vtuberに転生するはずが転生先は異世界でした

〜異世界で仲の悪い異種族を繋いで俺が配信王になってやる〜
酢ペクター
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09話 伝説のマジックアイテム製作 その2

公開日時: 2021年5月31日(月) 20:30
文字数:4,581

 どうにも魔法を封じ込めるのは上手く行かないな……鍛冶仕事はあんなにも順調にいったから、てっきりこっちも【エルフの知恵】ですんなりいくと思ったんだが、何か隠された条件でもあるんだろうか?


〔ふーん、宝石魔法をしているのね。もしかしてエルフかしら? それにしても鍛冶場にいるエルフなんて見たことがないわ〕


 おっ? もしかして初見さんか? 宝石魔法を知ってるって事はエルフか?


〔ドワルフ:こんにちは! 私はドワーフとエルフの混血なんです。もしかしてエルフの方ですか? よければ宝石魔法? に関してヒントを頂きたいんですが〕


 言ってから気付いた……。ドワーフとエルフは仲が悪いんだった。ついついドーコが認めてくれたから口走ってしまった。まずかったか。


〔確かに私はエルフよ。それにしてもドワーフとエルフの混血ねぇ。自己紹介でしかもエルフにそんなこと言うなんて変な子。でもそれならもしかして……〕


 逆に興味を持たれたみたいだ。変な子扱いだけど。


〔教えてあげてもいいけど、1つ約束をしてくれないかしら?〕


〔ドワルフ:どんな約束でしょうか? 私ができることでしたら〕


〔私の元、エルフの里に来て欲しいの。詳しいことはそこでまた話すわ〕


 エルフの里か。ミスリル加工の為に向う予定だったな。


〔鍛冶場からの配信だから、ドワーフの村ら辺にいるのかしらね。そこからエルフの里に来るには、途中にあるヒューマンの国に行くといいわ。そこで冒険者でも雇ってエルフの里に来なさい。長い道のりになるけどね。〕


 やけに親切だな、冒険者を雇えってことはエルフの里に行く道中は、相当危険な魔物が出たり、色んなトラブルがあるということだろうか?


〔ドワルフ: 今はまだ冒険者を雇うほどのお金もありません。相当額稼ぐのにそれなりに時間がかかると思うんですがかまいませんか?〕


〔幸いエルフの寿命は長いのよ。待つのは得意なのよ。だから安心しなさい。でも絶対来るのよ、

フォローしておいたからまた暇つぶしにでも見ておくわ〕


 どうやらそんなに急いだ話じゃなさそうだ。助かった。手持ちの金なんか、ドワーフの村でもらった路銀しかないしな。


〔ドワルフ:フォローありがとうございます。自己紹介がまだでしたね! 私はドワルフ、メインジョブ配信者 サブジョブはなしです〕


〔やってることもジョブも全部めちゃくちゃね……私の名はエマ、メインジョブゴーレム使い サブジョブは土魔法師よ〕


 ゴーレム使いか。この世界には色んな職があるんだな。言葉使いからは聡明な印象を受けるな。


〔エマ:で、宝石魔法のヒントだったわね。私も専門じゃないから、そこまで詳しくはないけど、あなたがさっきから苦労してる魔法を封じ込める方法くらいだったら教えられると思うわ。まず知っておきたいんだけど、あなたの適正属性は何かしら?〕


 おぉこれでも知り合い判定になるのか。というか俺が知り合いたいからか?


〔ドワルフ:多分、風属性だと思います。一応エリクサーを作れたんですが、何属性なんですかね?〕


〔エマ:え? 嘘でしょ? エリクサーっていうのは魔法全属性を扱える必要があるんだけど…… それをメインジョブ配信者のしかもドワーフとの混血が作っただなんて……〕


 どうやらとんでもないものを作っていた様だ。魔法全属性か。これも【エルフの知恵】様様というところか。


〔エマ:まぁきっと勘違いよ。ハイポーションとでも勘違いしたんでしょう。で、風属性の宝石魔法だけど、どんなものを作る予定なのかしら?〕


 んーどんなものか。ドーコは大斧を作ってるし、それに合う様、より切れる様なものを作ろうかな。それとも斬撃が飛ぶ様なものとか。そう考えた瞬間、初めて鍛冶仕事をした時の様に、どうすれば良いかが頭の中に流れ込んでくる。頭に流れ込んでくる呪文をそのまま唱えながら、手に持った無色の宝石の中に魔法を封じ込めていく。


〔エマ:ねぇ! ねぇってばさっきからコメントをスルーするなんていい度胸してるわね。それでそんなものを作りたいの?〕


〔ドワルフ:えーっとそれなんですけど、どうやら出来たみたいです〕


〔エマ:はい? 私まだ何も教えてないんだけど?〕


 ちょうど大斧ができたドーコがやってくる。ちょうどいいと思いドーコに出来たことを伝える。


「どうやらこっちは出来たみたいだぞー。合わせてみる前に昼食食べようか」


「もっもう出来たの!? 早く試したいけど、せっかく昼ご飯作ってくれたんだし先に食べよっか」


「それもそうだな」


「「いただきまーす」」


 ドーコが口いっぱいに物を入れながら喋る。


「それにしても、もう封じ込める成功だなんて、やっぱり【エルフの知恵】って凄いんだねー」


 あっエマには【エルフの知恵】の話は伏せてたのに……。


〔エマ:聞き捨てならないわね……。【エルフの知恵】!? そんなの伝記でしか聞いたことないわよ?〕


 やっぱり伝記でしか聞かないようなスキルだったのか……。しかし最後の【ヒューマンの良心】だけはしょぼそうだ。ただの良心だぞ?


 エマは何か考え込んでしまったようでぷっつりコメントがなくなった。


「「ごちそうさま」」


 ドーコの作った大斧にさっき魔法を封じた宝石を埋め込む。こないだのナイフみたいに、俺が振ってうっかり魔法発動したら意味がないので、慎重にドーコに大斧を返す。


「外に出て試しに振ってみるか」


 とドーコに語り掛けるが姿はなし。早く試したくて仕方がないらしい、ドーコはもう外に出ようとしていた。


「うん! 早く早く!」




★   ★   ★




 試し切りに近場の森についた途端、予告なくドーコが思い切り振りかぶる。


「じゃあ早速かるーく!」



「ちょっと待って! もうちょっと離れてからじゃないと!」


 俺は止めたが間に合わず、ズバッっと薄布でも引き裂いたような音がした。ドーコの試し切りのイケニエになった木が斜めにずり落ちる。


 ドーコがあまりの衝撃に辺りをキョロキョロ見渡している。


「なんか変な音出たよ!?!? てっきり昨日のナイフみたいに切れ味が増すくらいだと思ったのに軽い一振りで木を切り倒すなんて……」


「いやそれだけじゃない、奥の木も見てみろ」


 かわいそうなイケニエは一本じゃすまなかったらしい。一本目の被害者に続いて後ろに立っていた木がドスンと時間差で倒れる。


「……なに?私あんなとこまで切る気なかったんだけど」


 放心しているドーコ。まさか2本も木を切り倒すとはな。俺自身も驚いている。


「俺はこっちから見てたんだが斬撃みたいなものが飛んでたぞ……」


 ドーコはキョトンとしてこっちを見る、振っている本人からは見えなかったのだろうか。


 少ししてをさらに小さくしてしゃがみこむ。そして


「……やった、やったよーー!!! これ! これ! これだよ! 普通の戦士や斧じゃこんなことできないもの!! 私がずっと作りたかったマジックアイテム! ありがとーーーードワルフ!」


 ドーコはずっと跳ね回っている。よく跳ねるな。いつまで跳ねるんだ。ウサギか?


「まぁ俺もお世話になったし、恩返しができて良かったよ。だがまだ俺は全力を出してないぜ!」


 ドーコがキョトンとした表情を見せる。


「どういうこと?」


「俺の推測だが宝石の色にはそれぞれ対応した属性があるんだ。そうだよなエマ」


 初めてのマジックアイテムに俺自身興奮していたようで、タメ口が出てしまった。


〔エマ:急にタメ口なのね。まぁいいけど、そうよ宝石魔法には、それぞれ適した宝石と属性があるわ。無色の宝石は応用が利くけど、器用貧乏でどれも一番の性能は出せないの。ドワルフは風属性が得意だから、エメラルドだともっと効果が出ると思うわ〕


 ビンゴ! 俺の推測は当たっていたようだ。 だったら……。


「じゃあ明日は俺の属性に合った、エメラルドで試してみようか」


 明日という言葉を聞くなり、ドーコは子供の様に駄々をこねる。


「えー! まだ昼過ぎだよ! 今日中に作ろうよー」


「そうしたいのは山々なんだが、俺の精神力が切れてしまったみたいでな」


 1人で何回も魔法を込めようとしたときに、相当量の精神力を消費したらしい。少し頭痛がするというかなんというか、疲れている。


「うーんそれなら仕方ないのかな? 魔法に関しては私はさっぱりだからねー」


〔エマ:魔法を込め初めてからずっと見てたけど結構な精神力ね。それこそエルフ並みね〕


 ん? 宝石に魔法を封じ込めようとしたのは今日が初めてだ。


〔ドワルフ:そうなのか?エルフ並みか……。〕


 【エルフの知恵】って割には普通のエルフ並みか。微妙だ。


〔エマ:なんだか不満そうだけどエルフが、それなりに魔法の鍛錬をしてあなたくらいなのよ。〕


〔ドワルフ:いや不満なわけじゃないんだ。〕


〔エマ:今疲れてると思うけど、精神力を使い果たしたら疲れたで済まないわよ。注意しなさい。ところで、私、全然力になれた実感が無いんだけど、約束は守ってもらえるのかしら?〕


〔ドワルフ:くたびれるほど試して、エマのコメントでやっと成功したわけだし。十分力にはなったよ〕


 実際ほんとに全く成功しなかったからな……。エマのコメントがなけりゃ今頃、精神力ってやつを使い果たして鍛冶場で突っ伏してたかもしれない。


〔エマ: なんだかお世辞にしか感じないけど、まぁいいわ。約束よろしく頼んだわね〕


 そういえば今日はマイページをまだ見てなかった。


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名前 ドワルフ

レベル  14

視聴者数 2

フォロワー 3


メインジョブ 配信者

サブジョブ なし


スキル なし


ユニークスキル 【エルフの知恵】 【ドワーフの神】 【ヒューマンの良心】


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レベルが上がっているな。魔法の鍛錬でも上がるのか。それにしても、視聴者が2人……ん?エマとドーコで2だろ? ってことは、今日ドバンは見てなかったんだな。コメントもなかったし。


〔ドワルフ:気長に俺の配信でも見て待っていてくれ。とりあえず今日の配信は終わるよ。フォローしてくれてありがとうな。じゃあまた〕


〔エマ:おつかれ〕


 ドバンのことが少し気になったが配信を切る。


 というわけで明日からどうしようか? このままマジックアイテムを作りを続けるか?


 ミスリル以外にも魔法ってやつにも興味が出てきたしエルフの元にも早くいってみたい。



 なんて事を考えていたらドーコに俺の裾を掴まれた。


「ねぇねぇ! 今ドワルフって風属性しか使えないんだよね? じゃあ私と一緒にエルフの里に向かおうよ!」


「それは願ったり叶ったりだが、いいのか? ここを離れて? この鍛冶場を作るのに、相当な労力がかかったんじゃないか?」


 あのでかいドワーフの長の家ほどではないが、それでも立派な鍛冶場だ。思い入れなんかもありそうなもんだが。


「よりいいものを作るためには、情報収集は大事だよ。ひとつの所にとどまってたって駄目なんだよ! もともと私、エルフに会うつもりだったし、それにドワルフと一緒にいた方が、1人であれこれやるより、楽しそーだしね!」



 ニコッと笑うドーコ。可愛い……。思わず俺まで笑顔になる。


「まぁその前に、明日はエメラルドでマジックアイテムを作ろうね! 冒険に役立つだろうし!」


 エルフの国への旅に魔法、そもそも先ず金稼ぎにヒューマンの国で明日はエメラルドか。不満はないが、どうやらまだスローライフには程遠いな。


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