「どう思いますか?『論破の帝王』さん、何でマスコミは、こんな重大なニュースを報道しないんですかねぇ?」
「そりゃあ……ネットで『マスゴミ』と言われるメディアが腐りきってい……ん?」
「どうしました?」
「今のシーン、カットするんですか?」
「そんなの出来る訳ないでしょ、生放送なのに」
「実は、今、CM中なんて事は……?」
「CM始まったら、Dから合図が有りますよ。この番組に何度も出てるんで、知ってるでしょ?」
「で……でも、何か、変な事言いませんでした?」
「変な事? 何ですか?」
「いや……だって……『何でマスコミは、こんな重大なニュースを報道しない』とか……何とか……」
「ええ、報道してませんよね」
「あの……ここ、TV局ですよね?」
「そうですよ」
「で、今は、生放送してる番組の収録中ですよね?」
「そうですよ」
「それも、地上波で全国ネットの……」
「この番組への出演を依頼した時に、そう説明しましたよね」
「え……えっと……その……」
「何か……ご不審な点でも……」
「いや……その……不審な点しか無いと言うか……何と言うか……」
「キレが悪いですね。お仕事のしすぎでお疲れですか?」
「だから……その……今、報道しましたよね、問題のニュース」
「してませんよ」
「したじゃないですか?」
「あの……いつもと感じが違いますね? いつもだったら、もっと視聴者にも判り易く論破してくれてましたよね?」
「だって……その……」
「どこかのマスコミが報道した、ってエビデンスは有るんですか?」
「だから……今……」
「悪魔の証明じゃなくて、1つだけエビデンスを出せば、私を論破出来るんですよ。出して下さいよ」
「だって、今やったでしょ⁉」
「やってません」
「やった‼」
「やってません」
「この番組で今さっき、しっかり、報道した‼」
「報道してません」
「じゃあ、さっきのは何だ?」
「この番組への出演を依頼した時に、この番組のプロデューサーが名刺を渡してますよね?」
「それが……どうしたんですか?」
「その名刺に、ちゃんと、バラエティ番組の製作部署に所属してる事が明記されてた筈ですが」
「えっ?」
「これ、報道番組じゃありません」
「そ……そんな馬鹿な……ッ⁉」
「さっきのは報道じゃありません」
「待て……ッ‼」
「もし、あのニュースが間違いだったら……関係者は処分されますが、報道部門が作ってる番組で同じ事やった場合より処分は軽くて済みます」
「無茶苦茶だ」
「大体、誤報をやらかしたら何人の首が飛ぶか判んない番組に、あんたみたいなネットで人気が有るだけのチンピラを出演させる馬鹿が居ると思ってるんですか?」
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