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「………あぁ~っ! 遅い! 遅すぎるぜ! もう夕方になっちまうよ!!」
スコフィールド家のウッドデッキ。
そこですっかりくつろいでいたシェインだったが、いつまで経っても戻ってこないスカイエルに痺れを切らしそうになっていた。
「こうなったら、俺たちで酒場に行こうぜ! どうせ酒盛りして、武勇伝でも聞かせて小金を稼いでるんだろうさ」
「ダメよ。あんたたちみたいなお子様が酒場に行っちゃいけません!」
子どものお菓子……皿一杯の焼きたてのパイを持ってきたファーラが、ウッドデッキから立ち上がろうとするシェインを嗜めた。が、シェインの方も強情に、
「大丈夫だよ! 俺、ちゃんと銃もいつも持ってるんだぜ」
「木のおもちゃでしょ?」
「本物だよ! まあ、22口径の豆鉄砲だけど」
見れば、確かにシェインのホルスターには、先ほどまでリベルたちが練習に使っていた〝タイプA〟小型リボルバー拳銃と同型の拳銃が収まっていた。
「まあ………ちょっと渡しなさい!」
「んべ。やだよーだ」
取り上げようとするファーラの手をすり抜けて、シェインは挑発するように舌先を出すと庭先まで逃げ出してしまった。
「そ、そんなのどこで手に入れたの!? 家からくすねたんじゃないでしょうね?」
「まさか! 先月来た行商から買ったんだよ。元々はシリンダーとかあちこち壊れてた中古の不良品だったんだけどさ、直して元通りさ」
「そんなの危ないでしょ!」
「馬鹿にすんなっての! ちょっとした工具があれば多少の不具合なら直せるさ。これでも四菱興産新潟工場金属製造部で25年………」
「?」
「い、いやこっちの話。―――とにかく! これは俺のモンだからな!」
待ちなさーい!! そうファーラが喚くのも構わず、シェインは繋げてあった自分の馬に乗って「わはははー!」と笑いながら去ってしまった。
「………もう! お父さんに言いつけてやるんだから! 悪いけどリベルとエミリオ君の2人でこのパイ食べちゃって」
「エオリオリオットです………」
だが、ファーラはエオリオのかすれた言葉を聞くことなく「全く! シェインったら……」とぶつぶつ文句を言いながら家の中へと入ってしまった。
「………何で、誰も僕の名前をちゃんと呼んでくれないんだろ」
哀愁漂うエオリオ。
だがリベルはどう返していいか分からず、パイを切り分けようとナイフを―――
その時、丘の向こうまで馬で駆け去ってしまっていたシェインが、馬を全速で駆けさせて戻ってきた。
「あ、シェイン。パイがあるよ」
「それは後だエミリオット! 2人ともすぐに馬に乗ってついて来てくれ! 訓練で使ってたあの銃と弾も持ってこい!」
「ど、どうしたの………?」
「向こうで行商の馬車がイーストベアに襲われてるんだよ!」
「ええっ!?」
エオリオが素っ頓狂な声を上げた。
イーストベア。丘を越えた先にある森に棲む熊の魔物だ。いつも2~3頭ほどの群れで動いており、時たま森の近くにある農場や街道に出没して、人を襲うことすらある。
早く! シェインに急かされるまま、エオリオは馬を繋いでいる杭の所まで急いだ。
リベルも、庭のテーブルの上に置いてあった〝タイプA〟小型リボルバー銃を取り、木のおもちゃに代わってホルスターに。6発装填済みの予備のシリンダーもガンベルトのホルダーに挿す。何発かもガンベルトに挿していく。
ややあって、エオリオもリベルも自分の馬に乗った。
「お待たせ!」
「いいよ」
「いよっし! それじゃ、〝スコフィールド兄弟団〟の出撃だっ!」
と、表の騒動を聞きつけたファーラが玄関を開けて「ちょ、ちょっと何事!?」と声を荒げる。
「あ、あなたたち一体どこに行くの!? それにリベルまで………」
「馬車が魔物に襲われてるんだよ! 追い払いに行ってくる!」
「ええ!? ちょ……お父さんを呼んでくるから待って………!」
だが最後まで聞き終えることなく、シェインは馬に発破をかけて、向こうの街道へと飛び出していった。エオリオもそれに続く。
「り、リベル!」
「………大丈夫」
それだけ言うとリベルは馬を翻らせ、2人の後を追った。
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