「たまたまドワーフ鋼と相性が良かっただけだって! きっとそうだよ、次はこっちの銀で食事用のナイフとフォークを作ってもらおうかな?」
ドーコがあきらかにニヤニヤしている。また意地悪をされそうな気がする。一応聞いてみるか。
「なんで今度はナイフとフォークなんだ? さっきみたいに剣でいいじゃないか。」
「だってもしかしたら大きいものは作れても、細かいものは苦手かも知れないじゃない! だったら今度こそ偉そうにって……あっ」
やっぱり裏があったか、この腹黒ロリめ。まぁここで引いては男の恥と、銀を受け取る。またさっきの鉄の様に、どうすればいいかが浮かび、体が勝手に動き始める。勝手に動く体に身を任せながら、一つ聞いてみたいことを質問する。
「ひょっとしてドワーフっていうのは、こう金属を持つとビビビビーっと感覚的にどうすればいいかわかるものなのか?」
ハッとドーコが驚いた表情で手で口を覆い
「もしかしてその感覚があるの? 私ですらやっと使い慣れた金属でようやくわかる様になったのに……? もしかして何処かで経験を積んだ鍛冶師なの? それで私にドッキリを仕掛けてるとか? だったら制裁あるのみ!」
と言ってまた拳を作るのをみて俺は慌てて弁明する。
「いやいや、俺は正真正銘の初心者だ。しかもドワーフの村でエリクサーを作るぐらいには、この世のことを知らない」
「それもそうだよねーじゃあなんでだろ? 何かスキルを持っているとか?」
どうやら納得させることができた様だ。
あースキルかーそういえばと出来上がったナイフとフォークを置きマイページと念じる。
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名前 ドワルフ
レベル 9
視聴者数 2
フォロワー 2
メインジョブ 配信者
サブジョブ なし
スキル なし
ユニークスキル 【エルフの知恵】 【ドワーフの知恵】 【ヒューマンの良心】
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「おぉドーコ師匠! フォローしてくれたのか、ありがとう。そういえば【ドワーフの知恵】ってのならあるぞ。もしかしてこれのお陰か?」
「どういたしましてって、えー!?!? まさか本当にスキル持ちなの!?!? しかもユニークスキルの【ドワーフの知恵】って数百年に1人しか持ってないって言われるあの【ドワーフの知恵】!? ズルじゃん!!」
ズルって言われてもな。この体を作った時の設定では、ちょっと手先が器用程度だったんだが。
「まぁラッキーだったよ」
よほど衝撃的なことだったのか、ドーコ師匠は興奮気味だ。
「ラッキーで済んだらドワーフは要らないよ! 私も【ドワーフの知恵】を持っている人なんて知らないから、どうすればいいかわからないよ……。とりあえずこの家にある全種類試してみる?」
「叩く必要は無い。触れば大体分かるんだ。資源を無駄に使う訳にはいかないしな」
それを聞いた師匠はキョトンとした顔をしてやれやれと手を挙げ首を横に振る。
「触れば分かるって? いくら【ドワーフの知恵】持ちだからってそんな訳ないよ。だったらこれつけてよ。それで渡すからさ」
そう言ってドーコは細長い布を渡す。もしかしてこれは、目隠しして当てろって事か? どこまでも意地悪なやつだな。仕方ないここは言う通り、目隠しをつけるか。
「ほら、いう通りにしたぞ。早く渡してくれ。見えないからって目の前で煽ってたりしてないだろうな?」
ガタッと音が鳴る。まさか図星なのか師匠。
「スキルに心眼があったりする?」
「ないから、ほら早く」
地団駄を踏んでいるのだろうかバタバタと音が鳴る。
「もーこっちが師匠なのに。はい、これはなんでしょーか?」
やっぱり目でみる必要がなかった。触った瞬間、脳に金属の情報が信号になって駆け巡る。
「金と銅の混合物だな、いい加減意地悪はやめてくれ」
「なんで? なんでわかるの!? 金は少ししか混ぜてないのに!」
流石に人の表情まで、目隠しをした状態ではわからないが、きっと師匠は今まで見たことない、驚きの顔をしているんだろう。
「なんでって言われてもなー。勝手にわかるんだよ」
そう言ってゆっくり目隠し外す。パッと見で、金が入っていることがわからない。見た目でわからない量の金までわかるのか。凄まじいな俺のスキル。
〔ドバン:まさか、ドワルフが本当に【ドワーフの知恵】持ちだったとはな〕
お! ドバンから初コメだ! というか音声がついてるぞ!?
「なぁドバンの声がするんだがどうしてだ? まさか近くにいたり」
俺は目隠しの間にドバンがサプライズで来たのかと辺りを見渡すがドーコ以外誰もいない。
〔ドバン:名前を表示している視聴者の声は聞こえるのが基本だろ? もしかしてそんなことも知らないでメインジョブに設定したのか?〕
設定したも何もこの世界に生まれた時からなんだってば。それにしてもそこら辺の設定方法とかあるのか? 適当に念じておこう。知り合い限定でお願いします。
「しっ知ってたさ。それにしてもユニークスキルを持ってるって事は前から知っていたんだが、聞く前に追い出されてしまったからなー」
〔ドバン:はは、その言い方は堪えるな〕
「すまんすまん、ブラックジョークが過ぎたよ」
ドーコの腹黒さがうつったのかもしれない。
「ねぇねぇ、なんで1人で喋ってるの?」
不思議そうにドーコが尋ねる。
「なんでって。ドーコも配信見てるだろ? 今ドバンからコメントが来たから喋ってるんだよ」
「まぁそれは確認してるんだけどさ、普通声に出さず頭で念じるものなんじゃないの? じゃないと探検中とか声でバレて大変じゃない?」
配信という事でなにも考えず、今まで通り声に出して喋っていたが、念じるだけで出来るらしい。確かにマイページを開く時も念じるだけで出来た。早速試してみよう。
〔ドワルフ:テスト 聞こえてますか〕
〔ドバン:おう、声も聞こえてるぜ〕
ちゃんと音声が出るらしい。俺のいた世界より、配信技術が進んでいる気がする。それにしてもどうしてドーコはそんなに配信に詳しいんだろうか。
「なぁドーコ師匠。どうしてそんなに配信に詳しいんだ?確かメインジョブ鍛冶師のサブジョブ戦士だろ?」
「それは……」
何やら言いづらそうに、モジモジしている姿を見て察した。1人で研究や作業をしていて、きっと人恋しかったんだろうな。
「エルフが配信してないかなーって……」
……はい。エルフの配信が見たかっただけね。
俺の心配した気持ちを返して欲しい。まぁそこまで研究熱心なのは、正直言って憧れる。今度はストレートに聞いてみた。
「ドーコは配信に詳しかったりするのか? 俺はどうやら鍛治はできるみたいだが、こっちの世界の配信についてはさっぱりでな。良かったら配信について教えてくれないか?」
即座に師匠の拳が俺の腹を抉る。
「そういう事は! ちゃんと! ここにあるものを全て扱い切ってから言って!! それが全部出来たらドワルフの言う事なんでも聞いてあげるわ!」
それにしても、どこに地雷があるかわかったもんじゃないな、今度は何がまずかったんだ……。本当に地雷を踏み抜く癖だけは、早く治したい。俺の腹が持たない。
待て今なんでも言うことを聞くって言ったか? グヘヘな事もオーケー?
いやいや今はとにかく配信について学ぶために、ドーコの言う通りにしよう。別にそう言う展開を狙っているわけではない。うん。
幸い朝早くに起こされたし、ここにある物なら全部試しても今日中に終わりそうだ。
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