金鷲の雷槌~もしも最強の無法者が銀髪碧眼美幼女になったら~

金!! 暴力!! SEX!! の無法者が銀髪碧眼幼女に……!?
ひがしやま
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SEASON1 CHAPTER1 銀髪碧眼幼女、LAへ立つ

第一話 金髪碧眼の少年とポンコツ天使

公開日時: 2022年4月15日(金) 01:36
文字数:2,185

「あーあ、ついに死んじまったか。葬式は盛り上がっているんだろうな」


 ルーシ・スターリング──死んでしまった彼に名前なんてないのかもしれないが、とにかく彼は生前ルーシと名乗っていた。そんなルーシは、煙草も酒もクスリもない真っ白な空間にて、腕を組みながら目の前にいる女と対峙する。


「随分と軽いですね。アナタ死んだんですよ?」


「死んじまったもんは仕方ねェだろ。だいたい、死ぬことなんて怖くなかったしな。それで? オレは宗教放棄者だが、これからどうなるんだい?」


 ルーシは普段の冷静な態度を崩さない。


「宗教放棄者、ですか。ならばちょうど良い場所がありますよ」


 ピンク色の髪色をした女は、セールスマンのごとくなにかを見せてくる。


「総殺人数二四八六〇人。本来ならば満場一致で無期刑でしょうね。永久に魂を縛られ、アナタという存在がアナタの世界から忘れ去られるまで、そこから出ることはかなわない」


「時効を含めれば一〇〇〇〇人程度だろ?」


「殺人に時効はありませんよ」女はルーシをうつろな目で見据え、「仮にあったところで、結果は変わらないでしょう。アナタは狂っている。どこまでも人を殺し、どこまでも野望を追い求め、どこまでも異常であり続けた。そんなアナタへは……」


「処女であるワタシを抱いてくださいイケメン様……とでもいうのかい? ははッ……冗談だ」


 女はまさしく図星といわんばかりに目を見開く。そんな間抜けな姿に、ルーシは鼻で笑う。


「おいおい、たかが人間ごときに考えを読まれるとは……相当なポンコツだな。オレが生前いた日本じゃ、髪の毛をピンクにしていたヤツはみんなアホだった。忍者とか侍とかいっていれば、ベッドまで行くのに一時間もいらなかったぜ。手に無数の生傷があるのは不気味だったがな」


「……そうやってワタシをいじめて楽しいですか?」


 女は涙目になる。メンタル弱すぎだろ、このアホ。


「いじめてねェよ。アホにアホっていったらなんの罪に問われるんだい? 事実陳列罪か?」


 こんなポンコツが天使のようだから、天界も落ちぶれたものだ。ルーシは首をゴキゴキ鳴らし、しばし号泣する寸前の女を見つめる。

 やがて、ルーシは一回おおきなため息をつき、彼女の胸ぐらを掴む。


「おい……いい加減にしろよ」冷たい声質で、「てめェみてェのを抱けだと? てめェが管轄している人間の世界でも、ポンコツのてめェは無様にボコられてレイプされるのがオチだ。それもある意味卒業ではあるがな?」


 ついに号泣してしまった。

──面倒くせェ。人間にちょっと脅されたくらいで泣き始めるようなヤツが、偉そうに物事語ってきやがる。バカバカしい。


「まァ、泣くなよ。泣いたところで問題は解決しねェぜ?」


「で、ですが……」


「泣くんじゃねェ!!」


 ルーシはついにブチ切れた。一〇分に一度煙草を吸っている人間は、もう何日と煙草を咥えていない。さすがに苛立ちが隠せなくなってきているのだ。


「……ワリィ。ヤニ切れなんだ。週一でセラピーにも行ってってな。もう限界が近けェみてェなんだ」


「だ、だったら──」


 女は紙巻煙草とライターをどこからともなく発生させた。ルーシはそれを受け取り、真っ白な空間に煙が灯る。


「ありがとう。あー……やはりこれに限るな。んで、話しを進めようぜ? まずは自己紹介からだな。はい、どうぞ」


「……ヘーラーです。天使を務めております。まだ三年目の駆け出しものです」


「メンヘラってわけだ」ルーシは嫌味な笑みを浮かべる。


「ち、違いますっ!!」顔が真っ赤になる。図星だったのか。


「それで、メンヘラよ。オレが死んでしまったってのはなんとなくわかる。腹は減らねェし、身体も快調だし、なによりこのアホみてェな空間はわざと作られたと感じる。死を受け入れられねェヤツに向けて、すこしでも精神を安定させるためにな。ま、オレにはあまり関係ないが」


 ルーシは死を受け入れている。別に死因などどうだって良いし、残された者の気持ちもわからないうえに、ヤツらならばルーシの死なんて軽々と超えてくれるだろう。だからどうだって良いのだ。


「随分と冷静ですね。普通、もっと取り乱すものですよ?」


「人間に考えを読まれたおまえこそ取り乱すべきだと思うぜ?」


「そ、それは……」


「なァ、メンヘラ」


「メンヘラじゃないですっ!!」


「ちょうど良い場所ってなんだ?」


 最前の会話で気になった単語だ。このヘーラーとやらはなにかを隠している。どうせたいしたことではなさそうだが、一応聞いておく価値はありそうである。


「宗教放棄者にふさわしい場所。と、いうことはだ。神を信じたくなるような場所へとオレを飛ばす……ってとこか? それこそ戦場か、動乱か、革命か」


「そのどれにも当てはまらないですけれど、アナタにぴったりな場所ならばありますよ」


「どこだい?」


「ロスト・エンジェルス。天使を失った国です」


「ああ、なかなか良さそうじゃねェか。だが、空けてみてからのお楽しみだな。どうせ中世ヨーロッパみてェなところなんだろ?」


「い、いいませんよ? 教えちゃいけないルールですので」


「自分で調べるさ。おまえ、ついてくるなよ? 災難しか降ってこなさそうだし」


「え……」なにやら後ろめたいことがあるようだ。


「ポンコツ天使様。わかりやすい反応ありがとう。兎にも角にもだ」


 ルーシは煙草をヘーラーへと投げ捨て、

「オレは暴れられればそれで良い」

 宣言したのだった。


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