きみのほしぞら

~私たちアイドルやります♪~
紀桜 玲
紀桜 玲

二話 きみのほしぞら

公開日時: 2024年1月30日(火) 17:35
文字数:1,375

一話いかがでしたでしょうか?

ブランクがありすぎて、書き直しまくりましたが、いよいよサークル発足でしょうか?

 美術室の鍵は閉まっていた。それもそうのはずで、色々と危ないものだって置いている。彫刻刀とか特に指を怪我した人がいるんじゃないかな。

 だから、三階から一階に降り、鍵を借りるために職員室までやってきていた。

「せんせー、入りまーす」

 私は職員室に足を踏み入れると一人の男性教師のもとへ近付いた。二年生の担任の先生だ。年齢は知らないけど、二十代に見えるかと言われると怪しくて、アラフォーと言われるほどおじさんにはまだ程遠い気がする。

「どうした?」

「鍵ください。美術室の」

 私は右の手のひらを先生に出した。

「なんだ早速活動か?」

 先生はポケットを漁り、立ち上がると、壁に取り付けてあった色々な教室の鍵がかけてある、金庫みたいな細い箱の鍵を開けた。

「当たり前じゃないですか! せんせーも一年間私の想い知ってますよね?」

「まぁな」

 戻ってきた先生は私の手のひらに鍵をそっと落とした。

「三人になりましたし! サークル発足の許可くださーい」

「後ろの二人か?」

「そうです。こっちが妹で、こっちが妹の親友で、私の親友でもある子です」

 私は二人を鼻高々に紹介した。 

「なるほど……星空は勢いでなんでも突き進む感じするし、二人ともよろしく頼むな。形だけだがこれ書いてくれ」

 はーい! 私はピーンと右手を天へとあげた。

 先生は一枚の紙を机の上に出した。活動名、部員名、顧問の先生の名前を書く欄がある。

「で、どっちが部長なんだ? その妹か、親友ちゃんか」

「私だよ! わたし!」

 私は一度後ろを振り向いてみた。そこには愛想笑いをしているみさとちゃん、笑いを堪えようと必死なすすきがいた。

「先輩ですから」

 と、先生の机のペン立てからボールペンを勝手に借り、一番上に『星空ほたる』と名前を書いた。そのあと、すすきとみさとも名前を書き込んで、『星空すすき』『日向みさと』と三人の名前が並ぶ。顧問の欄には先生が名前を書いてくれた。他の部活動の顧問はしていないというか、和太鼓部とソフトテニス部しかないうちの学校にはそんなにもたくさん顧問は必要ない。新年度が始まる前までは天文同好会もあったけど、顧問の先生が違う学校に行ってしまったタイミングで自然消滅した。元々たいした活動はしていなかったみたいだけど。よくは知らない。

「活動名、どうしよっか?」

 二人の方を向いた。私はあははははと愛想笑いをする。

「はぁ!? 一年間あんだけ色々と待ち望んでたみたいな言い方したくせに、決まってないの!?」

 すすきに怒鳴られる私は、言い返すことも出来ず。両肩を捕まれ激しく揺らされている。

「ほたるちゃんが部長さんなんだし、星空をつけるとして……」

 揺れが収まった私が虚ろな目で見えた光景。それは、みさとちゃんは顎に手をあてて、左斜め上を見ているところだった。人は考えているときは自然と上を見てしまうらしいけど、その根拠はないらしい。

「この町の名前でも入れる?」

 この町の名前は『紀美野町』という。和歌山県の高野山の麓にある田舎町だ。人口は現象の一途をたどっているし、高野山への通り道というイメージが強い。紀美野町は行く場所ではなく、通る場所なのだ。

「地域活性化みたいな活動だよね?」

 そう言ったみさとは、修正のきかないボールペンで『きみのほしぞら』と書き記した。

「なんで平仮名?」

 すすきは聞いた。

 私はまだ頭がぐらぐらとしている。

「その方が可愛いかなって」

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