あのあと、食事へ行った。
この国は漁業が盛んで、なんと刺し身があった。魚醤につけて食べるのだ。なかなか美味だった。
そして、ルーシはホテルにて、携帯を眺めていた。
「……良かったな。やはり女のほうが性感帯が強い。さすがに処女を破るのはまずいと思ってやめたが、普通に舐めあっているだけでも満足だ」
パーラは獣臭かった。だが、それが良かった。いままで体験したことないをするのは、とても楽しいことだからだ。
「さて、学校だ。パーラは……」
とても幸せそうな、無邪気な夢でも見ているかのような表情で眠っていた。特に緊張感もなく、すべてをルーシへ許しているようだった。
「女なんか放っておくんだがな……。学生だし、起こしたほうが良いか」
ルーシはパーラを揺さぶる。
パーラは目をこすりながら、
「ルーちゃん……キスして……」
せがんできた。
「良いぜ」
あのアル中天使に慣れていれば、寝起きの口臭などまったく感じない。ルーシとパーラは舌を絡め合い、そしてそれぞれの生活へ戻っていくのだ。
「学校、行くぞ。シャワー浴びてな。もう八時だ」
「んー……サボって遊びに行こうよ」
「やめておけよ。単位落っこちるぞ?」
「ルーちゃんがそういうんなら……」
パーラは洗面所へと向かっていった。ルーシはとりあえず煙草を咥え、スターリング工業からの連絡を一件一件返していく。
「CEOは大変だ。だが、ここを強盗のは良さそうだな。了解と……」
スターリング工業。主な職務は「強盗」「詐欺」「クラブ運営」「クスリ」「売春斡旋」「死体処理」「抹殺」である。国がその気になれば、彼らは死刑以外の判決を受けないだろう。
しかし、クールを相手にしようという酔狂な警察機関がないのも事実だ。
「二面性しかねェな、オレ。いや、素のオレってなんだ? それすらもう忘れちまった」
そんなわけで煙草を吸い終える。灰皿に押し付けると、ルーシは部下の持ってきた学生服を着る。
「ま、答えなんてどうでも良い。いまが大事だ。いましかないんだ」
そして携帯がうるさいのも知っている。スターリング工業用の携帯でなく、私用の携帯だ。メントあたりが怒っているのだろうと、ルーシは筒型のそれを開く。
「……メッセージ三〇〇〇件!? 誰だ?」
アプリを開く。メッセージを送ってきているのはただひとりだけだった。
「メンヘラ天使ここに極まり、ってとこだな。電話も一〇〇〇回くらいかけてきてやがる。仕方ねェな……」
ルーシは、『いますぐ死ね』とだけ返信し、身体を伸ばす。
そうすれば、また電話攻撃がはじまった。
「チッ。出てやるか……」
心底面倒だし、心底意味がないが、ルーシは電話へ出る。
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