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連載中 長編 歴史・時代 / 戦争

数寄の長者

公開日時:2022年3月19日(土) 15:54更新日時:2022年5月30日(月) 18:00
話数:4文字数:22,086
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あらすじ

三人の天下人に仕えた茶聖・千利休の生涯を等身大に描く。

 

 最初の天下人・三好長慶と十歳まで共に堺で育った田中与四郎は天文八年帰郷した武野紹鷗の茶の湯を見て衝撃を受け、自分だけの茶の湯の世界を夢見て茶の道を志す。

 

 その頃、三好長慶は天下を伺い、細川晴元に従って摂津守護になっていた。陪臣から公方と争うようになる三好長慶を陰ながら支えることで、天下泰平を願う与四郎。

 

 細川氏を打倒し、三好の天下を実現した長慶だったが、息子の早世で失意の人と成り果ててしまう。そして、失意の中病歿する長慶に失望し、三好家から距離を置こうとする与四郎に、長慶の妹である妻・稲との間が急速に冷えて行った。

 

 長慶の死後三好家は内紛によって力を失っていく。そんな折、尾張の織田信長が義昭公を担いで上洛する。これを好機と信長に近づく今井彦右衛門に説得され、これに組みすることを決める与四郎。津田助五郎と共に信長の矢銭を受け入れた。これにより、堺は自治都市ではなくなったが、それは与四郎にとって茶の湯を弘めるための天下安寧に必要なことであった。

 

 しかし、織田信長は今井宗久を重用し、茶湯御政道によって、茶の湯を再び武家のものとして仕舞う。なんとか家臣らの中に茶の湯を弘めようとする与四郎。そんなとき、二人に出会う。風変わりな古田織部と人懐っこい羽柴秀吉である。そして、明智光秀によって織田信長が本能寺の変で倒されてしまった。

 

 いち早く本能寺の変を知った与四郎は、毛利攻めをしている秀吉に知らせを送り、堺で出港をしようとしていた丹羽長秀らを秀吉に協力させ、山崎の戦いを制した秀吉に重用される益々、茶の湯に邁進できる時代を掴んだかに見えたが、最大の庇護者であった小一郎秀長を失うと、奉行衆前田玄以との対立が深まっていった。

 

 世俗の煩わしさと距離を置きたくなっていた利休と利休の茶の湯を利用したい秀吉、そしてそれを快く思わぬ奉行衆石田治部、文治派と武断派の争いに巻き込まれた利休は石田治部らの讒言によって蟄居を命ぜられてしまった。

 

 助命嘆願に奔走する弟子らであったが、利休は秀吉に謝罪することなく、切腹する。その時、利休の脳裏に浮かんだのは……?

 

 追放の憂き目にあった道庵紹安は飛騨の金森長近に預けられ、少庵宗淳は会津の蒲生氏郷に預けられた。