スカイエルだった。

 スカイエルは倒れ込んだリベルを軽々と抱きかかえ、ベッドへと戻し、毛布を掛け直した。

 

「俺は………」

「安静にしておれ。焼印に封じられておるにも関わらず、魔杖術を使ったのだ。命があっただけでも、幸運じゃ。熱も、医者がくれた解熱剤のおかげで下がってるようじゃな」

「シェインは………?」

「2人とも無事じゃ。今は家に帰しておる。まあ、事が事ゆえにそれぞれの家でしっかり絞られてるじゃろうが」

 

 スカイエルはベッドの傍に椅子を置き、腰かけた。

 しばらく、沈黙が続くが………

 

「2人から聞いたぞ。お前さん1人で、3頭のイーストベアをたちどころに葬ったそうだな。それも非力な銃〝タイプA〟で。お前の………銃士としての才能は、本物だ」

「でも、俺は………」

「分かっておる。術を使ったことについては、もう何も言うまい。だがそれについては、ワシもお前に謝らねばならん。―――焼印を見た2人に、お前が何者であるか、話した。彼らも知らねば、到底収まりがつくまいと思ってな。けれどもあの子らは、命懸けで秘密を守ると、そう誓った」

 

 リベルはぼんやりと、窓の外を見た。窓の外の月は、何も応えることなく、ただ微かな月明かりをリベルの部屋に注ぎ続けるだけだ。

 

「………ごめん、なさい」

 

 ただ、掠れた声でそれだけを言うので精一杯だった。スカイエルは「謝らなくても良い」と軽く笑いながら、

 

「まあ、無茶をしたのは事実じゃがな。ファーラの奴はカンカンだったぞ。それに心配もしておる。熱で苦しむお前さんを見て、ショックで寝込んでしもうたわい」

「………」

「元気になったら、ファーラには謝っておくがよいぞ」

 

 リベルはこくり、と頷いた。

 スカイエルもまた、満足そうに頷くと「さて」と腰を上げる。

 

「ワシもそろそろ寝るわい。年寄りは早寝早起きなのに、先ほどまで酒を飲んでおってな。ようやく酔いと睡魔が回ってきたわい」

 

 スカイエルは、やや足元をふらつかせながら、ドアの方へと歩いていく。

 

「スカイエル、さん………」

 

 リベルは呼び止めた。うむ? とスカイエルが振り返ると、

 

「………ありがとう。俺、なんかのために。俺、ただの奴隷……なのに………」

 

 その時―――――スカイエルの目から涙が溢れた。

 そしてスカイエルは荒い足取りでリベルのベッドに歩み寄ると、リベルの弱った身体を抱きしめた。

 

「まだ、分からんのか………! お前はもう奴隷ではない! あの日、救い出したあの時に、お前はもう奴隷では無くなったのだ! お前は、自由な、1人の人間なのだ………!」

 

 リベルには、スカイエルがなぜ涙を流すのか、分からなかった。

 けれども自分の目にも、なぜか涙が溜まっていた。そして、とめどなく溢れるのだ。

 

 

 泣いて、泣いて、泣き疲れて眠るまで、スカイエルはその老いた、それでも力強い腕で守るように、リベルを抱きしめてくれた。

 

 

 

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