プラネテス

惑星からの使者
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第3話 作戦会議!

公開日時: 2022年6月26日(日) 00:49
文字数:3,048

「あ、いたいた」


ウェネリスが声のする方へ駆け寄る。テラも後に続いた。


「お前ら、何してんねん! いつまで待たせるつもりや!」


「いつまでってそんな待たせてないじゃないよ! ほんと何で少しくらい待てないかなぁ!」


ウェネリスとマルティスと思しき青年は、やいのやいのと口論を始める。マルティスの髪は燃えるような紅色をしていて、瞳はさらに深い洋紅色だ。外見から察するに、20代前半くらいだろうか。ウェネリスよりは少し大人びて見える。


―― まるで夫婦漫才のようね。


テラは二人の口論を微笑ましく眺めていた。マルティスがテラの様子に気付く。


「何やこいつ、俺らのことニヤニヤしながら見とる。 きもちわるっ」


「テラ! ボーっとしてないで、あんたも何か言ってやんなさいよ!」


「へ? …二人とも仲良しだよねぇ。 夫婦漫才見てる気分になっちゃった。 へへ」


「誰が夫婦漫才やっ!」


「誰が夫婦漫才よっ!」


ウェネリスとマルティスの声が重なった。


「ふ、はは! ほら、やっぱり仲良しじゃん! 息ぴったりだよ!」


テラは嬉しそうに笑う。


「なんやねん、こいつ。 調子狂うわー。 こいつがサトゥルニの言うてたやつか?」


マルティスはウェネリスに尋ねた。


「そうよ。 今日やっと見つけたのよ。 メルクリから会えたって話は聞いてたけど、どこにいるかまでは教えてくんなくてさ」


「よぉ見つけたな。 お前まさかまたなんか力使ったんちゃうやろな…」


「え? あは! バレた?」


「ほんまお前ええ加減にせぇよ…。」


マルティスは呆れて脱力した。


「わ、私、ウェネリスに導かれて来ちゃったってこと?」


―― 自分の意志で決めてきたと思ってたのに…。


テラはこんな何気ない選択にでさえ、惑星の力が使われているのかと驚いた。


「ま、テラがアタシの歌を聴いてくれているってのが前提条件としてあるんだけど」


「お前なぁ、そうやって意のままにニンゲン操作するなって言われとったやろ…」


「何よ! テラ以外に使ってないわよ! テラを見つけるためにこうするしかなかったのよ! それともあんたが見つけられたとでも言うの?」


「ふつーにメルクリやソリスに教えてもらえや…要らんことして問題起こすんだけはやめろよ」


「ハイハイ、分かってるわよもう!」


ウェネリスは頬を膨らませて不機嫌になった。


「ま、まぁまぁ。 私は気にしてませんから、ね? 二人とも落ち着いて」


テラは二人の間に割って入り、宥めようとする。


「とにかく! 合流したからには、作戦会議よ!」


ウェネリスは人差し指を天高く指さした。


「だから、テラんちに集まりまーす!」


テラとマルティスは顔を見合わせ、苦笑いした。



    *



「あら、合流できたのね」


玄関までルナエが出迎える。


「ルナ姉、久しぶりー!」


ウェネリスがルナエとの再会を喜んだ。


「あらー、マルティスも久しぶりね。 2人の活躍はいつもテレビで見てるわよ」


ルナエはにっこり微笑んだ。


「うす」


マルティスはめんどくさそうに返事をした。


「今日はお鍋にしてみましたー♪」


ルナエは皆で囲んだテーブルの上に、コンロを置いて鍋を重ねた。


「じゃあ、鍋でもつつきながら作戦会議といきますか!」


ウェネリスが空に向かって叫んだ。すると、メルクリとソリスがどこからともなく現れた。


「ほほぉ! これが"鍋"というものか! 実に美味そうだ!」


鍋を覗き込みながら、ソリスはハキハキとした口調で言った。熱々の湯気が顔にぶつかっているようにも見えるが、当然ながらまったく熱くはないようだ。


「いただきまーす」


各々のタイミングで食べ始める。


「そんで、お前なんか熱くなれるようなこと、あんのか?」


マルティスが鶏肉を頬張りながらテラに問う。


「熱く…?」


「せや、なんやろな…こう、これだけは負けられへんぞ! みたいなやつ。 めっちゃやりたくてどうしようもなくて、うずうずするようなやつや」


「そのことなんだけど…」


テラは恥ずかしそうに俯きながら続ける。


「小説を書こうと、思うんだ…」


テラは昔から絵本や小説などの物語を読むのが好きだった。頭の中で考えた世界や登場人物が、本の中で生き生きと動き回る。自分もそれができるのかもしれないと考えると、なんだかワクワクした。


「それってまるで創設者ファウンダーみたいな考えよね」


ウェネリスが白菜を口に運びながら言った。


創設者ファウンダー?」


テラは何のことを話しているのか理解できなかった。


「この宇宙を作った、君らの思想でいうところのみたいな存在さ」


メルクリが口を開いた。


「僕らプラネテスも創設者ファウンダーから生まれたんだ。僕らの主である惑星たちもね。 創設者ファウンダーは何か意図をもった特定の存在というわけではないらしい。 はっきり見た者はいないけれど、この宇宙を司るシステムのような、法則のような、そういう曖昧だけど確かにいる…そんな存在さ」


「もしテラが創設者ファウンダーだとしたら、あんたが考えた世界や登場人物はこの宇宙だし、人類や何かしらの使者ってわけ」


ウェネリスは熱々の豆腐を息で冷ましながら答えた。


「この宇宙は、誰かの創作した物語ってこと?」


「そうね。 何のために創作したかなんて、理由は必要ない。 ただここにいるだけ」


「存在に意味を見出そうとするのは、ニンゲンくらいなもんだよ」


宙であぐらをかきながらメルクリが言う。


「せやから、お前がやりたい思うならやったらええんちゃうか。 俺はお前のモチベが上がる方法くらいやったら教えられるから」


鶏肉を次々と頬張りながらマルティスは助言をする。


「ちょっと! 肉ばっかり食べるのやめなさいよ!」


「なんやねん、俺はアスリートやぞ! 肉は重要なエネルギー資源や! お前別に肉食うてへんやんけ!」


「あんたが奪っていくからでしょうが! アタシにも肉よこしなさいよ!」


ウェネリスとマルティスの2人は再び口論を始めた。


「小説を書きたいというのなら、書きたいジャンルをまずは決めてみるのはどうだ?」


ソリスがテラに提案した。


「そうですね…何がいいだろう。 恋愛もファンタジーも面白そうだな…」


「どちらも日本では人気ジャンルのようだぞ! 読んでもらえる機会も多いのではないか?」


「なるほど…。 っていうかソリスさんやけに詳しくないですか?」


「ん? そうか? 僕の役割は君が進みやすい方向へ道を照らし出すことだからな! ハッハッハ!」


「ちなみに。 必ずしもそれが成功への近道ってわけじゃないから最終的にはテラ自身が決めるんだよ」


メルクリはテラに誤解させないよう、釘を刺した。


「ソリスが照らし出すのはあくまでも可能性。 例えば、何か賞を取りたい、プロとしてデビューしたいというのが目的なら、注目を集めやすい道を照らす。 生活をするためにあらゆる手段も試すのなら、収入に特化して道を照らす」


「その中で君がやりたいことを自由にやるといい!」


「絵本読んでたって言ってたし、絵本のシナリオ作家でもいいんじゃない? 小説だけにこだわらなくても」


「先に稼いで生計立ててから、賞目指すってのもありちゃうか?」


各々が各々の視点でテラにアドバイスをする。


「たしかに、たしかに! 色んなやり方があるんだね!」


「創造性がどの分野で発揮されやすいか、海王星に相談するってのはどう?」


ウェネリスが持ち掛けた。


「努力が実りやすい方向性をサトゥルニに相談するのもええんちゃう?」


マルティスも対案を出した。


「まぁ海王星に会うにしろ、先にサトゥルニに会うのが前提条件だしね。 メルクリ、テラのこと報告してきてくれない?」


「オーケー」


そう言って、メルクリは姿を消した。


―― 私のことで何だか大事になってきたな…。


テラは深呼吸をする。


―― 自分の人生だもん、自分で決めなきゃ!



【続く】

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