小説を書き始めた。

ただし、『そもそも小説って、なに？』

ていうのが本音。まじ本音。まじ、わかんないっていうかん、わかってなかった。

だからって『誰か教えて』ってわけにもいかず、まあいいか。

読ませたい人がいる。読んで欲しい人がいる。その人のことを、まっさきに考える。

うん。

うん？

どうなるかな。

ていうか、どうなるもならないも、すでに決まってる。

もうすでに完成してるから。

脳内で。

いつか聞いたことがある。ラジオで？

いや違うな。

いつか読んだんじゃないかな？

それも違う。

うん。

おれだった。

詳しく説明すると、すっかり大人になったおれが、思春期まっさかりのおれに贈っていた。

もうすでに贈られている自分が過去にいて、そのことを思い出した。

ていうか、

『ああ。あのときの。アレ。これなんじゃ？』

っていう気づき。

気づきました。

ゆうやく。

気づくことができたんです。

うん？

だから結局おれが小説を書いたからって、そのさきにコンテストで入賞できる保証なんてないし文学賞系の可能性も。ない。

みもふたもない。だって、才能。それに、実力。

ない。

ないんだもの、しかたない。

しょうがないって言うと、それで終わっちゃうけど。

でも。

大丈夫です、安心してください。

おれが小説を書く目的は、ひとつ。

それが明確すぎる。

その目的を実現するためだけにエネルギーを集中して取り組む。

それだけのこと。

それ以上でも、それ以下でもなく。

ただし、おれには必要不可欠な出逢いがあった。んだと思う。って気づいた。

ペンを走らせる。

その作業そのものは好き。

けど、なにか違和感。

文字を入力する。

ワープロの時代からやってる作業だから得意。

得意っていうか、慣れてるっていうか？

自然に打ち込めるよ。

けど。

それだけじゃないんだよなあ？

それがようやくわかった。

ほら、いまここ。

小説を投稿するウェブサービスじゃん？

って、そういうサービスが複数あるよね。

どこで書いてもいい、のかな。

あっちで書いたのを、こっちでも！？

そもそもルールが感動的ですです。です。

自分のブログで書いて、それを投稿して。投稿した作品そのものを、こっちにも。あっちにも。そっちにも。どっちにも。

すげえ！

って、思った。

家の中ウロウロ裸足で散歩しながら、ハイテンションな気分。

窓越しに逆光線が強く眩しくキラキラしてる。

ほら。

さっきから菜園で植物の手入れをしてる妻が、ときどきこちらを見てる。

おれも外に出よう。

害虫忌避対策をする季節だ。

もちろん小説も書く。

あ、そうだ。そうそうそう。おれね？

自分が書いた小説を音声で聞けるっていうウェブのとこ、すごく気に入ってる。

自分書いた文章をだよ？

おれの言葉に声がつくのさ。

もう、それだけで『待ってました』ってなった。

待ってた自覚なんて正直ない。なかった。

けどサービスを知って『これだよこれ』って。

さ。

書き終わった。

音声で再生するよ。

おれんちの庭と畑に設置してあるスピーカーから流れるぜ。

なあに、ＢＧＭ。と同じ感覚。ラジオドラマみたいに？

おれの夢はユーチューバ。になること。になって生活してくこと。稼ぐこと。

だった。

なんか時間が経過して、Ｖでやりたくなった。

とか思ってるうちに時間ばっか流れてくし、なんにもできていない状態だったし。

で。

このままでゼロよりも、なにかプラスしていけること。

プラスにプラスして、さらにプラスを。

って、経験値を積むみたいに。

いきなり経験値を稼ぐ裏道を求める気なんてないよ？

βテストのご褒美なんてないし、チート能力は絵空事。

あるのは。

ここ。これ。

いいじゃん。

あるんだから。

それに。

声。

それも手に入った。

すごいことだよ、ほんとうだよ。すごいことなんだってば。

だから過去の自分に贈る。

おれ、聞こえてるか。聞いてるんだろ？

なあ。

布団の中で。

通学路で。

まっくらな車窓を眺める電車ガタゴト揺れてて、塾からの帰り道。

何年も何年も、とてつもなく何年もまえのことなのに。

すぐ、そこ。

裸足な気分が逆光線で散歩を加速する