ヴィーナシアンの花嫁

シンギュラリティが紡ぐ悠久の神話
月城 友麻 (deep child)
月城 友麻 (deep child)

7-4.凌辱と虐殺の絶望

公開日時: 2021年1月15日(金) 10:18
文字数:6,908

 二人でボーっと富士山を見ていたら、富士山のふもとで何かが蠢いている。


「あれ何だろう?」


 俺が指をさすと、サラが身を乗り出し、途端に険しい表情になった。


「東の国の軍隊だわ……。10万人はいるわね……」

「え? どういう事?」


「今、日本列島は東の国と西の国で二分されているの。ここ数十年は軍事衝突はなかったんだけど……これは大きな戦争になるわね。ここのところ天候不順で東の国に飢饉が発生していたから、それが引き金になった可能性があるわ。」


「という事は……、庄屋さんの村は略奪されるって事?」

「あそこは軍隊の通り道だから略奪は避けられない……でしょうね……」


「え! そしたらディナはどうなっちゃうの?」

「女性はみんな凌辱りょうじょくされて殺される……かな」

 とんでもない事をサラッと言う。


「そんな……。西の国の軍隊は何をしてるの?」

「西の国は今、政争に明け暮れていて国がバラバラなの。とてもすぐに十分な軍隊を防衛には当てられないわ」

 そう言ってサラは肩をすくめて首を振る。


「俺たちが止めちゃダメなの?」

「地球人たちのやることは、地球人に任せるしかないのよ」

「じゃ、見殺しにする以外ないって事?」

「残念だけど……そうする以外ないわね……」

「そんな……」


 ディナが、みんなが酷い目にあって殺される……それが分かっていて何もできない……そんな話があっていいだろうか……

 俺は目の前が真っ暗になった。


「知らせる……知らせるくらいならいいですよね?」

「まぁ、いいけど、知らせたって結果は変わらないわよ」

「ジッとしてられないんで、行ってきます!」


 俺はすぐに服を着て、庄屋さんの屋敷に飛んだ。

 門番はいきなり出てきた俺に驚いていたが、東の国の大軍が迫ってることを告げたら、一緒に走って案内してくれた。


 居室でお茶を飲んでいた庄屋さんは、慌てて飛び込んできた俺を見て言った。


「おや、お弟子さん、どうしたんですか?」

「東の国の軍隊が来ます! 10万人規模です!」

 俺が早口で告げると、庄屋さんは一瞬目を見張り、そして瞑って何かを考えていた。

 

「このままじゃ略奪されて皆殺しです。逃げましょう!」

 俺がそう提案すると、


「逃げるってどこに? 我々はこの村でしか生きられない。先祖代々のこの土地が我々の命であり、そこが奪われるのなら死ぬ以外ない」

 庄屋さんは悟った風にそう言い放った。


 そして門番の男に叫んだ、

「鐘を鳴らせ! 全員広場に集合させろ!」


 庄屋さんは逃げないという、であれば村人は全滅だ。せめてディナだけでも何とかならないだろうか? 彼女はまだ15歳、人生これからというのに、凌辱されて殺されるなどあっていいはずがない。

 俺は急いで周囲をスキャンする。

 裏の小川で野菜を洗っている女の子を見つけた。ディナだ。

 走っていくとこちらをチラッと見る。


「何か御用ですか?」

 棘のある声で言う。ご機嫌斜めだ。


「東の国の大軍が来る、ここは戦場になってみんな殺される」

 俺は冷静に説明した。


 ディナは野菜を洗う手を止め、こちらをじっと見る。


「このままじゃディナも、ひどい目にあって殺される、逃げないか?」

「逃げるって……どこへ?」

「安全な、戦争のないところを探して……」


 ディナはため息をつくと、野菜洗いの作業に戻りながら言った。

「庄屋さんは『逃げる』って言ってるの?」

「いや、逃げないらしい」


「だったら私もここで死ぬわ」

「え? なんでそんなにここにこだわるんだ? 死んだら終わりなんだぞ!」

「私は村の人間よ、村のみんなが『逃げずに戦う』って言ってるのに、私だけ逃げられないわ」

「ディナはまだ若い、逃げたって許されるよ」

「……。」


 野菜を強くゴシゴシと洗うディナ。


「方法は……一つだけあるわ……」

「え? どんな?」


 ディナは野菜を洗う手を止め、立ち上がり、涙いっぱいの目で俺を見た。

「マコ様、私と……け、結婚してください!」

「え!?」

「結婚したら私は村の人間ではなくなる……一緒に逃げられるの……」

 俺は絶句してしまった。


「ダメ……ですか?」

「うーん……、け、結婚かぁ……」


「いっぱいいっぱい奉仕します! ……ダメ?」

 ディナは上目づかいで、手を合わせて必死にお願いする。


「うーん……、あ、そうだ! 結婚したことにすればいいよ!」


 俺がそう言うと、ディナは下を向き

「馬鹿にしないで!!」


 そう叫び、震えた。


 俺がオロオロとしていると、ディナはペンダントを外し、俺をキッと睨みつけると、


「マコ様のバカ!」

 そう言って投げつけ、走って行ってしまった。


「あっ、ちょっ!」

 俺はかける言葉も思いつかず、ただ、走り去るディナを、見送るしかできない……。


 俺はこれまでイマジナリー連発し、神様気分でいい気になってたが、女の子一人救えない、ただのクズだという事が露呈してしまった。


 はぁ~……


 ため息をこぼしながらペンダントを拾い、ほこりを払って眺めて見た。綺麗な漆細工のペンダントには、買った時には付いていなかった綺麗なリボンがあしらわれていた。ディナがペンダントに寄せていた想い、それを投げつけざるを得なかった絶望が胸をさいなむ。

 ディナにはディナなりの15年間の村での生活があり、村のおきて、考え方があるのだ。自分だけ逃げて生き残る事の意味は決して軽くない。それに見合うだけの覚悟を俺が提供しない限り、乗れない話なのだ。

 覚悟無く、思い付きで暴走した俺の軽薄な発想を、心から反省した。


 俺はディナに連れて行ってもらった巨木の枝に転移し、腰かけると村を力なく見下ろした。


 GOWNゴーン GOWNゴーン


 遠く、広場の方で鐘が鳴り始める。


 玉砕ぎょくさい覚悟の戦闘準備が始まるのだろう。

 大軍相手にどれだけ抗戦できるだろうか……30分も持たずに皆殺しだろうな……



        ◇



「キャ――――!」


 遠くで微かに、しかし確かに女の子の叫び声が聞こえた。山道の方だ。


 俺は深呼吸をして心を落ち着かせると、イマジナリーを使って遠隔ビジョンで叫び声の方向を見ていった。

 すると、若い女の子が武装した20人ほどの男たちに襲われている。殴られたのか、女の子の顔は右側が腫れあがり、口からは血が流れ、衣服は切り裂かれて組み伏せられていた。


 この世界に干渉してはいけない、サラにはそう言われていたが、髪の毛を振り乱して悲痛に叫ぶ女の子を放っておけるほど、俺は割り切れなかった。


 俺は近くに降り立つと、女の子を俺のそばに転移させ、顔の治療を行いながら言った。

「ちょっとじっとしててね、すぐに治すから」

「えっ!? えっ!?」


 女の子はいきなり治療され始めた事に驚き、何が何だか分からず混乱していた。


 男たちは女の子が消えた事に困惑していたが、俺を見つけると腹を立て、因縁をつけてくる。


「おい! その女は俺たちの獲物だ。返してもらおう」


 女の子の治療が終わると、俺は男たちの方を向き、


「お前たちは何者だ? 東の国の者か?」

 と、淡々と聞いた。


「俺たちはベアル一家だ。東の国が攻めてくる前に、この辺は俺たちが略奪させてもらう」

 ガタイのいい大男はそう言ってニヤニヤと笑う。


「あー、じゃ、お前ら倒しても問題なさそうだな」

 俺もニヤッと笑った。


 大男は

「その細い腕で何ができんだよ? 馬鹿かお前は?」

 そう言うとゲラゲラ笑い、他の男たちも馬鹿にするようにドッと笑った。


 森に響く下種な笑い声に女の子が怖がって、俺にギュッとしがみついてくる。

 彼女を連れて逃げてもいいが、そうしたら別の娘が襲われるだけだ。ここはおきゅうをすえておかねばならない。


 その時、空気を切り裂く音が走った。


 Powタン! Powタン


 弓矢が二本、俺の胸に刺さる。


「命中~!」

 男たちがゲラゲラと笑う。


「ひやぁぁ!」

 女の子がおののいて声をあげた。


 しかし、俺は倒れない。俺の体表にはシールドを展開してあるので、矢はシールドで止まっているのだ。これで殺人未遂が成立だ。何があっても正当防衛と言える。


 俺はイマジナリーで男たちの剣や槍、弓矢を選択すると温度を三千度まで上げた。


「うわぁぁぁ!」「あっちっち――――!!」


 いきなり光り輝きながら溶け落ちる武器たち。弓矢は爆発的に炎上している。


 武装解除完了である。


「何すんだこの野郎!!」

 それでも馬鹿な男たちは、俺に殴りかかろうとダッシュでやってくる。


 俺は駆け寄ってくる男たちの身体を、イマジナリーで静止させ、持ち上げると時速百キロの速度を付けて吹き飛ばした。


「ぐわぁぁぁ!」「うぉぉぉぉ!」


 彼らは他の男たちに次々と当たりながら、森の斜面を転がり落ちて行った。

 しかし、なぜか彼らは攻撃をやめようとしない。本当に馬鹿なのだ。


「突撃――――!」

 大男の号令で、残りの男たちが一斉に突っ込んでくる。


 むしゃくしゃしていた俺には格好の標的である。


 俺は直径1mの水の玉を出すと、駆けてくる男たちに向けて次々と時速百キロで放った。


「ほら、水魔法だぞ。アクアボール!」


Swashビシャッ! Swashビシャッ


 高速の水は凶器である。男たちは次々と吹き飛ばされ斜面を転がって行く。


 それでもまだ諦めないらしく、誰かが煙幕玉を投げてきた。


 Powパン! Powパン


 俺のそばで次々と爆発し、辺り一面煙が充満して何も見えなくなった。


「キャ――――!」

 女の子が怖がってしがみついてくる。


 なるほど、さすが盗賊団、手練れだ。これでは狙いを定められない。だが、別に狙いを定める必要など俺にはないのだ。

 俺はバスの大きさの巨大な水の塊を出し、敵がいそうな方向に次々と時速百キロで放った。


「メガ・アクアボール!!」


 バキバキと木々が折れる音の間に、あちこちから断末魔の叫びが上がる。


「ぎゃぁぁぁ!」「ぐはぁぁ!」


 俺は声が上がらなくなるまで、しばらく水を撃ち続けた。


 煙が晴れると森だった所は、洪水が襲ったかのようにスキーのゲレンデみたいに開け、夕暮れ空が広がっていた。男たちは随分流されてしまったようで視認できない。一応生命反応はあるので死んではいなさそうだが、略奪はもう無理だろう。


 ただ……、こんな事したって東の国の軍隊の略奪は止められないのだが……。


 俺の足元を見ると、女の子が呆然としていた。


「大丈夫?」

 俺が優しく声をかけると、


「だ、大丈夫……です。あ、ありがとうございます……」

 と、慌てて立ち上がり、引きつった笑顔を見せる。


「それは何より。あ、もしかしてディナちゃんって知ってる?」

「ディ、ディナですか? 友達です。良く知ってます!」

「そしたらこれ、渡してくれないかな? 彼女落として行っちゃったので……」

 俺はそう言ってペンダントを彼女に渡した。


「わ、分かりました。あ……、もしかして……、マコ……様ですか?」

 女の子は上目遣いに聞いてくる。


「え? そうだけど……」


「ディナがね、マコ様の事を嬉しそうに話すんですよ。男の人の事をあんなに話すディナは初めてだから……」

 俺はいたたまれなくなって、目を瞑り、大きく息を吐いた。


『ディナ……』


 結局俺はディナをもてあそんだだけになってしまった。俺はディナとどう接したらよかったのだろうか……。


「もしかして……マコ様は神様ですか?」

 女の子は目をキラキラさせて聞いてくる。

 神様……、俺がクリスを初めて見た時そう思ったように、彼女にも俺がそう見えるのだろう。

 しかし、ディナという女の子一人救えない神様などあり得ない。俺は無力感にさいなまれながら答えた


「残念ながら……人間だよ。少し術が使えるだけの……」



        ◇



 俺は女の子と別れると、三保の松原へと跳んだ。


 夕凪ゆうなぎの中、霊峰れいほう富士はどっしりと静かに、オレンジ色に輝いていた。

 俺はディナが正座していた辺りに座り、ボーっと富士山を眺めた。


 略奪と殺戮さつりくは確実にやってくる。ディナも救えない……。


 実戦で確認できた俺の力は異常すぎる。滅茶苦茶手加減してあの強さ、殺すつもりなら何十万人いようが瞬殺できる。まさにチートだ。

 当然、東の軍隊の兵士どもなど俺一人で楽勝だ。しかし……、兵士にも家族がいる。兵士を倒すというのは被害を東の国側に寄せただけだ。


 殿様拉致して洗脳するか?

 いや、ここまで来たら殿様が『中止』と言っても止まらないだろう。乱心したと家臣に斬られて終わりだ。


 そもそも、サラに止められる。俺がこの世界に干渉することは許されないのだ。


 要は略奪と殺戮は運命なのだ。俺が『神の力』だとどんなにイキがっても、運命は変えられない。変えられるとしたら、俺がディナと結婚してやるくらい……、でも……、俺が一生ディナの面倒見るの? ディナだけ特別? 由香ちゃんはどうするの?


 俺は絶望し、無力感にさいなまれる。

 富士山は頭を抱えて悩む俺を、そっとオレンジ色に照らした。



         ◇



 城に戻ると、サラは夕暮れの富士山を眺めながらワインを飲んでいた。


 しょぼくれた俺の様子を見て、

「知らせても無駄だったでしょ?」

 あっさりとそう言った。


「みんな逃げない、ディナも結婚してくれなきゃ逃げられないって……」

「あら? 結婚してあげたら?」

「いや、結婚ってそういうもんじゃないし……俺の覚悟のなさを露呈しちゃった……」


 俺もワインを注ぎ、ぐっと一気に呷った。

 サラは、しょんぼりする俺をヘーゼル色の瞳で、いたわるようにしばらくじっと見つめ、そして言った。


「辛そう……ね、そろそろ帰る?」

「そうですね……略奪の現場なんて、とても耐えられそうにないです」

「じゃぁ、帰りますか!」

 元気に立ち上がるサラ。

 しかし、俺はうつむいたまま動けなかった。

 早く帰りたい……、でも、このまま帰って……いいのだろうか?


 確かに俺には何もできない。できないけど何かこう……このやりきれない想いを発散してから帰りたい……。


 そして、サラに言った、

「ちょっとだけ待ってください。最後に一発花火上げるんで」

「花火? いいけど軍隊に攻撃しちゃダメよ」

「……。大丈夫です……」



        ◇



 俺は北極に跳んだ。


 空中を漂いながら氷山を探そうとしたが、刺すような寒さが容赦なく俺を襲う。


「う~寒い!」


 俺は身体の周りにシールドを展開してみる。すると、直接寒風が届かなくなって暖かくなった。きっともっと上手い防寒方法はあるのだろうが、今はこれで十分だ。


 しばらく飛び回っていると小さな氷山を発見。

 海面から出てるサイズが3mくらいだから、全長30メートルくらいだろう。10階建てのビルサイズ。


 俺は氷山全体をイマジナリーで捕捉すると、右手を高く掲げ、俺と一緒に伊豆半島上空百キロに転移した。


『エイッ!』


 眼下に伊豆半島、富士山、箱根の山々が広がった。

 ここはもう宇宙、周囲はもう真っ暗で気圧も地上の百万分の1くらいしかない。

 氷山を見ると『プシュー』っと、表面から水蒸気が噴き出している。


 これを軍隊にぶつければ原爆レベルの爆発が起こり、ディナは助かる。

 助かるが……それは被害を別の人に移しただけだ……。

 

 俺は氷山を保持したまま目を瞑り、ディナを想う。


『ディナ……』


 ディナの屈託のない笑顔、照れた時の可愛いしぐさ、柔らかな胸のぬくもり、そして涙いっぱいの表情……

 一つ一つを丁寧に思い返した。

 最後の悲痛な叫び声が、まだ耳に残っている。


 涙が自然と溢れてきた。


 いたいけな15歳の少女が、酷い事をされて殺される。分かってるのに俺はそれを止められない。

 唯一の解決策、結婚して欲しい、という彼女の願いも踏みにじった……。

 最低だ……。


 北極上空で俺はオイオイと泣いた。

 自分の浅はかさ、無力さ、すべてが嫌になって声を出して泣いた。


 そもそもなぜ人類は、こんな殺し合いをするのか? ホント馬鹿なんじゃないのか? 


「お前らいい加減にしろよ!」


 俺は自分も人類の一員であることを棚に上げ、感情に任せて怒り散らす。


 しかし、怒ってもそれが人類なのだから仕方ない。俺にはどうしようもない。

 俺は唇をかみしめながら自らの無力さに苛まれ、そしてまた泣いた。


 泣いても何も解決しない。

 でも次から次へと湧き上がってくる悲しみを、俺は泣くことでしか受け止められなかった。


 こぼした涙は展開したシールドの底で白く凍り、シールドと干渉して『パキッ』と乾いた音を立てる。


 顔はもうぐちゃぐちゃだった。


『……。』


 俺はゆっくりと深呼吸をし、気持ちに整理をつけた。


 そして、顔を上げ……浜名湖の方を見る。

 ちょうど夕陽が湖面に反射し、美しく輝いていた。

 俺は浜名湖の少し右に照準を合わせて叫んだ、


「目標! 名古屋!」

 

 俺は氷山に秒速20キロの速度を付与し、ありったけの想いを込めて西に飛ばす。

 氷山は真っ赤な閃光を放ちながら吹っ飛んでいった。



        ◇



 城に戻ると、サラが火球かきゅうとなった氷山を見ながら笑っていた。


「あはは、誠は面白いことやるわねぇ」


 火球は激しく光を放ちながら大軍の上空80キロで大爆発して3つに割れ、さらに名古屋の方へと飛んで行く。

 その後何回か爆発を繰り返しながら、最後には溶けて消滅した。伊豆から名古屋まで十数秒の壮大なショーだった。


 爆発があった周囲では激しい衝撃波が地表を襲い、兵士たちは地面に倒れ、馬は逃げ出した。

 俺のささやかな抗議の意思表示だ。


 名古屋の方では『何かとんでもない事が起こる前触れ』として人々が騒いでいる。

 注意喚起には成功したようだ。

 これで少しでも被害が減ってくれればいいな。


 ディナにも、少なくとも轟音は届いただろう。俺からの最後のお別れの挨拶だ。

 想いを受け止められなくてゴメン。身勝手でゴメン。


 俺は君のヒーローにはなれなかった。

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